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2012年採用句




   2012年10月13日満尾 「夏至迎ゆ」の巻



 初表    
 発句   夏至迎ゆ明石大門に入り陽かな・・・・・・・・・・弓月
 脇      風鈴止まる瀬戸の夕凪・・・・・・・・・・・・・・つるこ
 第三   忍び足長居の客に箒立て・・・・・・・・・・・・・・・山桃
 四句     玄関番のブルは居眠り・・・・・・・・・・・・・・・ 鶯声
 五句   裏山にかかりし月は骨の色・・・・・・・・・・・・貴代姫
 六句     夜長に背中の湿布が貼れぬ・・・・・・・ゆめ比乎
 初裏
 初句   あるがまま秋の叙勲の顛末記・・・・・・・・・・・ふく女
 二句     行李の底に忍ぶ恋あり・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 三句   その日君は出征学徒の列の中・・・・・・・・ゆめ比乎
 四句     今じゃひ孫も七人揃い・・・・・・・・・・・・・・・東雪
 五句   バルセロナよりクリスマスカード来て・・・・・・・花子
 六句     夕陽に燃えるサグラダファミリア・・・・・・・・竹生
 七句   頼りなき弦月かかる塔の上・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 八句     大工意気地の濁酒呑む・・・・・・・・・・・・・・浩平
 九句   訳あって手放した子を思う夜・・・・・・・・・・・・・ばば
 十句     雨音なぜに足音に似る・・・・・・・・・・・・・・うさこ
 十一句 軍靴なき外苑はいま花に満ち・・・・・・・・・・・・・bird
 十二句   大帝逝きてももとせの春・・・・・・・・・・・・・・春海
 名残表
 初句   音を立て軋み縮まる秋津島・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 二句     骨董店のゆがむ窓枠・・・・・・・・・・・・・・・・・はる
 三句   あぶな絵の紅き襦袢が目にとまり・・・・・・・貴代姫
 四句     優しき義姉の嫁入り箪笥・・・・・・・・・・・・・・山桃
 五句   抽斗の中身はすべて米に替え・・・・・・・・・・・・鶯声
 六句     小雪ちらつく大宮通り・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 七句   放れ馬だ気をつけろと叫ぶ声・・・・・・・・・・・・ふく女
 八句     ここぞとばかり掏摸とる懐中・・・・・・・・・・・山桃
 九句   美しい匂い袋の処置困り・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 十句     辻に佇む托鉢の僧・・・・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 十一句  月浴びてダイナマイトの導火線・・・・・・・・・・・大寛
 十二句   冷えたレコード山谷ブルース・・・・・・・・・・・・ぐみ
 名残裏
 初句   大東京の秋静かなる社長室・・・・・・・・・・・・・浩平
 二句     鏡のぞいて眉描きなおす・・・・・・・・・・・・ふく女
 三句   ひとり身に齢ひとつを重ねたり・・・・・・・・・・・・ぐみ
 四句     肘枕して朝寝楽しむ・・・・・・・・・・・・・・・・・甘露
 五句   散る花に覆われ尽くす心地して・・・・・・・・・・・花子
 挙句     木漏れ日温し西行の歌碑・・・・・・・・・・・・ばば



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   2012年5月17日満尾 「はや七年」の巻



 初表
 発句   はや七年我が家の猫は恋知らず・・・・・・・・・弓月
 脇      高層階の窓に来る春・・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 第三   初虹を新幹線は突き抜けて・・・・・・・・・・・・・山桃
 四句     
父在りし日の昭和の記憶・・・・・・・・・・・貴代姫
 五句   貰い風呂帰りを照らす月明かり・・・・・・・・・・・猪群
 六句     いつもの露地を迷いすすき野・・・・・・・・・・はる
 初裏
 初句   ヂュエッとの恋歌流れる北の街・・・・・・・・・・・謡拙
 二句     やさしい嘘にこの身あずけて・・・・・・・透菜の婆
 三句   日曜日あなた坊やと肩車・・・・・・・・・・・・・・・・月子
 四句     リーマンショックが来るとも知らず・・・・・・・・Bird
 五句   悠久のときを刻んで光堂・・・・・・・・・・・・・ほろよい
 六句     蝋燭消えて闇落ちかかる・・・・・・・・・・・・・山桃
 七句   新月の庭に夜盗は蹲り・・・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 八句     足跡くっきり雪に残して・・・・・・・・・・・・・・・花子
 九句   傘地蔵何を運ぶや年の暮れ・・・・・・・・・・・・・謡拙
 十句     古老語りはひねもす長閑・・・・・・・・・・・みどりこ
 十一句 島の花繕う網に降りしきる・・・・・・・・・・・・・・・・鬼猿
 十二句    御赦免船は霞に消えて・・・・・・・・・・・・・・山桃
 名残表
 初句   立ち尽くす身重の女黄八丈・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 二句     夫のメールそっと見た夜・・・・・・・・・・・ほろよい
 三句   乱れ髪なれぬ冷酒をあおるのみ・・・・・・・・・・西風
 四句     蒼き蜥蜴がわが胸に棲む・・・・・・・・・透菜の婆
 五句   影さえも呑み込み光る白い夏・・・・・・・・・・・・・はる
 六句     被爆マリアの涙は枯れて・・・・・・・・・・・・・謡拙
 七句   ひたすらに鐘の鳴るなりひぐれどき・・・・・・・貴代姫
 八句     八百屋お七は梯子にすがり・・・・・・・・・・・甘露
 九句   義太夫の師匠は今年米寿なり・・・・・・・・・・・・鶯声
 十句     吹き寄せ菓子が存外お好き・・・・・・・・・・ふく女
 十一句 月まどか宴たけなわの歌筵・・・・・・・・・・・・・・うさこ
 十二句   秋草蹴散らし騎馬走り来る・・・・・・・・・・・・・浩平
 名残裏
 初句   皇帝軍トラファルガーに敗れたり・・・・・・・・・ふく女
 二句     静かなる海ただ青くして・・・・・・・・・・・・・・うさこ
 三句   珈琲が無性に欲しいとおもう午後・・・・・・・・貴代姫
 四句     わが胎内に命宿りぬ・・・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 五句   万葉の古き社に花あかり・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 挙句     春宵一刻酔いて候・・・・・・・・・・・・・・・・・・花子


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2011年採用句



   2011年12月18日満尾 「珈琲を」の巻



 初表
 発句   珈琲を飲みほし耳に野分かな・・・・・・・・・・・弓月
 脇      長夜をともにじゃれる飼い猫・・・・・・・・・・うさこ
 第三   あばら家に千金の月差し込みて・・・・・・・・・・謡拙
 四句     
盲目となり知ることもある・・・・・・・・・ゆめ比乎
 五句   内外のがらくたすべて打ち捨てん・・・・・・・・・井蛙
 六句     煙草一服インクの匂い・・・・・・・・・・・・・・・木瓜
 初裏
 初句   床の間にそっと活けたる寒椿・・・・・・・・・・・・謡拙
 二句     金婚式の記念の花器に・・・・・・・・・・・・みかん
 三句   手捻りの夫婦湯呑みが手にあまり・・・・・・・・竹生
 四句      モーツァルトなど聴いてみる午後・・・・・・月子
 五句   水平線めざして加速するジャガー・・・・・・ほろよい
 六句     その先にある大陸信じ・・・・・・・・・・・・・・・・bird
 七句   月はただ生きとし生けるものに降る・・・・・・・うさこ
 八句     震災に遭い初めての秋・・・・・・・・・・・ほろよい
 九句   口結び俺はひたすら稲を扱き・・・・・・・・・・貴代姫
 十句     農学講ず赤いネクタイ・・・・・・・・・・・・・・・月子
 十一句 還暦の記念講義は花の前・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 十二句    看す看す過ぎる春を惜しめよ・・・・・・・・ふく女
 名残表
 初句   少年の視線は少女潮干狩・・・・・・・・・・・・・・猪群
 二句     裾翻る脛の眩しさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・春海
 三句   襷掛け箒手にして新所帯・・・・・・・・・・・・・・・浩平
 四句     同人雑誌を神棚に上げ・・・・・・・・・・・・・ふく女
 五句   しんしんと除夜の鐘の音響きおり・・・・・・・・・浩平
 六句     降りしきる雪ひとりたたずむ・・・・・・・・・・・はる
 七句   討ち入った夫の辞世は胸の内・・・・・・・・・・・鶯声
 八句     川面をすべる舟のゆるやか・・・・・・・・・貴代姫
 九句   前に富士後ろ筑波の贅沢さ・・・・・・・・・・・・・謡拙
 十句     天高く干す六尺褌・・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 十一句 宿場でも月を待つ間のひと仕事・・・・・・・・・・・・bird
 十二句   紅葉を愛でる隠居のふところ・・・・・・・・・ふく女
 名残裏
 初句   想うても想うてくれないひとといて・・・・・・・・・浩平
 二句    恋のピエロがいつも適役・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 三句   青空にブランコだけが揺れている・・・・・・・・・山桃
 四句    はるかぜの腕はるかぜの脚・・・・・・・・・・ぽぽな
 五句   花うらら無常山河を抱きしめて・・・・・・・・・・・浩平
 挙句    すべてを癒す佐保姫の笑み・・・・・・・・・・・・西風


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   2011年7月26日満尾 「春なれや」の巻



 初表
 発句   春なれや国の行方のおぼろなり・・・・・・・・・・・弓月
 脇       カオスの中に萌える葦牙・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 第三   卒業と入学の子の靴買って・・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 四句     夕日に染まる木賃アパート・・・・・・・・・・・・・bird
 五句   卓袱台の月見団子をつまみ食い・・・・・・・・貴代姫
 六句     濃い影を曳き雲水が往く・・・・・・・・・・・・・・春海
 初裏
 初句   分け入りて際限もなし秋の山・・・・・・・・・・・・・甘露
 二句     さながら連歌の道のごとくや・・・・・・・・・・・浩平
 三句   転ずれど離れ難きは過ぎし恋・・・・・・・・・・・・甘露
 四句     ストレイシープと言いし唇・・・・・・・・・・・・・ふく女
 五句    みちのくの雪ひたすらに降りしきり・・・・・・・貴代姫
 六句     金色堂に栄華留めて・・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 七句   月の夜に人の世決まる定めとか・・・・・・・・・・・・bird
 八句     あたり一面鈴虫の声・・・・・・・・・・・・・・・・・花子
 九句   そぞろ寒瓢の米も尽き果てて・・・・・・・・・・・・・謡拙
 十句     山頭火の動放哉の静・・・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 十一句 知らぬ間に知らぬ顔あり花見酒・・・・・・・・・・・・春海
 十二句   宇宙の見える春の岬に・・・・・・・・・・・・・・・・晋晋
 名残表
 初句   お互いの距離感をまだ測りかね・・・・・・・・・・ふく女
 二句     見合いの席の逆光眩し・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 三句   
間の悪い失恋ソング聞こえくる・・・・・・・・・・・ふく女
 四句     心新たに旅立ちの朝・・・・・・・・・・・・・・・・・うさこ
 五句   あばら家に密かに咲ける白木槿・・・・・・・・・・・謡拙
 六句     どぶろくあおるオモニも老いて・・・・・・・・・貴代姫
 七句   
語らうは自分の影と清き月・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 八句      一直線に踏み出す居合・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 九句   出したての質草なれど掌に馴染み・・・・・・・・・井蛙
 十句     すねてじゃれ寄る七歳の猫・・・・・・・・・・・つるこ
 十一句  ジャズの街外灯かこむ夏の宵・・・・・・・・・・・・・・bird
 十二句   若者たちは何処へ消えた・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 名残裏
 初句   巻貝が蓋を閉ざせる日本海・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 二句     旅の疲れを癒すマンモス・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 三句   さんざめく億万の星の子守唄・・・・・・・・・・・・・・浩平
 四句     稚児の頬を撫でる春風・・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 五句   満開の花に祭礼進みおり・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 挙句     沓の先にて遊ぶかげろう・・・・・・・・・・・・・・・井蛙


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   2011年2月27日満尾 「四苦八苦」の巻



 初表
 発句   四苦八苦知るや知らぬや秋の空・・・・・・・・・・・・弓月
 脇       年子寝かせてすする新蕎麦・・・・・・・・・・・・・・bird
 第三   月影はおだやかな笑みそそぐらん・・・・・・・・・・うさこ
 四句     唐土めざす風待ちの船・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 五句   つれづれに琵琶を奏でる友ありて・・・・・・・えどだわら
 六句     黄昏という時はうつくし・・・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 初裏
 初句   ふところに知覧の石をしのばせる・・・・・・・・・・・ふく女
 二句     初めての恋初めての人・・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 三句   雪の日の紅き鼻緒が縁結び・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 四句     橋番小屋に咳ひとしきり・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 五句   ひたひたと赤穂浪士の進みおり・・・・・・・・・・・・・井蛙
 六句     贔屓の父は職人気質・・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 七句   ふくよかに月に笑顔の御所人形・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 八句     弘法市は紅葉に映え・・・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 九句   芋を食う仏文教授肩越しに・・・・・・・・・・・・・・・・・うら
 十句     ポニーテールの青い目笑う・・・・・・・・・・・・・・はる
 十一句  カツカツと花振りも見ずハイヒール・・・・・・・・・・・春海
 十二句   がんばりの果てふと春愁い・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 名残表
 初句   はぐれたる風船ひとつ屋根を越え・・・・・・・・・・・・ばば
 二句     アビーロードのスタジオの前・・・・・・・・・・・・・月子
 三句   雑踏に像の如くに抱きあい・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 四句     夢二好みのか細きうなじ・・・・・・・・・・・・・・・・春海
 五句   大門を出る年季を知りもせず・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 六句     見上げる空に雁のひとつら・・・・・・・・・・・・・・西風
 七句   ガブリエルという名の犬と秋ベンチ・・・・・・・・・・・月子
 八句     月光浴びる盲目詩人・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 九句   朗々とシテの科白は響きおり・・・・・・・・・・・・・・・西風
 十句     あしらう笛よそれぞ松籟・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 十一句 城跡に韓のうま酒酌み交わし・・・・・・・・・・・・・・うさこ
 十二句   酔眼惑わす妖しき青磁・・・・・・・・・・・・・・・・・春海
 名残裏
 初句   店番のいそぎ蚊遣りを焚き始め・・・・・・・・・・・・・bird
 二句     片耳あげるまどろみの猫・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 三句   パソコンのキーが朝から動かない・・・・・・・・・貴代姫
 四句     ツイッターより春の革命・・・・・・・・・・・・・・・・花子
 五句   いつの世も花の姿は花のまま・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 挙句     富士をいただく国のどかなり・・・・・・・・・・・・・甘露


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2010採用句



   2010年9月22日満尾 
「ものをみな」の巻



 
初表
 発句   ものをみな天地に溶かし梅雨かな・・・・・・・・・・弓月
 脇       心預ける冷酒のグラス・・・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 第三    歌麿のぽっぺん鳴らす人ありて・・・・・・・・・・・・夢幻
 四句     路地の床几に燐寸の匂い・・・・・・・・・・・・・・・bird
 五句   上海の租界にのぼる赤い月・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 六句     霧笛を後に当て所なき旅・・・・・・・・・・・・・・.甘露
 初裏
 初句   踊り子の噂もとだえ秋つばめ・・・・・・・・・・・・・・・bird
 二句     温泉街のポスター褪せて・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 三句   スクランブルエッグみたいな恋してる・・・・・・・・・はる
 四句     あしたのデートちょっと塩味・・・・・・・・・・・・・西風
 五句   黒貂の毛皮が似合う未亡人・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 六句     いかさま勝負夜は更けゆく・・・・・・・・・・・・・・西風
 七句   月浴びて船べりたたく波の音・・・・・・・・・・・・・・・bird
 八句     秋風通るベネチアの街・・・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 九句   カクテルにオリーブの実を沈ませて・・・・・・・・ぽぽな
 十句     為替ディーラーの深き溜息・・・・・・・・・・・・・・花子
 十一句  衣桁には花嫁衣装のひとそろい・・・・・・・・・・ふく女
 十二句   鎮座在す老いた三毛猫・・・・・・・・・・・・・・・・・東風
 名残表
 初句   占いの館に薔薇の香り満ち・・・・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 二句     立ちはだかるはスペードのエース・・・・・・・つるこ
 三句   無防備に青菜を茹でる日曜日・・・・・・・・・・・・・Alice
 四句     抱かれた後のだるき春昼・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 五句   新妻の物干す肩に蝶とまる・・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 六句     戦地の夫の無事を祈れり・・・・・・・・・・・透菜の婆
 七句   ひっそりと地蔵を照らす片身月・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 八句     木犀の香も仕舞うこの秋・・・・・・・・・・・・・・・うさこ
 九句   鈴虫の籠遠ざける二浪の子・・・・・・・・・・・・透菜の婆
 十句     雲上の峰見え隠れして・・・・・・・・・・・・・・・・・花心
 十一句 さればここに文殊が獅子の踊り出で・・・・・・・・たぬき
 十二句   篝火のなか乱序(らんじょ)は響き・・・・・・・黒歌鳥
 名残裏
 初句   黒々と影を落とせる杉木立・・・・・・・・・・・・・・・・西風
 二句     見えぬ宮様つら伏せて待つ・・・・・・・・・・・・・・bird
 三句   高坏に饅頭高く盛られたり・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 四句     葺替え決める村の寄り合い・・・・・・・・・・・・・・bird
 五句   深山にも季は巡り来て花見時・・・・・・・・・・・・・つるこ
 挙句     ややの笑顔に春の煌き・・・・・・・・・・・・・・・・ばば


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   2010年5月9日満尾 
「春の海」の巻



 
初表
 発句   春の海左右に分かち豊島かな・・・・・・・・・・・・弓月
 脇      旅発つ吾子にオリーブの苗・・・・・・・・・・・・・綸子
 第三   赤風船白壁の街飛び行きて・・・・・・・・・・・・・・・・歩
 四句    あくびの猫に見覚えのあり・・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 五句   すり切れた口笛吹いて昼の月・・・・・・・・・・・・Alice
 六句    キネマ通りに名残の簾・・・・・・・・・・・・・・・・・・bird
 初裏
 初句   闇買いの新米リュックにバスを待つ・・・・・・・・・竹生
 二句    首の黒子が妖し人妻・・・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 三句   誰がために丁か半かで身を崩し・・・・・・・・・・・・はる
 四句    堤の向こうにただ日は沈む・・・・・・・・・・・・・ふく女
 五句   金色に浮かび出でたる阿弥陀堂・・・・・・・・・・・甘露
 六句    マルコポーロの夢の一片・・・・・・・・・・・えどだわら
 七句   潮騒の寄せては返す月涼し・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 八句    忘れたままの砂の人形・・・・・・・・・・・・・・・・・・bird
 九句   現し身の痛み知り初む春の宵・・・・・・・・・・・・・呆呆
 十句    笊のぜんまい疑問符ばかり・・・・・・・・・・・・・井蛙
 十一句 えいままよキャンティ持って花の宴・・・・・・・・・・綸子
 十二句  招待状で折った飛行機・・・・・・・・・・・・・えどだわら
 名残表
 初句   爪を噛むひとりぽっちの日曜日・・・・・・・・・・・・はる
 二句     時無し雨にメトロ止まりて・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 三句   行きずりの恋は青蔦からむ窓・・・・・・・・・・・貴代姫
 四句     南部なまりに何故かほだされ・・・・・・・・・・・呆呆
 五句   少年はミシシッピーを流れゆく・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 六句     高みを目指すかもめが一羽・・・・・・・・・・・・謡拙
 七句   無駄の無き姿は時に哀しくて・・・・・・・・・・・・・呆呆
 八句     雪見障子に寄り添える母・・・・・・・・・・・・貴代姫
 九句   卓袱台の離婚届の判の朱・・・・・・・・・・・・・・たぬき
 十句     木の実落つ音夜を深めゆく・・・・・・・・・・・貴代姫
 十一句 継ぎ琵琶の意匠をめでて山の月・・・・・・・・・・ふく女
 十二句   欣求浄土の思いもまさり・・・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 名残裏
 初句   寄せ返す波に戯れはしゃぐ子ら・・・・・・・・・・・ばば
 二句     遠くかすかにウミネコの声・・・・・・・・・・・・うさこ
 三句   キャンバスに自画像残し部屋を出で・・・・・・黒歌鳥
 四句     陽炎のなか我も揺れたり・・・・・・・・・・・・・ふく女
 五句   墨堤の喧騒脇に花見船・・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 挙句     交わす盃なべて麗らか・・・・・・・・・・・・・・・うさこ


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2009年採用句



   2009年12月30日満尾 
「秋分や」の巻


 
初表
 発句   秋分や我が影しるき坂の道・・・・・・・・・・・・・・・弓月
 脇       光琳垣に揺れる紅萩・・・・・・・・・・・・・・・・・・榧子
 第三   舞扇ひとさし所望月満ちて・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 四句     褒美の杯を受ける細指・・・・・・・・・・・・・・・・・鷹風
 五句   くの一の頭巾が隠す里心・・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 六句     はっしと打たれてわれに返りぬ・・・・・・・・・・栴檀
 初裏
 初句   幾年を大河静かに流れたり・・・・・・・・・・・・・・・はる
 二句     ポップコーンの弾けゆく街・・・・・・・・・・・・貴代姫
 三句   ぎこちない恋の始まり冬木立・・・・・・・・・・・・ふく女
 四句     指切したる指の火照りて・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 五句   路地の奥駆けて小さき黄八丈・・・・・・・・・・・・・竹生
 六句     天使突抜に秋風が吹く・・・・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 七句   月を背にパントマイムのチャップリン・・・・・・・・井蛙
 八句     成就せぬもの総ていとおし・・・・・・・・・・・・・呆呆
 九句   香水と薔薇を毎日取り替える・・・・・・・・・・・・貴代姫
 十句     1DKに猫と暮らして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うら
 十一句 子ら遊ぶ花一匁が響きおり・・・・・・・・・・・・・・黒歌鳥
 十二句   飢えし記憶の春の黄昏・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 名残表
 初句   鎮魂の想いを乗せて雛流す・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 二句     ただ降り続くやわらかき雨・・・・・・・・・・・・・うさこ
 三句   爪掛けの駒下駄と行く蛇の目傘・・・・・・・・・・・春海
 四句     白き脛見せつたう飛び石・・・・・・・・・・・・・・甘露
 五句   豆満江命の狭間凍て初める・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 六句     時計の針も砕け散る夜・・・・・・・・・・・・・・・・東風
 七句   ダリの砂記憶の粒子埋めてゆく ・・・・・・・・・・・はる
 八句     濃き珈琲の立ち籠める部屋・・・・・・・・・・貴代姫
 九句   窓一面銀杏黄葉の神懸かり・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 十句     柿を一切れ闘病の母・・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 十一句 露芝に月の意匠の筺をあけ・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 十二句   絵筆取り出す巴里の屋根裏・・・・・・・・・・・・竹生
 名残裏
 初句   聞き慣れぬサイレンよぎり遠ざかる・・・・・・・・ふく女
 二句     黒雲ひとつ雨の気配か・・・・・・・・・・・・・・・・西風
 三句   手酌にて独り呑んでる縄のれん・・・・・・・・・・・ばば
 四句     陸(おか)に上って初めての春・・・・・・・・・・Alice
 五句   敷島の大和はなべて花の雲・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 挙句     生まれ来る子の胎動強く・・・・・・・・・・・・・・綸子

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 2009年8月20日満尾 「あれこれと」の巻



 
初表
 発句   あれこれと捨てにし朝の若葉かな・・・・・・・・・・・弓月
 脇      老舗の暖簾揺らす薫風・・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 第三   伊太利亜の嫁の立ち居も身について・・・・・・・・・bird
 四句     半歩下がりに秋の夕暮れ・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 五句   道ならぬ恋をとがめる利鎌月・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 六句     君待つ宿に木犀悲し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 初裏
 初句   雨はなおあたり静かに降り続く・・・・・・・・・・・・・うさこ
 二句     紅絹の前掛け六地蔵尊・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 三句   ご開帳祖母は白髪を黒く染め・・・・・・・・・・・・・・東風
 四句     凧が飛び交う深川の空・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 五句   庵にもあさり売る声渡りきて・・・・・・・・・・・・透菜の婆
 六句     はしご酒した朝の悔恨・・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 七句   窓ごしに有明のぞく通勤車・・・・・・・・・・・・・・・・甘露
 八句     組み居し足に草の実ひとつ・・・・・・・・・・・・・井蛙
 九句   秋の野の密事をば誰か知る・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 十句     兄の形見を持ちて嫁ぐ日・・・・・・・・・・・・・・・鷹風
 十一句 黒髪のはらりほどけて花の舞・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 十二句   二条邸にて曲水の宴・・・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 名残表
 初句   帰る雁大空高く影映し・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・西風
 二句     日雇い仕事今朝もあぶれる・・・・・・・・・・・・ふく女
 三句   公園の蟻の行列終わりなく・・・・・・・・・・・・・おだまき
 四句     ジェラートぽたり溶けゆく盛夏・・・・・・・・・・・ふく女
 五句   オードリー・ヘップバーンに憧れて・・・・・・・・・ぽぽな
 六句     白き木槿のごとく老いたし・・・・・・・・・・透菜の婆
 七句   蝋燭の明かりが揺れる盆提灯・・・・・・・・・・・・・東風
 八句     夢はまことか妻の呼ぶ声・・・・・・・・・・・・おだまき
 九句   楽焼に残る唇赤々と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・東風
 十句     受ける両手に散るは一ひら・・・・・・・・・・・・・甘露
 十一句  不仕合せしあわせ春の月を浴び・・・・・・・・・貴代姫
 十二句    雛菊千切るギブスの少年・・・・・・・・・・・・・・・bird
 名残裏
 初句   紙芝居すこし離れて耳すまし・・・・・・・・・・・・・ふく女
 二句     鼈甲飴が冬日に透けて・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 三句   母の編む毛糸の玉の転がれり・・・・・・・・・・・・・ばば
 四句     紙切れ一枚兵士の帰還・・・・・・・・・・・・・・・東風
 五句   咲く花も散る花もみな命あり・・・・・・・・・・・・・・・西風
 挙句     大和は永久に風光る国・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな


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   2009年3月24日満尾 
「帰る家の」の巻



 
初表
 発句  帰る家のあるが悲しや初時雨・・・・・・・・・・・・・・弓月
 脇      父が残した赤いマフラー・・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 第三   満州の落日並ぶ影染めて・・・・・・・・・・・・・・・・・甘露
 四句    美しい嘘に心揺れた日・・・・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 五句   月も無き夜に白檀の香り立つ・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 六句    萩のこぼるる声を聞きおり・・・・・・・・・・・・・・・はる
 初裏
 初句   蹲り来し方惜しむキリギリス・・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 二句    逃げられて知る過ぎた女房・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 三句   糊つよき浴衣並びし閨の内・・・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 四句    睦言とぎれ擦り半鐘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふく女
 五句   駆け抜ける娘の素足寒厳し・・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 六句    満願近きお百度参り・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 七句   携帯に安否の鳴りて望の月・・・・・・・・・・・・・・・・・bird
 八句    薄の穂波風に沸き立つ・・・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 九句   見上げれば諾とのたもう秋の富士・・・・・・・・・ともろう
 十句    故郷を捨てて三日目の朝・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 十一句 花万朶つかの間の夢見ていたり・・・・・・・・・・・・ばば
 十二句   沈黙の春読みさしたまま・・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 名残表
 初句   ぶらんこを庭に造りし子煩悩・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 二句    三回忌には悋気も失せて・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 三句   ハイヒール濃い目の香水風を切る・・・・・・・・・うさこ
 四句    ひとりひとりの影の短さ・・・・・・・・・・・・・・・ともろう
 五句   終戦の玉音聞きて立ちつくす・・・・・・・・・・・・・・甘露
 六句    確かなものは不条理の中・・・・・・・・・・・・・・・はる
 七句   緋に染まるブイヤベースの車海老・・・・・・・・・ふく女
 八句    海と空とが青競う町・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・西風
 九句   戯れに口づけをした夜もあり・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 十句    惑いは言わず細き指文字・・・・・・・・・・・・・・・・bird
 十一句 軒先に月をあおいで七つ立ち・・・・・・・・・・・・・ふく女
 十二句   目覚め初めしか萩けむる里・・・・・・・・・・・・・春海
 名残裏
 初句  洗面の手押しポンプに宿る露・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 二句    母の口ぐせ耳底にあり・・・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 三句  同じこと子に言っているわれがいて・・・・・・・・・・はる
 四句    残り香満つる雛納めの夜・・・・・・・・・・・・・・・甘露
 五句  嫁ぐ日の満開願う花暦・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・鷹風
 挙句    路地の奥にも春風の吹く・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声


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                           2008年採用句



   2008年10月22日満尾 
「杏かな」の巻



 
初表
 発句  あじさいの哀しみ熟らし杏(あんず)かな・・・・・弓月
 脇       断然と湧く岬の夏雲・・・・・・・・・・・・・・・・貴代姫
 第三   舫(もや)い解く漁師の肌の輝きて・・・・・・・・・ばば
 四句     僕の前行く連れの黒猫・・・・・・・・・・・・・・・Alice
 五句   珈琲の香りににじむ蒼き月・・・・・・・・・・・・・・・甘露
 六句     栗羊羹を一切れ残す・・・・・・・・・・・・・・・ぽぽな
 初裏
 初句   婆様は去年の秋に身罷りぬ・・・・・・・・・・・・・・竹生
 二句     思い定めてルージュ引く朝・・・・・・・・・・・・・甘露
 三句   恋衣かこみ取材の記者の意地悪・・・・・・・・・ふく女
 四句     握り拳に降り懸かる雪・・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 五句   暮れ六つの鐘もいつしか鳴りやみて・・・・・・・うさこ
 六句     心急かれる山の辺の道・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 七句   幼子の指差す先に望の月・・・・・・・・・・・・・・・撫子
 八句     妻の初盆送り火消えて・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 九句   ぽつねんと打ち置かれたる薩摩芋・・・・・・・・・謡拙
 十句     芸術なのかそうでないのか・・・・・・・・・・・・ぐみ
 十一句 花吹雪路上ライブの肩に降る・・・・・・・・・・・・・ばば
 十二句   春の空には赤い風船・・・・・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 名残表
 初句   海辺往く遍路姿の老夫婦・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 二句     セピアの写真の隅の浜木綿・・・・・・・・ゆめ比乎
 三句   サイダーの泡の弾ける音かすか・・・・・・・・・ぽぽな
 四句     殺意はやさし胸の縞蛇・・・・・・・・・・・・・・たぬき
 五句   もどかしく恋の知恵の輪とけぬまま・・・・・・・・・甘露
 六句     肩に残しぬ甘噛みのあと・・・・・・・・・・・・・・榧子
 七句   澱むごと嘘の重さの朝の床・・・・・・・・・・・・・・・春海
 八句     金木犀が咲いたのを知る・・・・・・・・・・・・・・鷹風
 九句   白い杖暫しとどめて秋つ風・・・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 十句     古き軒端の忘れ風鈴・・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 十一句 月の夜にあやかしどもも誘われて・・・・・・・・・・呆呆
 十二句   ふうわりと酔う甘きどぶろく・・・・・・・・・・・・・ばば
 名残裏
 初句   幸せの湯気立ち昇る卵焼き・・・・・・・・・・・・・・鷹風
 二句     窓を開ければ竹林が見え・・・・・・・・・・・貴代姫
 三句   金創に膏薬のばし伏す二日・・・・・・・・・・・・・ふく女
 四句     国盗る夢は春のまぼろし・・・・・・・・・・・・貴代姫
 五句   我は我足下に置く花の雲・・・・・・・・・・・・透菜の婆
 挙句     泊瀬の宮に風光る午後・・・・・・・・・・・・・・・ぐみ


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 2008年6月5日満尾 「千木高し」の巻



 
初表
 発句   橿原の光も春に千木高し・・・・・・・・・・・・弓月
 脇       受け伝えゆく麗けき御世・・・・・・・・・・うさこ
 第三   すみれ摘む園児の歌声聞こえきて・・・・・竹生
 四句     無職となりし朝のぬるま湯・・・・・・・・・・ぐみ
 五句   身上をつぶすもよしと腹を据え・・・・・・・・・甘露
 六句     磐梯山に掛かる繊月・・・・・・・・・・・・・ばば
 初裏
 初句   蔵のなか林檎の香り閉じこめて・・・・・・・・Alice
 二句     骨きしむまで禁断の恋・・・・・・・・・・・未生草
 三句   きぬぎぬの別れの尼か脛白く・・・・・・・・・甘露
 四句     閨の廂に不如帰鳴く・・・・・・・・・・・・・・竹生
 五句   お馴染みの鬱の季節をまた迎え・・・・ゆめ比乎
 六句     クリームパスタに胡椒利かせる・・・・・ふく女
 七句   大仕事終えてカポネはご満悦・・・・・・・・・謡拙
 八句     横顔照らす青き月影・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 九句   鞭打ちの刑を受けたり芒原・・・・・・・・・貴代姫
 十句     しわがれ声で通りゃんせの歌・・・ゆめ比乎
 十一句  朝日射す靖国参道花揺れて・・・・・・・・貴代姫
 十二句   朧に帰る征きし児の影・・・・・・・・・・・・・甘露
 名残表
 初句    深酒の終わりはいつも同じ夢・・・・・・・・ぽぽな
 二句     抱かれぬままの恋の苛立ち・・・・・・・・綸子
 三句   口紅でガラスに好きと書いてみる・・・・・貴代姫
 四句     鎖骨を見せるサテンのドレス・・・・・・・・呆呆
 五句   シャンソンもフロアのしみも物憂き夜・・・・・甘露
 六句     薔薇よりも濃き罪の香りよ・・・・・・・・ぽぽな
 七句   旅立ちの搭乗券を胸に抱き・・・・・・・・・・・撫子
 八句     白い帽子を置いてゆく町・・・・・・・・ゆめ比乎
 九句   灯りなき月下ひときわ虫の声・・・・・・・・・ふく女
 十句     破れ芭蕉がリズムを刻む・・・・・・・・・・・鶯声
 十一句  義仲寺の門開けられて秋の雨・・・・・・貴代姫
 十二句    一期は夢と思い知らされ・・・・・・・・・・謡拙
 名残裏
 初句   秀吉の勘に触れたる雪駄履き・・・・・・・・・東風
 二句     水琴窟の音に聞き入る・・・・・・・・・・・・撫子
 三句   ふんわりと香り気高き闇の梅・・・・・・・・・・謡拙
 四句     迷いて踏むな明日摘む若菜・・・・・・・・一止
 五句   花嫁を背にしずしずと春の駒・・・・・・・・・・・ぐみ
 挙句     とこしえにあれ爛漫の笑み・・・・・・・・・うさこ


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2007年採用句



   2007年12月24日満尾 
「最高に」の巻



 
初表
 発句  最高に暑き日の夜に餃子かな・・・・・・・・・・弓月
 脇       思い出話は玉音放送・・・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 第三   裏山の父植えたまう木の伸びて・・・・・・・・・ばば
 四句     おおたかという鳥が棲むなり・・・・・・・・・・竹生
 五句   雪の底砦に籠もる老侍・・・・・・・・・・・・・ゆめ比乎
 六句     髪黒々と薄化粧して・・・・・・・・・・・・・・・・鶯声
 初裏
 初句   無事を祈り文したためる須磨の浦・・・・・・・・月兔
 二句     男波女波のからみ合う午後・・・・・・・・貴代姫
 三句   連弾きに熱き思いが背に伝う・・・・・・・・・・・悟空
 四句     ぎこちなささえあなたらしくて・・・・・・・・・・ぐみ
 五句   湿り気を含みし風の吹く歩道・・・・・・・・・・・・ばば
 六句     丹色の僧衣連なりて行く・・・・・・・・・・・・呆呆
 七句   澄み切った瞳に憂い昼の月・・・・・・・・・・貴代姫
 八句     檸檬転がす独りのテラス・・・・・・・・・・・・ばば
 九句   装飾をすべて捨てよと天の声・・・・・・・・・・・呆呆
 十句     淡雪うつす志野のぐい呑み・・・・・・・・・・甘露
 十一句 病む友と花まだ固き宴なり・・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 十二句   雲雀の声に会話途切れて・・・・・・・・・・・謡拙
 名残表
 初句   青春の始まりの日とは知りもせず・・・・ゆめ比乎
 二句     『赤毛のアン』と揺れるつり革・・・・・・・・Alice
 三句   好き嫌いやっぱり好きと言い聞かせ・・・・・西風
 四句     君の鼓動を聞いている夏・・・・・・・・・・・ぐみ
 五句   羊水という不確かな海の中・・・・・・・・・・貴代姫
 六句     何悟りしや強情の性・・・・・・・・・・・・・・・呆呆
 七句   北斎は歯の無い顎でタコを噛む・・・・・ゆめ比乎
 八句     破れ障子を抜ける秋風・・・・・・・・・・・・・謡拙
 九句   久々の小判と月の六畳間・・・・・・・・・ゆめ比乎
 十句     猫を相手に酌む温め酒・・・・・・・・・・・・・ぐみ
 十一句  片膝を立ててオモ二は国を恋う・・・・・・貴代姫
 十二句    お守り袋に一つの小石・・・・・・・・ゆめ比乎
 名残裏
 初句   しあわせはラピスラズリの青い色・・・・・・貴代姫
 二句     雲うかぶ空鳴りわたる鐘・・・・・・・・・・・うさこ
 三句   長崎の街を見守る天主堂・・・・・・・・・・・・・謡拙
 四句     うららかなれば母をぞ念う・・・・・・・・・・・ぐみ
 五句   千年を生きし桜の花盛り・・・・・・・・・・・・・・ばば
 挙句     来し方春の夢にて候・・・・・・・・・・・・・貴代姫


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   2007年7月22日満尾 
「鶯や」の巻

  初表
 発句   鶯や異常気象も彼岸まで・・・・・・・・・・・弓月
 脇       乙女の襟に春のスカーフ・・・・・・・・・ばば
 第三   うららかな町を海風駆け抜けて・・・・・・・西風
 四句     漂泊の念憑きて離れず・・・・・・・・・・呆呆
 五句   月影を映してゆれる隅田川・・・・・・・・・・ぐみ
 六句     梅若塚に鳴く鉦叩・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 初裏
 初句   昼寝する孫の手元に虫の籠・・・・・・・・・竹生
 二句     壁に貼られた大世界地図・・・・・・・・・ばば
 三句   マント着て信長なにを想うらん・・・・・・・・謡拙
 四句     雪夜に浮かぶ白き横顔・・・・・・・・・・・花子
 五句   色褪せし文また見れば断ち切れず・・・・・甘露
 六句     こころに任せかきならす琵琶・・・・・・うさこ
 七句   方丈の破れ庇に洩るる月・・・・・・・・・・・増花
 八句     選集の沙汰この秋もなし・・・・・・・・・・苦楽
 九句   野ぶどうを口に含みし崖の上・・・・・・・・・増花
 十句     茜に染まるドーバー海峡・・・・・・・・・・ばば
 十一句 花の頃横浜出でし船の旅・・・・・・・・・・・・竹生
 十二句   昔男の粋な夏帽・・・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 名残表
 初句   不整脈気がかりながらもタップ踏む・・・渡る風
 二句     フルーツサンドが甘すぎる昼・・・・・・Alice
 三句   内深く君の温みの残りいて・・・・・・・・・・ぐみ
 四句     打たれるままに後朝の雨・・・・・・・・・呆呆
 五句   にごり江を流るうたかた消え結び・・・・・・甘露
 六句     不意に鳶のさらうものかげ・・・・・・・・・増花
 七句   空高し明日のことはまた明日・・・・・・・・・呆呆
 八句     鬼の捨て子に風のゆりかご・・・・・・・・花子
 九句   トゲトゲの心に注ぐ青い月・・・・・・・・・・・・まり
 十句     ジントニックとジャズの調べと・・・・・ぽぽな
 十一句 歌姫はへプバーンのような顔をして・・・・・Alice
 十二句   赤い大地に慈雨降り注ぐ・・・・・・・・・・・謡拙
 名残裏
 初句   遠き日が記憶を語る羊歯の森・・・・・・・・呆呆
 二句     方位磁石は静かに震え・・・・・・・・・ぽぽな
 三句   期待する親の気持ちの重きこと・・・・・・・ぐみ
 四句     シャボン玉など吹いてみる午後・・・ぽぽな
 五句   薄紅の花びらひらり舞いおちて・・・・・・うさこ
 挙句     のどかな景色ひろがれる国・・・・・・・西風


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   2007年2月25日満尾 「天心に」の巻

  初表
 発句   天心にこれみよかしと比叡の月・・・・・・・弓月
 脇       酒をぬくめて誰を待つ秋・・・・・・・・ゆめ比乎
 第三    猪脅し二つ三つとこだまして・・・・・・・・・・鶯声

 
四句     小さき悔やみ苛み止まず・・・・・・・・・・・呆呆
 五句    力込め紙ヒコーキを飛ばす原・・・・・・・・・ばば
 六句     果てなく見える東シナ海・・・・・・・・・・ふ〜
 初裏
 初句    地図の上沈みし戦艦(ふね)の跡たどる・ひろこ
 二句     恋人の名で我を呼ぶ母・・・・・・・・・・・・呆呆
 三句    手鏡で紅きべにさす白き顔 ・・・・・・・・・・・ふ〜
 四句     セーラー服にはちきれる胸・・・・・・・・・竹生
 五句    太陽を掴むがごとくポプラ伸ぶ・・・・・・・・・ばば
 六句     軽い眩暈に立ち止まる午後・・・・・・・・・呆呆
 七句    身の内に欠けては満ちる月ありて・・・・ぽぽな
 八句     蘆火の炎映す川浪・・・・・・・・・・・・・・・花子
 九句    秋風に置いてきた子が気にかかり・・・・・月子
 十句     昔留めぬ大連の街・・・・・・・・・・・・・・・謡拙
 十一句  花吹雪戦の傷の癒えぬまま・・・・・・・・・・・ばば
 十二句   ショパンのピアノ聴いている春・・・・・・ぽぽな
 名残表
 初句    くちづけに君への思い募らせて・・・・・・・うさこ
 二句     歳の離れた妻のあるひと・・・・・・・・・・・・ぐみ
 三句    ルミナリエ恋う人の背に老いの影・・・・・・甘露
 四句     粉雪小雪すべてを隠し・・・・・・・・・・・・・呆呆
 五句    蝋梅のかおり導く瞽女の列・・・・・・・・ゆめ比乎
 六句     海鳥の声ちちははに似て・・・・・・・・・・・増花
 七句    忘れんとせし事もまた我が身なり・・・・・・・孤筑
 八句     夕日にたたずむショウペンハウエル・ゆめ比乎
 九句    地の底で息を潜ませ居待月・・・・・・・・・・・ぐみ
 十句     連歌会所の井戸水澄みし・・・・・・・・・・・増花
 十一句  宗匠は秋空ばかりを気にしおり・・・・・・・・・ふ〜
 十二句   袱紗に包む殿への賂・・・・・・・・・・・・・・・竹生
 名残裏
 初句   どことなく身に反り合わぬ色衣・・・・・・・・・・呆呆
 二句    大股で行く街の雑踏・・・・・・・・・・・・・・・・ばば
 三句   将軍に召されし象の長き旅・・・・・・・・・・・・謡拙
 四句    春の長日に霞む富士の嶺・・・・・・・・ゆめ比乎
 五句   天駆ける裳裾のごとく花舞いて・・・・・・・・・西風
 挙句     諸手かざして微笑む童女・・・・・・・・・・・・花子