花連歌会                                                       戻る


令和六年三月二十九日
半歌仙連歌「春たけて」の巻
 お白河院

初折表
発句   春たけてねじりまんぽの東京ブギ(雅晴)
脇      くらーりくらり木の芽田楽(貴代美)
第三   足元に鶯の声もれいでて(修三)
四句    外国人の買いし古民家(浩)
五句   戸隠の地価高騰の昨日今日(弘子)
六句    SNSの月の名勝(俊平)
初折裏
初句   笈摺にスマホ片手の秋遍路(鬼猿)
二句    追いつ追われつ蜻蛉よりくる(貴代美)
三句   丹波路を肩寄せあって逃避行(清實)
四句    恋に身分の隔てはあらじ(俊平)
五句   異国にて弁護士資格めざすなり(雅晴)
六句    今は昔の三百代言(文男)
七句   月こそは照らす心の鏡とぞ(修三)
八句    親鸞様は熱燗が好き(春雄)
九句   越前の吉崎あたり雪の夜(修三)
十句    遠く聞こゆる三線の音(貴代美)
十一句  舟遊び水面に映る花の影(文男)
挙句    渡る春風頬をなでゆく(奈緒美)

句上 榊原雅晴(客・2) 城貴代美(世話人・3) 高城修三(宗匠・3) 府川浩(1) 松田弘子(1) 竹本俊平(2) 山上鬼猿(1) 今枝清實(1) 奥村文男(2) 廣瀬春雄(1) 井下奈緒美(執筆・1) 家村豊次 井下光 嶋岡純子 前田正子 松本啓二朗 村上建夫 

令和五年四月三日
半歌仙連歌「加茂高野」の巻
 於 下鴨旧三井別邸

初折表
発句   加茂高野出合いて大き花筏(順子)
脇      飛び石に子らうららかな午後(貴代美)
第三   五十年遠き春日を想起して(修三)
四句    まだまだまだと明日を夢見る(春雄)
五句   夜を徹す研究室の窓の月(清實)
六句    凍てししじまにサイレンの音(貴代美)
初裏
初句   ごくまじめ挨拶もする男です(建夫)
二句    私もうぶな看板娘(浩)
三句   世の中はだましだまされ振り振られ(文男)
四句    挙句の果てに今は恋しき(繁治)
五句   榧の実を小野のあたりに投げ捨てぬ(修三)
六句    碁盤に託す人もある秋(文男)
七句   皓々と出湯の町を月照らす(利枝)
八句    さらば祖国よ翼を振りて(春雄)
九句   モノクロの写真に写る我が息子(正子)
十句    入学式に笑顔をたたえ(光)
十一句  満開の染井吉野に包まれて(ハイディ)
挙句     神のめぐみぞ春風の吹く(奈緒美)

句上 山田順子(客・1) 城貴代美(世話人・2) 高城修三(2) 廣瀬春雄(2) 今枝清實(1) 村上建夫(1) 府川浩(1) 奥山文男(2) 杉田繁治(1) 上羽利枝(1) 前田正子(1) 井下光(1) ハイデイ・ブック=アルブレット(1) 井下奈緒美(執筆・1)

今回の花の連歌会はドイツハンブルク大学写本研究員で連歌懐紙の研究者であるハイデイ・ブック=アルブレットさんをお招きしての興行となりました。発句に引き上げた花(花火)を考慮して本来の花の定座である裏十一句で染井吉野を詠んでいただきました。


令和四年四月一日
歌仙連歌「グラナダや」の巻(石田博氏追善連歌)
 於 下鴨旧三井別邸

初表
発句   グラナダや想い果なし花万朶(伯行)
脇      筆走らせる春の宮殿(純子)
第三   蝶描く狩野派絵師は気鬱にて(修三)
四句     知らぬ振りして背伸びする猫(貴代美)
五句   仕舞にも足元乱る月の宴(俊平)
六句     太閤さんは新酒がお好き(順子)
初裏
初句   そぞろ寒ねね殿今日も一人ごつ(利枝)
二句     うらみ隠して都ながむる(光)
三句   嵯峨野にて悲しと聴きし想夫恋(奈緒美)
四句     令和の御世にカフェラテ香り(正子)
五句   黒釉に指のあと追う赤き筋(建夫)
六句     工房凍ててへらへら笑い(春雄)
七句   天窓に覗いているよな寒の月(久仁子)
八句     キーウの友よいかにいずこに(こん)
九句   地下鉄をシェルターとする避難民(繁治)
十句     スマホ画面はどれもおんなじ(幸一)
十一句  車座に笑みをこぼすや糸桜(清實)
十二句   春風駘蕩半木の道(文男)
名残表
初句   ホトケノザ見つけてなむという子かな(和子)
二句     育児記録に添える押し草(浩)
三句   あれこれと嫁入り道具に忍ばせて(壊殻)
四句     祖母のあぶな絵青蚊帳の内(貴代美)
五句   独り寝の嫉妬ばかりが募る夜(修三)
六句     鉄輪の蝋燭丑の刻参り(文男)
七句   杉の木へムササビの飛ぶ奥の院(純子)
八句     石童丸は父をたずねて(俊平)
九句   大西洋母をたずねて三千里(壊殻)
十句     パンパスグラス秋の夕暮れ(純子)
十一句  音もなく地平線より月出でて(修三)
十二句   君と一献鳥渡り行く(こん)
名残裏  
初句   ろくでなし八文字屋で酔いつぶれ(伯行)
二句     昨日の今日は今日の明日なり(修三)
三句   下鴨の三井別邸春疾風(建夫)
四句     連衆つどい日永おくれり(春雄)
五句   彼岸此岸花は盛りになりにけり(建夫)
挙句     なべてこの世はこともなきかな(文男)

句上  花房伯行(客・2) 嶋岡純子(3) 高城修三(宗匠・4) 城貴代美(世話人・2) 竹本俊平(2) 山田順子(執筆・1) 上羽利枝(1) 井下光(1) 井下奈緒美(1) 前田正子(1) 村上建夫(3) 廣瀬春雄(2) 原野久仁子(1) 今野和代(2) 杉田繁治(1) 森幸一(1) 今枝清實(1) 奥村文男(3) 友永和子(1) 府川浩(1) 豊澤壊殻(2)

花の連歌会はコロナ禍のため三年ぶりとなりましたが、今回は昨年逝去されました石田博氏の追善連歌として興行いたしました。下鴨旧三井邸での連歌会のあと、花真っ盛りの近衛桜を鑑賞しました。今回の連歌は山田順子執筆が清書し石田夫人にお届けいたします。



三十一年三月三十一日
半世吉連歌「連ね歌」の巻
 於 弘川寺本坊書院


発句    連ね歌花の法師に奉らん(慈海)
脇       春風満ちる弘川の里(清實)
第三    足元の啼くうぐいすに誘われて(修三)
四句      今日はどこへと十八切符(俊平)
五句    月ながめ始発を待ちし老夫婦(順子)
六句      紅葉の名所それぞれ思う(弘子)
七句    てんぷらの次に饅頭食ったあと(建夫)
八句      アマゾンで買うダイエット食(由紀江)

初句    床の間の見返り美人に嘆息す(久美子)
二句      相続税をいかにとやせん(保)
三句    この夏は後妻稼業に疲れ果て(貴代美)
四句     蛍飛ぶ宵身のよるべなし(久美子)
五句    宇治川に娘深雪の恋もゆる(保)
六句     うらみつらみの波の音きく(修三)
七句    月の下首級にそえた笛一管(由紀江)
八句     幸若舞いに萩のこぼるる(満里子)
九句    収穫の祭いろどる旅役者(俊平)
十句     丹波亀山千歳のあたり(修三)
十一句  京師には近くて遠き冬の道(建夫)
十二句    ええじゃないかのこだまが響く(こん)
十三句  国中に桜お札が降り乱れ(建夫)
挙句     万事めでたくのどかなりけり(るみ子)

句上  高志慈海(客・1) 今枝清實(世話人・1) 高城修三(宗匠・3) 竹本俊平(2) 山田順子(執筆・1) 松田弘子(1) 村上建夫(3) 小堀由紀江(2) 野中久美子(2) 河内保(2) 城貴代美(1) 奥山満里子(1) 今野和代(1) 中川るり子(1)  石井智子 岩佐水澄子 葛原真由美 杉田繁治 高原早苗 田中哲哉 飛田久子 友永和子 前田正子 嶋岡純子 八ツ尾美佐子 

今回の花の連歌会は西行終焉の地として知られる河内弘川寺で興行。それに先立ち西行の墓や記念館を見学しました。興行のあと参加者の野中久美子氏による能管の披露が境内の桜の下でありました。


平成三十年四月六日
半歌仙連歌「財閥の」の巻
 於 旧三井家下鴨別邸


発句     財閥の遠き栄華や春の雨(正俊)
脇        桜かんざし濡らす貴婦人(哲也)
第三     徒歩裸足わが子いずくと川に出て(俊平)
四句       名前呼べども返るは木霊(順子)
五句     冥きより見る山の端の白き月(千代)
六句       毬の多きと引き止める女(葵)

初句     そぞろ寒忍びの術は恋がらみ(貴代美)
二句       風音もなく目隠しされて(勝昭)
三句     今日昨日雪ふりしきる日本海(貴代美)
四句       蟹をほおばる芦原のお宿(正俊)
五句     いにしえの革命戦士はどこへやら(修三)
六句       チャートで決まる老後の人生(るみ子)
七句     夜逃げする影を見つめる夏の月(春雄)
八句       あくびしている大屋根の猫(純子)
九句     下京は甍の波の続く町(修三)
十句       衣棚に春風の吹く(貴代美)
十一句    外つ国の着物美人に花そそぐ(俊平)
挙句      禅の寺からおぼろなる鐘(順子)

句上  村上正俊(客・2) 保田哲也(1) 竹本俊平(2) 山田順子(執筆・2) 岡部千代(1) 横山葵(茶事・1) 城貴代美(世話人・3) 岡本勝昭(1) 高城修三(宗匠・2) 中川るみ子(1) 廣瀬春雄(1) 嶋岡純子(1) 



平成二十九年四月五日
半歌仙連歌「うぐいすも」の巻
 於 上賀茂神社参集殿

表     
発句    うぐいすも名乗らね賀茂の連歌会(水澄子)
脇       ならの小川の春水の音(葵)
第三    大仏が修二会に耳を傾けて(繁治)
四句     善男善女金色の闇(貴代美)
五句    奥州の空にぽっかり夏の月(正子)
六句     雨にも負けず地震にも負けず(千代)

初句    この男しかし女房にはかなわない(修三)
二句     性懲りもなくまた手を出して(哲哉)
三句    恋こそは芸の肥やしと言い逃れ(清實)
四句     繁昌亭に雪の降りしく(純子)
五句    年暮れて老いも若きも大笑い(幸一)
六句     ジェットコースター月ささる富士(葵)
七句    あぐらかき濁酒あおる宵の風(貴代美)
八句     父母さらば秋暁に発つ(春雄)
九句    海鳥が加計呂麻島に立ち騒ぎ(清實)
十句     春潮に乗り海の幸くる(七重)
十一句   かにかくに酒に肴の花の宴(布水呼)
挙句     都おどりのよーいやさー(千佳)

句上 岩佐水澄子(客・1) 横山葵(2) 杉田繁治(1) 城貴代美(世話人・2) 前田正子(1) 岡部千代(1) 高城修三(宗匠・1) 田中哲哉(1) 今枝清實(2) 嶋岡純子(1) 森幸一(1) 廣瀬春雄(1) 下石坂七重(1) 小島布水呼(1) 松岡千佳(1) 上羽利枝 岡本勝昭 奥山満里子 小堀由紀江 中川るみ子 山田順子(執筆)


平成二十八年四月三日
半歌仙連歌「くもり空」の巻
 於 みやこ鳥


発句   くもり空花くれないの化粧(けわい)かな(侃)
脇      加茂の川原のぬるむ水際(建夫)
第三   入学の子らの歌声流れ来て(清実)
四句     思い出づるは父母の顔(政俊)
五句   月の宿土地のなまりの懐かしく(由紀江)
六句     一握の砂冷え冷えとして(修三)

初句   ふるさとは色なき風の地震(ない)の浜(春雄)
二句     馬の腹蹴り旗竿背負う(建夫)
三句   あこがれの乙女の騎手の晴れ姿(哲哉)
四句     皐月賞より我が胸に来よ(保)
五句   紅さして髪結い上げた昼下がり(るみ子)
六句     祇園の街をぶらぶら歩き(侃)
七句   外つ国の客はうるさき月の夜(政俊)
八句     音もなく散る庭の白萩(千代)
九句   ようやくも松山藩を立て直し(修三)
十句     焼く藩札の煙すさまじ(保)
十一句  目に涙口はへの字に桜散る(るみ子)
挙句     今ひと時を待て春の風(順子)

句上 小川侃(客・2) 村上建夫(2) 今枝清實(1) 村上政俊(2) 小堀由紀江(1) 高城修三(宗匠・2) 廣瀬春雄(1) 田中哲哉(1) 河内保(2) 中川るみ子(2) 岡部千代(1) 山田順子(執筆・1) 城貴代美(世話人) 上羽利枝 岡本勝昭 奥村文男 下石坂七重 杉田繁治 竹本俊平 前田正子 安田哲也 

今回の花の連歌は洛北の料亭「みやこ鳥」で興行しました。その後、賀茂川河畔の桜を愛で、春の夕暮れの中を居酒屋「芹生」に向かい竟宴となりました。


平成二十七年四月二日
半歌仙連歌「糸桜」の巻
 於 拾翠亭


発句   糸桜古都の雅の匂いけり(弘枝)
脇      歌仙かざせし一枝の春(建夫)
第三   そよ風に固き心を開かれて(七重)
四句     チワワ道ずれほろよい男(貴代美)
五句   蹲踞の月見せたくて引き止めぬ(葵)
六句    ひとり暮らしの長夜のうれい(真理子)

初句   放哉の咳に小さく萩ゆれて(純子)
二句    ちちろの声もはたと止みけり(文男)
三句   争いのもとをただせば艶ぼくろ(葵)
四句    恋の話が金の算段(建夫)
五句   ありんすの言葉で心を封じ込め(由紀江)
六句    香り移して起請文書く(満里子)
七句   見あぐれば窓の外には寒の月(順子)
八句    火の用心の拍子木の音(貴代美)
九句   当り矢のそばの屋台が通り行く(繁治)
十句    春の雪降る京都西陣(修三)
十一句  いかんせんはやる気持の花のころ(はる風)
挙句    おぼろおぼろに今日も暮れゆく(利枝) 

句上 初田弘枝(客・1) 村上建夫(茶事・2) 下石坂七重(1) 城貴代美(世話人・2) 横山葵(2) 藤本真理子(2) 嶋岡純子(1) 奥村文男(1) 小堀由紀江(1) 山田順子(執筆・1) 杉田繁治(1) 高城修三(宗匠・1) はる風(1) 上羽利枝(1) 家村豊次 石井智子 今枝清實 奥山満里子 勝井景介 久野潤 平嘉代子 田中哲哉 友永和子 前田正子 真鍋静香 

今年の花連歌会は素晴らしい好天と満開の桜にめぐまれました。午前中は拾翠亭の茶室にて村上建夫氏・初田弘枝氏による茶事のふるまいがあり、午後から会食の後、初田弘枝氏を客に向えて半歌仙連歌を巻きました。今年の近衛の糸桜は古都の雅を放って咲き誇っておりました。そのあと、「串くら」にて竟宴があり、一部の数寄ものは夜の円山公園におもむき、夜桜見物を堪能いたしました。


平成二十六年四月五日
半歌仙連歌「いにしえの」の巻
 於 石山寺蜜蔵院


発句    いにしえをしのぶ近江の桜かな(武史)
脇       宇治へ馬駆る春の夕暮れ(建夫)
第三    シジミ採る舟も静かに帰るらん(由紀江)
四句     市場へ出れば8パーセント(建夫)
五句    買い過ぎて寝る間も月の四畳半(文男)
六句     下張ながむやや寒男(貴代美)

初句    思う人思い出すよな虫の声(平)
二句     恋をかき消す七ハンの音(保)
三句    虹立ちてどこまでつづく渚道(満里子)
四句     この世のことは知らぬ存ぜぬ(修三)
五句    子を蹴りて西行の行く闇の中(純子)
六句     あまねく照らす仏の光(平)
七句    月は今我が生国の上にあり(貴代美)
八句     仲麻呂の背に秋の悲しみ(修三)
九句    百薬の長もいやせぬ恋病(建夫)
十句     告白すれば薬もいらぬ(平)
十一句  はれやかに花の散りゆく曼殊院(笑吾)
挙句     行きつ戻りつのどかなる午後(順子)

句上 二之湯武史(客・1) 村上建夫(3) 小堀由紀江(1) 奥村文男(1) 城貴代美(世話人・2) 石平(3) 河内保(1) 奥山満里子(1) 高城修三(宗匠・2) 嶋岡純子(1) 野村笑吾(1) 山田順子(執筆・1) 猪飼由利子 石井智子 上羽利枝 岡部千代 澤田治子 下石坂七重 田中哲哉 田中由美子 友永和子 廣瀬春雄 

若き藤村は関西漂泊の旅に出たおり石山寺門前の茶丈に二か月ほど滞在したが、その茶丈ゆかりの蜜蔵院にて花の連歌会を興行いたしました。発句は参議院議員の二之湯武史氏よりいただき、連衆には中国問題に詳しい評論家石平氏ら二十二人をお迎えして。「一芸に秀でたる人はやくこの道に入る」という芭蕉の言葉を裏書きするような面白い連歌会になりました。




平成二十五年四月六日
半歌仙連歌「辛崎の」の巻
 於 旧竹林院


発句    辛埼の松は花より朧にて(芭蕉)
脇       立ちて見居て見浮かれし春ぞ(清實)
第三    恋猫は屋根で夜更けを過ごしけん(貴代美)
四句      軒先に咲く白き沈丁(純子)
五句    昼の月婆が三人話しおり(貴代美)
六句      秋茄子を摘む嫁の悪口(純子)

初句    気をつけよ明日は我が身と鰯雲(莞爾)
二句      思いもかけぬ老いらくの恋(建夫)
三句    広告の精力剤に目を引かれ(修三)
四句      オットセイよりマムシの黒焼き(貴代美)
五句    吊るされし姿はればれマグリット(真理子)
六句      窓の向こうに青い空あり(建夫)
七句    旅半ば今宵の月を待ち焦がれ(純子)
八句      尾花のゆるる小夜の中山(清實)
九句    一つ鳴くちちろの声はすきとおり(貴代美)
十句      湖畔の城は惟任の夢(春雄)
十一句  来し方に今日を重ねる夕桜(由紀江)
挙句      山懐に鶯の声(順子)

句上  松尾芭蕉(1) 今枝清實(2) 城貴代美(世話人・4) 嶋岡純子(3) 黒住莞爾(1) 村上建夫(2) 高城修三(宗匠・1) 藤本真理子(1) 廣瀬春雄(1) 小堀由紀江(1) 山田順子(執筆・1) 岡部千代 奥村文男 下石坂七重 田中哲哉 友永和子 野田凛 細尾隆三 山本昌子

今年の花の連歌会は比叡山麓の坂本旧竹林院にて満開の桜に出合えての連歌会になりましたが、昨年に続いて春の嵐に見舞われてしまいました。それでも穴太衆積の見事な石垣と満開の桜を雨の中に見て、思いで深い花の連歌会となりました。



平成二十四年四月三日
半歌仙連歌「盛り待つ」の巻
  於 拾翠亭


発句    盛り待つ乙女に紛う桜かな(建夫)
脇       つぼみかたくもまさる紅(真理子)
第三    図書館へ銀輪風を光らせて(貴代美)
四句     おなかに一人前後に二人(鬼猿)
五句    父親は月に向かって飛んでおり(弘子)
六句     北半球は秋のよそおい(麗ら)

初句    台風に婚前旅行決めかねて(純子)
二句     君のひとみに雲が流れる(將人)
三句    監督のカットで終わるラブシーン(俊平)
四句     太秦通り冬がまた来る(石井順子)
五句    弥勒様もろ肌脱げば寒かろう(笑吾)
六句     ばばは手縫いのどてらを持参(俊平)
七句    ただ独り拾翠亭にて月を待ち(修三)
八句     こっそりと酌む新酒のかおり(貴代美)
九句    あぐらくみ十七歳の秋の暮れ(純子)
十句     おやじゆずりのあのいかり肩(隆三)
十一句  旅の果て花の吹雪に立ちすくみ(春雄)
挙句     あばよ未練もくいもなき春(由紀江)

句上
村上建夫(客・1) 藤本真理子(1) 城貴代美(世話人・2) 山上鬼猿(1) 松田弘子(1) 山下麗ら(1) 嶋岡純子(2) 原將人(1) 竹本俊平(2) 石井順子(1) 野村笑吾(1) 細尾隆三(1) 高城修三(宗匠・1) 廣瀬春雄(1) 小堀由紀江(1) 今枝清實 上羽利枝 歌枕直美 岡部千代 黒住莞爾 杉田繁治 田中哲哉 田中由美子 友永和子 中島風湖 前田正子 山田順子(執筆) 原鼓卯

今回の花の連歌は京都御苑内にある九条家の庭園跡にのこる拾翠亭にて興行されました。勾玉池を中心にした広大な庭園を前にして優雅な花の連歌会になる予定でしたが、当日は爆弾低気圧が発生し、連歌が始まってまもなく激しい雷雨をともなった春の嵐となりました。そんななかで、映画監督の原將人氏、万葉和歌劇の歌枕直美氏など多彩な方々を交えての楽しい連歌会になりました。また連歌会に先立って、今枝清實氏お手前による茶事が拾翠亭付属の三畳中板の茶室で執り行われました。連歌終了を待っていたように晴れてきた京都御苑を散策して早咲きの近衛の糸桜を堪能し、そのあと「串くら」での竟宴となりました。

会席風景



平成二十三年四月二日
半歌仙連歌「春をのむ」の巻(兼 東日本大震災復興祈願連歌)
   於 銀閣寺道「SUGI」


発句    春をのむ波が持ち去る人の幸(圭一郎)
脇       こぶしの里に世界の善意(春雄)
第三    屋根の上黒猫ひとつあくびして(修三)
四句      元政友と楽をたのしむ(弘子)
五句    見えぬ糸ふるわせている下弦月(真理子)
六句      白萩ゆれて裏木戸の開き(純子)

初句    秋なすを食った女房きゅうりもみ(笑吾)
二句      枕絵本をかたわらにして(純子)
三句    寝ちがえて膏薬をはる夏の朝(利枝)
四句      大音量のラジオ体操(麗ら)
五句    常連の顔のそろえるお城跡(弘子)
六句      武士の影我に寄り添う(真理子)
七句    皓皓とただ青白き望の月(貴代美)
八句      なけとごとくに鈴虫の声(修三)
九句    路地裏にましら酒売る女あり(晋)
十句      盲目にして年は八十(修三)
十一句   三味の音にはらはら散りて花筏(和子)
挙句      行く先知れぬ永遠のあけぼの(真理子)

句上  夏圭一郎(客・1) 廣瀬春雄(1) 高城修三(宗匠・3) 松田弘子(2) 野村笑吾(1) 藤本真理子(3) 嶋岡純子(2) 
     上羽利枝(1) 麗ら(1)  城貴代美(世話人・1) 柳川晋(1) 友永和子(1) 岡崎一恵 山田順子(執筆) はる風 山上
     鬼猿 河合美佳 中道啓 

今年の花の連歌は、三月の寒さのためにようやく二分咲きになった琵琶湖疏水べりの「BUGI」にて、「ペガサス」代表の夏圭一郎氏を客に迎えての興行となりました。大震災のためイベントの類ばかりか花見まで自粛の声が高い中、東日本大震災復興祈願連歌を兼ねて、例年の如く、活発な連歌会となりました。会の後は琵琶湖疏水から岡崎、さらに真如堂の桜をたずねて、吉田山中腹の「白樺」に至り、竟宴となりました。

SUGI二階の会席
                 
                 会席者の記念写真