平成二十三年五月二八日                                    戻る

平成愛宕百韻連歌「今昔を」の巻

      愛宕神社奉納

 

 

初折

発句  今昔を知るや雪解の愛宕山(修三)

   脇    里めぐりゆく温き川水(俊平)

   第三  飾雛家々ごとに競うらん(春雄)

   四句   貝合せする菜種梅雨の夜(清實)

   五句  にび色に浮かび上がりし帯の月(松田弘子)

   六句   織機の音止めて虫すだく声(満里子)

   七句  携帯に一句書き留めそぞろ寒(純子)

   八句   習い始めし連歌の作法(隆三)

初句  ぎこちなく付いて離れてまた付いて(貴代美)

   二句   文のやりとりまばらにつづく(和子)

   三句  君よわが熱き血潮にふれてみよ(石井順子)

   四句   くもりガラスのさざんかの宿(繁治)

   五句  生きてなお生き恥さらす霜の朝(博)

   六句   竹馬の友の訃報がとどく(みさ子)

   七句  月蒼く眠れぬ夜に風つよし(登志子)

   八句   砧うつ音かすかに聞こゆ(とみ子)

   九句  我が道をたしかめている秋のくれ(洋子)

   十句   足をひきずりキタキツネ行く(隆)

   十一句 流氷の岬につづく細き尾根(七重)

   十二句  春一番に黄色いショール(弘子)

   十三句 十字切る間もあらずして花吹雪(修三)

   十四句  幽閉されし丹後の味土野(貴代美)

二折

初句  峰々を黒くそめゆく茜雲(糸枝)

   二句   放浪詩人の足取り重く(伸雄)

   三句  母の声脳裏にひびく夏のくれ(和代)

   四句   都にもどる鈍行列車(悟郎)

   五句  そのうちに何とかなるさ春近し(池田弘子)

   六句   最後の女はおまえと決めた(和善)

   七句  化粧する鏡にはずむ白き指(池田弘子)

   八句   菊のかんざし小さく揺れて(純子)

   九句  太鼓橋渡る先には月の宴(隆三)

   十句   神も酔わせる新しき酒(俊平)

   十一句 三代目都会仕込みのキャッチコピー(満里子)

   十二句  太き筆にはたっぷりの墨(純子)

   十三句 憂国の思いきわまる獄舎あと(春雄)

   十四句  にわかに曇る壬生の細道(貴代美)

初句  やせ犬が比叡おろしに歯をむいて(春雄)

   二句   縞の合羽の飛脚が急ぐ(七重)

   三句  嫁取りのうわさはなやぎ木の芽立ち(春雄)

   四句   梅見茶屋にて見初めたなもし(山田順子)

   五句  下駄鳴らし道後温泉春の宵(利枝)

   六句   戦地に散った友の笑顔よ(みどり)

   七句  振り向けば椰子の向こうの昼に月(晴之)

   八句   豪華客船秋のクルーズ(アンリ)

   九句  黄金咲く豊葦原を一めぐり(春雄)

   十句   親子一座は幟をつらね(俊平)

   十一句 大入りを願い手合わす道祖神(美加代)

   十二句  望み聞くやに鶯の声(千鶴子)

   十三句 城跡は昔違わぬ花万朶(由紀江)

   十四句  我は我なり春は春なり(修三)

三折

初句  あかつきの夢を破りし猫の恋(七重)

   二句   初めての文枕に敷きて(慶子)

   三句  海鳴りがお蝶夫人の胸こがす(俊平)

   四句   袖をぬらすや紫陽花の青(修三)

   五句  古の筆跡涼したらし込み(真理子)

   六句   見入る姿に連れの繰り言(莞爾)

   七句  サイコロを振って人生棒に振り(貴代美)

   八句   山の向こうにかりがねのいく(純子)

   九句  うら若き月が残りし狐坂(貴代美)

   十句   松茸ひとつ探しあぐねて(修三)

   十一句 先達のにわかの雨に詫び言葉(二郎)

   十二句  首無地蔵の赤い前掛け(春雄)

   十三句 大津波街さらわれし日暮れ時(隆三)                                                                   

   十四句  想定外に人智も虚し(純子)

初句  はやぶさは七年かけて戻りけり(春雄)

   二句   残念石の見ゆる松原(修三)

   三句  オリーブの葉影に隠る乙女かな(繁治)

   四句   Tシャツ姿の乳首ふくらみ(隆三)

   五句  泣きながらどしゃぶりの中たたずみて(一恵)

   六句   終電あとの新宿の春(隆三)

   七句  七十路の安保の夢におぼろ月(春雄)

 八句   天皇賞に小金つぎ込み(貴代美)

   九句  女どち帰途のおしゃべり賑やかに(由美子)

   十句   セーラー服に川風涼し(千鶴子)

   十一句 見上げれば恋という字に変わる雲(美加代)

   十二句  八百屋お七の黒髪乱れ(由美子)

   十三句 金毘羅の舞台につづく花の道(敏範)

   十四句  遠くかすむは讃岐の富士か(洋)

名残折

初句  春寒に破れマントを探しだし(友利)

   二句   整理整頓掃除の要(孝明)

   三句  書を曝す聖徳太子はらり落ち(英毅)

   四句   誰より君が好きだった人(達代)

   五句  夕暮れのポン・デ・ザールで待ち合わせ(朝子)

   六句   ただ時ばかり過ぎ行きにけり(正雄)

   七句  人も来ぬ人も往かぬの萩の道(隆三)

   八句   秘密の秋におさげの少女(石井順子)

   九句  紅さして初潮の夜の月白し(修三)

   十句   八代つづく大島紬(隆三)

   十一句 お宝は南蛮船の碇です(俊平)

   十二句  ランプともしつ紅茶カステラ(純子)

   十三句 女子会の買い占めている上高地(晋)

   十四句  記念写真はどや顔ばかり(俊平)

初句  こつこつと歩んだ果ての八十年(みさ子)

   二句   幼き妻にみんなとられて(洋子)

   三句  好物の大福隠す場所もなし(とみ子)

   四句   一間の長屋風吹き抜ける(豊子)

   五句  その朝の紀元は二千六百年(紀代子)

   六句   皇居の空に鳥のさえずり(紀子)

   七句  花爛漫行き交う人の美しく(登志子)

   挙句   みちのくの春陽はまた昇る(孝平)

  

句上 高城修三(七)   市木みさ子(二)   上羽利枝(一)    山崎敏範(一)

 竹本俊平(六)   高木登志子(二)   栗生みどり(一)   岡崎 洋(一)

 廣瀬春雄(八)   阿部とみ子(二)   中條晴之(一)    岡市友利(一)

 今枝清實(一)   渡部洋子(二)    アンリ(一)     徳永孝明(一)

 松田弘子(二)   鈴木 隆(一)    山口美加代(二)   上原英毅(一)

 奥山満里子(二)  下石坂七重(三)   大城千鶴子(二)   多田達代(一)

   嶋岡純子(六)   関口糸枝(一)    小堀由紀江(一)   後藤朝子(一)

   細尾隆三(七)   後藤伸雄(一)    三田慶子(一)    飛田正久(一)

   城貴代美(六)   櫻井和代(一)    藤本真理子(一)   柳川 晋(一)

   友永和子(一)   宇田悟郎(一)    黒住莞爾(一)    宮田富子(一)

   石井順子(二)   池田弘子(二)    平井二郎(一)    丸林紀代子(一)

   杉田繁治(二)   林 和善(一)    岡崎一恵(一)    栗原紀子(一)

   石田 博(一)   山田順子(一)    田中由美子(二)   池田孝平(一)

当日は季節外れの台風2号による風雨を避けて、愛宕山ふもとの清滝「ますや」大広間にて天正愛宕百韻連歌の再演劇を催し、それに先立って高城修三による天正愛宕百韻連歌の解説がありました。さらに参加者を対象に光秀発句を使って表八句「ときは今」の巻を興行いたしました。いずれも京都愛宕研究会主宰の行事で、その後の平成愛宕百韻連歌奉納にあたり、初折りと名残折(花の句・挙句のみ)を廣青隴氏に朗詠していただきました。なお、8月4日、高城修三・廣瀬春雄らが愛宕神社にて奉納神事を執り行いました。

 

平成二十三年五月二十八日
表八句「ときは今」の巻
  於 清滝「ますや」


発句  ときは今天が下しる五月哉(光秀)

脇     清滝川に河鹿鳴く声(順子)

第三  筏師の棹のさばきも鮮やかに(宗一)

四句    がんばれ日本若者の背に(春雄)

五句  一斉にスタートしたりロードレース(美加代)

六句    真っ赤な風船屋根を飛び越え(利枝)

七句  息甘き君と落花の昼下がり(こん)

八句    そっと口づけうららかな野辺(貴代美)

この表八句は5月28日の奉納に合わせて清滝「ますや」にて一般の参加者も交えて興行されたものです。発句は天正愛宕百韻連歌の光秀発句を借り、脇起りとしました。



平成愛宕百韻連歌懐紙


         天正愛宕百韻連歌再演劇
                          
             会場風景

表八句興行

廣青氏朗詠

     記念写真