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平成二十五年八月二十五日
談山神社権殿法楽歌仙連歌
  於 権殿

初表
発句    ガラス器に鮎泳がせて神の贄(千尋)
脇       緑陰深き談らいの山(清實)
第三   国に二王天に二日はあらぬらん(修三)
四句    今日の出立ち紋付はかま(利枝)
五句   飲み干すは朱杯に浮かぶ望の月(順子)
六句    椋鳥の群れ寂と鎮まり(由紀江)
初裏
初句   ひとりいて薄墨果てぬ秋の文(真理子)
二句    閂外しもしやの逢瀬(建夫)
三句   洛中は探索の目が厳しくて(莞爾)
四句    浪士集まる雪深き宿(純子)
五句
    笹ごぼう豆腐も入れて軍鶏の鍋(満里子)
六句    生きて帰れと出征前夜(哲哉)
七句   物言わぬ千人針の母に月(由美子)
八句    どこで鳴くのか鈴虫の声(繁治)
九句   文机に木犀の香のふりかかる(千代)
十句    醍醐の春へ誘うかなもじ(和子)
十一句  太閤の笑み誇らしき花の舞(紀美子)
十二句   霞の向こう天守そびえて(智子)
名残表
初句   鞠抱きて妙楽の枝たまひかる(真理子)
二句    そっとのぞきし黒髪の人(純子)
三句   道ならぬ恋苦しくて出家せん(清實)
四句    鳥無き空に雲流れゆく(満里子)
五句   黒猫が大きなあくび一つして(利枝)
六句    小路せわしく夏足袋の白(由紀江)
七句   祭り日の太鼓よろこぶ異国人(隆彦)
八句    近頃ドルは九十八円(修三)
九句   えいままよ明日は明日の風がふく(莞爾)
十句    一升瓶を寝枕にして(純子)
十一句  春団治女房と見る月三とせぶり(清實)
十二句   交わす言葉も松虫の音(真理子)
名残裏
初句   秋雷をうけて別れのときとせり(青隴)
二句    まだ中学生のころにありけり(修三)
三句   アンニュイの世界を知りてポエム書く(清實)
四句    海峡越えゆく蝶に涙す(修三)
五句   ふるさとは遠くにありて花吹雪(純子)
挙句    古今伝授の春はのどやか(由紀江)

句上 長岡千尋(1) 今枝清實(世話人・4) 高城修三(宗匠・4) 上羽利枝(2) 山田順子(執筆・1) 小堀由紀江(3) 藤本真理子(3) 村上建夫(1) 黒住莞爾(2) 嶋岡純子(4) 奥山満里子(2) 田中哲哉(1) 田中由美子(1) 杉田繁治(1) 岡部千代(1) 友永和子(1) 木脇美紀子(1) 石井智子(1) 吉岡隆彦(1) 廣青隴(1) 味岡洋子 郷司英治 野村笑吾 廣久仁子 府川浩 藤井義晴 

芸能の聖地ともいうべき談山神社権殿の修復を慶賀しての連歌会は、あいにく夏の豪雨の中での興行となりました。膝送りで進めた初折の後を受けて、権殿にて四苦八苦しながら歌仙を巻き上げ、廣青隴氏の即興朗詠でもって社前に奉納したころには雨も小降りとなって、談山の深い緑は霧につつまれ森厳な雰囲気で私たちをねぎらってくれました。多くの方々のご支援とご尽力によって無事満尾いたしましたことを感謝いたしたいと存じます。終わってみれば至らぬところも目につきますが、今後も法楽連歌の機会を得て連歌の道を追求して行きたいものです。

権殿での連歌会風景