KOBEみなと連歌会

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令和5年十月十五日
半歌仙連歌「めまぐるし」の巻
 於 神戸「KIITO]


発句  めまぐるし行き交う船の秋神戸(和子)
脇     金木犀の匂う異人館(修三)
第三  三日月のフランス窓に引かかりて(建夫)
四句   三島由紀夫は今日も不機嫌(修三)
五句  生き様のとどのつまりを問い返し(清實)
六句   それでもやはり百まで生きる(修三)

初句  天のぼる竜の姿を描き上げ(建夫)
二句   破れ障子に雪の舞う夜(純子)
三句  三味弾けど祝儀少なし越の宿(建夫)
四句   おりんの恋はいつも悲しく(順子)
五句  我が手にて文やることも適わずに(修三)
六句   逢いたき思い闇にふくるる(久仁子)
七句  北の果て望月のぞく鉄格子(建夫)
八句   そぞろ寒夜に父母の顔(利枝)
九句  二十歳まで大変お世話になりました(修三)
十句    うららかな風頬をなでゆく(幸一)
十一句 港町心躍らす花吹雪(光)
挙句    汽笛響きて春は暮れゆく(奈緒子)

句上 友永和子(客・1) 高城修三(宗匠・5) 村上建夫(4) 今枝清實(1) 嶋岡純子(1) 山田順子(1) 原野久仁子(1) 上羽利枝(1) 森幸一(1) 井下光(世話人・1) 井下奈緒美(執筆・1)


令和元年一二月十一日
半歌仙連歌「燗酒や」の巻
 於 こうべ甲南「武庫の郷」資料館


発句   燗酒や破顔一笑武庫の郷(純子)
脇      甲しずめし山の北風(建夫)
第三   今夜またタイガースの勝利見ん(修三)
四句    百面相でひげを剃りおり(由紀江)
五句   昼の月ホストづとめも板につき(貴代美)
六句    シャンパングラス積み上げる秋(純子)

初句   どこからかカマドコオロギ飛んで来て(利枝)
二句    あの日あの時あの娘恋しき(清實)
三句   初デートカーメンキャバレロ聞きし宵(建夫)
四句    恨みつのりし始めなりけり(修三)
五句   新しい母告げられし水曜日(奈緒美)
六句    浜茄子の咲く海辺駆け行く(清實)
七句   足跡のくぼみに月の影すずし(繁治)
八句    アフガンの地に志あり(純子)
九句   酔えばまたカスバの女歌う我(貴代美)
十句    競うがごとく鶯の声(修三)
十一句  夕映えに花爛漫と咲き誇り(文男)
挙句   春のさかりは言うこともなし(順子)

句上 嶋岡純子(客・3) 村上建夫(2) 高城修三(宗匠・3) 小堀由紀江(世話人・1) 城貴代美(2) 上羽利枝(1) 今枝清實(2) 井下奈緒美(1) 杉田繁治(1) 奥村文男(1) 山田順子(執筆・1) 井下光 岡本勝昭 黒住莞爾 白井良典 田中哲哉 森幸一


平成三十年七月十一日
半世吉連歌「百年の」の巻
 於 大阪市中央公会堂


発句   百年の夏を映すや公会堂(清實)
脇      熱き難波の男岩本(建夫)
第三   相場には暴騰暴落常ならん(修三)
四句    野菜農家の嘆きを知るや(文男)
五句   水かぶり腐す西瓜に月細く(和子)
六句    倒れし案山子あお向きのまま(貴代美)
七句   足元に我関せずとキリギリス(純子)
八句    冬に備える蟻の行列(建夫)

初句   少年は炎天の下ふみにじる(修三)
二句    米兵くれしガムチョコレート(清實)
三句   レッテルを集め集めて宝箱(葵)
四句    裏に書かれた恋の思い出(繁治)
五句   付いて来いあんたはいつも独裁者(由紀子)
六句    祖谷の吊り橋後戻りなし(幸一)
七句   ゆらゆらと川面を照らす望の月(千代)
八句    象の一声獣園の秋(貴代美)
九句   昼下がりもみぢ葉散るや檻の内(文男)
十句    心づくしの駅弁三昧(利枝)
十一句  老夫婦青春切符でたのしめり(順子)
十二句   ここは近江路風光る湖(春雄)
十三句  白波のまにまに浮かぶ花筏(奈緒美)  
挙句    明日はいずこに流れ行くやら(哲哉)

句上 今枝清實(客・2) 村上建夫(2) 高城修三(宗匠・2) 奥村文男(2) 友永和子(1) 城貴代美(2) 嶋岡純子(1) 横山葵(1) 杉田繁治(1) 小堀由紀子(世話人・1) 森幸一(1) 岡部千代(1) 上羽利枝(1) 山田順子(執筆・1) 廣瀬春雄(1) 井下奈緒美(1) 田中哲哉(1) 岡本勝昭


平成二十八年七月十三日
半歌仙連歌「静かなり」の巻
  於 相楽園

初表
発句   静かなり梅雨のみどりの相楽園(繁治)
脇      テムズに通ず生田の清水(建夫)
第三   合戦のさなかに喉をうるおして(清實)
四句     ふと見上ぐればいわし雲ゆく(順子)
五句   太郎坊目ざす奇峰に昼の月(貴代美)
六句     天狗のうちわ野分の気配(修三)
初裏
初句   いとこより恋の悩みを告げられて(千代)
二句     したうお方はそのお人なり(修三)
三句   朝川をわたりこがるる胸の内(貴代美)
四句     深みにはまり身は流さるる(建夫)
五句   筑紫より思いをはせる権帥(哲哉)
六句     拝領したる御衣かなしき(修三)
七句   知らぬごと中天に月かがやけり(順子)
八句     皿の栃もち盗みしはたれ(貴代美)
九句   満腹で狸寝入りの一休さん(利枝)
十句     食うて糞して今日もすこやか(清實)
十一句 ああ熊野朝日ににおう花の坂(修三)
挙句    峠に立ちて行く春惜しむ(千代)

句上  杉田繁治(客・1) 村上建夫(2) 今枝清實(2) 山田順子(執筆・2) 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・4) 岡部千代(2) 田中哲哉(1) 上羽利枝(1) 大城千鶴子 岡本勝昭 黒住莞爾 嶋岡純子 友永和子 小堀由紀江(世話人)


平成二十七年七月八日
半歌仙連歌「色褪せぬ」の巻
 於 湊川神社

初表
発句   色褪せぬ七百年や楠青葉(建夫)
脇      木の下蔭に露けしなでしこ(順子)
第三   防人に旅立つ父を見送りて(清實)
四句    多摩川の辺に雁の来鳴きぬ(修三)
五句   月はいで今ぞとばかり輝けり(貴代美)
六句    小町の墓を訪ぬ秋の夜(満里子)
初裏   
初句   灰文字にひそかに愛の言葉ため(葵)
二句    宇治の庵でただ待つばかり(修三)
三句   身を許す許さぬことも罪深し(建夫)
四句    雪しんしんと老いらくの恋(貴代美)
五句   気を付けよ鰥寡孤独の君なれば(文男)
六句    チリ産ワインぐっと飲み干し(純子)
七句   松ヶ枝に悲しと月のさされたり(葵)
八句    夜長も果てぬ思い満つまで(潤)
九句   菊供え凛とならびし嵯峨の塔(満里子)
十句    異国の客は傍若無人(哲哉)
十一句 一同の見上げる顔に花吹雪(利枝)
挙句    戦なき世の春を寿ぐ(千鶴子)

句上 村上建夫(客・2) 山田順子(執筆・1) 今枝清實(1) 高城修三(宗匠・2) 城貴代美(2) 奥山満里子(2) 横山葵(2) 奥村文男(1) 嶋岡純子(1) 久野潤(1) 田中哲哉(1) 上羽利枝(1) 大城千鶴子(1) 岡部千代 黒住莞爾 杉田繁治 飛田久子 廣瀬春雄 山下弘枝 小堀由紀江(世話人) 井下奈緒美(見学) 松岡千佳(見学) 山元佐代子(見学)



平成二十六年七月九日
半歌仙連歌「鬼貫も」の巻
 於 旧石橋家住宅

初表
発句   鬼貫もかくて詠みけむ夏座敷(文男)
脇      遅れ来たりて汗ぬぐう女(修三)
第三   議場では与党野党の入り乱れ(順子)
四句     夜の待合すべてお仲間(建夫)
五句   城の跡ひとり眺める望の月(平)
六句     鹿鳴く声の遠くに聞こゆ(千代)
初裏
初句   辛口の新酒をかわす離れ宿(純子)
二句     人妻の古稀口紅ぬれて(貴代美)
三句   恋多き源内侍になりきりぬ(美加代)
四句     障子あければ降りしきる雪(純子)
五句   過疎の村今は資源になりにけり(文男)
六句     豪州からの客人つどう(建夫)
七句   何なれや月雲間より顔を出し(繁治)
八句     たぬき出できて踊り出す秋(弘子)
九句   ゆるゆるとバブル再燃きざしあり(建夫)
十句     ティファニーで買う春の銀ブラ(貴代美)
十一句 女子二人千鳥ヶ淵で花見して(修三)
挙句    大内からの風あたたかし(建夫)

句上 奥村文男(客・2) 高城修三(宗匠・2) 山田順子(執筆・1) 村上建夫(4) 石平(1) 岡部千代(1) 嶋岡純子(2) 城貴代美(2) 山口美加代(1) 杉田繁治(1) 松田弘子(1) 上羽利枝 大城千鶴子 田中哲哉 小堀由紀江(世話人)


平成二十五年十二月十一日〜二十六年
伊呂波冠字長歌行連歌
 於 西宮プレラ

初折表
発句   いろいろの善行悪行年の暮れ(高城修三)
脇      ロックバンドも混じる紅白(竹本俊平)
第三   はらからは海の向こうで集まりて(城貴代美)
四句    にこりともせぬゴッドファーザー(小堀由紀江)
五句   誉められて心おののくナンバーツー(修三)
六句    へらぶな竿は金銀蒔絵(貴代美)
七句   戸をぴしゃり月をも入れぬ品定め(俊平)
八句    小さき疵は夜寒に捨てん(由紀江)
初折裏
初句   凛として秋薪能舞いおさむ(今枝清實)
ニ句    抜き差しならぬ身にありてなお(田中哲哉)
三句   ルビーリングリボンで飾り逢いに行く(山田順子)
四句    をさない恋は背伸びばかりで(清實)
五句   猥談を今じゃさらりとかわす夏(貴代美)
六句    蚊やりの煙縁側を這い(由紀江)
七句   夜もすがら中華思想を難じたり(修三)
八句    棚の布袋の居心地悪し(黒住莞爾)
九句   連鐘の行き着く先に昼の月(由紀江)
十句    それと掉さす大川の秋(貴代美)
十一句  釣り人の袖にびっしりいのこずち(上羽利枝)
十二句   寝転んで待つ周の宰相(哲哉)
十三句  納戸には兵法の書が並びたり(貴代美)
十四句   ラジオの声は終戦伝え(利枝)
十五句  向き変り自虐史観の花盛り(莞爾)
十六句   有為転変はこの世のならい(村上建夫)
名残表
初句   遺品分け春物ドレスを奪い合う(順子)
二句    能登は雪解の伝う軒先(貴代美)
三句   奥の間に等伯銘のかすむ松(建夫)
四句    くのいち潜むうなじの白し(貴代美)
五句   やや寒に肌あたためあう主もなし(修三)
六句    回り道して夜長曽根崎(順子)
七句   権謀も術数もまた霧の中(由紀江)
八句    不逞の輩は泳ぎが上手(莞爾)
九句   越えて行く波のかなたに浄土あり(修三)
十句    縁も強し補陀落観音(貴代美)
十一句 手を合わせ涙こぼるる冬の朝(修三)
十二句  愛隣地区に豆腐の味噌汁(貴代美)
十三句 酒盛りもあちらこちらで始まりて(利枝)
十四句  きりぎりすの音いつしか止みぬ(順子)
十五句 遊蕩の子を思いわび月青し(清實)
十六句  メモを残して三廻りの秋(利枝)
名残裏
初句   密命で安土城下におもむけり(莞爾)
二句    知るや知らずや光秀謀反(哲哉)
三句   酔いて聞く弁士の語り梅雨さなか(順子)
四句    冷やし瓜など運ばれて来て(由紀江)
五句   門燈の暗きに土橋かかりたり(貴代美)
六句    瀬音ゆかしき宮司の館(利枝)
七句   すいすいと花筏分け池の主(由紀江)
挙句    今日の都は春盛りなり(松田弘子)

句上 高城修三(宗匠・6) 竹本俊平(2) 城貴代美(10) 小堀由紀江(7) 今枝清實(3) 田中哲哉(3) 山田順子(執筆・5) 黒住莞爾(4) 上羽利枝(5) 村上建夫(2) 松田弘子(1)


平成二十四年十二月十二日
半歌仙連歌「何にこの」の巻
  於 義仲寺無名庵

初表
発句   何にこの師走の市に行く烏(芭蕉)
脇      しき葉紅葉にたたずむ翁(嶋岡純子)
三句   真昼どき時空の知れぬ心地して(修三)
四句    北朝鮮のミサイルいずこ(繁治)
五句   澄みわたる月に微塵のうれいあり(由紀江)
六句    やるせなき身に萩のこぼるる(満里子)
初裏
初句   嫁ぎゆく君がうなじのしるき秋(清實)
二句    浮世のことは色恋と金(春雄)
三句   凾まくら二つ並べて京の宿(貴代美)
四句    ただしんしんと雪は降りつむ(修三)
五句   酒ありて久闊を叙す友もあり(莞爾)
六句    筝と合わせて須磨の浦風(絢子)
七句   白金の月を映して夏の海(七重)
八句    出撃のとき明日に迫りぬ(清實)
九句   声高に神の御前で発句よみ(貴代美) 
十句    執筆の筆に春光のさす(嶋岡純子)
十一句 大川をゆらゆらのぼる花見船(美加代)
挙句    浪速の空にかすみたなびく(順子)

句上 芭蕉(1) 嶋岡純子(2) 高城修三(宗匠・2) 杉田繁治(1) 小堀由紀江(世話人・1) 奥山満里子(1) 今枝清實(2) 廣瀬春雄(1) 城貴代美(2) 黒住莞爾(1) 中井絢子(1) 下石坂七重(1) 山口美加代(1) 山田順子(執筆・1) 松田弘子 伊東純子 上羽利枝 岡部千代 田中哲哉 田中由美子 谷川まさ子 

師走の義仲寺無名庵にて、芭蕉の発句をいただいて脇起りで半歌仙をまきました。境内の義仲・芭蕉・保田與重郎の墓や句碑を拝したあと、義仲寺執事の永井輝雄氏から義仲寺の縁起などをおうかがいして連歌興行となりました。



平成二十三年十二月十四日
半歌仙連歌「六甲の」の巻
  於 夙水苑

初表
発句   六甲の空澄み渡る師走かな(春雄)
脇      ジングルベルより討ち入り太鼓(千代)
第三   孫と爺テレビのリモコン取り合いて(美加代)
四句    強情っぱりは婆さん譲りか(隆三)
五句   月の背戸うらめしげなる子守唄(由紀江)
六句    廚からくるふかし芋の香(千代)
初裏
初句   三度目のダイエットする秋の暮れ(順子)
二句    斉藤さんちこずえちゃんの恋(清實)
三句   ままごとの夫婦気取りの昼下がり(繁治)
四句    トイプードルはなぜか不機嫌(修三)
五句   手づくりのレースの服で飾り立て(貴代美)
六句    ご主人様お帰りなさいませ(哲哉)
七句   早々と支度整う月の宴(隆三)
八句    お椀に籠る鈴虫の声(利枝)
九句   母の忌に集う座敷のしずみいて(由美子)
十句    はしゃぐ子供ら何をか知らん(莞爾)
十一句 あの花を取ってくれろと無理を言い(隆三)
挙句    日は傾きて城山の春(和子)

句上 廣瀬春雄(客・1) 岡部千代(2) 山口美加代(1) 細尾隆三(3) 小堀由紀江(世話人・1) 山田順子(執筆・1) 今枝清實(1)      杉田繁治(1) 城貴代美(1) 田中哲哉(1) 田中由美子(1) 上羽利枝(1) 黒住莞爾(1) 友永和子(1)


平成二十二年十二月八日
半歌仙連歌「ユーチューブ」の巻
  於 グッゲンハイム邸

初表
発句   ユーチューブ騒ぎしずまり師走かな(繁治)
脇      小春日和の塩屋坂町(絢子)
第三   藻刈り舟浮かべる海のきらめきて(美加代)
四句     遠き記憶をおこす匂いよ(由紀江)
五句   もみを焼く棚田の上の白い月(由美子)
六句     ひとっ風呂浴び新酒いただく(隆三)
初裏
初句   くつわむし鈴虫の声きりぎりす(修三)
二句     明かり灯さず今宵二人で(順子)
三句   春団治舞台の袖でささやけり(純子)
四句     お茶子にたくす内緒の手紙(隆三)
五句   扇風機ただひたすらに回りいて(貴代美)
六句     変わる浮世に背を向けて生き(由紀江)
七句   君知るや泊瀬の山の後の月(修三)
八句     もみぢのかげの観音参り(清實)
九句   合わす手にひとひら落ちる銀杏の葉(千鶴子)
十句     父母のかお浮かんでは消え(由美子)
十一句 花だより思案六法この一句(隆三)
挙句     うつらうつらと今日も暮れゆく(利枝)

句上  杉田繁治(客・1) 中井絢子(1) 山口美加代(1) 小堀由紀江(世話人・2) 田中由美子(2) 細尾隆三(3) 
     高城修三(宗匠・2) 山田順子(執筆・1) 嶋岡純子(1) 城貴代美(1) 今枝清實(1) 大城千鶴子(1) 
     上羽利枝(1) 友永和子 石田博 田中哲哉 黒住莞爾 

神戸塩屋に残されたコロニアルスタイルの旧グッゲンハイム邸にて、小春日和の大阪湾を見下ろしながら楽しい連歌会となりました。
     

グッゲンハイム邸前にて

会席風景

平成二十二年二月十日満尾
半歌仙「春隣」の巻
 於 夙水苑


発句   よちよちと歩きし吾子や春隣(小堀由紀江)

脇      握りたる手に節分の豆(岡部千代)

第三   福呼ぶか鬼追い出すか迷いいて(山田順子)

四句     財布に入れる五円一枚(黒部美栄子)

五句   鈴鳴らし遍路去り行く朧月(田中由美子)

六句     しだれ柳も夜露に濡れて(順子)


初句   かにかくに祇園の歌碑や切通し(美栄子)

二句     朴歯の下駄の君の後追う(中井洵子)

三句   いいなづけ捨てて今宵は五月闇(今枝清實)

四句     くちなし匂うほのかに強く(順子)

五句   ふるさとの廃屋哀し季のめぐり(清實)

六句     ちちろのため息島の夕暮れ(上羽利枝)

七句   傾きて案山子横目で月を見る(由紀江)

八句     ロイド眼鏡を通る秋風(城貴代美)

九句   人生の喜怒哀楽を演じ分け(由紀江)

十句     傘寿の春へ駆けつける弟子(美栄子)

十一句 花の下薄茶点前も軽やかに(美加代)

挙句     緋の毛氈に蝶のとまどう(順子)

句上  小堀由紀江(3) 岡部千代(1) 山田順子(4) 黒部美栄子(3) 田中由美子(1) 中井洵子(1) 今枝清實(2) 上羽利枝(1) 城貴代美(1) 山口美加代(1) 高城修三(宗匠)


平成二十一年十月三十一日
半歌仙連歌「源氏寺」の巻
  於 現光寺


発句   源氏寺式部の実ほろとこぼしけり(美喜子)

脇       秋澄みわたり心地よき午後(弘子)

第三   琴を置き名残の月を待ちわびて(貴代美)

四句     老いたる猫は知らぬ顔なり(修三)

五句   漱石の原稿用紙白きまま(喜美子)

六句     子規はいずこやあかとき遠し(絢子)


初句   深山にも初音を聞きに分け入らん(清實)

二句     槿につなぐ公達の馬(由美子)

三句   姫御前の返歌(うた)待ちかねて門に立つ(大城)

四句     榻に掛けたる恋のこごえる(修三)

五句   越し方の轍斜めに日当たりて(貴代美)

六句     部長どまりで父は定年(清實)

七句   老い二人燗熱うして月の夜(由起子)

八句     銀杏の落つ静かなる音(修三)

九句   秋さ中海岸通の白き街(貴代美)

十句     カフェテラスにてウィンナーコーヒー(美加代)

十一句  舞い降りて花の一枚(ひとひら)皿の上(哲哉)

挙句     独りで過ごす春の夕暮れ(順子)

句上

彦坂喜美子(客・2) 松田弘子(1) 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・3) 中井絢子(1) 今枝清 實(2) 大城千鶴子(1) 小堀由起子(世話人・1) 山口美加代(1) 田中哲哉(1) 山田順子(     執筆・1) 栗田冨喜子 田中由美子 上羽利枝 

素晴らしい秋空にめぐまれた秋さ中、須磨の浦に近い現光寺(源氏寺)にて、歌人の彦坂喜美子氏を客にお迎えしての連歌会となりました。変化に満ちた味わい深い好句 が数多く出て、いつにも増して楽しい連歌会となりました。 

芭蕉句碑の前にて

       会席風景


平成二十一年四月四日
半歌仙連歌「春愁や」の巻
  於 夙水苑

表発句   春愁や聖テレジアの鐘の音(清實)

  脇      この字いの字に見えるイカナゴ(由紀江)

  第三  宵桜身上つぶす覚悟して(千代)

  四句    白鹿毛を追う朝な夕なに(美加代)

  五句  ロッキーの山並みに月傾けり(絢子)

  六句    亡き人の声薄ゆらして(真理子)

裏初句   業平はあなめあなめと聞き覚ゆ(修三)

  二句    しょうざんの里篝火の下(純子)

  三句  言い訳を考えながら寄り添って(順子)

  四句    送り送られまた交差点(美加代)

  五句  握る手も思いも解けぬ二十歳なり(修三)

  六句    安保反対デモ隊の中(絢子)

  七句  並びたる装甲車の上望の月(順子)

  八句    記憶薄れてチチロ虫鳴く(隆三)

  九句  山国の真っ赤な色の吊るし柿(貴代美)

  十句    ままごと遊びの友はいずこぞ(千鶴子)

  十一句 君知るや魂をのせ行く花筏(真理子)

  挙句    岸辺に生うる菫一群れ(弘子)

句上 今枝清實(客・1) 小堀由紀江(世話人・1) 岡部千代(1) 山口美加代(2) 井上絢子(2) 藤     本真理子(2) 高城修三(宗匠・2) 嶋岡純子(1) 山田順子(2) 細尾隆三(1) 城貴代美(1)    大城千鶴子(1) 松田弘子(1) 赤松真理子 村尾恵美 今村千賀子 田中哲哉 田中由美子     黒部美栄子 

神戸震災に遭遇した夙川の篤志家が西宮市に寄贈した夙水苑で、活気のある連歌会となりました。今枝氏の発句は、阪急夙川駅の近くにある聖テレジア教会(遠藤周作なじみの教会であり、日本人の手になる昭和初期の西洋建築としても知られる)を、いささか恋の思いをにじませて詠んでいただきました。小堀氏の脇は、発句に応えて地元名産のイカナゴに恋をそっと味付けしました。松田氏の挙句は夙水苑の庭に一群咲いていた菫を詠み込みました。連歌会のあと、春雨の中の夙川河畔の桜をめでたあと、駅前の「はなぶさ」にて懇親会をもちました。

夙水苑での会席風景

      

   記念写真


平成二十年十一月三十日
半歌仙連歌「風は空」の巻
  於 虚子記念文学館

表発句   風は空虚子の谺の枯野哉(こん)

 脇       芦屋の川の冬の夕暮れ(修三)

 第三   鴨の来てインフルエンザいかならん(真理子)

 四句     今日の仕事にあぶれし男(貴代美)

 五句   正座して読書三昧昼の月(純子)

 六句     金木犀の香の流れ来て(攝子)

裏初句  再入院帰れぬ庭にちちろ鳴く(純子)

 二句     癌病棟の翁と媼(鬼猿)

 三句   仲間から消える二人は目の合図(由紀子)

 四句     逢引の場はいつもの茶店(千鶴子)

 五句   沈黙に紅き接吻盗みたり(貴代美)

 六句     モーツァルトの調べ流れて(千賀子)

 七句   満つる月酒盃に取りて一人飲む(幽泉)

 八句     もみぢの里の惟喬の親王(清實)

 九句   夜もすがら椎の実落つる音のする(絢子)

 十句     明日の旅路は東か西か(千鶴子)

 十一句 満開の花の下にて昼寝する(攝子)

 挙句     吉野の春のつかの間の夢(美恵)   

句上  今野和代(客・1) 高城修三(宗匠・1) 藤本真理子(1) 城貴代美(2) 嶋岡純子(2) 古原攝     子(2) 山上鬼猿(1) 小堀由紀子(世話人・1) 大城千鶴子(2) 今村千賀子(1) 前田幽泉(     1) 今枝清實(1) 中井絢子(執筆・1) 村尾美恵(1) 向田美恵子

師の正岡子規が「文学に非ず」と否定した連歌(俳諧)の擁護者で、『連句論』を書き、また『俳諧師』という小説も書いた高浜虚子ゆかりの「虚子記念文学館」にての興行となりました。発句は詩人の今野和代氏でした。

虚子記念文学館

                 会席風景

       記念撮影

 


平成二十年七月二日
半歌仙連歌「四葩かな」の巻
  於 神戸北野天満神社

表発句   深き傷滲(にじ)みて青き四葩(よひら)かな(真理子)

  脇     梅雨晴れに発つ神戸ハーバー(貴代美)

  第三  あいさつはちょっと帽子に手をかけて(由紀江)

  四句    反省猿は黒枠の中(貴代美)

  五句  片割れの月白々と冬野原(雪子)

  六句    懐炉を抱いて山頭火行く(笑吾)

裏初句   自由律わが人生も付句なり(修三)

  二句    妻と向かいてめざし食う朝(由紀江)

  三句  春や恋男はすぐに逃げたがる(貴代美)

  四句    しじまを破る恋猫の声(季也)

  五句  神が吹く笛おそろしや浜の風(真理子)

  六句    虚しく落つる桐の一枚(ひら)(修三)

  七句  城を背に遠吠えしたき今日の月(由紀江)

  八句    欠けたる茶碗にどぶろく酌んで(雪子)

  九句  片膝を立てて真紅のたすき掛け(貴代美)

  十句    がまの油が売れる春の日(絢子)

  十一句 筑波山雲にみまがう花盛り(清實)

  挙句    人の微笑(えまい)はたのしかりけり(真理子)

  句上
  藤本真理子(客・3) 城貴代美(世話人・4) 小堀由紀江(世話人・3) 武藤雪子(2) 高城修三(宗  匠・2) 野村笑吾(1) 弓削季也(1) 中井絢子(執筆・1) 今枝清實(1) 松田弘子 奥山満里子   向田美恵子 今村千賀子 田中由美子 

第四回のKOBEみなと連歌会は遠くに神戸港、間近に北野異人館街を見下ろす北野天満神社の拝殿で、心地よい梅雨の晴れ間の海風を受けながらの連歌会となりました。客に詩人の藤本真理子氏をお迎えし、四葩(あじさい)の不思議な色彩を詠んだ発句をいただき、すがすがしい連歌会となりました。

北野天満神社拝殿にて


平成二十年三月二十六日
半歌仙連歌「景季」の巻
   於 神戸女子大


発句   景季の紅梅散らし桜かな(弘子)

脇      生田の森のうららけき午後(貴代美)

第三   おぼろなる古地図の町に迷い来て(由紀江)

四句     声高に行く外つ国の人(千賀子)

五句   凪の海見つめる三つの影法師(季也)

六句     子はかすがいと振り向けば月(満里子)


初句   篠笛の細き音聞こゆ秋のくれ(郁子)

二句     ともし火消して虫愛ずる君(由)

三句   くちびるを白きうなじにそっと当て(貴)

四句     ワタシ的にはイケメンがいい(由)

五句   捨てた恋捨てられた恋いろいろで(修三)

六句     どうやらこうやら年の瀬迎え(弘)

七句   老いのしわ照らし出したる寒の月(季也)

八句     赤提灯のふろふき大根(絢子

九句   道を説く父の拳の震えいて(雪子)

十句     母の涙は雛壇の前(由美子)

十一句 毛氈に花の舞い散る祝い膳(弘)

挙句     明石の浦にかすみたなびく(修)

句上
松田弘子(客・3) 城貴代美(世話人・2) 小堀由紀江(3) 今村千賀子(1) 弓削季也(2) 奥山満里子(1) 陳郁子(1) 高城修三(宗匠・2) 中井絢子(執筆・1)  武藤雪子(1) 田中由美子(1) 井島鈴子 今北のりこ 小林礼子 中川庸子 井上啓子(世話人) 古原攝子(世話人) 石田博

生田神社の桜もちらほらし始めた神戸にてKOBEみなと連歌会を開催しました。京都のきらら連歌会から三名の参加をえて、松田弘子さんの発句に始まり、面白い展開となりました。

 


                   

平成十九年十二月二日

半歌仙連歌「谷崎松」の巻

  於 谷崎潤一郎記念館

発句  小春日の谷崎松にやどりけり(博)

脇    姉さんかぶりで餅つき手返し(裕子)

第三  三毛猫は天井裏であくびして(修三)

四句   琴の音響く長き秋の夜(幸子)

五句  幾杯も月の光をのみほせり(雪子)

六句   萩散るころの昔の女(隆三)

初句  後れ毛のうなじつややか京美人(摂子)

二句   背中のうそや君帰す朝(こん)

三句  ためいきの吐く息白くたちきえる(博)

四句   はずれ馬券をまける大空(雪)

五句  転落のブルース唄う日曜日(こん)

六句   流れ流れて海峡越えて(弘子)

七句  満月に夜店の人は黒き眼帯(こん)

八句   トウモロコシの匂いなつかし(美恵)

九句  啄木の声がしたよな秋の雲(こん)

十句   上野の駅で聞く国なまり(弘)

十一句 花前線故郷の方へ攻め上る(穂波)

挙句   蓮華たんぽぽままごと遊び(絢子)

句上

石田博(客・2) 今野和代(4) 松田弘子(2) 武藤雪子(2) 高城修三(宗匠・1) 西谷裕子(1) 平井幸子(1) 細尾隆三(1) 古原攝子(1) 村尾美恵(世話人・1) 松川穂波(1) 中井絢子(執筆・1) 井上啓子 森八重子 今村千賀子 


連歌会席

             谷崎潤一郎記念館庭園にて

芦屋の谷崎潤一郎記念館にて客に陶芸家の石田博氏をお迎えし、KOBEみなと連歌会を興行しました。この一年は京都の石村亭、神戸の倚松庵と谷崎ゆかりの地で三度の連歌会となりました。今回は秀句賞として今野和代氏が選ばれ、大津絵の酒を贈られました。会のあと、夕暮れの芦屋の街をあるいて、JR駅前の大地にて年忘れの懇親会となりました。

平成十九年六月十七日                                           

半歌仙連歌「濃緑や」の巻

   於 倚松庵

  

発句  濃緑や浴びて坂ゆく子らがいる(健一)

脇     倚松庵にて連歌する夏(清實)

第三  風さやか四人姉妹の着飾りて(純子)

四句    薄のかんざしほろ酔い加減(貴代美)

五句  蹲の指にたゆとう居待月(雪子)

六句    小さき庭に鈴虫の声(修三)

初句  父を立て帝玉座を降りにけり(弘子)

二句    やつれし面は亡き母に似て(清實)

三句  火の中に八百屋お七の乱れ髪(千賀子)

四句    一目逢いたや庄之助様(弘子)

五句  駆け寄りて抱き寄せられる春の宵(季也)

六句    馬酔木の香るささやきの道(雪子)

七句  憂い来てふりさけ見れば望の月(修三)

八句    ぱりんと寒き仙台平野(こん)

九句  鷹匠の鍛える技の光る朝(清實)

十句    かにさぼてんを日向に出しぬ(千賀子)

十一句 花前線今日はどこまで行くのやら(季也)

挙句    フランス窓に春のうららか(美恵)

句上

倉橋健一(客・1) 今枝清實(3) 高城修三(宗匠・2) 武藤雪子(2) 松田弘子(2) 今村千賀子(2) 弓削季也(2) 嶋岡純子(執筆・1) 今野和代(1) 城貴代美(1) 村尾美恵(世話人・1) 池田孝平 池田良平 牧田栄子 亀治中吉男 城山義孝 伊藤たかし 黒川啓子

戦前、谷崎潤一郎が住み、「細雪」執筆の場ともなった倚松庵にて、詩人の倉橋健一氏を客にお招きし、第一回KOBEみなと連歌会を興行しました。神戸はすでに真夏の気配でしたが、心地よい海風が入ってくる一階応接間で半歌仙を巻きました。

書斎での連歌風景

               連歌会後に庭園にて