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きらら連歌会・興行記録 (平成十八年六月をもって京カル連歌会を改めました)



平成二十七年七月二十五日〜二十八年
源氏国名歌仙連歌
 於 京都カルチャーセンター

初表
発句   東屋や夏池の中影二つ(智子)
脇      親亀子亀むつまじき午後(貴代美)
第三   北嵯峨野横笛の音の聞こえきて(満里子)
四句     蓑着て落ちる滝口の武士(順子)
五句   まぼろしかはたまた夢か今日の月(貴代美)
六句     七十三歳河内の花野(順子)
初裏
初句   永遠の乙女であらん恋の秋(貴代美)
二句     はるけき君のいよよしのばる(七重)
三句   澪標心つくせど舟ゆかず(純子)
四句     かぐの木の実の成るという島(七重)
五句   尼ヶ辻薄雲流る垂仁陵(正子)
六句     大和伽藍をなでる鐘の音(葵)
七句   月いずこ御法の道を我ゆかん(春雄)
八句     越後荒海春まだ遠し(七重)
九句   須磨の浦北前船の急ぎけり(正子)
十句     東風に尋ねんかいなき身の上(満里子)
十一句  舞い歌う若かりし日の花の宴(智子)
十二句    丈の短きすおう絵羽織(満里子)
名残表
初句   椎が本母と写真に並んだ日(純子)
二句     指名手配の御身はいずこ(春雄)
三句   蛍の夜契りの酒の香り立ち(純子)
四句     薩摩切子に熱き唇(貴代美)
五句   宿り木とならぬ決意も裏切られ(純子)
六句     体の中を秋風吹きぬ(七重)
七句   夜明かしに熟柿落ちるや板庇(俊平)
八句     桔梗そなえて丹後の孤独(七重)
九句   何気なく仰いだ空に茜雲(正子)
十句     上野介痛む傷口(純子)
十一句 松風の緑にすずしき夕べ月(貴代美)
十二句   近江の月に物語編む(七重)
名残裏
初句   淡路の門夢の浮橋波枕(葵)
二句     母さま恋しあわれやおつる(七重)
三句   手習の筆を休めて口ずさみ(貴代美)
四句     藍の美し伊勢の型染(満里子)
五句   身を寄せし花散る里の夕まぐれ(春雄)
挙句     棕櫚の箒を使う春庭(貴代美)

句上 高城修三(宗匠) 石井智子(2) 城貴代美(7) 奥山満里子(4) 石井順子(2) 下石坂七重(7) 嶋岡純子(5) 前田正子( 3) 横山葵(2) 廣瀬春雄(3) 竹本俊平(1)


平成二十六年十月十八日
半歌仙連歌「秋をわび」の巻
 於 落柿舎次庵



発句    秋をわび亭主いますと蓑に笠(水澄子)
脇       扉を叩く満月の夜(平)
第三    独り寝の花野の果ての夢さめて(こん)
四句      伊吹山麓風ばかりなり(貴代美)
五句    三成の野心埋もるる関ヶ原(保)
六句      夏草の中あそぶわらわべ(淳之介)
裏     
初句    気いつけやそこにゃデングの蚊がおるぞ(浩)
二句      失楽園を読みふけるとき(貴代美)
三句    ちんちらは欠伸をひとつ昼下がり(善帆)
四句      炬燵の中でからませる足(純子)
五句    ウィンクは思わぬ方より突き刺さり(真理子)
六句      光悦垣に揺れる紅萩(貴代美)
七句    雲間より知らぬ姿の後の月(修三)
八句      秋の連歌に孕み句つくる(俊平)
九句    山里の五右衛門風呂にひたりつつ(貴代美)
十句      春一番の一人ハミング(静香)
十一句  花に酔い酒に酔うてのそぞろ道(七重)
挙句      恵みの雨か低きつばくろ(満里子)

句上 岩佐水澄子(客・1) 石平(1) 今野和代・こん(1) 城貴代美(4) 河内保(1) 竹内淳之介(1) 府川浩(1) 小林善帆(1) 嶋岡純子(1) 藤本真理子(1) 高城修三(宗匠・1) 竹本俊平(1) 真鍋静香(1) 下石坂七重(世話人・1) 奥山満里子(執筆・1) 杉田繁治 村上建夫 石井順子 廣瀬春雄(世話人) 


平成二十五年十月二十七日
半歌仙連歌「豪雨にも」の巻
  於 落柿舎次庵



発句    豪雨にも耐えて柿の木実を成しぬ(浩)
脇       去来の墓に飛び交うあかね(建夫)
第三    後ろから虫取り網のわらべ来て(智子)
四句      絣のすその背丈に長き(俊平)
五句    泣いている肩におぼろの月背負い(修三)
六句      娘と春のヴァージンロード(浩)

初句    スイートピー抱えて婿はプロポーズ(清實)
二句      スカイツリーの展望台で(順子)
三句    神の目で見下ろす世界事もなし(真理子)
四句      地球の軸は傾いている(俊平)
五句    わが日本夏の暑さは格別で(修三)
六句      地産地消の食べ物うまし(久子)
七句    芋そなえ酒をくみつつ月を待つ(七重)
八句      小庭の隅で鈴虫が鳴く(繁治)
九句    なつかしき京都中京宵の口(和子)
十句      ただしんしんと雪の降り積む(修三)
十一句  白き床血ほとばしる花の乱(真理子)
挙句      山並み遠く春陽うららに(春雄)

句上 府川浩(客・2) 村上建夫(1) 石井智子(1) 竹本俊平(2) 高城修三(宗匠・3) 今枝清實(1) 石井順子(1) 飛田久子(1) 下石坂七重(世話人・1) 杉田繁治(1) 友永和子(1) 藤本真理子(1) 廣瀬春雄(世話人・1) 奥山満里子(執筆) 飯田祐子 奥村文男 飛田正雄 




平成二十四年十月二十日
半歌仙連歌「嵯峨野かな」の巻
  於 落柿舎次庵


 表
 発句    木犀のかおりただよう嵯峨野かな(一冽)
 脇        稔り迎える小倉の小豆(弘子)
 第三    たすきがけ母は朝餉の湯気立てて(俊平)
 四句      父は不乱に新聞見入る(修三)
 五句    知らぬ間に臨床ありしiPS(浩)
 六句      凍てつくようなアメリカの月(建夫)
 裏
 初句    サキソフォンジャズの中にも悲しかり(真理子)
 二句      洪水のあと帰らぬあなた(順子)
 三句    遺児二人そろそろ恋を知り初めし(貴代美)
 四句      三社祭の囃子にぎやか(久子)
 五句    不機嫌にねそべる猫が首もたげ(七重)
 六句      わしのなわばりどやつが侵す(建夫)
 七句    尖閣の島くっきりと照らす月(久子)
 八句      テレビを消して虫の音を聞く(由美子)
 九句    あぐらかき一人飲み干す濁り酒(貴代美)
 十句      結跏趺坐ぞと婆笑みにけり(真理子)
 十一句  斑鳩の御仏飾る花吹雪(浩)
 挙句      安穏なるや春の夕暮れ(満里子)

 句上  
佐古一冽(客・1) 松田弘子(1) 竹本俊平(1) 高城修三(宗匠・1) 府川浩(2) 村上建夫(2) 藤本真理子(2) 石井順子(1) 城喜代美(2) 飛田久子(2) 下石坂七重(世話人・1) 田中由美子(1) 奥山満里子(執筆・1) 中條晴之 後藤朝子 飛田正雄 田中哲哉 杉田繁治 友永和子 前田正子 廣瀬春雄(世話人)





平成22年10月23日
半歌仙連歌「光秀も」の巻
 於 楽々荘


発句   光秀も紹巴もつどい紅葉かな(貴代美)
脇      天守そびえる坂本の秋(修三)
第三   帆には風月に送られ帰り来て(俊平)
四句     三年ぶりに懐かしき顔(隆三)
五句   大晦日歌合戦のトリをとる(俊平)
六句     何が何でも星野哲郎(博)

初句   ふところに匕首呑んで夏の朝(修三)
二句     篠突く雨に足元乱れ(俊平)
三句   こいさんの声聞き流す法善寺(繁治)
四句     うれしはずかし恋し憎らし(修三)
五句   六十路超え慈善事業をひたすらに(博)
六句     秋の夜長を本読み聞かせ(万貴子)
七句   寝入る子の布団の上を照らす月(七重)
八句     すさまじきは狼の声(繁治)
九句   息ころし丸太の小屋に銃かまえ(弘子)
十句     皮のジャンパー父親譲り(俊平)
十一句 過ぎし日の朝日に匂う桜花(春雄)
挙句     愛宕の山に霞たなびく(満里子)

句上 城貴代美(1) 高城修三(宗匠・3) 竹本俊平(執筆・4) 細尾隆三(1) 石田博(2) 杉田繁治(2) 岡本万貴子(1) 下石坂七重(1) 松田弘子(1) 廣瀬春雄(1) 奥山満里子(1) 今野和代

鮮やかな紅葉にうもれた亀岡城の大本教万祥殿にて明智光秀発句の愛宕百韻連歌再演劇を終えた後、楽々荘にて半歌仙を巻きました。



平成二十二年四月二十四日満尾
半歌仙連歌「おだやかな」の巻                                               
 於 京都新聞カルチャーセンター

表                                                               
発句   おだやかな二百二十日や京の町(隆三)

脇      虫売りの背にベンガラ格子(満里子)

第三   藍色の半纏月を染め抜いて(弘子)

四句     唐傘さしつ橋上の別れ(順子)

五句   東海道上り下りと急ぐ馬子(隆三)

六句     版画あつめしガレのアトリエ(純子)

裏                                                               
初句   美しき香水瓶のふたをあけ(七重)

二句     指輪はずせば胸の高鳴り(純)

三句   一群のトリカブト枯る裏の山(満)

四句     色即是空何を教えん(順)

五句   JAL株を紙飛行機にして飛ばす(純)

六句     水平線に落日燃える(俊平)

七句   帰路につくミラーの中で月眠り(千枝子)

八句     「かぐや」を託し咲く曼珠沙華(春雄)

九句   はるかなる三輪山を背に蝗跳ね(純)

十句     がたんごとんと二両連結(七)

十一句 花吹雪子供の国はにぎやかに(貴代美)

挙句     うすくれないの今日のうららか(春和)

句上 細尾隆三(2) 奥山満里子(2) 松田弘子(1) 石井順子(2) 嶋岡純子(3) 下石坂七重(2) 竹本俊平(1) 石田千枝子(1) 廣瀬春雄(1) 城貴代美(1) 小山春和(1) 高城修三(宗匠)   


平成二十二年四月四日
歌仙連歌「目を閉じて」の巻
   於 宇多野ユースホステル


初表
発句   目を閉じて聞き入る花のうたのかな(萌)
脇       ここにおわすかかの桜守(隆三)
第三   春の宵都踊りに集い来て(万貴子)
四句     楽焼の皿彩る和菓子(貴代美)
五句   白髪の老舗の女将後の月(純子)
六句     秋草模様きりりとしめて(弘子)

初句   ぼんやりと虫の音を聞く夕まぐれ(修三)
二句     大君想う薫の大将(清實)
三句   薄衣に書かれし文のあやにくし(万)
四句     蝶が止まりて我に帰りぬ(博)
五句   鞆の浦春もうつつの龍馬かな(万)
六句     いいだこもらい酒買いに行く(隆)
七句   よき時を朧の月と酌み交わす(萌)
八句     隣で猫が香箱すわり(修)
九句   婆さまが昔語りの囲炉裏端(清)
十句     せんじ薬で喉うるおして(笑吾)
十一句 闇深く線香花火のひんやりと(九紀子)
挙句     裏木戸の陰きりぎりす鳴く(繁治)

句上  永田萌(客・2) 細尾隆三(2) 岡本万貴子(3) 城貴代美(1) 嶋岡純子(1) 松田弘子(1) 高城修三(宗匠・2) 今枝清實(2) 石田博(1) 野村笑吾(1) 新井九紀子(1) 杉田繁治(1) 石田千枝子 奥山満里子(執筆) 栗田冨喜子 下石坂七重 田野陽子 廣瀬春雄 


平成二十二年四月四日
送別歌仙連歌「友送る」の巻
   於 宇多野ユースホステル


初表
発句   友送る苑あでやかに桜かな(修三)
脇      広沢池畔春のさざなみ(笑吾)
第三   騒ぎ立つ鴨の大群旅立ちて(隆三)
四句     鉄砲撃ちは思わずしさる(俊平)
五句   近江から若狭に抜ける山の月(隆)
六句     鯖街道にすだく虫の音(満里子)
初裏
初句   新しき草鞋のひもに露しとど(俊)
二句     讃岐金比羅奥の院前(修)
三句   胸さわぐ腰の根付を握り締め(春雄)
四句     そでを引きます飯盛女(俊)
五句   快楽の地獄極楽朝帰り(清實)
六句     寒月冴えてくさめの一つ(俊)
七句   だれやらん褒める噂を撒き散らす(繁治)
八句     よいしょに乗って思わぬ散財(七重)
九句   江戸っ子だ神田祭だ俺大将(俊)
十句     モンゴル生れで神輿をかつぐ(笑)
十一句 追いかける花盗っ人に恋をして(隆)
十二句   蝶のかんざし小さく揺れる(純子)
名残表 
初句   かぎろいて赤いけだしの石畳(貴代美)
二句     素足ひたひたお百度参り(俊)
三句   三浪の子よ今年こそは受かってと(七)
四句     父は残業母はパートに(純)
五句   マイホーム建てたばかりで火の車(俊)
六句     ただ沛然と雨のふりける(修)
七句   とりあえず明日はやめとこ虎退治(笑)
八句     六甲おろしがかけめぐる街(貴)
九句   ひっそりと神戸空港霧の中(繁)
十句     肩を寄せ合う男と女(純)
十一句 山国の新居を照らす望の月(俊)
十二句   真澄の新酒つぎつつがれつ(笑)
名残表 
初句   ギアマンに菊を浮かべて秋の夜(純)
二句     天下をつかむ安土の天主(春)
三句   人生は扇ひるがし五十年(純)
四句     追い風受けて再び船出(千枝子)
五句   よき友と名残惜しみて花盛り(弘子)
挙句     信州が待つ春のあけぼの(冨喜子)

句上  高城修三(宗匠・3)  野村笑吾(4) 細尾隆三(3) 竹本俊平(8) 奥山満里子(執筆・1) 廣瀬春雄(2) 今枝清實(1)  杉田繁治(2) 城貴代美(2) 下石坂七重(2) 嶋岡純子(5) 松田弘子(1) 栗田冨喜子(1) 石田千枝子(1)  石田博

国内外のホステラーに最も人気の高い宇多野ユースホステルにて、きっちり計ったように満開となった枝垂桜を鑑賞ししながらの連歌会になりました。今回は煎茶の小川流杉本会の皆さまとのコラボレーションとなりました。茶会の後、永田萌氏を客に迎えて半歌仙を興行し、その後、きらら連歌会の連衆打ちそろって佐野藤右衛門氏の苗園での観桜、さらに夜は、この四月から信州に転居される松田弘子氏の送別歌仙連歌会を興行し、翌日は広沢池畔の平安郷で花見とお茶を満喫、春の嵯峨野をたのしみながら嵐山まで歩き、桜と連歌を堪能した春期合宿となりました。


平成二十一年一月三十一日起首、七月二十五日満尾
半歌仙「淡雪や」の巻
   於 京都新聞カルチャーセンター


発句   淡雪や小袖かぶせて蕗の薹(七重)
脇      幼き孫が雛遊びする(満里子)
第三   塗箸を逃げ回りたる桜貝(冨喜子
四句     リハビリをして一年たちぬ(純子)
五句   再びのタンゴ踊らん月の下(孝子)
六句     復員船は紅葉するころ(隆三)

初句   一人聞くコオロギの声うれしかり(弘子)
二句     竜馬の恋文握り締めつつ(純子)
三句   会いたしと返しの筆ももどかしく(七重)
四句     京都新聞七階の部屋(修三)
五句   ボーナスを出すも出さぬもおれ次第(雪子)
六句     沈黙破って鈴虫の鳴く(修三)
七句   命日にありし日のごと過疎の月(冨喜子
八句     豊年祭りの絶えて久しき(隆三)
九句   春の宵博士(おたく)行き交う秋葉原(春雄)
十句     メイドの髪に青いパピヨン(修三)
十一句 花の下見て見ぬふりの黒き猫(隆三)
挙句     光あふれる昼の公園(順子)

句上
下石坂七重(2) 奥山満里子(1) 栗田冨喜子(2)嶋岡純子(2)金森孝子(1)細尾隆三(3)松田弘子(1)高城修三(宗匠・3)武藤雪子(1)石井順子(1)


平成二十年八月二十九日
恋尽くし歌仙連歌「君の手に」の巻
   於 本島大倉邸

初表
発句   君の手に酢橘香るや大倉邸(雪子)
脇      秋風に見る幻の愛(博)
第三   えのころの原に思いは消えうせて(友利)
四句     ただ皓々と月の輝く(修三)
五句   一人旅道中合羽に菅の笠(俊平)
六句     壁に落書き二人の名前(みつゆき)
初裏
初句   時をへてローマの恋の物語(友利)
二句     身分の差など何でもないわ(弘子)
三句   たじろぐよそんなに言っても安月給(みつゆき)
四句     自転車こいで海を見に行く(朝子)
五句   君知るや我が十六の秘めしこと(修三)
六句     殿のお召しに菊香りたり(弘子)
七句   寄せる肌月光の下に満ちいたり(純子)
八句     吐息ももどかし秋の目ぬすみ(みつゆき)
九句   草千里馬のいななき遠く聞く(清實)
十句     風は西から吹いてくるのか(俊平)
十一句 何ゆえにマッチョ通りの花吹雪(友利)
十二句   老いらくの恋に春のうららか(修三)
名残表
初句   送られてまた送り行く宵霞(弘子)
二句     今夜は獣になってみようか(雪子)
三句   神崎の転び上手な大姉御(隆三)
四句     行灯の火ふらりゆらめく(修三)
五句   鈴の間に忍びの者の影法師(俊平)
六句     きぬずれの音夕蛍舞う(純子)
七句   ひと月も肌を合わさぬ人の来て(修三)
八句     歌舞伎役者の暫く暫く(友利)
九句   借金の取立て厳し大晦日(博)
十句     娘渡さぬ手立てはあらぬ(隆三)
十一句 さっそうと白馬童子に望の月(友利)
十二句   あなたと私松虫を聴く(弘子)
名残裏
初句   首筋にそっと口づけ秋あつし(雪子)
二句     濡れているのか濡れてないのか(修三)
三句   雨上がり相合傘のままでいて(朝子)
四句     やせ我慢する月形半平太(俊平)
五句   東山三十六峰花の道(満里子)
挙句     都大路に霞たなびく(孝平)

句上
武藤雪子(3) 石田博(2) 岡市友利(5) 高城修三(宗匠・6) 竹本俊平(4) 佐藤みつゆき(3) 松田弘子(5) 後藤朝子(2) 嶋岡純子(1) 今枝清實(1) 細尾隆三(2) 奥山満里子(執筆・1) 池田孝平(1) 廣瀬春雄

塩飽水軍の本拠地であった本島(香川県丸亀市)に伝統建築群が残る笠島の大倉邸(江戸末期)を借り切って行なわれた本島合宿の初日は、恋尽くし歌仙連歌でした。これは恋の句数を二句から五句までとし、二句去りであれば、どこで恋を詠んでもよいとするものです。前句に触発された深層心理や本人も気づかぬ無意識の世界がふっと頭を出して、楽しい恋尽くしとなりました。

 


平成二十年三月二十九日
歌仙連歌「奈良町」の巻
   於 万葉荘


初表
発句   奈良町の廃寺に似合う桜かな(修三)
脇       礎石のそばに日本たんぽぽ(隆三)
第三   乙女らが春のスカーフなびかせて(雪子)
四句     銀輪走る堤防の道(七重)
五句   ねむたげな雲に隠れる昼の月(修)
六句     運動会の歓声聞こゆ(弘子)

初句   木犀の香りたどりて遠回り(雪)
二句     まだかまだかと告白を待つ(七)
三句   ヘーゲルもショウペンハウエルも恋仇(修)
四句     胸の熱きを知りておどろく(隆)
五句   デジタルに変換できない愛がある(笑吾)
六句     時代遅れがおれの生きざま(俊平)
七句   凍て空に仰ぐ人なき望の月(雪)
八句     五軒長屋に火の見の櫓(七)
九句   七輪に大蛤が口をあけ(雪)
十句     坂田三吉天王寺の春(隆)
十一句  花の下飯代賭けて詰め将棋(俊)
十二句    屋台のすそに猫うずくまる(弘)
名残表
初句   ぽっくりに鼻すり寄せて思案顔(修)
二句     解き明かしたし移り香の主(俊)
三句   あれやこれ思い乱れて抱きついて(修)
四句     今夜のあなたちょっとだけ変(笑)
五句   白々と横向き顔の罪な女(昌代)
六句     吉原通いも今夜のかぎり(隆)
七句   助六の白い鉢巻紫に(笑)
八句     知らぬ顔して鳴くキリギリス(修)
九句   月を詠み涙流して千年紀(笑)
十句     瀬田の水面に落ちるもみぢ葉(隆)
十一句  夕ぐれてボート漕ぎゆく京大生(俊)
十二句    邪宗門など読みふけている(修)

初句   懐かしき詩集の装丁乙女どき(七)
二句     入道雲の立ち昇る午後(修)
三句   サイレンが鳴って閃光走りけり(俊)
四句     今年は遅き春の一番(修)
五句   ふきのとう花はまだ見ぬ美少年(笑)
挙句     蝶に追われて時を忘れる(浩)

句上
高城修三(宗匠・9) 細尾隆三(5) 野村笑吾(5) 竹本俊平(初折執筆・5) 武藤雪子(世話人・4) 下石坂七重(4) 松田弘子(2) 祐森昌代(1) 府川浩(1) 奥山満里子(名残執筆) 


平成二十年三月三十日
小林孝子氏追悼
半歌仙連歌「逝きし人」の巻
   於 万葉荘  

初表
発句   逝きし人想い出させる桜かな(修三)
脇       薩摩おごじょの好きな三月(雪子)
第三   水ぬるみ森羅万象色めきて(俊平)
四句     石の地蔵も頬ゆるませる(浩)
五句   黄門の出番近づく悪だくみ(春雄)
六句     思案六法仕掛の工夫(隆三)

初句   茶を運ぶからくり人形つまづけり(俊)
二句     くじらの髭も品薄の日々(弘子)
三句   太地町港は恋に明け暮れる(清實)
四句     老いも若きも祝言疲れ(俊)
五句   五十妻そっと差し出すとろろ汁(雪)
六句     庭に一もとヤマトリカブト(弘)
七句   顔を出す月さえ色を失って(昌代)
八句     篝火照らす怪士(あやかし)の面(俊)
九句   マクベスの苦悩秘めたる古館(七重)
十句     ひばりの声はいずこより来る(修)
十一句 宴果て花吹雪舞い我ひとり(孝子)
挙句     御蓋の山にかすみたなびく(満里子)

句上
高城修三(宗匠・2) 武藤雪子(世話人・2) 竹本俊平(4) 府川浩(1) 廣瀬春雄(1) 細尾隆三(1) 松田弘子(2) 今枝清實(1) 祐森昌代(1) 下石坂七重(1) 小林孝子(1) 奥山満里子(執筆・1)

 

今年のきらら連歌会春合宿は、はやくも桜が三分咲きになった奈良市内の万葉荘において開催されました。29日は奈良町を散策して桜咲く元興寺塔跡をめぐり、歌仙「奈良町」の巻をえました。なお、今回の興行から新たな執筆として奥山満里子氏が加わりました。夕方から懇親会となり、所用のため退席となった野村笑吾氏に代わって廣瀬春雄氏の参加をえました。廣瀬氏からは東寺の歓楽街取締りの逸話などうかがって大いに盛り上がりました。翌30日の朝、大阪より駆けつけた今枝清實氏も加わって半歌仙「逝きし人」を巻きました。それに先立ち、世話人の武藤雪子氏より、三月二十一日に病のために逝去された連衆仲間小林孝子氏についての報告ならびに長文の弔辞が披露されたことから、当日の半歌仙は高城修三宗匠の発句に始まる小林孝子氏追悼連歌となった次第です。裏11句目の花の定座 では、小林孝子氏が昨年のさぬき連歌始に参加した折に出した句を織り込みました。追悼連歌のあとは、花冷えのする涙雨の中を、頭塔・志賀直哉旧邸・飛火野・興福寺南円堂などの旧蹟をめぐり、今年の春合宿を終えました。

 

 

故小林孝子さん(北野天満宮連歌会)   右端が孝子さん(宗祇の里連歌会)

 万葉荘における春合宿風景


平成十九年十二月十六日
半歌仙連歌「九条池」の巻
   於 拾翠亭


発句  九条池真鴨の泳ぐ師走かな(繁治)

脇    水面に浮かぶ落葉の錦(純子)

第三  あの世へと渡る石橋横に見て(修三)

四句   おさん茂兵衛の道行のごと(清實)

五句  夏の浜高鳴る胸をあらわにし(貴代美)

六句   ここで聞きたいウェディングベル(浩)

初句  四十坂拾った恋を捨てかねて(俊平)

二句   酔いどれている足下に猫(貴)

三句  アフガンの議論沸き立つ縄のれん(春雄)

四句   油売ります核を買います(笑吾)

五句  自家用のジェット機飛ばす西東(弘子)

六句   塀の中から栄華をしのぶ(雅晴)

七句  柿色と藍のはざまの二日月(雪子)

八句   神楽太鼓に豊年祭り(隆三)

九句  ふるさとの水ゆたかなりコップ酒(貴)

十句   春の夕べに父と向き合う(清)

十一句 花の下乙女のころを思い出し(昌代)

挙句   孫の手引いて十三参り(弘)

句上

杉田繁治(客・1) 城貴代美(3) 今枝清實(2) 松田弘子(2) 嶋岡純子(世話人・1) 高城修三(宗匠・1) 府川浩(1) 竹本俊平(1) 廣瀬春雄(1) 野村笑吾(1) 榊原雅晴(1) 武藤雪子(世話人・1) 細尾隆三(1) 祐森昌代(1) 石田博 井島鈴子 栗田冨喜子(執筆) 

客に杉田繁治氏をお迎えして、今年最後の連歌会を九条邸遺構「拾翠亭」で興行しました。会席の後、近くの平安会館にて忘年会を兼ねた懇親会を開き、一年をしめくくりました。

拾翠亭を背景に記念写真

              会席風景


平成十九年三月十七日
歌仙連歌「春浅し」の巻
於  大原の里

初表
発句   春浅し寿永国母の御涙(修三)
脇      つらつら椿咲き初むる里(貴代美)
第三   童等は手に手に蕨摘み取りて(七重)
四句     娘は嫁入り都に旅立つ(隆三)
五句   見渡せば朱雀大路に白き月(春雄)
六句     日本シリーズ終わった朝に(雪子)
初裏
初句    アメリカに行くこと決めて石榴なる(純子)
二句     あなたとならば手鍋下げても(弘子)
三句   何とまあ俺は十九で君十五(俊平)
四句     酔うて一緒の布団一枚(純子)
五句   うらぶれて鴨の仮寝の晦日越し(隆三)
六句     闇に尾を引く犬の遠吠え(雪子)
七句   いざさらば月を仰ぎて湊川(春雄)
八句     夜伽の庭に菊の香の立つ(俊平)
九句   折り詰めは精進揚げと蒲鉾と(貴代美)
十句     一升持って集う若衆(隆三)
十一句  咲きてよし散りてまたよし桜花(雪子)
十二句   吉野の山に鶯の鳴く(純子)

名残表
初句   囚われの静の舞はしずやしず(俊平)
二句     扇に託す君への想い(純子)
三句   逢いみての後の心を歌にして(雪子)
四句    二の字二の字の雪道の跡(純子)
五句   こよりにて切れし鼻緒を挿げ替える(俊平)
六句    赤き風呂敷小脇に抱え(貴代美)
七句   長唄の稽古帰りの未亡人(純子)
八句    オープンカーを乗り回している(貴代美)
九句   月の下海岸線をプレスリー(純子)
十句    秋の祭りの仮装大会(俊平)
十一句  河内にはこつまなんきん男衆(隆三)
十二句   左褄取る暮らしも長く(貴代美)
名残裏
初句   起請文手当たり次第書き散らす(俊平)
二句     氷雨激しく降りつのる朝(修三)
三句   門口に赤き素足の修行僧(雪子)
四句    笠取る面これが我が子や(俊平)
五句   立ち尽くす母の背中に花吹雪(弘子)
挙句    春の終わりをいかにとやせむ(修三)
 
句上

嶋岡純子(世話人・7) 竹本俊平(執筆・7) 城貴代美(5) 武藤雪子(世話人・5) 細尾隆三(4) 高城修三(宗匠・3) 廣瀬春雄(世話人・2) 松田弘子(執筆・2) 下石坂七重(1)


平成十九年三月十八日
半歌仙連歌「名残雪」の巻
於  大原の里


発句   杉木立凛と並びて名残雪(春雄)
脇      大原温泉馬酔木咲く宿(純子)
第三   鶯で寝覚めの床を旅立ちて(俊平)
四句     リュックサックに角瓶一本(純子)
五句   皓々と月照らしいる穂高岳(修三)
六句     林檎の国の初恋の秋(隆三)

初句    接吻をそっと交わした夕間暮れ(貴代美)
二句     手を携えてヒルズの新居(弘子)
三句   株下がり払えぬ家賃二百万(純子)
四句     巷に満ちる団塊帰農(春雄)
五句   鍬持って田一枚を持て余し(貴代美)
六句     蛙蚯蚓がやあこんにちは(七重)
七句   飲み過ぎてゆらりゆらりと春の月(雪子)
八句     朧に霞む新地のネオン(俊平)
九句   交差点斑の猫が横切りて(貴代美)
十句     公孫樹並木の色は鮮やか(隆三)
十一句  この秋は狂い咲きする花もあり(修三)
挙句     奈良の庵に宗匠ひとり(雪子)

句上
高城修三(宗匠・2) 嶋岡純子(世話人・3) 城貴代美(3) 廣瀬春雄(世話人・2)
竹本俊平(執筆・2) 細尾隆三(2)  武藤雪子(世話人・2) 松田弘子(1)
下石坂七重(1)

一泊二日の連歌合宿を春の京都大原「大原の里」にて行ないました。第一日の午後から夕食を挟んで興行した歌仙連歌は好調のうちに巻き終え、その夜は楽しい酒宴となりました。翌朝は春の雪で一面の雪景色、そこで午前中にもう半歌仙を巻き上げました。その後、連歌興隆に尽くされた後鳥羽上皇・順徳天皇の大原御陵に参拝しました。



平成十八年六月十六日
半歌仙連歌「菅公」の巻
於  糸源


発句   菅公の遺徳偲ぶや梅雨晴れ間(弘子)
脇      顔映したる涼し古井戸(雪子)
第三   皿一枚足りぬ女の走り出て(登志子)
四句     灯ともし頃の村の万屋(貴代美)
五句   月さやか床几に車座濁り酒(笑吾)
六句     豆狸ものぞく柿の実下げて(七重)

初句    秋の朝夫婦喧嘩の閨の内(俊平)
二句     胸にくっきりキスマークあり(孝子)
三句   墨染の衣を脱ぎて横ずわり(貴代美)
四句     恋の緋牡丹はらはらと散る(修三)
五句   仕舞屋の風吹き抜ける坪の庭(貴代美)
六句     迷い込んだる鈴虫の声(修三)
七句   月落ちて悲しみつむぶ小町塚(春雄)
八句     なびく薄は白銀の海(純子)
九句   旅人が分け入っていくひとり道(笑吾)
十句     振りわけ荷物蝶が追いかけ(貴代美)
十一句  とつぜんの花の吹雪にたちすくむ(修三)
挙句      かすみに響く入相の鐘(七重)

句上
高木登志子(客・1) 城貴代美(4) 高城修三(宗匠・3) 野村笑吾(2)
下石坂七重(2) 松田弘子(1)  武藤雪子(世話人・1) 竹本俊平(執筆・1)
小林孝子(1)  広瀬春雄(1) 嶋岡純子(世話人・1)  河村直子  細尾隆三

今回の興行は「京カル連歌会」あらため「きらら連歌会」の初興行を奉祝する連歌会とな
りました。北野天満宮の大鳥居の下に集合して、連歌の神とされている菅原道真(菅公)
を参拝したあと、かつて連歌の総本山であった北野連歌会所跡(現在は古井戸のみ残る)
や秀吉の御土居跡などを見学し、千中の「糸源」に向かい、東京より駆けつけてくださった
高木登志子さんを客に迎えての連歌興行となりました。




平成十八年三月二十六日
半歌仙連歌「老いし梅」の巻
於 梨木神社


発句  老いし梅一輪が放つ香りかな(笑吾)
脇     春風やさし梨木神社(純子)
第三  回天の思いあふれる志士がいて(春雄)
四句    内ポケットに退職願(雪子)
五句  月見上げ妻子の名前つぶやけり(純子)
六句    ここは唐長安の秋(俊平)

初句  早馬が茘枝を運ぶ大通り(孝子)
二句    古今東西小屋掛け芝居(俊平)
三句  蛇を食う女の魅力に取り憑かれ(雪子)
四句    もっと締めてとせがまれし夜(万貴子)
五句  危な絵を七八枚も並べ立て(修三)
六句    寝顔を見れば日光菩薩(俊平)
七句  やわらかに初孫照らす夏の月(雪子)
八句    蚊遣りの豚があくびしている(万貴子)
九句  日展の特選狙い墨をする(純子)
十句    表替えした奥の間座敷(俊平)
十一句 花びらがひらりひらりと舞い込みて(郁子)
挙句    歌の仲間は三月生まれ(笑吾)

句上
野村笑吾(客・2)竹本俊平(4)嶋岡純子(世話人・3)
武藤雪子(世話人・3)岡本万貴子(2)広瀬春雄(1)
小林孝子(世話人・1)高城修三(宗匠・1)渡辺郁子(1)
栗田冨喜子(執筆) 城貴代美 藤代てい子

春の京カル連歌会は、梨木神社の参集殿にて、天照大神の掛軸を背に負うて開催しました。
床の間脇の錦の御旗に鼓舞されたか、快調なリズムで出句がすすみ、そのあと御苑内の旧
近衛邸の枝垂桜を春の夕暮の中で堪能しました。



平成十七年十二月三日
「東山」の巻
於無鄰庵


発句    東山植治の庭の時雨かな(俊平)
脇       散りゆく紅葉有朋の声(純子)
第三    会議中征露丸飲む部下がいて(清子)
四句     ペットボトルに灘の名水(俊平)
五句    酒なくて何がうれしき望の月(修三)
六句     一人静かに虫の音を聞く(清子)

初句    マニキュアをピュアからラメに塗り替えて(修三)
二句     今度の相手は大学教授(雪子)
三句    忍ぶ恋そっとメールを打ち続け(貴代美)
四句     逢って欲しいの抱いて欲しいの(純子)
五句    母さんを訪ねて来ました三千里(俊平)
六句     首から下げた赤い十字架(雪子)
七句    踏絵するキリシタンにも春の月(純子)
八句     柳青める島原の里(俊平)
九句    輪違屋のれんを染めて掛け直す(貴代美)
十句     座敷で騒ぐ尊王浪士(隆三)
十一句  無礼者花の刺青血を吹きて(考女)
挙句     八百八町今日も暮れ行く(登志子)

句上  竹本俊平(客・4) 嶋岡純子(世話人・3) 柴田清子(2) 高城修三(宗匠・2) 
     武藤雪子(世話人・2)  城貴代美(2) 細尾隆三(1)  小林孝女(世話人・1)
      高木登志子(1) 宮田豊子 石田博 河村直子  渡辺郁子(執筆)
     
今回は山県有朋が日清戦争前後に京都に造営した別荘「無鄰庵」二階の書院を使っての連歌会となりました。明治三十六年には山県有朋・伊藤博文・桂太郎・小村寿太郎が日露開戦にあたっての外交方針を決めたことで有名です。作庭は小川治兵衛で、琵琶湖疎水の水をつかった近代の名庭園として知られています。







平成十七年八月二十日
宗祇追善
半歌仙連歌「宗祇の裔や」の巻
於 伊庭城址謹節館


発句 誰も彼も宗祇の裔や豊の秋(哀楽)
脇 松ヶ枝映し凪る月影(輝彦)
第三 赤とんぼ水車小屋に迷い来て(直子)
四句 等間隔の静かなる音(雪子)
五句 添い寝する妻の寝息に聞き惚れる(俊平)
六句 突然洩れる男の名前(笑吾)

初句 ヨン様がお前を愛すはずもなし(郁子)
二句 君は割れ鍋 我は閉じ蓋(雪子)
三句 月末に帳尻の合う古女房(七重)
四句 二本差しにて傘張る毎日(遊花)
五句 吾もまた明日も分からぬ神頼み(美雄)
六句 糺の森に虫の声聞く(清子)
七句 月明かり主客の早々酒汲みて(栄一)
八句 宴もたけなわ連歌に興ず(清子)
九句 都人ばさらばさらと囃しけり(俊平)
十句 鴨の河原に出雲の阿国(七重)
十一句 木ノ実ナナへそ出しルック花の下(遊花)
挙句 五十路美しうららかな春(考女)

句上
武藤雪子(2) 竹本俊平(2) 下石坂七重(2) 柴田清子(2) 城貴代美・遊花(世話人・2) 相楽哀楽(客・1)
長谷川美雄(亭主・1)  西村輝彦(1)  河村直子(1)  野村笑吾(1)  渡辺郁子(執筆・1) 奥村栄一(1)
小林孝子・考女(世話人・1)  高城修三(宗匠)  大西昭三  福嶋崇雄  村田恒治郎  嶋岡純子(世話人)
細尾隆三 石田博  広瀬春雄  松田弘子 栗田冨喜子 村田岩男 田辺弥一  中村新三 里田清夫 奥村重義

宗祇の忌日は旧暦七月三十日、その追善連歌として、宗祇生誕の地とされる滋賀県能登川町伊庭の伊庭城
址謹節館にて、地元の宗祇法師研究会の皆さんをはじめとする文芸愛好の方々と共同での連歌会となりまし
た。地元の皆さんには、宗祇騎馬像・宗祇顕彰碑・伊庭内湖などを案内していただいたばかりか、琵琶湖産の
珍味で歓待していただき、すばらしい連歌会となりました。




平成十七年六月十九日
半歌仙連歌「九条の池や」の巻
     於 拾翠亭


発句 勾玉の九条の池や夏盛り(純子)
脇 歌に耳寄すどくだみ一つ(直子)
第三 母と子が帰る野の道夕暮れて(万貴子)
四句 今日は何の日特製カレー(純子)
五句 デザートは甘いプリンに熱いキス(雪子)
六句 世話女房も還暦迎え(遊花)

初句 ミス京都惚れて惚れぬき惚れ疲れ(万貴子)
二句 恋のうつせみ水面に映す(郁子)
三句 船頭が棹さしている隅田川(遊花)
四句 さくらにさくらさくらとさくら(修三)
五句 場所取りのブルーシートに春の雨(万貴子)
六句 人待ち顔の屋台の親父(直子)
七句 いざよいの月静かなりビルの上(雪子)
八句 迷い蟋蟀の声の聞こえる(考女)
九句 ちゃぶ台を畳んで眠る四畳半(遊花)
十句 親の形見のせんべい布団(俊平)
十一句 陽だまりの物干し台に花吹雪(清子)
挙句 たわむれ遊ぶ子猫三匹(弘子)

句上
岡本万貴子(3) 城貴代美・遊花(3) 河村直子(2)
嶋岡純子(世話人2) 武藤雪子(2) 高城修三(宗匠1)
竹本俊平(執筆1) 柴田清子(世話人1) 渡辺郁子(1)
松田弘子(1) 小林孝子・考女(世話人1) 細尾隆三
皆川祐子 藤代禎子

拾翠亭は旧九条家庭園に残る茶室です。茶室にて嶋岡純子さんの心尽くしのお茶をいただいたあと、
一階書院にて、勾玉の池に架かる華麗な石橋(九条橋)を借景にした庭園を前に、すばらしい連歌会
となりました。



平成十七年三月二十一日
半歌仙連歌「春風」の巻
於 弓月庵


発句 竹林に春風そよぐ弓月庵(清)
脇 聴く人もなき鶯の声(修)
第三 プロ野球開幕戦に沸き立って(雪)
四句 思い立ちたり陸奥の旅(俊)
五句 深川の魚も涙の夏の月(修)
六句 待ち人いずこ一人つぶやく(直)

初句 おみくじを何べん引いても凶ばかり(孝)
二句 愛宕の山に日がな雨降る(修)
三句 携帯でとても好きよと言ってみる(孝)
四句 三十路の思い天まで届け(春)
五句 花婿は一回り下タッキー似(郁)
六句 肩にもたれてもう酔っちゃった(直)
七句 ゆらゆらと月も微笑む先斗町(笑)
八句 渋茶にそえし栗きんとん(俊)
九句 縁側で大ばばこっくり冬日向(郁)
十句 幼子二人おはじきごっこ(孝)
十一句 一陣の風のまにまに花吹雪(修)
挙句 入学決まり荷物を送る(弘)


句上
高城修三(宗匠4) 小林孝子(3) 竹本俊平(2) 河村直子(世話人2) 渡辺郁子(2)
柴田清子(1) 武藤雪子(1) 広瀬春雄(1) 野村笑吾(1) 松田弘子(1) 荒木玲子
石田博 栗田冨貴子(執筆)

床に天神さんの掛軸を掛けた弓月庵の座敷で連歌会を興行、そのあと囲炉裏を囲んで牡丹鍋の
楽しいいひとときを過ごしました。




平成十六年十二月十九日
半歌仙連歌 冬紅葉の巻
於 平安会館



発句 冬紅葉いまだ錦の師走かな(孝平)
脇 一人たたずむ平安の庭(清子)
第三 夜明しの紫式部白湯飲みて(万貴子)
四句 君を待てども訪れはなく(郁子)
五句 マフラーを編んでほどいた誕生日(万貴子)
六句 一目見んとて車走らす(清實)

初句 懐かしの彼が故郷でサイン会(雪子)
二句 うれし憎らし鈴なりのファン(耕滋)
三句 見栄切って声張り上げる村芝居(遊花)
四句 こんぴらふねふね参拝忘れ(清實)
五句 丁半の男あふるる百石船(春雄)
六句 腰元づきの娘が一人(郁子)
七句 仇討の旅に疲れて月仰ぐ(清實)
八句 溜め息かき消す虫たちの声(孝平)
九句 なんとまあ生涯かけて三坪の庭(修三)
十句 定年退職明日に控え(郁子)
十一句 花束に包まれたき妻の前稽古(笑吾)
挙句 ともに歩まん二輪草の如(春雄)

句上
今枝清實(3) 渡邊郁子(3) 岡本万貴子(2) 広瀬春雄(2)
池田孝平(2・客)柴田清子(1) 遊花(1) 武藤雪子(1・世話人)
上田耕滋(1) 野村笑吾(1) 高城修三(1・宗匠)渡辺裕子(執筆)
栗田冨貴子 皆川さち子 河村直子(世話人)

平安会館には近代京都を代表する植治の庭園があり、それを鑑賞後、連歌会となりました。



平成十六年十月三日
半歌仙連歌「恋づくし」の巻
於 神泉苑「平八」



発句(秋) 新涼や願いを秘めて神の苑(貴)
脇 (秋) すすきの揺れて屋形船見ゆ(純)
第三(秋) 尼僧連れさしつさされつ秋暮れて(万)
四句 紫頭巾四つ折りのまま(純)
五句 湯上がりの君を待ちつつ隠れ宿(雪)
六句 満天の星恋を占う(直)

初句 肥の国の蠍座生まれの一人っ子(純)
二句 あなた追いかけ北の果てまで(直)
三句 白拍子静かに舞える恋の舞(清子)
四句 鈴の響きに心ざわめく(万)
五句 花嫁は峠を越えて馬の上(貴)
六句(秋) 野菊の如きと言いし人あり(清美)
七句(秋) 望月の兎ながめて差し向かい(裕)
八句 胸肌白く浮かび上がりて(雪)
九句 男にも我慢できないときがある(修)
十句(春) かげろうゆれる畦に道草(万)
十一句(春) 野の花を冠にして君に捧げむ(清美)
挙句 忘れられぬ初恋の人(純)

句上
嶋岡純子(4) 岡本万貴子(3) 武藤雪子(2) 河村直子(亭・2)
今枝清実(2) 城貴代美(2) 高城修三(宗・1) 柴田清子(1)
渡辺裕子(1) 栗田冨喜子(執) 渡辺郁子 皆川祐子

神泉苑は平安京の庭園i遺構で、空海・小町・静御前の雨乞い伝説でも有名です。



平成十六年六月十七日
半歌仙連歌「ねねの道」の巻
於 高台寺「岡林院」



発句 梅雨空や葉陰伝いのねねの道(新二)
脇 濡れて彩よき石の燈籠(貴代美)
第三 猫が来て犬が脚上げ叱られて(万貴子)
四句 我が身切なく海に遠吠え(博)
五句 飲んだくれ列車に揺られて北の果て(新二)
六句 諸行無常と風の音する(浄因)

初句 さわさわと極太ペンでラブレター(純子)
二句 ただ好きですと書いてあるのみ(万貴子)
三句 残されし枕の下の日記帳(貴代美)
四句 破り捨てたい想い出ばかり(直子)
五句 新たなる出会いがありて大文字(貴多子)
六句 真葛ヶ原に虫の声きく(修三)
七句 月ばかり晴れ晴れとして草の庵(郁子)
八句 雪道踏んで訪ねくる人(純子)
九句 ジェイソンがこんな時季にも現われる(郁子)
十句 そんな阿呆なとエイプリルフール(万貴子)
十一句 みんなして流れてみたい花筏(新二)
挙句 かく人の世は浮かれ浮かれて(清實)

句上
岡本万貴子(3) 粟新二(3) 渡辺郁子(2) 嶋岡純子(2)
城貴代美(2) 石田博(1) 寺前浄因(1) 河村直子(1)
高城修三(1)黒瀬貴多子(1) 今枝清實(1) 下石坂七重
皆川祐子 栗田冨喜子