平成二十三年七月十一日                                             もどる

歌仙連歌「しなの路の」の巻

  長野高山村「一茶ゆかりの里一茶館」

 

初表
発句  しなの路の山が荷になる暑さ哉(一茶)

脇    岩に消えゆく朝蝉の声(繁治)

三句  カフェテラス濃き珈琲の香りして(貴代美)

四句   ききょう一輪片隅照らす(和子)

五句  振り向けば尖る三日月軒の下(凛)

六句   泣けとばかりにすだく虫たち(修三)

初裏
初句  かからない電話を待って夜を過ごす(田鶴子)

二句   つきぬ恨みを猫にぶっつけ(修三)

三句  ほほえみし写真はいまだ立てしまま(貴代美)

四句   ダイエットしてビキニに挑戦(凛)

五句  わが娘十七歳になりし朝(修三)

六句   平成元年初秋の頃(貴代美)

七句  うたてやな今年の月を何と見ん(修三)

八句   天変地異と巫女がつぶやき(貴代美)

九句  緋のはかま厳橿が下に並びたり(修三)

十句   ひいらりひらり蝶が飛び来て(凛)

十一句 夕暮は上野に集う花見酒(田鶴子)

十二句  ぼんぼり揺らし春の風吹く(和子)

名残表
初句  君想い果てなくつづく修羅の道(春雄)

二句   駆け落ちせんと夜明けを待てり(麗ら)

三句  難波江の葦の葉かげにもやい舟(七重)

四句   姿かくしてよしきりの鳴く(清實)

五句  リュック背に裸の大将うなづきぬ(弘子)

六句   海の紺碧この色でよし(博)

七句  ミコノスの白壁並ぶ石畳(麗ら)

八句   郵便配達肩で息する(凛)

九句  半年の闘病生活乗り切って(純子)

十句   前栽埋める福助の菊(順子)

十一句 踏み石の赤い鼻緒に月明かり(由紀江)

十二句  そばに鋭き栗のいがいが(繁治)

名残裏
初句  風さわぎ何も語らぬ去来墓(春雄)

二句   おしゃべり尽きぬ吟行仲間(順子)

三句  ベレー帽に葉巻くゆらす優男(純子)

四句   都をどりのチケット胸に(弘子)

五句  東山そぞろ歩きの花づかれ(由紀江)

挙句   かすみにとける山寺の鐘(満里子)

 

句上  小林一茶(1) 杉田繁治(初折宗匠・2) 城貴代美(初折執筆・4) 友永和子(2) 野田凛(4) 高城修三(名残宗匠・5) 伊藤田鶴子(2) 廣瀬春雄(2) 吉田麗ら(2) 下石坂七重(1) 今枝清實(1) 松田弘子(世話人・2) 石田博(1) 嶋岡純子(世話人・2) 山田順子(2) 小堀由紀江(2) 奥山満里子(名残執筆・1) 野村笑吾 田中哲哉 田中由美子 上羽利枝

 

初折は、特急しなの五号の車中で小林一茶の「しなの路の山が荷となる暑さ哉」を発句に脇起りで三グループが巻き、そのうち杉田繁治氏が宗匠役をつとめた半歌仙を採用、つづいて翌日の名残折は高城修三氏が宗匠となり高山村「一茶ゆかりの里」の一茶離れ家で全員が参加して巻き上げました。


 一茶ゆかりの里一茶館