白樺連歌会 戻る



令和5年十月二八日満尾
半歌仙連歌「猛暑日の」の巻
 於 おおたや

発句   猛暑日の今なおつづく残暑かな(修三)
脇      はや地蔵盆静なる街(貴代美)
第三   寺町の甍の上に月照りて(建夫)
四句     我が物顔に黒猫のいく(修三)
五句   保護されてやがて太りし桜耳(貴代美)
六句     捨てる人あり拾う神あり(純子)
七句   今日もまたトーヨコ少女の屯して(浩)
八句     恋の行方は金次第なり(修三)
九句   挙句には恨みばかりが残りたる(和子)
十句     おはぐろ溝の柳の下で(修三)
十一句 円安でインバウンドのお客様(浩)
十二句  誰も彼もが刺青をして(修三)
十三句 月を背にトライの我に挑む腕(浩)
十四句  ラグビー今日も長き夜なり(修三)
十五句 声からしテレビの前の荒走り(貴代美)
十六句  ルンバ追いかけじゃれつく仔猫(浩)
十七句 去年のごと円山公園花盛り(春雄)
挙句    知らぬ顔して春の風ふく(繁治)

句上 高城修三(宗匠・6) 城貴代美(3) 村上建夫(1) 嶋岡純子(世話人・1)  府川浩(4) 友永和子(1) 廣瀬春雄(1) 杉田繁治(1)


令和五年七月二十二日満尾
半歌仙連歌「梅雨晴れや」の巻
 於 おおたや

発句   梅雨晴れや京の町家の入日どき(純子)
脇      外つ国人の帰り来る夏(修三)
第三   ひっそりと山椒魚は吐息して(貴代美)
四句    芹生の奥に葦原のあり(修三)
五句   永らえてまことうるわし今日の月(貴代美)
六句    恥ずかしながら帰還せし冬(修三)
七句   幾百万声無き霊の九段坂(春雄)
八句    君は何ゆえ死にたまうなり(修三)
九句   心中の男は我の知らぬ人(久仁子)
十句    謎解けぬまま降り続く雨(純子)
十一句 味噌樽の衣類めぐりて半世紀(浩)
十二句  清水次郎長如何にとやせん(修三)
十三句 月影の茶畑照らす十五代(建夫)
十四句  富士の初雪八月早々(修三)
十五句 初心者が弾丸登山決行す(浩)
十六句  女人ながらに春の大峰(建夫)
十七句 遅咲きの奥千本の花を背に(和子)
挙句    うららかな午後両手いっぱい(久仁子)

句上 嶋岡純子(世話人・2) 高城修三(宗匠・6) 城貴代美(2) 廣瀬春雄(1) 原野久仁子(2) 府川浩(2) 村上建夫(2) 友永和子(1) 杉田繁治


令和五年五月二十七日満尾
半歌仙連歌「黄砂舞う」の巻
 於 おおたや

発句   黄砂舞う京の河原のジャズライブ(浩)
脇      阿国の像の春の憂鬱(貴代美)
第三   雉虎の子猫尿する仕草して(修三)
四句    やめてアルパカ百パーセント(久仁子)
五句   月の下ラクダ一頭迷い込み(修三)
六句    踏み荒らされしラッキョウ畑(純子)
七句   ガングロとヤンキー娘タイマンす(修三)
八句    ホスト一人に命をかけて(浩)
九句   なみなみとシャンパンタワー冬の恋(純子)
十句    堕ちるもよしと覚悟きめたり(貴代美)
十一句  もう良かと山も言いたる明けの空(七重)
十二句   清の貼り絵煙吐く島(建夫)
十三句  入り札が八百万と月笑う(純子)
十四句   夏の天満の仕舞屋二階(建夫)
十五句 マル研の尖った声が聞こえ来て(俊平)
十六句  新入生が回り道する(久仁子)
十七句 誰もいぬ花の盛りを見つけたり(繁治)
挙句    喜寿の祝いを一人する春(貴代美)

句上 府川浩(2) 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・3) 原野久仁子(2) 嶋岡純子(3) 下石坂七重(1) 村上建夫(2) 竹本俊平(1) 杉田繁治(1)


令和五年三月二十五日満尾
半歌仙連歌「春立つや」の巻
 於 おおたや

発句   春立つや比叡の稜線なごみたり(七重)
脇      紅き椿の坂本城址(建夫)
第三   雉虎の子猫ひつこくまとわりて(修三)
四句    一人降り立つ無人の駅舎(貴代美)
五句   見上ぐれば白き気球と昼の月(浩)
六句    裸の大将さまよえる夏(繁治)
七句   むすび手に僕は生涯二等兵(和子)
八句    紙でつくった婚約指輪(正子)
九句   今はもう汚れちまったあの思い(浩)
十句    小林秀雄は恋敵なり(修三)
十一句  カナリアはただ鳴くばかり冬の朝(純子)
十二句   上九一色に緊張の顔(春雄)
十三句  皓々と月が照らせるヘルメット(貴代美)
十四句   保線工事は夜長を徹し(俊平)
十五句  削岩機止まりし時に虫の声(和子)
十六句   淀の中瀬の堤の上で(修三)
十七句  マスク取り老若男女花の宴(久仁子)
挙句     浮かれる春のとこしえにあれ(修三)

句上 下石坂七重(1) 村上建夫(1)  高城修三(宗匠・4) 城貴代美(2) 府川浩(2) 杉田繁治(1) 友永和子(2) 前田正子(1) 嶋岡純子(世話人・1) 廣瀬春雄(1) 竹本俊平(1) 原野久仁子(1)


令和四年十月二十二日満尾
半歌仙連歌「新米や」の巻
 於 おおたや

発句   新米や匂い立ちくる鄙の庵(七重)
脇      熊野鵜殿で人を待つ萩(浩)
第三   これはこれ独りごちする月出でて(貴代美)
四句    猫が邪魔する在宅勤務(浩)
五句   熱風をかき回すだけの扇風機(修三)
六句    痴漢容疑の取調室(俊平)
七句   教師歴三年の冬の朝(純子)
八句    ガングロ女子に告白されぬ(修三)
九句   みちのくのしのぶもじずりたれゆえに(貴代美)
十句    恨むというは恋の故なり(修三)
十一句 夕暮れに信太の森に佇みて(和子)
十二句  北の脅威に抗う手立て(建夫)
十三句 ミサイルを撃ちまくりけり朝の月(純子)
十四句  京都中京路地の嵯峨菊(修三)
十五句 宅配の手押し車が行き交いて(浩)
十六句  今年の春はコロナ無き春(修三)
十七句 何とまあ老いも若きも花愛でて(久仁子)
挙句    夢に見たよなうららかな時(和子)

句上 下石坂七重(1) 府川浩(3) 城貴代美(2) 高城修三(宗匠・5) 竹本俊平(1) 嶋岡純子(世話人・2) 村上建夫(1)友永和子(2) 原野久仁子(1) 


令和四年五月二十六日満尾
半歌仙連歌「春しぐれ」の巻
 於 おおたや

発句   春しぐれ中京濡らす夕べかな(修三)
脇      ほろ酔い気分ゆれるこでまり(貴代美)
第三   孕み猫後ずさりつつねめつけて(純子)
四句    髭をのばした山伏一人(修三)
五句   谷深き飛騨のいで湯に昇る月(貴代美)
六句    夜長忘れて想うことあり(修三)
七句   この秋キーウのことが気がかりで(久仁子)
八句    ひまわり畑で遊んだ乙女(修三)
九句   十月たちあなたの子よと知らされて(浩)
十句    後悔ばかり先立つ真昼(修三)
十一句  売りと買い切羽詰りて兜町(建夫)
十二句   缶コーヒーを一息で飲み(貴代美)
十三句  ガサいれの指令を待ちて寒の月(春雄)
十四句   不安募りて靴底の冷え(弘子)
十五句 風呂敷に一切つつむ三等車(貴代美)
十六句   窓に映りし我がなみだ顔(繁治)
十七句 木造の校舎の庭の花吹雪(貴代美)
挙句    いつの間にやら春の暮れゆく(和子)

句上  高城修三(宗匠・5) 城貴代美(5) 嶋岡純子(世話人・1) 原野久仁子(1) 府川浩(1) 村上建夫(1) 廣瀬春雄(1) 松田弘子(1) 杉田繁治(1) 友永和子(1)


令和四年三月二十六日満尾
半歌仙連歌「大寒や」の巻
 於 おおたや

発句   大寒やトンガの海の大噴火(純子)
脇      八千キロを来る冬津波(修三)
第三   知らぬげに二匹の猫のたわむれて(貴代美)
四句     ご主人様は息絶えにけり(修三)
五句   月天心静かに照らす長屋門(繁治)
六句     論語素読にすむ萩の風(春雄)
七句   白露分け遠くより来る友のあり(久仁子)
八句     一斗の酒千の歌詠む(修三)
九句   大方は恋の恨みを連ねたる(貴代美)
十句     交換日記絶縁の文(純子)
十一句  プーチンを擁護する君許されじ(修三)
十二句   背景画にはひまわり畑(純子)
十三句  屋根裏のパソコン部屋に夏の月(修三)
十四句   使い古した祇園の団扇(純子)
十五句  三助が五右衛門風呂の加減訊く(和子)
十六句   おぼろの春はいかにてもよし(修三)
十七句  裏山の花は盛りを迎えたり(貴代美)
挙句     ほけきょうの声まだ稚拙なり(府川)

句上 嶋岡純子(世話人・4) 高城修三(宗匠・6) 城貴代美(3) 杉田繁治(1) 廣瀬春雄(1) 原野久仁子(1) 友永和子(1) 府川浩(1)


令和三年十二月二十五日満尾
半歌仙連歌「これがまあ」の巻
 於 おおたや

発句   これがまあ芭蕉の愛でし時雨かな(修三)
脇      公孫樹色づく御堂門前(建夫)
第三   見上れば笑い顔なる月ありて(修三)
四句     異国の丘を歌いおりたり(貴代美)
五句   午前二時ゴールデン街にひと気なし(修三)
六句     来るとの噂オミクロン株(繁治)
七句   キスだけの淡い恋さえ命がけ(建夫)
八句     組長恨む妻にほだされ(純子)
九句   今日またラインで文の数知れず(修三)
十句     京の純喫茶金魚ゆらめく(貴代美)
十一句  クラッシック老いも若きもマスクつけ(修三)
十二句    二年ぶりなり野外コンサート(春雄)
十三句  悲しみも喜びもまた望の月(修三)
十四句    いずこともなく邯鄲の声(和子)
十五句  一炊の夢よりさめて肌寒し(貴代美)
十六句   支那の古典は我が古典なり(修三)
十七句  寮生は花の下にて夜もすがら(貴代美)
挙句     入学式の二日あとなり(修三)

句上 高城修三(宗匠・8) 村上建夫(2) 城貴代美(4) 杉田繁治(1) 嶋岡純子(世話人・1) 廣瀬春雄(1) 友永和子(1)    


令和三年十月二十三日満尾
半歌仙連歌「大暑かな」の巻
  於 おおたや

発句   大暑かなアフリカ産のエビフライ(貴代美)
脇      ラクビークラブ汗の昼飯(純子)
第三   この次に印を結ぶは我にして(修三)
四句    秋風さやか忍者村ゆく(久仁子)
五句   天窓に月影のぞく伊賀の宿(建夫)
六句    秋刀魚つまみに杯重ね(浩)
七句   くの文字に膝を崩した女をだき(純子)
八句     嫌よ嫌よも好きのうちにて(和子)
九句   年くいて屁をこきあうもさだめなり(春雄)
十句     死の間際には後悔ばかり(修三)
十一句  喜劇王馬鹿殿にくれ一人逝く(浩)
十二句   チンパンジーが手を打ちたたき(貴代美)
十三句  のったりと如意が岳より冬の月(純子)
十四句   拝む人あり笑う人あり(修三)
十五句  大津絵の鬼の褌ゆるみいて(貴代美)
十六句   素早い筆に春の夕暮れ(純子)
十七句  今年また薄墨桜の花盛り(和子)
挙句     遠く聞こえるうぐいすの声(繁治)

句上 城貴代美(3) 嶋岡純子(世話人・4) 高城修三(宗匠・2) 原野久仁子(1) 村上建夫(1) 府川浩(2) 友永和子(2) 廣瀬春雄(1) 杉田繁治(1)

コロナ禍にあってようやく七月と十月に白樺連歌会を興行することができました。



令和三年二月二十七日・三月二十七日
半歌仙連歌「カツ丼を」の巻
 於 おおたや

発句   カツ丼を平らげ三寒四温かな(貴代美)
脇      大学受験のありし早朝(修三)
第三   名残雪滑らぬように気をつけて(久仁子)
四句     一列縦隊ケープペンギン(純子)
五句   アフリカの白き岬に望の月(春雄)
六句     肌寒き夜にページ繰る音(正子)
七句   コーナーの残るアルバム秋の恋(建夫)
八句     恨みつらみは忘れはてたり(繁治)
九句   今はただ猫とみかんと漫画本(和子)
十句     コロナが破りし留学の夢(貴代美)
十一句  リモートに凱旋門が映りいて(正子)
十二句    積乱雲が立ち昇りけり(修三)
十三句  嫌がるも羽交い絞めさる昼の月(建夫)
十四句    人間界ではセクハラという(修三)
十五句  真実は不機嫌そうな面つけて(和子)
十六句    余命聞きたる春の病院(久仁子)
十七句  洛北の深泥が池は花盛り(修三)
挙句      地蔵の笑みはのどかなりけり(貴代美)

句上 城貴代美(3) 高城修三(4) 原野久仁子(2) 嶋岡純子(1) 廣瀬春雄(1) 村上建夫(2) 杉田繁治(1) 友永和子(2) 


令和二年十一月二十八日・一二月二十六日
半歌仙連歌「紅葉踏む」の巻
 於 おおたや

発句   紅葉踏む青き鼻緒や嵐山(建夫)
脇      五つの子連れ法輪参り(修三)
第三   三日の月後を追うよに着いてきて(貴代美)
四句     北の大地へ夜行の列車(純子)
五句   もうすぐにトンネルだぞと叫ぶ声(修三)
六句     あぐらをかいて酒瓶抱え(久仁子)
七句   嫁に行く娘にすねるやくざ者(繁治)
八句     魚座生まれで浮気重ねて(純子)
九句   五十年恨み恨まれもとの鞘(久仁子)
十句     道頓堀に雨降りしきる(貴代美)
十一句  誰歌うアリア悲しきネオン川(こん)
十二句   たった一人の肌寒の夜(修三)
十三句  ホスピスの窓よりあびる満の月(純子)
十四句   金木犀の香りただよい(貴代美)
十五句  新聞を今朝も配れる美少年(修三)
十六句   霞の中を足音がいく(和子)
十七句  托鉢の並びし笠に花の舞う(純子)
挙句     昔も今も春の大原(修三)

句上 村上建夫(1) 高城修三(5) 城貴代美(3) 嶋岡純子(4) 原野久仁子(2) 杉田繁治(1) 今野和代(1) 友永和子(1)

コロナが急速に拡大する中、今年最後の月次連歌会となりました。来年の連歌始も中止となり、連歌にはしばらく苦難の日々が続きます。


令和二年九月二十六日・十月二十四日
半歌仙連歌「秋の虹」の巻
 於 おおたや

発句   秋の虹三十六峰包みけり(貴代美)
脇      御所の庭にもウマオイの声(修三)
第三   仲国は月をたよりに駆け出でて(俊平)
四句     琴聴橋はここらへんかと(修三)
五句   欠け茶碗まずは三文うながしぬ(建夫)
六句     西行訪ねて松山湊(修三)
七句   陵に飛ぶ白鷺のまぶしさよ(貴代美)
八句     ねたみし君は忘れ果てたり(修三)
九句   男捨てジプシーローズで生きにけり(貴代美)
十句     道頓堀にネオンゆらめき(和子)
十一句  酔いどれて咎む目ささる暑き夏(浩)
十二句   なお汗だくにマスクなどして(修三)
十三句  山之辺の月は涼しき顔したり(貴代美)
十四句   笠縫の邑いずこにありや(修三)
十五句  とめどなく降る雪をかきわけ(貴代美)
十六句    春の異変を告ぐるキャスター(純子)
十七句  満開に客一人なき花見席(久仁子)
挙句     上野の山に小鳥さえずる(1)

句上 城貴代美(5) 高城修三(宗匠・5) 竹本俊平(1) 村上建夫(1) 友永和子(1) 府川浩(1) 嶋岡純子(1) 原野久仁子(1) 杉田繁治(1)


令和二年七月二十五日・八月二十二日
半歌仙連歌「祇園会や」の巻」
 於 おおたや

発句   祇園会やコロナコロナのやるせなさ(修三)
脇      親しき夏にも社会的距離(浩)
第三   面白きまでに小鯵よく釣れて(貴代美)
四句    女房の顔の七変化なり(修三)
五句   転勤はアジスアベバと月仰ぐ(純子)
六句    霞ヶ関に世寒こたえて(修三)
七句   ビル影にラーメン屋台の秋の列(繁治)
八句    赤いバンダナあの娘が目当て(貴代美)
九句   結末は恨んで別れることと知る(修三)
十句    貢いだ金は三千万円(浩)
十一句 連日のシャンパンタワー歌舞伎町(純子)
十二句   女都知事はそれが許せぬ(修三)
十三句 隈もなくこの世を照らす寒の月(貴代美)
十四句   経典運ぶラクダの隊商(浩)
十五句 ジェノバから夢見心地のマルコ連れ(建夫)
十六句   まぶたの奥の母おぼろなり(貴代美)
十七句 息つめて満開の花見つめいる(久仁子)
挙句    お地蔵様は微笑むばかり(春雄)

句上 高城修三(宗匠・5) 府川浩(3) 城貴代美(4) 嶋岡純子(世話人・2) 杉田繁治(1) 村上建夫(1) 原野久仁子(1) 廣瀬春雄(1)

コロナ禍の自粛により三月から六月まで休みとなったが、時間を短縮して七月と八月にわたる興行となった。三密によって共同の空間をつくらなければならない連歌にとってコロナは試練となっている。



令和二年二月二十二日
半歌仙連歌「猫の目に」の巻
 於 おおたや

発句   猫の日にコロナコロナとかまびすし(貴代美)
脇      春雨しとど千年の都(俊平)
第三   竹の秋嵯峨野の奥に独り来て(修三)
四句     下る勅命駒に鞭打つ(俊平)
五句   月は今高き峰をば照らしけり(貴代美)
六句     真夏の夜の半地下家族(浩)
七句   人妻は玉の汗して声上げる(貴代美)
八句     夫は夫なり恋は恋なり(修三)
九句   もつれ糸ほどけぬままに冬の朝(純子)
十句     雪降り止まぬ佐渡寺泊(修三)
十一句  無残なり骨ばかりなる難破船(俊平)
十二句   拉致されし人何処におわす(修三)
十三句  山川は異域なれども同じ月(貴代美)
十四句   春日の里に秋の悲しみ(修三)
十五句  風吹きて鹿の鳴き声とだえたり(和子)
十六句   十九歳のおぼろな記憶(修三)
十七句  いちめんお花筏いく高瀬川(久仁子)
挙句    胡蝶の夢は忘れ果てたり(繁治)

句上  城貴代美(4) 竹本俊平(3) 高城修三(宗匠・6) 府川浩(1) 嶋岡純子(世話人・1) 友永和子(1) 原野久仁子(1) 杉田繁治(1)

令和元年十月十六日・十一月三十日
半歌仙連歌「即位礼」の巻
 於 おおたや

発句   即位礼大砲待ちて秋の虹(純子)
脇      野分くずれの風のひややか(修三)
第三   東屋に月見る人もなかるらん(貴代美)
四句    京都洛西桂川畔(久仁子)
五句   敵は本能寺と叫ぶ声あり(修三)
六句    愛宕の神は迷いこれなし(貴代美)
七句   爺と婆千日詣でに連れられて(純子)
八句    ここにもありと町石数え(修三)
九句   握る手の強き弱きにときめけり(久仁子)
十句    松尾芭蕉は男色にして(修三)
十一句 菊さぐる心も恋のほだしなる(貴代美)
十二句  赤阪村に虫のすだく音(修三)
十三句 人の世の行く先示せ望の月(春雄)
十四句  酒は静に飲むものとしる(貴代美)
十五句 中京の鯉山町に年かさね(繁治)
十六句  瓦の屋根でのびをする猫(修三)
十七句 昼下がり一片の花舞い落ちぬ(建夫)
挙句    春爛漫に口笛をふく(和子)

句上 嶋岡純子(世話人・2) 高城修三(宗匠・6) 城貴代美(4) 原野久仁子(2) 廣瀬春雄(1) 杉田繁治(1) 村上建夫(1) 友永和子(1)





令和元年八月二十四日・九月二十八日
半歌仙連歌「処暑なれや」の巻
 於 大田屋

発句    処暑なれや発句どころでない話(貴代美)
脇       暑し寒しと初秋の部屋(修三)
第三    ショートステイ薄桔梗の活けられて(純子)
四句     月影を追うまなこは二十歳(建夫)
五句    父は母悲しかりけり知覧基地(純子)
六句     三角兵舎に淡雪の降る(久仁子)
七句    春の日の堅き契りを胸にひめ(純子)
八句     若菜摘む子よ名をば名乗らせ(修三)
九句    鴨川の恋の行方を誰か知る(和子)
十句     迷い蛍はのの字のの字に(純子)
十一句  夏の夜に貴船の神に詣できて(修三)
十二句   この世のことはみんな忘れる(貴代美)
十三句  ぼんやりと眺めていたる昼の月(繁治)
十四句   もがり笛聴く我はひとり身(春雄)
十五句  山降りて幼子あつめ手まりつく(修三)
十六句   ひいふうみいと声ののどけき(春雄)
十七句  盃に受ける花びら京女(貴代美)
挙句     夏目漱石白川の春(修三)

句上 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(世話人・4) 村上建夫(1) 原野久仁子(1) 友永和子(1) 杉田繁治(1) 廣瀬春雄(2) 


令和元年七月二十七日
半歌仙連歌「空梅雨や」の巻
 於 大田屋

発句    空梅雨やG20近づけり(純子)
脇       テロキャンペーン喧し夏(修三)
第三    木下闇集まってくる猫のいて(久仁子)
四句     タロージローがボスの座競う(修三)
五句    今宵また南極大陸照らす月(貴代美)
六句     秋の町家で想い出す日々(修三)
七句    四畳半忘れ扇の恋心(貴代美)
八句     恨み尽きたる朝のさわやか(修三)
九句    仇討ちに青の洞門うがちおり(建夫)
十句     菊池寛は同郷人なり(久子)
十一句  図書館ではたと目覚めぬ十七歳(修三)
十二句   今は連歌の宗匠となる(純子)
十三句  冬の月愛でつつ今夜も気をつかい(修三)
十四句   手火鉢にまた炭をくべつつ(久仁子)
十五句  東に香炉峰の雪ながむ(修三)
十六句   お宝軸は一万円なり(純子)
十七句  御散財おもてもうらも花の道(建夫)
挙句     端唄軽やか大川の春(貴代美)

句上 嶋岡純子(世話人・3) 高城修三(宗匠・7) 原野久仁子(2) 城貴代美(3) 村上建夫(2) 飛田久子(1) 


令和元年五月二十五日
半歌仙連歌「改元に」の巻
 於 大田屋

発句    改元に万葉風の若葉かな(純子)
脇       ここは飛火野三笠のふもと(修三)
第三    うるわしき母のようなる月出でて(貴代美)
四句     薄の原に子狐の声(純子)
五句    秋半ばそろり信太の森近し(修三)
六句     行くか行かぬか迷う青春(純子)
七句    昭和にはソープランドがありにけり(修三)
八句     金のお風呂で抱き合うふたり(貴代美)
九句    秀吉があろうことかと夢を見て(修三)
十句     西の海への波静かなり(繁治)
十一句  念仏を唱えて脛を蚊にさされ(貴代美)
十二句   久米寺は今あじさいの頃(久仁子)
十三句  月中天参道渡る風すずし(俊平)
十四句   私の過去を誰も知らない(修三)
十五句  ドンファンと呼ばれし男すでになく(貴代美)
十六句   謎の洋館めぐりくる春(俊平)
十七句  満開の花にも七つ秘密あり(繁治)
挙句     一族つどうのどかなる午後(和子)

句上 嶋岡純子(世話人・3) 高城修三(宗匠・5) 城貴代美(4) 杉田繁治(2) 原野久仁子(1) 竹本俊平(2) 友永和子(1)



平三十一年三月二十三日
半歌仙「移る世や」の巻
 於 大田屋

発句    移る世や心ひきしむ木の芽寒(春雄)
脇       京都御所にも春分の朝(修三)
第三    ツアー客色とりどりのマスクして(俊平)
四句     インフルエンザがはやるこの頃(修三)
五句    人気なき商店街に冬の月(久仁子)
六句     蛍光灯が点いたり消えたり(俊平)
七句    五番町むかし夕子がいたそうな(貴代美)
八句     浴衣の裾の白きふくらぎ(純子)
九句    恋ゆえに人生迷うこと多し(修三)
十句     杉田繁治七十九歳(繁治)
十一句  AIに知的遊戯を求めたり(春雄)
十二句    観音菩薩虹色の秋(貴代美)
十三句  親指を上げて一歩に月を待つ(純子)
十四句    夕暮れ近き桂浜なり(和子)
十五句  日本を洗濯したくなりにけり(修三)
十六句    右に左に蝶の飛び交う(貴代美)
十七句  平安の栄華を花の吹雪かな(修三)
挙句     讃岐の海にかすむ島々(満里子)

句上 廣瀬春雄(2) 高城修三(宗匠・5) 竹本俊平(2) 原野久仁子(1) 城貴代美(3) 嶋岡純子(世話人・2) 杉田繁治(1) 友永和子(1) 奥山満里子(執筆・1)


平成三十一年二月二十三日
 於 大田屋

四月六日に興行される熊野神社本殿修復落慶連歌の一巡を付けました。


平成三十一年一月二十六日
 於 大田屋

翌日に控えている連歌始の打ち合わせと致しました。


平成三十年十一月二十四日
 於 大田屋

年末の例会が高城修三講演のため休会となりますので、今回を忘年会とし
ました。参加者は新しく加わった原野久仁子氏をはじめ十一名が参加いたし
ました。



平成三十年九月二十二日・十月二十七日
半歌仙連歌「曼珠沙華」の巻
 於 大田屋

発句   曼珠沙華宗祇の里を思いおり(貴代美)
脇      明日は秋晴れ天狗のおかげ(純子)
第三   赤々と宵待ち月が昇りきて(修三)
四句     京都壬生村浅葱だんだら(哲也)
五句   かわらけを放り投げたる浪士かな(繁治)
六句     今日も昨日も悲しみばかり(修三)
七句   花魁は水飴いりの紅を引き(哲也)
八句     枕の下に古き張り形(修三)
九句   大奥に勤め始めて十四年(貴代美)
十句     小憎たらしやお下がりの狆(修三)
十一句  雪の日は炬燵のそばにへばりつき(俊平)
十二句    五号庵には来る人もなし(修三)
十三句  天空を独り占めする夏の月(繁治)
十四句    慰安所もありここはラバウル(修三)
十五句  片腕で極楽鳥の絵を描きて(哲也)
十六句    すべてこの世はあわれなり(修三)
十七句  花は今おのがさかりを誇るらん(俊平)
挙句     いずかたからかのどかなる声(修三)

句上 城貴代美(2) 嶋岡純子(世話人・1) 高城修三(宗匠・8) 安田哲也(執筆・3) 杉田繁治(2) 竹本俊平(2) 


平成三十年七月二十八日・八月二十五日
半歌仙連歌「迷走の」の巻
 於 大田屋

発句   迷走の夏台風や老一人(満里子)
脇      聞こえぬ耳をそばだてる夜(和子)
第三   琴の音の緩むを指で感じいて(貴代美)
四句     行方詮議の阿古屋悲しき(哲也)
五句   今はただ月のみ照らす壇ノ浦(貴代美)
六句     闇の海へと沈み行く秋(純子)
七句   少年の夢をかきたてノーチラス(俊平)
八句     二人でつくる恋のミニチュア(松風)
九句   遠目にて嫉妬の焔燃やしたり(修三)
十句     賀茂の祭りの車争い(俊平)
十一句  葵の葉知らぬ顔してゆらりゆら(修三)
十二句   異変を告げる村の有線(俊平)
十三句  月さえも凍らせている大寒波(修三)
十四句   どこからとなく犬の遠吠え(和子)
十五句  中京の室町六角鯉山町(修三)
十六句   路地の地蔵の笑みおぼろなり(貴代美)
十七句  手作りの赤き前垂れ花吹雪(純子)
挙句     復興願うみちのくの春(貴代美)

句上 奥山満里子(1) 友永和子(2) 城貴代美(4) 安田哲也(執筆・1) 嶋岡純子(世話人・2) 竹本俊平(3) 松風千佳(1) 高城修三(宗匠・4) 



平成三十年五月二十六日・六月二十三日
半歌仙連歌「好きな事」の巻
 於 大田屋

発句   好きな事言い募りたる夏夜かな(修三)
脇      生ビール酌む古代史仲間(貴代美)
第三   たちまちに天皇堂を探し当て(修三)
四句     越前三国と言われしところ(貴代美)
五句   帆に掛かる望月を見て漕ぎいだす(建夫)
六句     倭の行く末は肌寒の海(修三)
七句   千年の前のことなど我知らず(和子)
八句     恋は恋なり罪は罪なり(貴代美)
九句   黒髪を乱れ乱して鐘ならし(哲也)
十句     新歌舞伎座を出れば大雪(純子)
十一句  ころところ難波あたりはバブルなり(修三)
十二句   バラの袋を提げし人波(哲也)
十三句  半月のかすかに白し昼下がり(貴代美)
十四句   ビルの谷間は野分の気配(俊平)
十五句  OLのひとり家路に秋のくれ(千佳)
十六句   窓辺に待ちいる三匹の猫(七重)
十七句  我が宿は見渡す限り花の森(春雄)
挙句     春の小川の水音聞こゆ(繁治)

句上  高城修三(宗匠・4) 城貴代美(4) 村上建夫(1) 友永和子(1) 安田哲也(2) 嶋岡純子(世話人・1) 竹本俊平(1) 松岡千佳(1) 下石坂七重(1) 廣瀬春雄(1) 杉田繁治(1)

平成三十年三月二十四日・四月二十八日
半歌仙連歌「春風や」の巻
  於 大田屋

発句   春風や気ぜわしく行くハイヒール(純子)
脇      都大路に黄砂のたより(俊平)
第三   北山は霞の中で恥じらいて(修三)
四句     公家の嘘なり錦の御旗(建夫)
五句   職工の背中を照らす望の月(繁治)
六句     機をとめればちろろ声あり(貴代美)
七句   見てはならぬ障子の陰の鶴女房(純子)
八句     ほそりし我が身に赤き頬紅(和子)
九句   しらじらし浮気を何と心得て(修三)
十句     法の道説く生臭生活(春雄)
十一句  料亭で金の扇子を打ち鳴らし(貴代美)
十二句    床の下には間者が潜む(建夫)
十三句  山科の月をながめて懐手(純子)
十四句    一灯園の行く末思う(建夫)
十五句  放哉は酒におぼれて追われたり(貴代美)
十六句    墓守こそは我が宿命(修三)
十七句  花の今日も昨日をありがたや(繁治)
挙句     右肩上がりの春の陽線(純子)

句上 嶋岡純子(世話人・4) 竹本俊平(1) 高城修三(宗匠・3) 村上建夫(3) 杉田繁治(2) 城貴代美(3) 友永和子(1) 廣瀬春雄(1)           


平成三十年一月二十七日・二月ニ十四日
半歌仙連歌「木曽谷の」の巻
 於 太田屋

発句    木曽谷のどんどおちこち振子電(弘子)
脇       厄も穢れも春のよそおい(建夫)
第三    書記官長えいやとばかり打ち捨てて(修三)
四句     人は人なり我は我なり(貴代美)
五句    西郷どんも奄美にありて月ながむ(弘子)
六句     錦江湾に秋の風ふく(建夫)
七句    火の山に恋の想いはとどかざる(貴代美)
八句     うらみつのりて魚座の女(純子)
九句    髪乱れ肩肌ぬいだ緋縮緬(俊平)
十句     イザナギ景気の真っ盛りなり(修三)
十一句  京は西明日は東と御接待(俊平)
十二句    寒空をつく巡礼の鈴(貴代美)
十三句  凍てる月ここは讃岐の白峰御陵(修三)
十四句    終わらせたまえ源平合戦(和子)
十五句  我が願いかすかに濡らす春の雨(七重)
十六句    潮騒ひびく大磯に立ち(春雄)
十七句  満開の花の下にてコロナかな(繁治)
挙句     はるかに望む富士の残雪(哲也)

句上 松田弘子(客・2) 村上建夫(2) 高城修三(宗匠・3) 城貴代美(3) 嶋岡純子(世話人・1) 竹本俊平(2) 友永和子(1) 下石坂七重(1) 廣瀬春雄(1) 杉田繁治(1) 保田哲也(執筆・1)
 

平成二十九年十一月二十五日・十二月二十三日
半歌仙連歌「疾風なる」の巻」
 於 太田屋

発句   疾風なる阿闍梨の笠に木の実雨(純子)
脇      きらら坂ゆく秋の暮れ時(修三)
第三   三日の月愛宕の山に刺さりいて(和子)
四句     天下取ったり明智光秀(修三)
五句   竹林で落武者狩りに逃げ惑い(建夫)
六句     今の命は神にゆだねん(繁治)
七句   石切のお百度参り冬の朝(純子)
八句     はだしの足は恋ゆえ熱し(繁治)
九句   不倫して朝川渡るお姫様(修三)
十句     血のつながりが火に油なり(建夫)
十一句  相続はいつの世なれど煩わし(貴代美)
十二句    過疎地の空家所有者知れず(浩)
十三句  盗人も一句ひねって月仰ぐ(繁治)
十四句    夏の帽子のルパン一世(哲也)
十五句  中世の秘宝求めてブルガリア(七重)
十六句    聖杯あらば生はとこしえ(建夫)
十七句  日の本に花は万朶と咲きにけり(春雄)
挙句     春爛漫の我が世たのしき(博)

句上 嶋岡純子(世話人・2) 高城修三(宗匠・3) 友永和子(1) 村上建夫(3) 杉田繁治(3) 城貴代美(1) 府川浩(1) 保田哲也(執筆・1) 下石坂七重(1) 廣瀬春雄(1) 石田博(1)

十二月の月次会は先月のし残した巻を満尾したのち、忘年会となりました。


平成二十九年九月三十日・十月二十八日
半歌仙連歌「太田屋の」の巻
 於 太田屋

発句   太田屋の二階座敷や秋の闇(修三)
脇      虫の音とぎれ集う蓮衆(貴代美)
第三   それぞれに芋名月を争うて(純子)
四句     母系を受けて山国育ち(貴代美)
五句   この春も御所桜をば仰ぎ見ん(修三)
六句     おぼろにかすむ北山の邸(貴代美)
七句   臣と書く義満殿は大逆人(修三)
八句    主のことは知らぬ存ぜぬ(和子)
九句   丘の上に洋風館建ちにけり(修三)
十句     ピンカートンの手には恋文(純子)
十一句  幸せは思われることに極まれり(修三)
十二句   三国一の婿を迎えて(和子)
十三句  実父母の心を知るや後の月(春雄)
十四句   ドラフト会議笑うて泣いて(建夫)
十五句  一番に蝦夷地沸き立つ秋さやか(春雄)
十六句   北前船の出帆間近(純子)
十七句  えいやあと男度胸の花吹雪(春雄)
挙句     せなに入れ墨蝶の羽ばたき(純子)

句上 高城修三(宗匠・5) 城貴代美(3) 嶋岡純子(世話人・4) 友永和子(2) 廣瀬春雄(3) 村上建夫(1) 




平成二十九年八月十六日
半歌仙連歌「梅雨明けや」の巻
 於 太田屋

発句   梅雨明けやはにかむ棋士の勝負飯(建夫)
脇      負けた後には夏の陽まぶし(修三)
第三   皇居には老若男女正座して(純子)
四句     明日のことは誰が知るらん(修三)
五句   山国の月はいよいよ真顔なり(貴代美)
六句     一句詠めとて新酒の宴(俊平)
七句   秀吉は連歌なかなか上手にて(修三)
八句     時は今とは謀反の心(建夫)
九句   禁断の恋の扉の鍵まわし(貴代美)
十句     恋の奴をいかにとやせん(修三)
十一句 吉隠に雪とめどなく降りしきり(貴代美)
十二句   金の鈴つけ猫大あくび(純子)
十三句 両の目の瞳に映る三日の月(建夫)
十四句   薄が原に篠笛ながる(和子)
十五句 峠茶屋くりもち喰らう未成年(繁治)
十六句   芭蕉翁は目をかがやかせ(修三)
十七句 ひたすらに花の散りゆく鳰の湖(貴代美)
挙句    失意の春の粟津石山(修三)


平成二十九年六月二十四日
半歌仙連歌「長雨や」の巻
 於 太田屋

発句   長雨やしばらくの声嫁の顔(建夫)
脇      次の晴れ間に乾さん玉葱(春雄)
第三   この頃は有機野菜が高値にて(修三)
四句    坂道のぼる父のリヤカー(貴代美)
五句   三日月に西への山が喰らいつき(修三)
六句    流れる星は偵察衛星(春雄)
七句   妹と凍える口を合わせけり(修三)
八句    父の妾の不倫の子供(建夫)
九句   思わじな騙した奴が騙されて(修三)
十句    三ととせ経てば家内円満(建夫)
十一句  盤上で達磨大師は痔わずらい(修三)
十二句   尻の痛みに手も足も出ず(繁治)
十三句 あらあらと月は雲間に溺れたり(貴代美)
十四句  ここぞとばかり栃餅泥棒(修三)
十五句 秋祭り峠の茶屋に猿二匹(和子)
十六句  ここは信州向こうは上州(修三)
十七句 大江戸は墨田の川の花吹雪(純子)
挙句   身よ朧なる一艘の舟(貴代美)

句上 村上建夫(3) 廣瀬春雄(2) 高城修三(宗匠・7) 城貴代美(3) 杉田繁治(1) 友永和子(1) 嶋岡純子(世話人・1)



平成二十九年四月二十二日・五月二十七日
半歌仙連歌「風流の」の巻
 於 太田屋

発句   風流の傘を開きし桜かな(貴代美)
脇      祇園をよぎる春宵の月(修三)
第三   浮き沈み人の噂もおぼろにて(春雄)
四句    不倫の果てがまた不倫なり(修三)
五句   七十路の朝立ちなぐを苦笑い(春雄)
六句    うらみつらみも古のこと(修三)
七句   折り鶴を娘にならう大統領(純子)
八句    オープンカーは死出の旅立ち(修三)
九句   濃紫陽花訃報のたより雨にぬれ(純子)
十句    黒塀続く赤坂あたり(貴代美)
十一句  ちょび髭にシガー咥えて菊池寛(修三)
十二句   逢魔が時はおれの好みだ(和子)
十三句  静かなる沼に月光降り注ぎ(貴代美)
十四句   京都洛北秋の上賀茂(修三)
十五句  すぐき菜を育ておみなの笑い顔(貴代美)
十六句   七男三女は春うららなり(純子)
十七句  ただ一つ花爛漫の憂いかな(修三)
挙句    君のコクリコ我のコクリコ(和子)

句上  城貴代美(4) 高城修三(宗匠・7) 廣瀬春雄(2) 嶋岡純子(世話人・3) 友永和子(2) 


平成二十九年二月二十五日・三月二十五日
半歌仙連歌「春風や」の巻
 於 太田屋

発句   春風や加茂に奉納土俵入り(貴代美)
脇      初場所にて得たる横綱(修三)
第三   イイダコが茹で上げられる顔をして(貴代美)
四句     銭湯で遊ぶ刈り上げ童子(春雄)
五句   今日もまた富士の高嶺に登る月(修三)
六句     お座敷小唄に雪を降らせて(貴代美)
七句   明治なるモルガンお雪の恋心(修三)
八句     嫉妬あこがれ妬み悲しき(建夫)
九句   一筋に燃えて蛍の貴船川(貴代美)
十句    床からこぼす足に清流(建夫)
十一句 冷たさは氷に似たり夏の午後(純子)
十二句  蝋人形の笑み我にあり(貴代美)
十三句 月照らすトランプタワーの奥の院(修三)
十四句  秋の賓客ゴールドパター(建夫)
十五句 虫の音に消されるほどのひそ話(繁治)
十六句  聞いたもの勝ち言うたもの勝ち(修三)
十七句 花の下婚活パーティーにぎやかに(和子)
挙句    憂い抱えて春の街行く(修三)

句上  城貴代美(5) 高城修三(宗匠・6) 廣瀬春雄(1) 村上建夫(3) 嶋岡純子(世話人・1) 杉田繁治(1) 友永和子(1)



平成二十九年一月二十八日
半歌仙連歌「左義長や」の巻
 於 太田屋

発句   左義長や欲は残して去年は灰(建夫)
脇      吉田の山もこの春ばかり(修三)
第三   鶯に会津藩士の声聴かん(貴代美)
四句    明日は城攻め錦の御旗(建夫)
五句   梨木の宮に月さす夕間暮れ(修三)
六句    白萩ゆらす謡の響き(建夫)
七句   春日野に金春金剛競いたり(修三)
八句    頭を振りて嫉妬に狂う(貴代美)
九句   この世にて恋の行方を誰しらむ(修三)
十句    あの世で結ぶお初徳兵衛(建夫)
十一句 曽根崎に七つの鐘が消えるころ(修三)
十二句  寝息静かに蚊やりの煙(建夫)
十三句 縁側に霜の如くの月あびぬ(修三)
十四句  抜き足差し足黒猫がいく(繁治)
十五句 ランポーがペンはしらせる昼下り(和子)
十六句  今日のことなど忘れてしまえ(修三)
十七句 満開の花の行方は悲しとて(繁治)
挙句    かすむ嵯峨野を物思い行く(和子)

句上 村上建夫(5) 高城修三(宗匠・7) 城貴代美(2) 杉田繁治(2) 友永和子(2)


平成二十八年十二月二十四日
今回の白樺連歌会は太田屋にて忘年会としました。


平成二十八年十一月二十六日
半歌仙連歌「紐落とし」の巻
 於 太田屋

発句   紐落とし紅葉のような手を合わせ(建夫)
脇      シャッターチャンス秋昼下り(貴代美)
第三   秋刀魚船大漁の旗なびかせて(俊平)
四句     波静かなり三陸の沖(修三)
五句   父母の眠るふるさと凍てる月(貴代美)
六句     五号庵には雪の三尺(修三)
七句   ひと時をうすき乳房に顔うずめ(貴代美)
八句     ぬぐい消したき喪失体験(建夫)
九句   夏草の鵜殿の午後の匂い立つ(修三)
十句     恨み申さん源三位殿(俊平)
十一句  手招きの業火の中の鵺の貌(建夫)
十二句    長夜にはげむ般若心経(満里子)
十三句  ひそやかに半蔀からも月の影(修三)
十四句    楽家準備す冬の窯焼き(建夫)
十五句  当代は器の値段知らぬなり(修三)
十六句    番頭仕切る面接試問(建夫)
十七句  一陣の風が起こせる花吹雪(純子)
挙句     京都中京仕舞屋の春(修三)

句上 村上建夫(5) 城貴代美(3) 竹本俊平(2) 高城修三(宗匠・6) 奥山満里子(1) 嶋岡純子(世話人・1)



平成二十八年十月二十二日
半歌仙連歌「ハロウィンの」の巻
 於 太田屋

発句   ハロウィンのかっと目をあくカボチャかな(貴代美)
脇      時代祭りの行われし夜(修三)
第三   久々に菊の酒くむ友ありて(春雄)
四句     咎むるごとく月輝けり(修三)
五句   大川に棹さしてゆく夜盗船(貴代美)
六句     とぎれとぎれに新内流し(純子)
七句   主さんを待ちくたびれし路地の奥(貴代美)
八句     知らぬ存ぜぬ恋のさや当て(修三)
九句   大阪のきたの酒場で張り合えり(和子)
十句     せなの入れ墨牡丹と胡蝶(純子)
十一句  パナマ帽斜めにかぶりおどけいる(貴代美)
十二句   帝釈天の線香いぶかし(修三)
十三句  極月の月はこの身にしみるなり(貴代美)
十四句   咳一つして除夜の鐘聴く(純子)
十五句  このたびは露天風呂にて古稀迎え(貴代美)
十六句   あの世この世はおぼろなりけり(修三)
十七句  満開の花の下にて立ち尽くす(繁治)
挙句     今日は今日なり明日は明日なり(博)

句上 城貴代美(6) 高城修三(宗匠・5) 廣瀬春雄(1) 嶋岡純子(世話人・3) 友永和子(1) 杉田繁治(1) 石田博(1)


平成二十八年九月二十四日
 於 太田屋

十一月の染田天神社法楽連歌の一巡を進めました。


平成二十八年八月二十七日
半歌仙連歌「この秋を」の巻
 於 太田屋

発句   この秋を何で過ごさむ六十路末(修三)
脇      箕面の紅葉ぶらぶら歩き(建夫)
第三   柿盗む猿も面を赤くして(修三)
四句    隈なく照らすまん丸の月(貴代美)
五句   おのおのの心の形映す影(建夫)
六句    誰も知らないブラジルの夏(純子)
七句   あの男(ひと)は尻の大きな女(ひと)が好き(修三)
八句    勝負の色は黒いパンティー(純子)
九句   ちらちらと坂の途中の飾り窓(貴代美)
十句    忘れちまった悲しみの冬(修三)
十一句  大地震(ない)に生まれし子供二十歳越ゆ(建夫)
十二句   ポケモン探しちまたうろつく(貴代美)
十三句 バーチャルを蹴散らす力月にあり(建夫)
十四句   夜長狂おし狼男(修三)
十五句 平成は叫ぶことさえ忘れたり(貴代美)
十六句   京都大学は春さ中にて(修三)
十七句 花の下喜びに沸く入学者(繁治)
挙句    タカラジェンヌのうららかな昼(純子)

句上 高城修三(宗匠・6) 村上建夫(4) 城貴代美(4) 嶋岡純子(世話人・3) 杉田繁治(1)


平成二十八年七月二十三日
半歌仙連歌「兄と見た」の巻
 於 太田屋
 
発句   兄と見たきしむ山鉾石畳(建夫)
脇      あつしあつしの十八真昼(修三)
第三   口いっぱい激辛カレーかけこみて(純子)
四句    インドベトナムタイマレーシア(春雄)
五句   人はみな月に祈りをささげたり(貴代美)
六句    ポケモンの出る秋の清水(建夫)
七句   悩ましき三年坂の後袷(修三)
八句    町家箱段忍ぶ足音(建夫)
九句   外は雪赤い蹴出に手をかけて(純子)
十句    ありやなしやのこの身の千両(修三)
十一句 招き猫金座布団に鎮座まし(純子)
十二句   娘のべべはつぎはぎだらけ(修三)
十三句 ただ一つ母の形見に月映えて(建夫)
十四句  浮かび上がるは桔梗の御紋(修三)
十五句 名は高し丹波山里谷性寺(春雄)
十六句  旅路の果てに心おだやか(博)
十七句 西行の笠を覆いて花吹雪(純子)
挙句    さぬきを後に春の白波(建夫)

句上 村上建夫(4) 高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(世話人・3) 広瀬春雄(2) 城貴代美(1) 石田博(1)


平成二十八年五月二十八日・六月二十五日
半歌仙連歌「大和なる」の巻
 於 太田屋

発句   大和なる赦す心や走り梅雨(修三)
脇      原爆ドーム夏昼盛り(純子)
第三   缶コーヒー立ち飲む男一人いて(貴代美)
四句    郷土(くに)に帰るか思案算段(博)
五句   引き留める言葉も知らぬ唐の月(建夫)
六句    白楽天は新酒一斗(修三)
七句   夜冷えて肴にまさる詩百篇(建夫)
八句    恋の想いを隠し通して(修三)
九句   弟と添い遂げてきた半世紀(建夫)
十句    いつとは知れず馴れにし乳房(七重)
十一句 宝塚舞台を引いてさらし解く(建夫)
十二句  やくざ稼業も今宵限りで(修三)
十三句 皓皓と清水港に冬の月(純子)
十四句  慶喜さまと茶畑づくり(建夫)
十五句 これよしと備中ぐわを褒めにけり(和子)
十六句  満蒙開拓たけなわの春(鬼猿)
十七句 なつかしや高遠城の花の宴(繁治)
挙句    昨日も今日もおぼろなり(鬼猿)

句上 高城修三(宗匠・4) 嶋岡純子(世話人・2) 城貴代美(1) 石田博(1) 村上建夫(5) 下石坂七重(1) 友永和子(1) 鬼猿(2) 杉田繁治(1)


平成二十八年四月二十三日
半歌仙連歌「ないまぜの」の巻
 於 太田屋

発句   ないまぜの甘さ辛さや桜餅(建夫)
脇      春を急ぎし常滑の道(修三)
第三   勝ち戦伊勢の社にわれ行かん(政俊)
四句     織田信忠は不安なりけり(修三)
五句   雲隠れしては出でこぬ今日の月(貴代美)
六句     町はさやけし雨に洗われ(雄太)
七句   新しき恋の予感のパリの秋(建夫)
八句     鉄幹夫婦はいつもコクリコ(修三)
九句   路地裏のきしむベッドの横に猫(純子)
十句     竿竹売りのかん高き声(建夫)
十一句  背高き坊主が行方遮りぬ(修三)
十二句    静御前は捕らわれにけり(政俊)
十三句  今様にあわせ舞いきる月の下(建夫)
十四句    夜長も尽きて大天狗さま(政俊)
十五句  高下駄も羽扇もみな忘れたる(貴代美)
十六句    愛宕の山に笑う声あり(修三)
十七句  時は今宇多野嵯峨野は花盛り(政俊)
挙句     今日は今日なり明日は明日なり(和子)

句上 村上建夫(4) 高城修三(宗匠・5) 村上政俊(4) 城貴代美(2) 力丸雄太(1) 島岡純子(1) 友永和子(1)


平成二十八年三月二十六日
半歌仙連歌「一筆せん」の巻
 於 太田屋

発句   一筆せん花の文字や白ワイン(建夫)
脇      丹波の香りいとおしむ春(貴代美)
第三   筍にわかめ木の芽を添えおきて(建夫)
四句     魯山人作織部大鉢(正子)
五句   酔客の身の上話望の月(こん)
六句     泣くな泣くなと鈴虫の鳴く(純子)
七句   黒ヘルを抱きて今日も長き夜(修三)
八句     バイクで逝きしいとしき人よ(純子)
九句   ロレンスの面影慕う美少年(建夫)
十句     その唇を吸いたきものぞ(修三)
十一句  死化粧貝殻の紅指にのせ(順子)
十二句    安達太良山に言うこともなし(修三)
十三句  千代紙の切り絵に光る冬の月(純子)
十四句    婆やの手許じっと見る孫(幸一)
十五句  あやとりは天に梯子を渡しおり(貴代美)
十六句    のぼりなさいと神の声なし(建夫)
十七句  桜咲く京の真昼の聖護院(修三)
挙句     八つ橋かじるのどかなる人(貴代美)

句上 村上建夫(4) 城貴代美(3) 前田正子(1) 今野和代(1) 島岡純子(世話人・3) 高城修三(宗匠・4) 石井順子(1) 森幸一(1) 友永和子 杉田重治 麻田有代

今回の月次連歌会は石井順子さんの送別会を兼ねて行いました。


平成二十八年二月二十七日
半歌仙連歌「梅ばかり」の巻
 於 太田屋

発句   梅ばかり何事もなく二・二六(建夫)
脇      湯島天神春のおみくじ(和子)
第三   蛇の目傘根岸の方から訪ね来て(修三)
四句     男所帯にもらうカステラ(貴代美)
五句   誰か知る亀山社中の十三夜(修三)
六句     紀州おどして大金せしむ(建夫)
七句   早出しの蜜柑運んで江戸の朝(修三)
八句     つわりひどくてままならぬ姫(純子)
九句   幾日も背中合わせの蚊帳の中(満里子)
十句     赤き襦袢もただやるせなし(貴代美)
十一句  奥座敷猫が欠伸をする夕べ(修三)
十二句   寒さつのらす三井寺の鐘(貴代美)
十三句  弁慶は憤怒の顔の三日の月(修三)
十四句   杖うちたたく荒き山伏(満里子)
十五句  峰めぐり懐しのぶ陀羅尼助(建夫)
十六句   こだまで返す鶯の声(貴代美)
十七句  今日こそは花満開になりにけり(繁治)
挙句     みんな浮かれて飲めや歌えや(博)

句上  村上建夫(3) 友永和子(1) 高城修三(宗匠・5) 城貴代美(4) 嶋岡純子(世話人・1) 奥山満里子(2) 杉田繁治(1) 石田博(1)

昨年末から今年の初めにかけてはセデジュールから風屋杉原に場所を移し、また白樺連歌会の新年会、忘年会も兼ねた行事がつづき、三回にわたって連歌興行ができませんでしたが、今回より烏丸夷川東入るの太田屋にて再会することとなりました。


平成二十七年十月二十四日
半歌仙連歌「すじ肉で」の巻
 於 セデジュール

発句    すじ肉で酌む一献や後の月(貴代美)
脇       夜長を歩く六角通り(修三)
第三    チャイニーズ秋の都を着物着て(俊平)
四句      爆買様と手を合わすなり(修三)
五句    ルイヴィトン・ピエールカルダン・ココシャネル(純子)
六句      トランジットする仁川空港(俊平)
七句    東海を西海にせよとなぜ言わぬ(修三)
八句      方向音痴でどこへ行くやら(繁治)
九句    逢引は三つ星ホテルの最上階(貴代美)
十句      百万ドルの愛の浴槽(純子)
十一句  薔薇浮かべ白き裸体をただよわせ(貴代美)
十二句    鑑識班はおっとり刀(俊平)
十三句  宵の口如意が岳より月昇り(修三)
十四句    白き沙壇にもみじかつ散る(正子)
十五句  野分きて慌てて仕舞う軒すだれ(俊平)
十六句    皮膚のただれた子猫逃げ行く(修三)
十七句  雨の日のお城に近き花の下(正子)
挙句     連歌の春は今日もすこやか(修三)

句上 城貴代美(3) 高城修三(6) 竹本俊平(4) 嶋岡純子(2) 杉田繁治(1) 前田正子(2)


平成二十七年九月二十六日
半歌仙連歌「時止まれ」の巻
 於 セデュール

発句    時止まれ全て望まぬ十四夜(建夫)
脇       室町通に仕舞屋の秋(修三)
第三    撫子の信楽の鉢打ち壊し(貴代美)
四句      夫婦喧嘩に犬も逃げ行く(繁治)
五句    水玉のドレスが派手とののしられ(貴代美)
六句      三矢模様にあわて着替える(建夫)
七句    紅白に初出場の演歌歌手(貴代美)
八句      歌詞を忘れてふりはハチャメチャ(繁治)
九句    ひたすらに恋に狂いし夢の中(貴代美)
十句      めざめの背なを撫でるくちびる(建夫)
十一句  キスマークお灸のあとに重なりぬ(繁治)
十二句    蒸し暑き宵蚊帳吊るして(修三)
十三句  母さんが早く早くと夏の月(和子)
十四句    水鉄砲は土間に置き去り(貴代美)
十五句  西海の軍艦島の廃墟にて(建夫)
十六句    紋白蝶がゆらゆらと行く(修三)
十七句  百年の孤独のような花の午後(こん)
挙句     子猫の眠る公園の隅(純子)

句上 村上建夫(4) 高城修三(宗匠・3) 城貴代美(5) 杉田繁治(3) 友永和子(1) 今野和代(1) 嶋岡純子(1)


平成二十七年八月二十二日
半歌仙連歌「夕暮れや」の巻
 於 セデュール

発句   夕暮れや耳を澄まして探す秋(建夫)
脇      賀茂街道にゆれるコスモス(貴代美)
第三   今宵また糺の森に月を見ん(修三)
四句     ギターつま弾く長明の裔(順子)
五句   日の本に声高々と反戦歌(春雄)
六句     知らぬ顔して豆つつく鳩(純子)
七句   お下げ髪何も言えずに我十五(春雄)
八句     信濃の恋は戒壇めぐり(和子)
九句   闇の中見えぬ思いを探りかね(修三)
十句     塙保己一学問成就(建夫)
十一句  大江戸は鱗の雲の美しき(修三)
十二句    薄かざして帝釈天へ(純子)
十三句  三門の軒端にかかる望の月(修三)
十四句    明日が見えるか勤王の志士(春雄)
十五句  長崎のグラバー邸に龍馬吠え(修三)
十六句    帆船が行く霞の彼方(貴代美)
十七句  順風があだにも見ゆる花吹雪(建夫)
挙句     都の春は今日も事なし(正子)

句上  村上建夫(3) 城貴代美(2) 高城修三(宗匠・5) 石井順子(1) 廣瀬春雄(3) 嶋岡純子(2) 友永和子(1) 前田正子(1) 杉田繁治 石井智子


平成二十七年七月二十五日
半歌仙連歌「鯉山で」の巻
 於 セデュール

発句   鯉山で後の祭りを祝いけり(修三)
脇      飾る粽は蘇民将来(満里子)
第三   爺様が墨くろぐろと書き上げて(俊平)
四句     天川村の地域振興(繁治)
五句   水もよし湯煙淡し月もよし(俊平)
六句     落ち鮎めでる太閤殿下(純子)
七句   淀殿は恋しき人をねめつける(修三)
八句     赤きかんざし黒髪に映え(和子)
九句   さらばよと七つの鐘の聞き納め(修三)
十句     生きているよな文楽人形(俊平)
十一句  鳴門渦季節外れの雪降りて(満里子)
十二句   かもめおまえのねぐらはどこぞ(俊平)
十三句  山頭火手をふところに仰ぐ月(純子)
十四句   オリーブ畑をなでる秋風(修三)
十五句  空いっぱいニケの翼の鰯雲(貴代美)
十六句   ギリシャの民は劣化しており(修三)
十七句  とはいえど花の盛りは惜しめける(貴代美)
十八句   遠回りして帰る春宵(満里子)

句上 高城修三(宗匠・5) 奥山満里子(3) 竹本俊平(4) 杉田繁治(1) 嶋岡純子(2) 友永和子(1) 城貴代美(2) 廣瀬春雄 井原弦 小島布水呼



平成二十七年六月二十七日
半歌仙連歌「新たなる」の巻
 於 セデュール

発句   新たなる連歌求めて夏の宵(修三)
脇      町家涼しく一筋の風(貴代美)
第三   振り売りの声高々に行き交いて(純子)
四句     間者うかがう浪士の動き(建夫)
五句   人も世も等しく照らす望の月(修三)
六句     アデンの港秋風の吹く(春雄)
七句   夜長には駱駝の群れにおののけり(修三)
八句     グラスに残る赤き口紅(貴代美)
九句   ケネディの誕生祝し冬の恋(純子)
十句     運命の音扉を開く(順子)
十一句  ウナ電が夜明けとともにとどけられ(俊平)
十二句   知らぬ存ぜぬ父の死にたり(修三)
十三句  月ひとつなぜに二人の母がいて(建夫)
十四句   願ほどきする秋の住吉(順子)
十五句  参道に仮面売られる鰯雲(貴代美)
十六句   ほしいほしいと子にせがまれる(純子)
十七句 子に団子酒は男に花女(建夫)
挙句     鴨の河原は賑やかな春(繁治)

句上 高城修三(宗匠・4) 城貴代美(3) 嶋岡純子(3・世話人) 村上建夫(3) 廣瀬春雄(1) 石井順子(2) 竹本俊平(1) 杉田繁治(1) 伊佐迪子 友永和子 石井智子 石田博

白樺の高瀬照美さんが急病のため、今回から場所を中京鯉山町の「セデュール」に移して月次連歌会を続行することになりました。杉田先生の御実家の一部を欧州風レストランに改装した店です。ここでも素晴らしい料理がいただけることになりました。


平成二十七年五月二十三日
半歌仙連歌「鴨川や」の巻
 於 白樺

発句   鴨川やごりが跳ねます京の初夏(俊平)
脇      床の上なる美男美女たち(修三)
第三   肌色の違う人々ここに来て(平)
四句     国連総会もめにもめたり(修三)
五句   パルミラの遺跡を照らす青い月(俊平)
六句     ハザーン聞こゆる秋の夕暮れ(修三)
七句   出稼ぎや故郷に帰る日を待ちて(智子)
八句     まだまだ足りぬ結納の金(俊平)
九句   丁半とせなには恋の冬牡丹(貴代美)
十句     女心がやくざに惚れて(平)
十一句  塀の外行きつ戻りつ紺絣(俊平)
十二句   思い出すのは有明の海(修三)
十三句 月が聞くムツゴロウ飛ぶ泥の音(平)
十四句   おぼろの空は今日がかぎりと(博)
十五句 七色をいっせいに吹くシャボン玉(貴代美)
十六句   見上げ追い行く春の歓声(智子)
十七句 散る花をきさまもおれもよそに見て(修三)
挙句    一攫千金夢のまた夢(迪子)

句上 竹本俊平(4) 高城修三(宗匠・5) 石平(3) 石井智子(2) 城貴代美(2) 石田博(1) 由佐迪子(1) 嶋岡純子(世話人) 友永和子


平成二十七年四月二十五日

月次会に替えて、六月一日の大阪天満宮法楽連歌の一巡をつくる


平成二十七年三月二十八日
半歌仙連歌「京の街」の巻
 於 白樺

発句   京の街月おくれにて雛飾り(建夫)
脇      桃のひとひら浮かべる酒杯(満里子)
第三   妹は春十八になりぬらん(修三)
四句    朝早くから空手の稽古(貴代美)
五句   満ち満ちて今宵玉莵は餅をつく(純子)
六句    豊年満作近江羽二重(貴代美)
七句   新妻のうれしはずかしやや孕み(満里子)
八句    出逢いなれそめ芝居の楽屋(建夫)
九句   もじもじとへのもへのもの柳腰(修三)
十句    雪の女郎は恋に身を焼き(貴代美)
十一句 透き通るつららを伝うひとしずく(純子)
十二句  悲しきことは果てるともなく(修三)
十三句 ホスピスの窓を開ければ夏の月(純子)
十四句  神に召さるるめでたき門出(建夫)
十五句 忘るなよ晩餐会のユダの顔(修三)
十六句  壁面おおう硬質な春(貴代美)
十七句 ふと見れば標本木に花一つ(繁治)
挙句    いずこともなく鶯の声(和子)

句上 村上建夫(3) 奥山満里子(2) 高城修三(宗匠・4) 城貴代美(3) 嶋岡純子(世話人・3) 杉田繁治(1) 友永和子(1)



平成二十七年二月二十八日
半歌仙連歌「ぬたあえや」の巻
 於 白樺

発句   ぬたあえや世間の噂絶えもせず(貴代美)
脇      鯛のさしみの残る一切れ(修三)
第三   赤穂路の親孝行に春ありて(満里子)
四句     母は正座で鈍行列車(貴代美)
五句   ゆるゆると月の光が窓にいる(俊平)
六句     一日五回祈る秋の夜(純子)
七句   君知るや遠き故国の悲しみを(春雄)
八句     首切り人に恋をしにけり(修三)
九句   失敗は小指を立てたことでした(俊平)
十句     作法かなわぬ茶事のふるまい(和子)
十一句  鉾町の屏風ならべて孫点前(満里子)
十二句    藍の浴衣はばあばの手縫い(清實)
十三句  遊学の摩天楼より昇る月(貴代美)
十四句    秋のさなかのセントラルパーク(修三)
十五句  紅葉葉や犬に引かれてレノン行く(繁治)
十六句    溝擦り切れたレコードを聞く(俊平)
十七句  どこまでもどこまでも行く花の下(修三)
挙句     我がよいどれし春の夕暮れ(博)

句上 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・4) 奥山満里子(2) 竹本俊平(3) 嶋岡純子(1) 廣瀬春雄(1) 友永和子(1) 今枝清實(1) 杉田繁治(1) 石田博(1)

年末の忘年会、年始の新年会はもっぱら料理を堪能して親交をあたためましたので、今回が今年初めての月次連歌会となりました。


平成二十六年十一月二十二日
半歌仙連歌「寄せ鍋の」の巻
 於 白樺

発句   寄せ鍋の海老のひときわ赤きかな(貴代美)
脇      知らぬ顔なき冬の円卓(修三)
第三   サミットは新たな敵を見出して(建夫)
四句    エボラ熱ならまだまだ止まず(修三)
五句   月光はただひたすらに降り注ぎ(貴代美)
六句    虫の声さえ我は聞こえぬ(修三)
七句   突然の愛のささやき秋深し(建夫)
八句    うなじそらして毒婦ほほえむ(貴代美)
九句   待庵も天王山もいや近く(修三)
十句    日本最初とウィスキーの釜(建夫)
十一句 赤ら顔トリスを飲んでハワイ行(繁治)
十二句  懸賞好きな隣の一家(満里子)
十三句 一日にはがき百枚夏の月(純子)
十四句  あつしあつしと路地を行く声(修三)
十五句 魚とてこれはつらしとトロの箱(博)
十六句  風評被害買う人もなし(智子)
十七句 みちのくに今年も花は咲き乱れ(和子)
挙句    安達太良山にうぐいすの鳴く(順子)

句上 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・5) 村上建夫(3) 杉田繁治(1) 奥山満里子(1) 嶋岡純子(世話人・1) 石田博(1) 石井智子(1) 友永和子(1) 石井順子(1)



平成二十六年十月二十五日
半歌仙連歌「今さかる」の巻
 於 白樺

発句   今さかる尊兄しのぶ萩の寺(博)
脇      吉田の秋の小さき坂越え(修三)
第三   初霜は半時ほどの月浴びて(建夫)
四句     背中合わせの木曾殿寒し(修三)
五句   都人陰で口先はばからず(貴代美)
六句     三条高倉上る一筋(修三)
七句   離れ屋は麝香が香る数寄造り(俊平)
八句     片肌脱ぎて髪解く女(貴代美)
九句   真底に惚れた男の名を唱え(俊平)
十句     白無垢すがたそそと出でゆく(建夫)
十一句  荷の中に枕絵入れる親心(春雄)
十二句    娘十八私は四十(修三)
十三句  夜逃げする街道筋の月明かり(貴代美)
十四句    足助のもみじかさこそと泣く(繁治)
十五句  見あぐれば空いっぱいの鰯雲(修三)
十六句    こうもり傘を背なにかついで(満里子)
十七句  キャンバスにちらりほらりと花の散る(純子)
挙句     広川寺に霞たなびく(智子)

句上 石田博(1) 高城修三(宗匠・5) 村上建夫(2) 城貴代美(3) 竹本俊平(2) 廣瀬春雄(1) 杉田繁治(1) 奥山満里子(1) 嶋岡純子(世話人・1) 石井智子(1) 下石坂七重 友永和子 


平成二十六年九月二十七日
半歌仙連歌「かえで葉や」の巻
 於 白樺

発句   かえで葉や色づく前のぎこちなさ(建夫)
脇      秋の顔した吉田キャンパス(満里子)
第三   秋分に催涙ガスの匂いして(修三)
四句    黒衣で逃げる国境の街(貴代美)
五句   夏の月駱駝の列が通り行く(繁治)
六句    ジバングからの金と銀乗せ(修三)
七句   メダリストカメラに向ける笑い顔(建夫)
八句    幼馴染に胸のときめき(修三)
九句   恋秘めて行くか明日のクラス会(繁治)
十句    逢瀬の部屋の予約わすれず(建夫)
十一句 清原はたぐいまれなる種馬で(修三)
十二句  あごひげ白く総身いれずみ(純子)
十三句 イヨマンテ月に太鼓を打ち叩き(貴代美)
十四句  鮭のぼり来る紋別の川(和子)
十五句 一面に穂のそろいたる芒原(貴代美)
十六句  世界遺産で軍事訓練(智子)
十七句 世を憂い花の向こうに富士を見て(修三)
挙句   永久に栄えんこの国の春(貴代美)

句上 村上建夫(3) 奥山満里子(1) 高城修三(宗匠・5) 城貴代美(4) 杉田繁治(2) 嶋岡純子(世話人・1) 友永和子(1) 石井智子(1) 


平成二十六年八月二十三日
半歌仙連歌「落雷や」の巻
 於 白樺
発句   落雷や原点戻る秋の午後(純子)
脇      高千穂降る爽やかな風(建夫)
第三   谷間より逆さ三日月仰ぎ見て(満里子)
四句     狼の声途絶えて久し(貴代美)
五句   中辺路の継桜なる旅の宿(修三)
六句     白塗りをした妖しき女(貴代美)
七句   今宵また訪ね来てみよ恋狐(修三)
八句     厚揚げ焼いて熱燗つける(純子)
九句   ひとり者ポールサイモン聴きながら(貴代美)
十句     留年ばかり人生学校(建夫)
十一句  ところてん恐る恐るの硝子鉢(貴代美)
十二句   ダイヤカットの薩摩の切子(純子)
十三句  月照らし藍色うつる白き壁(智子)
十四句   心変わりをそしる虫の音(建夫)
十五句  無理矢理にキスをせがんだ右大臣(修三)
十六句   狩衣染むる春の七草(満里子)
十七句  どこまでも花の盛りはつづきけり(和子)
挙句     世は泰平とだれか言うなむ(七重)

句上  嶋岡純子(世話人・3) 村上建夫(3) 奥山満里子(2) 城貴代美(3) 高城修三(宗匠・3) 石井智子(1) 友永和子(1) 下石坂七重(1) 杉田繁治


平成二十六年七月二十六日
半歌仙連歌「」の巻
 於 白樺

発句   祇園会や髭も見事な鯉と長(建夫)
脇      風屋杉原今日は閉店(修三)
第三   ベトナムへ四十年ぶりに旅立ちて(純子)
四句    染糸詰めた重きトランク(満里子)
五句   鍵なくし右往左往に月笑う(純子)
六句    帯に挟んだ桔梗の根付(建夫)
七句   番傘の宗匠は今日も女連れ(修三)
八句    近江は恋のしぐれ七色(貴代美)
九句   窓閉めて足が触れ合う掘り炬燵(建夫)
十句    あえぎ気遣う一間の長屋(修三)
十一句  米と水供え愛宕の火伏神(貴代美)
十二句   客まばらなり串カツの店(修三)
十三句  あら煙た通天閣にかかる月(春雄)
十四句   長夜を獣咆哮すなり(修三)
十五句  裸婦ありて笛でしずめるルソーの絵(満里子)
十六句   まがまがしきは羊歯の葉の色(修三)
十七句  御籤ひき花の大吉ゲン直し(建夫)
挙句    心はればれ春の川端(和子)

句上 村上建夫(4) 高城修三(宗匠・6) 嶋岡純子(世話人・2) 奥山満里子(2) 城貴代美(2) 廣瀬春雄(1) 友永和子(1)


平成二十六年六月二十八日
半歌仙連歌「元親が」の巻
 於 白樺

発句   元親が詫び状書きし梅雨最中(修三)
脇      日に日に変わるアジサイの色(純子)
第三   鉾町の古き前栽はなやいで(満里子)
四句    亡き父偲び今我生きる(博)
五句   三重戒心に誓い月見上ぐ(純子)
六句    秋の樹海は闇のまた闇(修三)
七句   人妻の恋は迷いの曼珠沙華(貴代美)
八句    知らぬ存ぜぬ明日の逢瀬は(修三)
九句   一句秘め雪踏みしめて五合庵(純子)
十句    連衆と行く越後の旅を(貴代美)
十一句 蛇よりも嫌いな男が付いてくる(修三)
十二句   八の眉毛にたらこ唇(純子)
十三句 村芝居今たけなわの月明かり(貴代美)
十四句   鎮守の杜に野分のきざし(智子)
十五句 疥癬の足のかゆみも鎮まりて(修三)
十六句   酒いささかに黄蝶舞う朝(純子)
十七句 夢のごと花満開の嵐山(繁治)
挙句    おぼろおぼろに琴の音聞こゆ(智子)

句上 高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(世話人・4) 奥山満里子(1) 石田博(1) 城貴代美(3) 石井智子(2) 杉田繁治(1)



平成二十六年五月二十四日
半歌仙連歌「光秀も」の巻
  於 白樺

発句   光秀ものがれがたきは五月かな(修三)
脇      田植え終えたり平成の御代(貴代美)
第三   御姿も美しくあり八十路にて(繁治)
四句     紅葉の森は今盛りなり(修三)
五句   ややしばし酒を片手に待つ玉兎(貴代美)
六句     手びねりの杯秋の冷たさ(純子)
七句   縁側で昔の女を思い出し(修三)
八句     心入れ替え新しき恋(平)
九句   観音をきざむ乳房にふるえる手(貴代美)
十句     北近江なる雪深き里(修三)
十一句 木地師行く首には赤き布を巻き(貴代美)
十二句   きつつき叩くブナ林の暮れ(純子)
十三句 驚いて雲の逃げ出す後の月(平)
十四句   われ知らぬげに鈴虫の声(繁治)
十五句 原発の反対の声いかにせん(博)
十六句   悩み忘ればこの世春なり(平)
十七句 満開の花の下なる独り言(智子)
挙句    霞たなびく野辺の道行く(和子)

句上  高城修三(宗匠・4) 城貴代美(4) 杉田繁治(2) 嶋岡純子(世話人・2) 石平(3) 石田博(1) 石井智子(1) 友永和子(1)


平成二十六年四月二十六日
半歌仙「葉桜や」の巻
 於 白樺

発句    葉桜や訪ねて古き煉瓦館(貴代美)
脇       お薄の前に道明寺餅(建夫)
第三    たちまちに蛇淫の女おそろしく(修三)
四句      手切れを積めば新しき恋(建夫)
五句    月とのむお湯割り苦し路地の奥(平)
六句      喧嘩の声や虫の音聞こゆ(智子)
七句    登りきり天地眺める紅葉山(平)
八句      妻も私も七十七歳(修三)
九句    足悪き夫ささえる手がふるえ(博)
十句      マハラジャの時今は懐かし(繁治)
十一句  石段に疲れし体冬祇園(修三)
十二句    仏を拝む心やすらか(平)
十三句  道元へ線香一本望の月(純子)
十四句    永平寺にも鹿の声して(修三)
十五句  新メニュー鹿肉も一役かいにけり(和子)
十六句    王妃の名づけ宮廷料理(建夫)
十七句  貧も貴も花は等しく覆いいて(修三)
挙句     春の小川は静かに流る(繁治)

句上  城貴代美(1) 村上建夫(3) 高城修三(宗匠・5) 石平(3) 石井智子(1) 石田博(1) 杉田繁治(2) 嶋岡純子(1) 友永和子(1) 伊佐迪子

今回は評論家の石平氏をお迎えして、照美さんの季節満載の料理をいただきながらの連歌会となりました。



平成二十六年三月二十二日
半歌仙「昼と夜の」の巻
 於 白樺

 発句   昼と夜の時の等しき桜鯛(俊平)
 脇      明石の春はひねもすのたり(修三)
 第三   少年はおぼろにギター爪弾きて(貴代美)
 四句    デニムのつなぎ継ぎはぎだらけ(俊平)
 五句   ぎざぎざの高層ビルに夏の月(修三)
 六句    命知らずが綱渡りする(俊平)
 七句   幼な妻後先なしの丙午(満里子)
 八句    八百屋お七に鐘の音悲し(俊平)
 九句   やるせなや恋のほむらを誰が消す(修三)
 十句    ぼた雪わた雪ただしずり雪(貴代美)
 十一句  漱石の弟子がのぞいた顕微鏡(建夫)
 十二句   あくびを一つやや寒の猫(貴代美)
 十三句  軒先に吊られたような三日の月(修三)
 十四句   桔梗の寺で墨をすりつつ(満里子)
 十五句  赤青の鬼の踊りの下絵描き(建夫)
 十六句   反故集めてくずやおはらい(俊平)
 十七句 見あぐれば花の吹雪のうとましさ(修三)
 挙句    東西南北かすみのベール(俊平)

 句上 竹本俊平(6) 高城修三(宗匠・5) 城貴代美(3) 奥山満里子(2) 村上建夫(2) 嶋岡純子 友永和子 杉田繁治 


平成二十六年一月二十五日・二月二十二日
半歌仙「初春や」の巻
 於 白樺

 発句   初春や友の命を杯に受け(建夫)
 脇      寿ぐごとく鶯の声(修三)
 第三   舞い終わる安土の城もおぼろにて(貴代美)
 四句    牛一殿は筆運びかね(建夫)
 五句   断わりし月の宴を悔やむなり(貴代美)
 六句    今日は明日はの秋の夕暮れ(修三)
 七句   携帯を開いて閉じて揺れる萩(純子)
 八句    受験前日デートの誘い(智子)
 九句   黒髪にかかる白雪君十九(春雄)
 十句    寒紅ほしや手鏡のいう(純子)
 十一句  旅の宿油をなめる猫の影(貴代美)
 十二句   草津の次は石部土山(修三)
 十三句 雨上がり鈴鹿の峰は白き月(春雄)
 十四句  しずけさ破る鹿の泣く声(繁治)
 十五句 正座してくめば新酒の香りたち(貴代美)
 十六句  歩みし道は夢のまた夢(春雄)
 十七句 朝ぼらけ山里丸に花の舞う(満里子)
 挙句    かすみたなびく生駒連山(和子)

句上 村上建夫(2) 高城修三(宗匠・3) 城貴代美(4) 嶋岡純子(世話人・2) 石井智子(1) 廣瀬春雄(3) 杉田繁治(1) 奥山満里子(1) 友永和子(1)

新年会を兼ねた前回に八句まで、さらに今回で残り九句を巻き上げました。



平成二十五年十月二十六日・十二月二十八日
半歌仙「かえで葉や」の巻
  於 白樺

発句   かえで葉や色と名前の変わる朝(建夫)
脇      壮士出でたつ十津川の秋(修三)
第三   皇国に満ちくる月のさやけくて(貴代美)
四句    頬ずりをする野良猫かなし(修三)
五句   淀屋飼う狆の豪奢のにくらしさ(建夫)
六句    大川端の柳ゆらゆら(修三)
七句   間昼間の二階の女化粧なし(建夫)
八句    惚れた男の写真立てかけ(貴代美)
九句   女好き百名山を登りきり(和子)
十句     雪の場末でひとり酒飲む(修三)
十一句  ざくざくと帝都に響く靴の音(建夫)
十二句   三島由紀夫は今日もうなされ(修三)
十三句  豊穣の名に逆らいて月の海(建夫)
十四句   疱瘡乗せて秋風のまま(純子)
十五句  来世は白い体に生まれたし(智子)
十六句   オセロゲームの中島知子(修三)
十七句  咲く花と散る花のあり京の春(七重)
挙句     白沙村荘にうぐいすの鳴く(満里子)

村上建夫(5) 高城修三(宗匠・6) 城貴代美(2) 友永和子(1) 嶋岡純子(1) 石井智子(1) 下石坂七重(1) 奥山満里子(1) 杉田繁治 廣瀬春雄

前回に十句までをあげ、忘年会を兼ねた十二月の会で巻き上げた。


平成二十五年八月二十四日・九月二十八日
半歌仙連歌「送り火や」の巻
  於 白樺

発句   送り火や父母の名を呼ぶ二度三度(建夫)
脇      足元なでる鴨の秋風(修三)
第三   落ち鮎のはねる川面のかなしくて(満里子)
四句     横笛誘う赤き満月(純子)
五句   父親にあらがえぬ人好きになり(修三)
六句     夫婦善哉まねて家出る(繁治)
七句   枕絵を柳行李の底にいれ(貴代美)
八句     税関検査びくびく通る(建夫)
九句   降り立てば一面の雪北空港(貴代美)
十句     黒覆面のテロリストたち(修三)
十一句  杉作が鞍馬天狗と間違えて(建夫)
十二句    スパーランドの剣劇舞台(和子)
十三句  天窓におさまっている望の月(建夫)
十四句    機音止めて虫の音を聞く(貴代美)
十五句  黄八丈女の夢も織り込んで(順子)
十六句    譲り受けたる春のお茶会(和子)
十七句  花吹雪茶杓の銘は泪なり(貴代美)
挙句     おぼろに見ゆる蝶の行き先(修三)

句上 村上建夫(4) 高城修三(宗匠・4) 奥山満里子(1) 嶋岡純子(1) 杉田繁治(1) 城貴代美(4) 友永和子(2) 石井順子(1) 

八月は京大俳句OB数名の乱入があって四句目までで打ち切りとなり、今月の月次会で満尾となった。


平成二十五年七月二十七日
半歌仙連歌「たらちねの」の巻
  於 白樺

発句   たらちねの母の袂や夏祭り(建夫)
脇      藍にゆかたに献上の帯(満里子)
第三   歌舞伎座の三階席に腰すえて(俊平)
四句     三十路女の四人ずれ(修三)
五句   月横に食べ放題のバイキング(俊平)
六句     フィーヨルドの奥のもみぢ野(修三)
七句   どうするの熊に注意の秋の暮(博)
八句    手に手をつなぎ恋人未満(貴代美)
九句   夢にてはいつもCまで行けるのに(建夫)
十句     優勝すれば結婚するぞ(俊平)
十一句  今日もまたボギーばかりのしぐれ雲(貴代美)
十二句   昨日は昨日明日は明日(修三)
十三句  三日の月手をふところに紋次郎(純子)
十四句   財布たしかめやや寒の宵(繁治)
十五句  とり安の白きスープは秋の空(建夫)
十六句   七転びして八起きした人(修三)
十七句  わが胸に万朶の花の咲き誇る(春雄)
挙句     大阪城の春の夕暮れ(和子)

句上 村上建夫(3) 奥山満里子(1) 竹本俊平(3) 高城修三(宗匠・4) 石田博(1) 城貴代美(2) 嶋岡純子(1) 杉田繁治(1) 廣瀬春雄(1) 友永和子(1) 伊佐迪子


っ平成二十五年五月二十五日・六月二十二日
半歌仙連歌「風鈴草」の巻
  於 白樺

発句   紫や好士あつめて風鈴草(純子)
脇      下戸も上戸も夏の円卓(建夫)
第三   八国の会議はまたも踊るらん(修三)
四句     スローダンスはアップテンポに(博)
五句   サブローの肉体月が照らしおり(順子)
六句     薄の原をひた走る馬(繁治)
七句   やや寒の朝鮮半島急を告げ(修三)
八句     憂いをおびしキーセンの眉(貴代美)
九句   高官が閨でもらした密事(建夫)
十句     ただひたすらに積もる雪(貴代美)
十一句  白樺のよき香りしてサウナ風呂(満里子)
十二句    手配写真はみな怒り顔(修三)
十三句  月満ちて生まれしときは天使なり(純子)
十四句    じいじと呼ばれ突然の秋(修三)
十五句  近江路を女盛りで紅葉狩り(迪子)
十六句    赤蒟蒻と鯉の飴炊き(貴代美)
十七句  花の下なつかしき顔そこここに(和子)
挙句     縁を結びてとこしえの春(純子)

句上 嶋岡純子(3) 村上建夫(2) 高城修三(宗匠・4) 堀江博(1) 石井順子(1) 杉田繁治(1) 城貴代美(3) 奥山満里子(1) 伊佐迪子(1) 友永和子(1)

五月の月次会は十二句までで時間となり、六月の月次会で残りを巻き上げました。


平成二十五年四月二十七日
半歌仙連歌「春の虹」の巻
  於 白樺

発句   春の虹あそびを遊ぶ子供わざ(登美子)
脇      木香バラの咲き初める庭(弘子)
第三   バーベキュー湖畔に夏の近づきて(満里子)
四句     一直線にレガッタの跡(和子)
五句   瀬田川を覆いつくせる月裂きぬ(修三)
六句     火頭窓から女人さやかに(弘子)
七句   虫の音をあなたの声と聞き違え(博)
八句     下駄履く指に恋の感触(修三)
九句   島原の角屋に走る夏の宵(純子)
十句     襟替えの金算段つかず(弘子)
十一句  軽口で不真面目なれど三代目(修三)
十二句    勘亭流もパソコンで書く(満里子)
十三句  十八で父を亡くした月の夜(修三)
十四句    稲も刈らずに故郷あとに(弘子)
十五句  胡坐かき新酒飲み干す柏原(純子)
十六句    ゴールデン街はついの住処よ(修三)
十七句  咲き誇る神の斎の花吹雪(弘子)
挙句     明日は明日春の風ふく(杏)

句上  中山登美子(1) 松田弘子(5) 奥山満里子(2) 友永和子(1) 石田博(1) 高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(2) 杏(1)

今回は木香バラの咲き誇る中、新しく中山登美子さん、杏さんをお迎えしての連歌会となりました。


平成二十五年三月二十三日
半歌仙連歌「鯛の子が」の巻
  於 白樺

発句   鯛の子が今日もうましと親父かな(修三)
脇      錦市場の春のたけなわ(貴代美)
第三   アーケード恋猫の声高くして(純子)
四句     PM2.5の降りきたる夕べ(修三)
五句   縁側にすすき活けたり十三夜(満里子)
六句     語り明かそう虫の音はつまで(和子)
七句   寒山と拾得かわす濁り酒(純子)
八句    軸の朱房にからむ細指(貴代美)
九句   あの人が来そうな予感しつらえて(満里子)
十句    蛍好きの字坪庭に舞う(純子)
十一句 島原の花魁つとめ早二年(修三)
十二句   冷ゆるうなじに見返り柳(貴代美)
十三句 月待ちて川端船に棹さして(繁治)
十四句   村の芝居は白塗り妖し(貴代美)
十五句 ととさまもかかさまもいる夢の中(修三)
十六句   阿弥陀かかげしおぼろなる庵(貴代美)
十七句 とこしえに花の吹雪はたえなくて(修三)
挙句    春の山里白き道行く(和子)

句上  高城修三(宗匠・5) 城貴代美(5) 嶋岡純子(3) 奥山満里子(2) 友永和子(2) 杉田繁治(1) 


平成二十五年二月二日
半歌仙「蒟蒻の」の巻
 於 白樺

発句   蒟蒻の赤さや春の兆しあり(治子)
脇      近江の国はまだ浅い雪(純子)
第三   菜の花が湖岸の里に咲き初めて(清實)
四句     甘酒そえて祝う初雛(満里子)
五句   月おぼろ女系家族の心地よさ(清實)
六句     囲炉裏端にてあくびする猫(修三)
七句   老僧は政治談議に時忘れ(莞爾)
八句     天正十年梅雨のころなり(修三)
九句   戸を取りて身を寄せ合いて愛宕山(純子)
十句     燃ゆる思いをいかにとやせん(修三)
十一句  泉州で与謝野晶子は生まれけり(莞爾)
十二句   海鳴りの音遠く聞こえて(清實)
十三句  南蛮の船のマストにかかる月(七重)
十四句   グラバー邸に秋風の吹く(清實)
十五句  聞こえるは知らぬ存ぜぬ蝉の声(修三)
十六句   坂本竜馬天を仰ぎつ(繁治)
十七句  明日の世は我に任せよ花盛り(純子)
挙句     はるかかなたはおぼろなりけり(和子)

挙句 澤田治子(1) 嶋岡純子(世話人・3) 今枝清實(4) 奥山満里子(1) 高城修三(宗匠・4) 黒住莞爾(2) 下石坂七重(1) 杉田繁治(1) 友永和子(1)

今回はあらたにきらら連歌会に入会した澤田治子氏とKOBEみなと連歌会の黒住莞爾氏を迎えて鍋をつつきながらの月次連歌会となりました。





平成二十四年十二月十二日

今回の月次連歌会は平成二十四年忘年会としました。



根異性に十四年十一月二十四日
半歌仙「そぞろ寒」の巻
 於 白樺

発句    そぞろ寒あれやこれやと政事(善帆)
脇       秋いかにせん平成維新(修三)
第三    見あぐ月白髪のふえてしわふえて(純子)
四句      父と息子は永久の敵なり(修三)
五句    忠ならず孝もならずにただ涙(繁治)
六句      のの字のの字に蛍とびかう(純子)
七句    すそ乱し丑三つ時の貴船道(貴代美)
八句      高き瀬音に恋句掻き消え(修三)
九句    あが心かの君もとに届くらん(建夫)
十句      雪はひたすら狂いつつ降る(貴代美)
十一句  声もなく峠を越える瞽女の列(修三)
十二句    日本海を渡るかりがね(貴代美)
十三句  北前にかかる名月さやかにて(建夫)
十四句    長夜の笛は誰がためならん(善帆)
十五句  襖絵の峰連なりて善通寺(純子)
十六句    上り下がりに人生の機微(博)
十七句  我が命咲いた花なら散るばかり(順子)
十八句    春の日だまり黒猫が行く(和子)

句上 小林善帆(2) 高城修三(宗匠・4) 嶋岡純子(3) 杉田繁治(1) 城喜代美(3) 村上建夫(2) 石田博(1) 石井順子(1) 友永和子(1)



平成二十四年十月二十七日
半歌仙「後の月」の巻
 於 白樺

発句    後の月赤い煉瓦の館かな(貴代美)
脇       だみ声で聞く秋の君が代(修三)
第三    君たちも松茸山で酒くまん(貴代美)
四句      四十年前の争いの庭(建夫)
五句    火炎瓶汚れしタオル黒いヘル(純子)
六句      京極で見し日映ニュース(俊平)
七句    初キスはポップコーンの味がして(満里子)
八句      爪先立つも十七の恋(修三)
九句    目をつむり彼の心を探りかね(建夫)
十句      新幹線のベルけたたまし(俊平)
十一句   東京のクリスマスの夜最終便(純子)
十二句     孫がほほ笑む待ち受け画面(俊平)
十三句   太陽に重なる月を見るやらん(建夫)
十四句     次はいつかと春の風吹く(純子)
十五句   佐保姫は後ずさりしつつ口ごもる(修三)
十六句     霞の衣すきとおす肌(貴代美)
十七句   花の昼まといつくよに散りにけり(繁治)
挙句      猫が横切る日曜の路地(和子)

句上  城喜代美(3) 高城修三(宗匠・3) 村上建夫(3) 嶋岡純子(世話人・3) 竹本俊平(3) 奥山満里子(1) 杉田繁治(1) 友永和子(1)


平成二十四年九月二十九日
半歌仙「望月や」の巻
 於 白樺

発句    望月や御所によりそう梨木宮(建夫)
脇       結ぶ短冊こぼる白萩(満里子)
第三    この秋は国存亡の時ならん(修三)
四句      レインボーブリッジただ光るのみ(純子)
五句    たそがれに母を待つ子がひとりいて(貴代美)
六句     あれは昭和の四十一年(修三)
七句    口づけの味を苦しと知り初めし(貴代美)
八句     蹴上あたりの朝靄の恋(修三)
九句    しっとり濡れたたもとに蝶の来て(純子)
十句     春の憂いをいかにとやせん(修三)
十一句  弔いてみすずのいわし群れていく(純子)
十二句   海遊館の午後三時半(修三)
十三句  この後は茅渟の海見て月待たん(貴代美)
十四句    空一面にひつじ雲ゆく(修三)
十五句  少年は麦わら帽子ぽんと投げ(貴代美)
十六句    さあ来いと言い土俵を描く(繁治)
十七句  満開の花がほほえむ小学校(貴代美)
挙句     だあれもいない春の夕暮れ(和子)

句上  村上建夫(1) 奥山満里子(1) 高城修三(宗匠・6) 嶋岡純子(3) 城喜代美(5) 杉田繁治(1) 友永和子(1)


平成二十四年八月二十五日
半歌仙「源氏香」の巻
 於 白樺

発句    源氏香描くふすまや桔梗寺(建夫)
脇       秋風よぎる京の細露地(貴代美)
第三    憂いきて面あぐれば利鎌月(修三)
四句      男勝りに生きてこの年(貴代美)
五句    友が皆孫の話をする宴(修三)
六句      偲ぶはひとりあのひとのこと(弘之)
七句    川船の流れにゆれる我が想い(建夫)
八句      つま弾く三味の白き指先(貴代美)
九句    明日早くドバイの空に飛び立たん(春雄)
十句      いずれは帰る土へ灰へと(建夫)
十一句  我が夫は五年日記を残しおり(貴代美)
十二句    庭前に咲く花の紫(建夫)
十三句  木戸ゆらし風ふきぬけて月照りぬ(和子)
十四句    屋根叱咤してどんぐりの音(修三)
十五句  若き日の由紀夫と建夫くみかわし(貴代美)
十六句    知るや知らぬやおぼろなる朝(修三)
十七句  日を受けて川面に光る花筏(幸一)
挙句     蝶々二つ飛んでいくなり(繁治)

句上 村上建夫(4) 城喜代美(5) 高城修三(宗匠・4) 森脇弘之(1) 廣瀬春雄(1) 友永和子(1) 森幸一(1) 杉田繁治(1) 石田博


平成二十四年七月二十八日
半歌仙「手の甲や」の巻
 於 白樺

発句    手の甲や化粧直してコンチキチン(建夫)
脇       藍の浴衣に黒塗りの下駄(純子)
脇     白壁に楊緑のあざやかに(修三)
四句     杜氏の掛け声町にひびいて(建夫)
五句    軒先を切り裂くような利鎌月(修三)
六句     茶会の席に桔梗かざらん(建夫)
七句    かなしみは全てでないと人の言う(博)
九句     愛する人の葬儀には出ず(貴代美)
十句    新しき恋の語らい夜もすがら(建夫)
十句    ゴールデン街から花園神社(修三)
十一句  折からの雪をかぶりし名無し犬(貴代美)
十二句    知らぬ顔して笠地蔵(純子)
十三句  月照らす赤い前掛け風に揺れ(和子)
十四句    夜なべ仕事に砧打つ音(建夫)
十五句  土間の隅ひっそりとあり濁り酒(貴代美)
十六句    名をも惜しまじ銭も惜しまじ(修三)
十七句  花世咲けすぐに散るとも知りながら(建夫)
挙句     今日は春なり明日はいずこに(繁治)

句上   村上建夫(6) 嶋岡純子(2) 高城修三(宗匠・4) 石田博(1) 城喜代美(3) 友永和子(1) 杉田繁治(1) 家村豊次



平成二十四年六月二十三日
半歌仙「蛍壁」の巻
 於 白樺

発句   茶をすする音はせせらぎ蛍壁(建夫)
脇      梅雨の晴れ間の九条旧邸(修三)
第三   大輪のあじさいのまり悲しくて(純子)
四句     入院の朝ももが見送る(順子)
五句   我が命月影ほどにおぼつかな(清實)
六句     ただガチャガチャと虫のうるさき(修三)
七句   酔いどれて街道をいく秋しぐれ(貴代美)
八句     路傍の石に手を合わせたり(繁治)
九句   雪しんしんと年増女の恋心(貴代美)
十句     凍えた指をひしと吸うらん(修三)
十一句  ソビエトへ国境越えし日も遠き(清實)
十二句   長谷川和夫出演舞台(建夫)
十三句 みえ切って赤城の山の月を見る(繁治)
十四句   日本赤軍大菩薩の秋(修三)
十五句 だれもいぬすすきの原に風わたる(繁治)
十六句   あなめあなめとしゃれこうべ泣く(貴代美)
十七句 友禅の羽織の裏に花の散る(純子)
挙句    ゆきつもどりつ春の感慨(修三)

句上  村上建夫(2) 高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(2) 石井順子(1) 今枝清實(2) 城喜代美(3) 杉田繁治(3) 


平成二十四年五月二十六日
半歌仙「光秀の」の巻
 於 白樺

発句   光秀の思いを込めし五月かな(修三)
脇      風に揺られて惑う緑木(博)
第三   きっとくるやはり来ないと占いて(純子)
四句     しばし待たれよ秋の夕暮れ(建夫)
五句   縁までも霜を降ろすや子の刻に(隆三)
六句     白萩こぼし光悦の行く(純子)
七句   もう一つ二つ三つ四ついつづけしよう(建夫)
八句     唐紅の腰巻妖し(貴代美)
九句   雪つもる堕ちて黒川離れ宿(純子)
十句     知るや知らぬや落人の里(修三)
十一句  鍬をもち俄百姓空あおぐ(建夫)
十二句   なすは小さ目きゅうりは曲り(純子)
十三句  親族がうちそろいての月祭り(修三)
十四句   狐狸も鈴虫もなく(繁治)
十五句  季も移り博物館も展示替え(隆三)
十六句   はにわますぐに目を開きいる(貴代美)
十七句  纏向の卑弥呼の春は花に満つ(純子)
挙句     はるかおぼろに三輪山のすそ(修三)

句上  高城修三(宗匠・4) 石田博(1) 村上建夫(3) 細尾隆三(2) 嶋岡純子(3) 城貴代美(2) 杉田繁治(1) 石井順子(1)


平成二十四年四月二十八日
半歌仙「散りてなお」の巻
 於 白樺

発句   散りてなおもゆる青葉の桜かな(建夫)
脇       吉田の山に風かおる朝(七重)
第三   梁の上つばくらめ二つ戻り来て(修三)
四句     死ぬに死ねない老いらくの春(順子)
五句   まったりと我にほほえむ朧月(貴代美)
六句     国定忠治も心がなえて(修三)
七句   さりし妻せめて息子の顔見たし(建夫)
八句     すずなるまなこ思い残すも(博)
九句   仮初の契りに雪は降りしきり(貴代美)
十句     両国橋の橋の真中で(修三)
十一句  身と心のせて掉さす屋形船(建夫)
十二句    いそいそ行く秋白秋偲ぶ(鬼猿)
十三句  邪宗門月影で読む十五歳(順子)
十四句    ただひたすらに鈴虫の鳴く(和代)
十五句  若き日を熱く語りし友ありて(建夫)
十六句    赤いワインが揺らぐ春灯(貴代美)
十七句  花が散る明日は旅立ち神戸港(純子)
挙句     霞のかなた淡路島見ゆ(修三)

句上  建夫村上(4) 下石坂七重(1) 高城修三(宗匠・4) 石井順子(2) 城貴代美(3) 石田博(1) 山上鬼猿(1) 友永和子(1) 嶋岡純子(世話人・1)


平成二十四年三月二十四日
半歌仙「春時雨」の巻
 於 白樺

発句   春時雨襟たて急ぐ京の街(隆三)
脇      飛び込むカフェに活けし菜の花(俊平)
第三   永き日の悲しみつむぐ老婆いて(春雄)
四句     昔語るな今を思うな(修三)
五句   凛として立ちて見上ぐる望の月(貴代美)
六句     一声残して雁のすぎゆく(善帆)
七句   北へ行く桜もみずる旅かばん(鬼猿)
八句     帝釈天は今日もにこやか(修三)
九句   逢引の真昼に雪のふりしきり(貴代美)
十句     年寄なども手をつなぎたる(修三)
十一句  うきうきとデイサービスに母は行く(俊平)
十二句   真っ赤に燃える曼珠沙華の道(貴代美)
十三句  彼岸まではるかに届く月の影(隆三)
十四句   数珠もつ孫のすずやかな声(満里子)
十五句  ころころと猫が手毬をもてあそぶ(繁治)
十六句   のどかな午後の女郎屋の二階(鬼猿)
十七句  花の咲く丸窓開けて紅をひく(和子)
十八句   川の向こうはかすみたなびく(純子)

句上  細尾隆三(2) 竹本俊平(2) 廣瀬春雄(1) 高城修三(宗匠・3) 城貴代美(3) 小林善帆(1) 鬼猿(2) 奥山満里子(1) 杉田繁治(1) 友永和子(1) 嶋岡純子(1)



平成二十四年二月二十五日
半歌仙「若菜摘む」の巻
 於 白樺

発句   若菜摘む吉田の山の夕まぐれ(修三)
脇      春を告げたる赤鬼青鬼(俊平)
第三   目に涙いとしかりける稚児といて(繁治)
四句     つまびく琴は想夫恋なり(貴代美)
五句   月を背に駒駈け急ぐ桂川(俊平)
六句     野分吹く中北面の武士(隆三)
七句   明日からは露のしとねを友として(貴代美)
八句     糒かち栗腰にぶらさげ(満里子)
九句   白き雪ただしんしんと降り積もる(修三)
十句     ハートマークを凍てたる窓に(俊平)
十一句 君を待ちショパン奏でる珈琲館(貴代美)
十二句   東山二条東に入る(修三)
十三句 月に酔い寮歌高唱高足駄(俊平)
十四句   ばかばかりなり秋の風吹く(隆三)
十五句 転げくる落ち葉に遊ぶ三毛の猫(繁治)
十六句   ちょっと忘れし駅長仕事(貴代美)
十七句 デゴイチの汽笛鳴らして花吹雪(純子)
挙句    丹後の里に霞たなびく(和子)

句上 高城修三(宗匠・3) 竹本俊平(3) 杉田繁治(2) 城貴代美(4) 細尾隆三(2) 奥山満里子(1) 嶋岡純子(1) 友永和代(1)



平成二十三年十一月二十六日
半歌仙「鱈鍋や」の巻
 於 白樺

発句   鱈鍋や館に流るるピアノ曲(貴代美)
脇      男爵さまと誰か知らなむ(修三)
第三   銀紙に赤きリボンを結びいて(貴代美)
四句     家に帰りて開く喜び(繁治)
五句   骨董で手にした杯後の月(純子)
六句     萩も薄もいま盛りなり(隆三)
七句   青空を白く貫く飛行雲(純子)
八句     行く先はタイ再開目指し(和子)
九句   アユタヤの寺院の陰で君が待つ(繁治)
十句     更紗がつつむ胸のふくらみ(修三)
十一句 素足にて砂浜駈ける恋の朝(貴代美)
十二句   ジャックナイフは錆びついており(純子)
十三句 満月に心の咎を問いただし(貴代美)
十四句   泣けとばかりに虫の声する(修三)
十五句 ふるさとを離れて三十年暮れの秋(貴代美)
十六句   ぉ地蔵様は昔のままで(修三)
十七句 子ら集い花かんざしの野辺の道(和子)
挙句    タンポポの穂風にゆられて(純子)

句上 城貴代美(5) 高城修三(宗匠・4) 杉田繁治(2) 嶋岡純子(世話人・4) 細尾隆三(1) 友永和子(2) 



平成二十三年十月二十二日
 於 白樺

自由な懇談会とする



平成二十三年九月二十四日
 於 白樺

與喜天満宮奉納連歌の一巡を完成させる



平成二十三年八月二十七日
半歌仙「この年は」の巻
  於 白樺

発句   この年はゲリラ豪雨で晩夏かな(修三)
脇      木陰にひそみ秋をまつ虫(繁治)
第三   白壁にひとがた残しかれゆきて(純子)
四句     のちに届きし夢語る文(和子)
五句   泣き伏してうなじに優し月明り(修三)
六句     おしんおしんとすすきのゆれる(純子)
七句   寒空に別れを告げる鐘一つ(博)
八句     赤白黄色のぼりはためき(修三)
九句   初荷来て老人の行く商店街(繁治)
十句     知らぬ顔してはごいたをつく(修三)
十一句  大江戸の空に奴が踊りいる(貴代美)
十二句    御用御用と銭形平次(純子)
十三句  行き詰る長屋の路地に望の月(修三)
十四句    丹精込めた懸崖の菊(純子)
十五句  枚方の今秋のスターだれやらん(繁治)
十六句    ひばりが高くさえずりにけり(修三)
十七句  歌姫は昭和の花と咲き誇る(順子)
挙句     春風やさし墨田の川面(純子)

句上 高城修三(宗匠・6) 杉田繁治(3) 嶋岡純子(世話人・5) 友永和子(1) 石田博(1) 城貴代美(1) 石井順子(1)


平成二十三年七月二十四日
半歌仙「夏ばてや」の巻
  於 白樺

発句   夏ばてや昨日はまむし今日ははも(俊平)
脇      暑さ知らずの平賀源内(修三)
第三   片ひざを立ててキセルを打ち付けて(貴代美)
四句     はるかに見ゆる日の下の富士(純子)
五句   我は今月よりもどる宇宙人(俊平)
六句     もみぢの錦踏みしめて行く(繁治)
七句   長谷寺に昔の秋を訪ねたり(修三)
八句     くぐり戸開く君の隠れ家(修三)
九句   ひめやかにおとなう声もかすれがち(七重)
十句    帯解くことももどかしき恋(貴代美)
十一句 蛍火が静かにきゆる貴船宿(純子)
十二句   闇深々と水音高し(貴代美)
十三句 山の端にのっと出でたる望の月(修三)
十四句   芒の原は銀色あわく(俊平)
十五句 あざやかにすっとまっすぐ飛行雲(和子)
十六句   ジャングルジムに子らの歓声(貴代美)
十七句 ニュータウン花も盛りの二十年(俊平)
挙句    うれしかなしと春の野に立つ(春雄)

句上 竹本俊平(4) 高城修三(宗匠・3) 城貴代美(4) 嶋岡純子(世話人・2) 杉田繁治(1) 下石坂七重(1) 友永和子(1) 廣瀬春雄(1) 石田博



平成二十三年六月二十五日
半歌仙「しなのなる」の巻
  於 白樺


発句   しなのなる一茶の里は梅雨しげし(修三)
脇      くちなしの白薄紅のねむ(順子)
第三   この国の行く末いかに思うらん(修三)
四句    津波の跡のがれきながめて(繁治)
五句   家族みなそろいて見しは去年の月(弘子)
六句    あらくつわむしと言いし妻なり(修三)
七句   黒髪に桔梗の柄の帯締めて(弘子)
八句    十字架にぎり恋の道行(純子)
九句   雪が降るただひたすらに雪が降る(修三)
十句    ててごのおわす新ノ口村へ(順子)
十一句 大坂はいまや天下の台所(修三)
十二句   橋本知事は庖丁をとぐ(純子)
十三句 海浜の超高層ビルに月青し(修三)
十四句   飛行機雲は一直線に(友永)
十五句 はるかかなたに神々の秋(修三)
十六句   記紀の御世から続く波音(弘子)
十七句 花盛り吉野の宮に持統帝(順子)
挙句    それにつけても春の香久山(修三)

句上  高城修三(宗匠・6) 石井順子(3) 松田弘子(3) 嶋岡純子(世話人・2) 友永和子(1) 杉田繁治 


平成二十三年五月二十一日
愛宕百韻連歌再演劇通し稽古
  於 白樺
  

平成二十三年四月二十三日
愛宕百韻連歌の名残表をつくる。柳川晋氏が新しく参加する。
  於 白樺


平成二十三年三月二十六日
愛宕百韻連歌の三折裏をつくる。

平成二三年二月二十六日
表十句「吹く風に」の巻
  於 白樺

発句  吹く風に梅一輪を待ちにけり(博)
脇     妻がいらだつ立春の朝(修三)
第三  窓の外光の春を目で追って(一恵)
四句   紙飛行機が不意に旋回(貴代美)
五句  釣竿であやつる親を子が眺め(繁治)
六句   入道雲の湧き上がる午後(修三)
七句  来ぬ人をいつまでも待つ停留所(貴代美)
八句   古きポスター恋人はだれ(和子)
九句  尾道や花の命は短くて(繁治)
挙句   瀬戸内海は今日もうららか(修三)

句上 石田博(1) 高城修三(宗匠・3) 岡崎一恵(1) 城貴代美(2) 杉田繁治(2) 友永和子(1) 嶋岡純子(世話人)
    
今回より岡崎一恵氏が新しく参加する。

平成二十三年一月二十二日
半歌仙「でんがくを」の巻
   於 白樺


発句   でんがくを皆でつつくや初連歌(純子)
脇      混沌の中ひかるおだいこ(博)
第三   朝市の姉さんかぶり眩しくて(俊平)
四句     赤子吸い付く胸隠しおり(繁治)
五句   縁先を白く照らせる後の月(修三)
六句     破れこおろぎただうずくまる(俊平)

初句   六十年くやみしことの多き秋(貴代美)
二句     思いもかけぬ恋したかりき(修三)
三句   紅筆に妖しき色を付け足して(純子)
四句     火を吹く蛇となりし清姫(貴代美)
五句   夕立ちて水上まさる日高川(俊平)
六句     分かれて行くも末に会う波(繁治)
七句   ただ一人島に居残り月ながむ(俊平)
八句     数珠をたぐれば足元に萩(純子)
九句   母死せり露もしとどに南郷庵(修三)
十句     五合飲んで酔いつぶれおり(繁治)
十一句 咲く花も散る花もあり夢の中(弘子)
挙句     うららの道に猫眠りいる(和子)

句上 嶋岡純子(3) 石田博(1) 竹本俊平(4) 杉田繁治(3) 高城修三(宗匠・3) 城貴代美(2) 松田弘子(1) 友永和子(1) 石井順子

ここ三か月ばかり愛宕百韻連歌再現劇に忙殺されていたので、久しぶりの半歌仙は好調な巻となりました。

平成二十二年十二月二十五日
忘年会



平成二十二年十一月二十七日
平成愛宕百韻連歌の初裏をつくる


平成二十二年十月二三五日
天正愛宕百韻連歌再現劇の通し稽古

平成二十二年九月二十五日
半歌仙連歌「惟任の」の巻
   於 白樺



発句   惟任の思いしのぶや桔梗咲く(春雄)

脇      名月を待つ亀山の城(修三)

第三   秋おしむ尺八の音に誘われて(純子)

四句     猫が小股で大屋根を行く(繁治)

五句   このところ猛暑日ばかり続きおり(修三)

六句     ガラスの鉢に冷やしそうめん(純子)


初句   短パンで床机に坐る妹の肌(修三)

二句     嫁ぐ日近し胸のふくらみ(春雄)

三句   あれやこれ九条東の年の暮れ(修三)

四句     新幹線に消える杵音(繁治)

五句   イクメンは園児に囲まれ手返しす(順子)

六句     藍のはっぴに赤いはちまき(純子)

七句   村祭り踊り疲れて望の月(順子)

八句     良寛さんの決意した秋(修三)

九句   白菊の日の本みちる阿弥陀仏(春雄)

十句     線香一本消えていくまで(純子)

十一句  色町のならい身にしみ花眺む(弘子)

挙句     高瀬川舞う蝶のひらひら(純子)

句上 廣瀬春雄(3) 高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(5) 杉田繁治(2) 石井順子(2) 松田弘子(1)


平成二十二年八月二十八日
半歌仙連歌「古伊万里に」の巻
   於 白樺



発句   古伊万里に色艶のよき秋刀魚かな(純子)

脇      緑あざやかすだちの香り(弘子)

第三   月浮かぶ水割り焼酎飲み干して(純子)

四句     薩長結ぶ軍艦手土産(弘子)

五句   どうなるか手に汗握る竜馬伝(繁治)

六句     蜜柑残して姉が立ち去る(修三)


初句   約束の最終便は午後八時(純子)

二句     これは不倫とつぶやきながら(修三)

三句   熱き肌もゆる吐息を誰が知る(春雄)

四句     ひとり籠もれるみちのくの宿(繁治)

五句   風に聞くあなめあなめは幻か(修三)

六句     羽織の裏の髑髏しるしき(純子)

七句   咳をして衿に手をそえ月仰ぐ(修三)

八句     小沢一郎決断の秋(純子)

九句   友愛が眉吊り上げて右左(春雄)

十句     鳩山御殿今日も暮れ行く(修三)

十一句  さんざめく宴の果ての花あかり(和子)

挙句     信濃の里に暮れ六つの春(春雄)

句上 嶋岡純子(5) 松田弘子(2) 杉田繁治(2) 高城修三(宗匠・5) 廣瀬春雄(3) 友永和子(1)

今回は長野より駆けつけてくださった松田弘子氏をお迎えしての連歌会となりました。


平成二十二年七月三十一日
半歌仙連歌「鉾立や」の巻
   於 白樺



発句   鉾立や京の見栄切るつながらみ(純子)

脇      入道雲にねじりはちまき(俊平)

第三   えんやこら波を切り裂き突き進まん(博)

四句     秀吉の夢城築く石(純子)

五句   オリーブの森の向こうに望の月(修三)

六句     キリギリスかと耳傾ける(繁治)


初句   夜長なり抱き合う二人ひっそりと(俊平)

二句     観音様に亀もうなづく(修三)

三句   その先の蟻の細道険しくて(純子)

四句     少年の目に不思議なる色(修三)

五句   冬の街手品使いの燕尾服(俊平)

六句     現われ出たるペンギンの群れ(繁治)

七句   氷山を吊るすがごとく三日の月(修三)

八句     今日一日をいかにとやせん(純子)

九句   携帯に孫は行かぬとメールあり(俊平)

十句     入学式を明日に控えて(繁治)

十一句  靴みがきスキップして花の道(友永)

挙句     奈良のかすみは佐保姫のごと(修三)

句上  嶋岡純子(4) 竹本俊平(4) 石田博(1) 高城修三(宗匠・5) 杉田繁治(2) 友永和子(1)


平成二十二年六月ニ十六日
半歌仙連歌「梅雨空に」の巻
   於 白樺



発句   梅雨空に川端柳の緑かな(博)

脇       涼しき風の吹き渡る朝(修三)

第三   街中を新聞配達駆け抜けて(隆三)

四句     日本勝ったと歓喜する声(修三)

五句   月さえてマストにかかる菊水旗(春雄)

六句     波にゆられる長夜のかなし(修三)


初句   追う恋は押しては返すゲームなり(博)

二句     それでは嫌と男に迫る(純子)

三句   仕方ない一緒に死のうと切り返す(修三)

四句     夫婦漫才拍手喝采(隆三)

五句   甘辛く人の世映す法善寺(春雄)

六句     跡形もなし精華小学校(順子)

七句   同窓会みんなで仰ぐ望の月(純子)

八句     煙の立たぬ煙突の秋(修三)

九句   廃業の湯にクツワムシ鳴く(純子)

十句     夜鳴きそば屋は静かに通る(繁治)

十一句 花待ちて今日を明日をいかにせん(修三)

挙句     春風吹いて旅支度する(知子)


句上  石田博(2) 高城修三(宗匠・6) 細尾隆三(2) 廣瀬春雄(2) 嶋岡純子(3) 石井順子(1) 杉田繁治(1) 友永和子(1)    


平成二十二年五月ニ十二日
半歌仙連歌「信濃路や」の巻
   於 白樺



発句    信濃路や眠りさまたぐ閑古鳥(弘子)

脇       ほのかに浮かぶ穂高残雪(修三)

第三    ピッケルに短冊一つ歌詠みて(俊平)

四句     帰らぬ人を月に喩えぬ(修三)

五句    空あおぎ萩を飾るや塚の前(隆三)

六句     柿を打ちつけ故郷を捨てる(俊平)


初句    角帯に一天地六の一人旅(隆三)

二句     後追うひとは黒髪乱し(純子)

三句    恋するも恋されるのも地獄なり(修三)

四句     極楽極楽汗にまみれて(隆三)

五句    お釈迦様草津のお湯でほっこりと(俊平)

六句     浴衣はだけて冷や酒嬉し(隆三)

七句    見上ぐれば三千年前と同じ月(修三)

八句     薄の原に風そよぐなり(繁治)

九句    ちちろ海大の字になる山頭火(純子)

十句     サーベル鳴らし叩き起こさる(隆三)

十二句  一升瓶枕に花の神田川(純子)

挙句     揺れる人波春の日ざかり(和子)

句上  松田弘子(客・1) 高城修三(宗匠・4) 竹本俊平(3) 細尾隆三(5) 嶋岡純子(3) 杉田繁治(1) 友永和子(1) 石田博


平成二十二年四月ニ十四日
半歌仙連歌「山吹や」の巻
   於 白樺



発句   山吹や入る陽明るき東山(隆三)

脇      思い出多き春の一日(修三)

第三   友集う卓でさよりの光いて(貴代美)

四句     わさびの効いて涙こぼるる(純子)

五句   悲しさを洗い流して晴れる月(七重)

六句     源氏は知らじ萩の咲く庭(隆)


初句   今宵また女房ひとりが気をもんで(修)

二句     待ち受け画面の赤き唇(貴)

三句   悔しくてなお悔しくて愛しくて(修)

四句     丸めたセーター取り出してみる(貴)

五句   ユニクロに行ってみようか違う色(七)

六句     色づき始む銀座の柳(純)

七句   酔いどれて月を見上ぐる午前二時(修)

八句     明日はあるかとちちろ鳴く声(純)

九句   破れ障子ひとり膝抱く猫のそば(七)

十句     三億円の当たる夢見て(修)

十一句 海渡りポトマック河畔の花盛り(和子)

挙句     我は我なり春は春なり(修)

句上  細尾隆三(2) 高城修三(宗匠・6) 城貴代美(3) 嶋岡純子(3) 下石坂七重(3) 友永和子(1) 



平成二十二年三月ニ十七日
半歌仙連歌「送別や」の巻
   於 白樺



発句  送別や余情残心春の宵(純子)

脇      いいだこ前に君もの言わず(修三)

第三  紅色のチューリップは蕾にて(純子)

四句    バブルの初め知るや知らずや(修三)

五句  満月に必ず吼える男あり(貴代美)

六句    薄の原の茫々として(繁治)


初句  足元に鈴虫の鳴く恋の道(千枝子)

二句    あなたなしでは生きて行けない(純子)

三句  目覚めれば思い出枕濡らしてる(千枝子)

四句    酒の失敗雪積もる朝(博) 

五句  モンゴルに英雄の顔悲しくて(純子)

六句    力士のゆえに束ねたる髪(貴代美)

七句  静かなる熱田の杜に望の月(修三)

八句    信長堀に蔦のからまる(弘子)

九句  かまきりの構える姿勇ましく(純子)

十句    無益なことはせぬがよろしい(修三)

十一句 枝折りて持ち帰らずに桜花(繁治)

挙句    春日にかざす大和の心(貴代美)

句上  嶋岡純子(5) 高城修三(4) 城貴代美(3) 杉田繁治(2) 石田千枝子(2) 石田博(1) 松田弘子(1)


平成二十二年二月ニ十七日
半歌仙連歌「春サラダ」の巻
   於 白樺



発句   春サラダ卓に彩り溢れけり(貴代美)

脇      若菜を摘んで盛り上げる過去(俊平)

第三   土筆出る土手に寝転び夢を見る(繁治)

四句     さぼった授業覚えた悪さ(順子)

五句   月仰ぎ煙草をふかす十七歳(純子)

六句     人もまばらな秋の湘南(修三)


初句   白壁に萩波うちて男女行く(順子)

二句     路地に曲がりつ熱きくちづけ(純子)

三句   不倫でも恋は恋よとつぶやいて(貴代美)

四句     赤いパンティ脱ぎ捨てにけり(修三)

五句   よっと言う掛け声ひとつ燃える夏(博)

六句     御輿かついで下る山道(俊平)

七句   締め上げた草鞋の切れて後の月(純子)

八句     天の川詠む芭蕉の世界(貴代美)

九句   門弟が不易流行伝えたる(俊平)

十句     蝶が飛び交うパリコレクション(満里子)

十一句 セーヌ川花の都に武者修行(弘子)

挙句     屋根裏部屋に子猫ぬくぬく(満里子)


句上  城貴代美(3) 竹本俊平(3) 杉田繁治(1) 石井順子(2) 嶋岡純子(3) 高城修三(2) 石田博(1) 奥山満里子(2) 松田弘子(1) 友永和子


平成二十二年一月ニ十二日
半歌仙連歌「新人を」の巻
   於 白樺



発句  新人を迎えて華やぐおでんかな(純子)

脇     笑顔こぼれて立つ春近し(春雄)

第三  スカーフをなびかせバイク走らせん(純)

四句   ルート66ガスステーション(弘子)

五句  どこまでも一直線に月追いて(俊平)

六句   宇宙遊泳日本の秋(純)


初句  夜長には君のしとねで夢うつつ(俊)

二句   絡む二の腕老いの影さし(隆三)

三句  他ならぬアラホー世代に恋をして(修三)

四句   捨て去るもよし捨てらるもよし(博)

五句  信濃路の棚田見下ろす冠着(かむりき)山(満里子)

六句   母を残して冬ざれの月(純)

七句  意にそまぬ宮仕えして寒椿(修)

八句   柴戸に続く長き細道(隆)

九句  よい物が入りましたと御用聞き(俊)

十句    杉のたらいに明石の真鯛(千枝子)

十一句 絢爛や醍醐の宴に花吹雪(繁治)

挙句    蝶の飛び交う今日のたそがれ(貴代美)

句上
嶋岡純子(4) 廣瀬春雄(1) 松田弘子(1) 竹本俊平(3) 細尾隆三(2) 高城修三(宗匠・2) 石田博(1) 奥山満里子(1) 石田千枝子(1) 杉田繁治(1) 城貴代美(1) 友永和子

今回は白樺月次連歌会の連歌始となりました。また、今年から京カルに新しく参加された石田千枝子氏を迎えての歓迎連歌会ともなりました。


平成二十一年十一月ニ十八日
半歌仙連歌「もみぢ道」の巻
   於 白樺



発句   もみぢ道踏みつ奏でるバッハかな(博)

脇      つるべ落としに迫る夕暮れ(俊平)

第三  中空に弓張り月の昇り来て(弘子)

四句    祇園恋しや三味の音悲し(俊平)

五句  白河に昔の女を思い出す(隆三)

六句    五歳年上さそり座生まれ(純子)


初句  店にある薔薇の花びらそっとなで(修三)

二句    見舞いに行くにも気重き今(隆三)

三句  あれほどに煙草やめてと言ったのに(純子)

四句    四十九日に形見の仕分け(俊平)

五句  燃え尽きてただひたすらに萩一枝(博)

六句    君知るや秋恋の不思議を(修三)

七句  月をめで浮かれ狸の夫婦連れ(俊平)

八句    信楽の里霜が降りくる(隆三)

九句  久々の作陶守れ暖をとれ(博)

十句    光悦が出す安南の壺(隆三)

十一句 陽光に花の吹雪のうるわしき(修三)

挙句    白酒まわる初雛祭り(満里子)

句上
石田博(3) 竹本俊平(4) 松田弘子(1) 細尾隆三(4) 嶋岡純子(2) 高城修三(3) 奥山満里子(1)

  


平成二十一年十月ニ十四日
半歌仙連歌「お初穂の」の巻
   於 白樺


発句   お初穂の運ばれ行くや五十鈴川(弘子)

脇      橋脚洗う水のさやけき(修三)

第三   昨日より少し欠けたる月ありて(雪子)

四句     ベートーベンは髪掻き上げる(純子)

五句   額縁の聖女ほほえむ春の宵(清實)

六句     入学式を終えた講堂(雪子)


初句   三毛猫は恋を求めて屋根の上(俊平)

二句     妻が出掛けた水曜の朝(修三)

三句   深々と帽子かぶりし君の来る(清實)

四句     ずうずう弁とシャネルの匂い(俊平)

五句   合コンの隣に坐る赤い爪(純子)

六句     大吟醸に菊を浮かべて(冨喜子)

七句   その杯を月もろともに呑み干せり(修三)

八句     モンゴルの秋狼の声(弘子)

九句   植林の便り友よりはずみ来て(満里子)

十句     屯田兵は夏待ち望む(俊平)

十一句  立膝の花札遊び夕長し(純子)

挙句     窓より迫る比良の残雪(修三)

句上 松田弘子(2) 高城修三(宗匠・4) 武藤雪子(2) 嶋岡純子(3) 石田博(1) 今枝清美(2) 竹本俊平(2) 栗田冨喜子(1) 奥山満里子(1)


平成二十一年九月ニ十六日
半歌仙連歌「萩すゝき」の巻
   於 白樺


発句   萩すゝき弓張月の吉田山(隆三)

脇      美女のそろいて聞く虫の声(弘子)

第三   その袖は川霧舟の文様にて(満里子)

四句     御用御用と大立まわり(修三)

五句   町の辻紙芝居屋を子ら囲む(隆三)

六句    五十年前の記憶悲しき(修三)


初句   春の宵無理強いされたる筆おろし(隆三)

二句     姫鏡台に蝶のかんざし(純子)

三句   突然に菜の花畑を想い出す(修三)

四句     世の末憂う司馬遼太郎(純子)

五句   過去みすえ未来求める記者魂(隆三)

六句     昭和は遠くなりにけるかな(修三)

七句   後の月ピースの香り深く吸う(純子)

八句     片膝立てて夜業の女(貴代美)

九句   よくないわおよしなさいよ悪い癖(純子)

十句     本当のあなた咲かせてほしい(博)

十一句  年上のファーストレデイは花盛り(純子)

挙句     かすみたなびくポトマック河畔(繁治)

句上
細尾隆三(4) 松田弘子(1) 奥山満里子(1) 高城修三(4) 嶋岡純子(5) 城貴代美(1) 石田博(1) 杉田繁治(1) 武藤雪子


平成二十一年八月ニ十二日
半歌仙連歌「秋立つや」の巻
   於 白樺


発句  秋立つや子犬の舌は出でしまま(弘子)

脇     影長くなるだんだらの坂(修三)

第三  望の月カレーライスの匂いして(純子)

四句    ボースゆずりの中村屋の意気(弘子)

五句  国想う夢はるかなり大東亜(春雄)

六句   目覚めてみれば布団大地図(俊平)


初句  うららかに日曜の空晴れ渡る(修三)

二句    お手々つないでタンポポ摘みに(隆三)

三句  行き行きて倒れ伏したる花の下(繁治)

四句    熟年の恋秘密は多し(貴代美)

五句  ひっそりと携帯電話沼に捨て(俊平)

六句    鈴虫の声不意に止みぬる(修三)

七句  月中天静かに下るかぐや姫(隆三)

八句    竹薮ゆらすマニフェストの秋(春雄)

九句  カメラの前つくり笑いの厚化粧(俊平)

十句    ノリピーポピー蝶の舞々(純子)

十一句 しなだるる桜の精の妖しくて(貴代美)

挙句    近衛の庭に春の風吹く(隆三)

句上  松田弘子(2) 高城修三(3) 嶋岡純子(2) 廣瀬春雄(2) 竹本俊平(3) 細尾隆三(3) 杉      田繁治(1)  城貴代美(2)


平成二十一年七月ニ十五日
半歌仙連歌「さみしさや」の巻
   於 白樺


発句   さみしさや天神祭りの船の艫(修三)

脇      浴衣姿の男が一人(弘子)

第三   大和屋の歌舞伎役者の眉引きて(純子)

四句     このすき焼きは三ツ星だよね(修三)

五句   かすめとり舌なめずりの猫おどけ(博)

六句     月皓々と中京の屋根(修三)


初句   初孫と数珠を回して地蔵盆(満里子)

二句     真向かいで笑む忘れ得ぬ人(弘子)

三句   夜もすがらタンゴジルバと手を取りて(隆三)

四句     熱き吐息に後れ毛乱る(純子)

五句   君知るや難波の夏の夢の夢(修三)

六句     金の茶室に桔梗一輪(純子)

七句   食待ちて今か今かと月を待つ(修三)

八句     すすき振りつつ歌う子供ら(隆三)

九句   永遠の沈む夕陽の五合庵(修三)

十句     死ぬ春来れば死ぬがよろしい(純子)

十一句 六甲の散る花しきりうりん坊(弘子)

挙句     ふわりふわりと蝶々飛びゆく(繁治)

 句上  高城修三(宗匠・6) 松田弘子(3) 嶋岡純子(4) 石田博(1) 奥山満里子(1) 細尾隆三(2) 杉田繁治(1)



平成二十一年六月ニ十七日
半歌仙連歌「舞姫や」の巻
   於 白樺


発句   舞姫や薄紅かざす百合祭り(弘子)

脇      汗ぬぐいつつ率川の宮(修三)

第三   限りなき空の青さを仰ぎ見て(善帆)

四句     脳死を人の死とは何ぞや(純子)

五句   ホスピスの部屋を満たした月明かり(俊平)

六句     金木犀の香り悲しく(修三)


初句   長き夜に黒髪は誰がためにある(善帆)

二句     頼朝いとし伊豆山神社(純子)

三句   蔀を通す御声の甲高き(善帆)

四句     橘の咲く蹴鞠する庭(満里子)

五句   黒猫は大きなあくびして過ぎり(善帆)

六句     尾道港の午後三時半(俊平)

七句   その冬に「かぐや」が写す月の山(繁治)

八句     インターネットで買いし額縁(修三)

九句   ありがたや世界を駆ける人の知恵(春雄)

十句     蝶のはばたき不思議ならんや(修三)

十一句  花盛りポトマック行く破れ帽(弘子)

挙句     春のかすみを我が事にして(修三)


句上 松田弘子(2) 高城修三(5) 小林善帆(4) 嶋岡純子(2) 竹本俊平(2) 奥山満里子(1) 杉田繁治(1) 廣瀬春雄(1) 石井純子


平成二十一年五月ニ十三日
半歌仙連歌「古希迎え」の巻
   於 白樺


発句   古希迎え若葉の香り息苦し(繁治)

脇      口づけの日は白き野茨(純子)

第三   思うまじ嫁ぎし君を見送りて(修三)

四句     中山道に鈴の音響く(弘子)

五句   月かげり背後に迫るゴマノハエ(俊平)

六句     ふところ探る萩の巾着(修) 


初句   秋場所に小粒二三個確かめて(隆三)

二句     髷を乱して仁王立ちする(純)

三句   檀ノ浦陸と海とにおめきあい(俊)

四句     潮ひる玉に潮みちる玉(修)

五句   抱かれて共に見ている冬の朝(雪子)

六句     契りのワイン切子のグラス(純)

七句   信長は湖畔の月に狂いけり(修)

八句     猿がおびえて長浜の秋(隆)

九句   野分来て釣りする竿も早仕舞い(俊)

十句     ブラックバスがびくに一匹(繁)

十一句  花うらら腰に下げたる大徳利(隆)

挙句     子供まつわる春の夕暮(弘)     

句上  杉田繁治(2) 嶋岡純子(3) 高城修三(4) 松田弘子(2) 竹本俊平(3) 細尾隆三(3) 武藤雪子(1) 

今回の連歌会は杉田繁治先生の退職と誕生日ならびに古希のお祝いを兼ねての興行となりました。先生の発句に誘われて脇に恋句が付き、表からの恋となりました。


平成二十一年四月ニ十五日
半歌仙連歌「青楓」の巻
   於 白樺


発句   青楓添えてすがしき宴かな(善帆)

脇      初鰹盛るギィヤマンの皿(俊平)

第三   これはこれ昔のことは捨て置いて(修三)

四句     又兵衛仕える信雄の下(弘子)

五句   月さえし筆先荒き母の顔(純子)

六句     不意に屋根打つどんぐり一つ(雪子)


初句   虫の音を夢見心地に聞ける朝(修三)

二句     三日三晩の祝言果てて(俊平)

三句   肌寄せる妻を悲しと思うらん(修三)

四句     不実の君を我は知らない(雪子)

五句   夏の空ただ白雲の流れゆく(善帆)

六句     バナナ叩きの売り声高き(純子)

七句   新橋のガード下には月もなし(俊平)

八句     飲みて飲まれてやや肌寒の街(善帆)

九句   手を合わせそっと捧げる菊一輪(修三)

十句     脱線事故の今日は四年目(繁治)

十一句  花嫁はなお目なかいに微笑みて(善帆)

挙句     ピアノ奏でる白髪の祖母(博)

句上  小林善帆(4) 竹本俊平(3) 高城修三(4) 松田弘子(1) 嶋岡純子(2) 武藤雪子(2) 杉      田繁治(1) 石田博(1)


平成二十一年三月ニ十八日
半歌仙連歌「友去りて」の巻
   於 白樺


発句   友去りて又巡り来し弥生かな(雪子)

脇      桜吹雪に独り立つ君(修三)

第三   東屋に春の水音聞こゆらん(貴代美)

四句     茶席に連なる雁行の道(隆三)

五句   仄白き月の光を肩に負い(雪子)

六句     道元面壁鈴虫の鳴く(純子)


初句   百尺の竿頭はなお秋の空(修三)

二句     思い切ったる恋の告白(貴代美)

三句   全身であなた守ると皇太子(純子)

四句     夕闇せまる薔薇の園にて(博)

五句   人生に欠かせぬものは金と運(修三)

六句     年末ジャンボ通しで十枚(雪子)

七句   寒月を五度も六度も拝みけり(修三)

八句     歌をつくりて路上に暮らす(弘子)

九句   妻喪くし我自由なり春の宵(隆三)

十句     うららうららと梯子酒する(繁治)

十一句 鴨川にもろびと集う花の宴(浩)

挙句    団子盛りたる根来の大盆(弘子)

句上  武藤雪子(世話人・3) 高城修三(宗匠・4) 城貴代美(2) 細尾隆三(2) 嶋岡純子(2) 石田     博(1) 松田弘子(2) 杉田繁治(1) 府川浩(1)

今回の連歌会は、故小林孝子氏の一周忌にあたっての追善連歌となりました。暖炉の上、大振りな菜の花が咲き乱れる前に小林孝子氏の遺影を飾って、武藤雪子氏の発句に高城修三氏が脇を付け、第三より転じ、松田弘子氏の挙句でしめました。


平成二十一年二月ニ十八日
半歌仙連歌「夫婦雛」の巻
   於 白樺


発句   宴果て御簾を降ろすや夫婦雛(俊平)

脇      桃の色した還暦の妻(雪子)

第三   春ショール風になびかせ銀座行く(純子)

四句     号外配る鈴の音響く(俊平)

五句   新月に人はこの世を去るという(純子)

六句     尾羽つくろう長夜の烏(俊平)


初句   つづれさす手を休めつつ秋思う(弘子)

二句     恋する女はいずこにありや(修三)

三句   柔肌の小樽生れの十九歳(純子)

四句     蟹のごとくに君とたわむる(修三)

五句   青い海白い砂浜珊瑚礁(俊平)

六句     何を思うか西表島(修三)

七句   満月にヤマネコの鳴く黍の畑(博)

八句     歩き疲れし霧の兵隊(純子)

九句   つるべ落としうれしなつかし街の灯よ(俊平)

十句     昔馴染みの店もそのまま(弘子)

十一句  鳴海屋の伝えし花の桜餅(繁治)

挙句     手箱たずさえ野遊びの日々(冨貴子)

句上 竹本俊平(5) 武藤雪子(1) 嶋岡純子(4) 松田弘子(2) 高城修三(3) 石田博(1) 杉田繁    治(1)  栗田冨貴子(1) 廣瀬春雄


平成二十一年一月ニ十四日
半歌仙連歌「まいど一号」の巻
   於 白樺


発句   初春や天空に飛ぶまいど一号(浩)

脇      菜の花の咲く鉄砲の島(博)

第三   南から見知らぬ蝶の迷い来て(修三)

四句    レッドブックをあらためて見る(隆三)

五句   熊楠の横顔照らす月明かり(純子)

六句    虫の音しげき中辺路の秋(修三)


初句   愛らしき辻の地蔵に小菊そえ(純子)

二句    鐘の音聞いて恋の道行(俊平)

三句   雪つもる今宵かぎりの離れ宿(純子)

四句    こはぜをはずす指の震えよ(修三)

五句   路地の奥に裸電球割れガラス(俊平)

六句    おりん爪弾く太三味線(純子)

七句   月皓々薄の下のしゃれこうべ(修三)

八句    里の棚田に実りなき秋(雪子)

九句   白壁の崩れし軒に吊るし柿(冨貴子)

十句    居眠りをする子猫三匹(繁治)

十一句 信濃路の一本桜花吹雪(弘子)

挙句    村人つどう水ぬるむ里(満里子)

句上  府川浩(1) 石田博(1) 高城修三(宗匠・4) 細尾隆三(1) 嶋岡純子(4) 竹本俊平(2) 武     藤雪子(1) 栗田冨貴子(1) 杉田繁治(1) 松田弘子(1) 奥山満里子(1)

白樺連歌始は久しぶりに参加された府川氏・栗田氏を含めて十一人、素晴らしい海鮮鍋を頂きながらの連歌となりました。

平成二十年十ニ月ニ十七日
半歌仙連歌「年の瀬や」の巻
   於 白樺



発句   年の瀬や白樺レンガの赤々と(修三)

脇       湯割り焼酎ながれるバッハ(七重)

第三   悲しくも我が身のほどを噛みしめて(石田)

四句     すすきが揺れる山の辺を行く(俊平)

五句   コンと鳴き狐の夫婦月を見る(繁治)

六句     寝床を隠す霧の衝立(隆三)


初句   約束は線香一本消えるまで(俊平)

二句     石田梅岩心学の夢(春雄)

三句   あきないは損して徳をめざすなり(俊平)

四句     雪しんしんと降れる明方(修三)

五句   貞心尼行く良寛のもと五合庵(純子)

六句     障子の影の二つ重なる(繁治)

七句   振り向けば松の梢に望の月(修三)

八句     らりるれられら萩の幻夜(こん)

九句   手踊りの胡弓ながれて風の盆(純子)

十句     化粧ぞ薄き編笠哀し(俊平)

十一句  都なる出雲の人は花競う(こん)

挙句     扇にゆれて蝶の舞い行く(純子)

句上
高城修三(宗匠・3) 下石坂七重(1) 石田博(1) 竹本俊平(3) 杉田繁治(2) 細尾隆三(1) 廣瀬春雄(1) 嶋岡純子(3) 今野和代(2) 松田弘子 武藤雪子 

今年最後の年忘れ連歌は十一人で円テーブルを囲み、照美さんの心づくしの肴にて楽しい一夜となりました。   


平成二十年十一月ニ十ニ日
半歌仙連歌「あれもある」の巻
   於 白樺


発句   あれもあるこれもあるよとおでん哉(修三)

脇       北の海にははやぶりおこし(俊平)

第三   たらちねの母の記憶はやさしくて(雪子)   

四句     女相撲の横綱を張る(俊平)

五句   奉納の糺の森に昼の月(貴代美)

六句     白い装束いつわりの秋(雪子)


初句   フィアンセは少し笑ってうつむいて(貴代美)

二句     高らかになる婚礼の鐘(修三)

三句   抱き合って寝るのは今宵かぎりなり(貴代美)

四句     ぼくの心に積もる朝雪(雪子)

五句   南天の赤きその実の悲しさよ(修三)

六句     竹馬の情に裏切られたり(純子)

七句   輪郭を闇ににじませ夏の月(雪子)

八句     握る刃は正宗の銘(貴代美)

九句   流れ橋大立ち回りの右太衛門(俊平)

十句     柳青める木津の大川(修三)

十一句  鶯が花びらつつく昼下がり(俊平)

挙句     春の日展特賞得たり(純子)

句上
高城修三(宗匠・4) 竹本俊平(4) 武藤雪子(4) 城貴代美(4) 嶋岡純子(2)

  


平成二十年十月十一日
半歌仙連歌「きのこなべ」の巻
   於 白樺


発句   きのこなべ念仏唱えて食いにけり(修三)

脇      ものみなうまし陸奥の秋(弘子)

第三   後の月山のひだより現われて(貴代美)

四句     ゲームの孫は知らんぷりなり(修三)

五句   三毛猫はせっせせっせと毛づくろい(弘子)

六句     株は暴落青ざめる午後(純子)


初句   パソコンは同じ画面を繰り返す(修三)

二句     別れる言葉探しているのに(貴代美)

三句   好きだよと首の後ろでささやかれ(七重)

四句     褥をぬらす白玉の汗(貴代美)

五句   あっち死に祇園精舎の鐘の声(修三)

六句     琵琶一つ持ち里から里へ(満里子)

七句   見えぬ月小手をかざしてながめたり(修三)

八句     寄せては返す秋の浦波(貴代美)

九句   この国に救いはありや茜雲(修三)

十句     日蓮上人厳頭に立つ(七重)

十一句  したわれてまたしたわれて花吹雪(博)

挙句     蝶々飛び交う吉田界隈(繁治)

句上
高城修三(6) 松田弘子(2) 城貴代美(4) 嶋岡純子(宗匠・1) 下石坂七重(2) 奥山満里子(1) 石田博(1) 杉田繁治(1) 



平成二十年九月二十七日
半歌仙連歌「白萩や」の巻
   於 白樺


発句   白萩や姿よろしきひとのあり(隆三)

脇      千九百六十九年の秋の暮れ(修三)

第三   東山寝たる山の端月出でて(俊平)

四句     新撰組の剣戟の音(繁治)

五句   かあちゃんはどこ吹く風の井戸談義(俊平)

六句     繁昌亭の三枝一席(純子)


初句   幽霊もはだしで逃げる大ボケで(博)

二句     蝋燭の火の妖しくゆれる(純子)

三句   春の夜すそつかまれし緋の襦袢(隆三)

四句     隣の屋根の黒猫の恋(俊平)

五句   路地裏のいきなりのキスじんちょうげ(純子)

六句     君の呼吸の少し乱れて(雪子)

七句   ジョギングの足止め仰ぐ望の月(弘子)

八句     今聞えたは何の虫の音(隆三)

九句   すすき生う阿倍野の原に友訪ね(俊平)

十句     熊野詣に旅立つあした(満里子)

十一句  無事いのり王子王子に花飾る(博)

挙句     春風ゆらす絹のスカーフ(雪子)

句上
細尾隆三(3) 高城修三(1) 竹本俊平(4) 杉田繁治(1) 嶋岡純子(3) 石田博(2) 武藤雪子(宗匠・2) 松田弘子(1) 奥山満里子(1)


平成二十年八月二十三日
半歌仙連歌「初孫が」の巻
   於 白樺


発句  初孫が数珠を回すや地蔵盆(俊平)

脇     ござに転がる青蜜柑一つ(隆三)

脇   月影は見上げる猫も照らしいて(修三)

四句    フジ子・ヘミング リストかなでる(純子)

五句  ボルドーのワインボトルを空けました(弘子)

六句    くちなし香る背徳の夜(雪子)


初句  耳たぶを噛まれた痛さ思い出し(満里子)

二句    あの日の雨のホテルの小部屋(繁治)

三句  どもりつつ指輪を渡しプロポーズ(俊平)

四句    酔うて二人は布団一枚(純子)

五句  まさかあの潮吹く女と思わざり(修三)

六句    庭に飛び出し井戸水浴びる(俊平)

七句  満月になりきれなくて今日の月(雪子)

八句    縁に置きたる嵯峨菊の鉢(隆三)

九句  とりどりが千々に乱れて秋終わる(俊平)

十句    いつ来るのかと待ちわびる春(修三)

十一句 谷崎の花は神苑しだれ咲く(弘子)

挙句    柳こきまぜ都ぞ錦(満里子)

句上
竹本俊平(4) 細尾隆三(宗匠・2) 高城修三(3) 嶋岡純子(2) 松田弘子(2) 武藤雪子(2) 奥山満里子(2) 杉田繁治(1)


平成二十年七月二十五日
半歌仙連歌「生稚児」の巻
   於 白樺


発句  生稚児や母と離れて標の内(弘子)

脇     比叡の峰に夏雲の湧く(春雄)

第三  足元に悲しげな眼の猫がいて(修三)

四句    世界一周船出のテープ(俊平)

五句  漆黒に銅鑼の音ひびく後の月(純子)

六句    ドボルザークに秋風の智恵(春雄)


初句  夜長なれ夢果てしなき新天地(満里子)

二句    赤毛の娘胸豊かなり(弘子)

三句  その乳房定めおきたし我が思い(修三)

四句    ここにいるわよ港のヨーコ(純子)

五句  雪の中スクリュードライバー飲みほして(弘子)

六句    いざ出陣のまなざし清し(春雄)

七句  風さわぐ満月の夜の一つ道(博)

八句    薄を分けて影法師行く(繁治)

九句  杖笠を置き忘れたる秋の暮れ(俊平)

十句    夕焼け空を烏鳴くなり(修三)

十一句 子を呼ばう花散る里に煙立つ(俊平)

挙句    人もさまざま春もさまざま(修三)

句上
松田弘子(3) 廣瀬春雄(3) 高城修三(4) 竹本俊平(宗匠・3) 嶋岡純子(2) 奥山満里子(1) 石田博(1) 杉田繁治(1)


平成二十年六月二十八日

半歌仙連歌「虎が雨」の巻

   於 白樺


発句   虎が雨誰が言うたか知らぬれど(修三)

脇      焼酎うまき宵の白樺(雪子)

第三   むつかしき宗匠迎え連歌して(隆三)

四句     待たるる秋の談山神社(弘子)

五句   月明かり都を照らすマント君(浩)

六句     ぼくも泣きますチチロムシ鳴く(純子)


初句   どうしても忘れられない女がいる(修三)

二句     ケネディ恋しマリリンモンロー(純子)

三句   許されぬ愛と知りつつ今日の歌(浩)

四句     生くるのも死ぬのも大事なりけり(弘子)

五句   しんしんと降る雪の中念仏す(修三)

六句     裸電球津軽三味線(純子)

七句   場末なる居酒屋で飲む月の酒(繁治)

八句     悲しき性に涙し秋よ(博)

九句   亡き父に背中似ている阿波踊り(雪子)

十句     ひょうたん島を前にたたずむ(修三)

十一句  休業のサザンに贈る花の雨(純子)

挙句     一つ傘にて春の夕暮れ(満里子)

句上
高城修三(宗匠・4) 嶋岡純子(4) 武藤雪子(2) 松田弘子(2) 府川浩(2) 細尾隆三(1) 杉田繁治(1) 石田博(1) 奥山満里子(1)


平成二十年五月二十四日

半歌仙連歌「夏の雨」の巻

  於 白樺


発句  夏の雨 雲傘さして東山(純子)

脇    走り梅雨とは人の言うなり(修三)

第三  かたつむり槍を出しつつ見返りて(俊平)

四句   ガラパゴスにて進化論説く(隆三)

五句  二十四時道を照らすや望の月(俊)

六句   祭り太鼓に影踊り行く(繁治)


初句  何なれや冷ややかな風胸よぎる(修)

二句   五合庵にて貞心尼待つ(純)

三句  愛の字に灰掻き寄せる金火箸(俊)

四句   耳を噛んでとせがんだあとに(雪子)

五句  ウィンクし二万出してと指立てる(修)

六句   母のかたみにルビーの指輪(俊)

七句  今出川烏丸通りに月仰ぐ(弘子)

八句   鶺鴒の鳴くまだ青い朝(雪)

九句  大海に大八洲国生まれけり(修)

十句   まほろばの里美しき春(雪)

十一句 西行が愛でし桜の花吹雪(繁)

挙句   かすみに溶ける幼子の声(満里子)

句上

嶋岡純子(2) 高城修三(宗匠・4) 竹本俊平(4) 細尾隆三(1) 杉田繁治(2) 武藤雪子(世話人・3) 松田弘子(1) 奥山満里子(執筆・1)

(注)今出川烏丸通りにはドライヴスルーの質店がある


平成二十年四月二十六日
半歌仙連歌「春暮れて」の巻
   於  白樺


発句    春暮れて桜肴の夕べかな(修三)

脇        一酌千愁背に朧月(純子)

第三    義士祭の太鼓の音が聞こえ来て(雪子)

四句      孫の萌々子が腰をふるなり(修三)

五句    フラダンスいつか舞台で踊りたい(晴香)

六句      赤青黄のスポットライト(俊平)


初句    交差点初恋の女想い出し(満里子)

二句      あの夜と同じ甘き香水(雪子)

三句    君知るや肌にもつれし乱れ髪(純子)

四句      十二単のきぬずれの音(俊平)

五句    御手洗の水面に映りし斎王代(七重)

六句      糺の森にすずし風吹く(修三)

七句    いつわりは嫌にてそうろう月に雲(純子)

八句      足元ぬらす萩の朝露(修三)

九句    川堤ジョギングの後犬が追う(俊平)

十句      行く手の山はみな笑い出す(修三)

十一句  花に酔い花に夢見て五十八(雪子)

挙句      春のうららの長寿大学(孝平)

句上
高城修三(宗匠・5) 嶋岡純子(3) 武藤雪子(3) 足立晴香(1) 竹本俊平(3) 奥山満里子(1) 下石坂七重(1) 池田孝平(1) 杉田繁治 石田博 府川浩 高橋淳一 上井圭一郎

今回の白樺連歌会には小学二年生の足立晴香ちゃんが参加してくれました。とても小学生とは思えないほど面白い句を連発してくれました。今後がたのしみです。


平成二十年三月二十二日

半歌仙連歌「朱の鉢に」の巻

於 白樺

表 発句   朱の鉢に正然とメザシ並びおり(純子)

       桜で飾る小さなスナック(修三)

  第三   春の宵昔乙女の頬染めて(弘子)

  四句     薩摩隼人の一文字眉(雪子)

  五句   楠の下恋文にぎる夏の月(純子)

  六句     明日は江戸へと旅立つ我が身(弘子)

裏 初句  捨て去れよ思い重ねし計り事(博)

  二句     熊野の神は素晴らしき神(修三)

  三句  森の中世界遺産を訪ね来て(繁治)

  四句     青鈍色にたちこめる靄(雪子)

  五句  わびしげに馬いななきて牧の朝(清實)

  六句     刈り草積みあぐ牧童いそがし(隆三)

  七句  満月は等しく人を照らしおり(修三)

  八句    そこ行く人は男か女か(隆三)

  九句  ピーターも三輪明宏も老いてきて(修三)

  十句    愛の賛歌や春野の嵐(純子)

  十一句 高らかにトランペットに花の舞う(弘子)

  挙句    霞の空に天女のごとく(清實)

  句上

  嶋岡純子(3) 高城修三(宗匠・4) 松田弘子(3) 武藤雪子(2) 石田博(1) 今枝清實(2) 杉田繁治(1) 細尾隆三  (2) 奥山万里子 


平成二十年二月二十三日

半歌仙連歌「オスマンや」の巻
   於白樺


                                                                           

発句   オスマンや宮殿飾る春の雪(浩)

脇       東風呼び寄せる駱駝のいななき(俊平)

第三   こぶし咲く動物園にたたずみて(修三)

四句     半ば過ぎたる僕の人生(雪子)

五句   満月を背に負うて行く登り坂(俊平)

六句     うさぎ見送る薄の穂波(繁治)


初句   魯山人大皿盛らる里の芋(純子)   

二句     好きな女にそっと差し出し(修三)

三句   権利書と指輪に添えた支度金(俊平)

四句     わたしゃあんたにほれちょるばい(満里子)

五句   燃え尽きぬ火の国生まれ蠍座よ(純子)

六句     飲んだ勢い地獄に堕ちた(俊平)

七句   冬枯れの野を従えて望の月(雪子)

八句     鉄鉢霰修行僧行く(純子)

九句   句を詠めば宿無し犬が吠えかかる(俊平)

十句     おぼろに霞む藁葺の家(満里子)

十一句  山陰にしだりて咲ける花の舞い(弘子)

挙句     光よさせよこの里村に(博)

句上 

府川浩(客・1) 竹本俊平(5) 高城修三(宗匠・2) 武藤雪子(2) 杉田繁治(1) 嶋岡純子(3) 奥山満里子(2) 松田弘子(1) 石田博(1)


平成二十年一月二十六日
半歌仙連歌「菜の花や」の巻

   於 白樺

発句   菜の花や黄色に乱れ野辺の乱(伯行)

脇       蝶々舞いける青春の朝(修三)

第三   にきび面入学式の庭にいて(俊平)

四句     プロの世界に飛び込む決意(純子)

五句   年老いた母と見上げる阿蘇の月(雪子)

六句     虫の音すだく千里の草原(俊平)

初句   人肌の酒の恋しき頃となり(弘子)

二句     北の酒場の紅き唇(俊平)

三句   一夜明け手に手を取って停車場へ(七重)

四句     昨日のあなた忘れられない(純子)

五句   山椒の香る愛撫に耐えられず(雪子)

六句     十六歳となりし春の夜(純子)

七句   おぼろなる月をながめて涙する(修三)

八句     吉野の山に都落ちして(清實)

九句   さみだれの果てる間もなき夕まぐれ(修三)

十句     ぬれそぼりたる猫返り来る(七重)

十一句 孫娘知らぬ顔して膳に着く(俊平)

挙句     祝いの赤飯南天添えて(弘子)  

句上

花房伯行(客・1)  竹本俊平(4)  高城修三(宗匠・3)  嶋岡純子(3)  松田弘子(2)  下石坂七重(2)  武藤雪子(2)  今枝清實(1)  杉田繁治  石田博  奥山満里子



平成十九年十一月二十四日

歌仙連歌「還暦や」の巻
   於 白 樺

初表
発句  還暦や白樺煉瓦秋さ中(修三)

脇      収穫祭に回すさかづき(隆三)

第三  その昔月に吠えたる友もいて(修)

四句    マント姿に朴下駄高し(昌代)

五句  津軽から太宰治がやって来た(修)

六句    新日本紀行特集番組(隆)

初裏
初句  懐かしき母の記憶が悲しくて(修)

二句   日曜の朝嫁入り支度(雪子) 

三句  ブラジルの男は外で待っている(昌)

四句    アバンチュールは十八の夏(雪)

五句  補陀落の海の向こうに入道雲(修)

六句    聞けもののふの静かなる声(春雄)

七句  甲山月中空に雁の行く(隆)

八句    敬老の日に訪う人もなし(雪)

九句  窓辺よりそっと手にする白き萩(修)

十句    幼馴染のセピアの写真(隆)

十一句 花盛り入学式の顔と顔(昌

十二句  ひばりの声の天より聞こゆ(修)

名残表
初句  春の午後酒は泪かためいきか(弘子)

二句    捨てた男をいまだ忘れず(修)

三句  チェンマイの大和なでしこ薄化粧(俊平)

四句    黒き背中に口づけをする(雪)

五句  彫物は百済観音緋の牡丹(俊)

六句    サ行がなまる筑豊の人(雪)

七句  ボタ山に木枯らし寒し炭鉱街(隆)

八句    空き缶の音坂道ころぶ(俊)

九句  何事と面上げれば望の月(修)

十句    知らぬ顔してボジョレヌーボー(俊)

十一句 トリカブト妻が密かに庭に植え(雪)

十二句   許せないのは初夜の一言(修)

名残裏
初句   生娘を演じなくてもいいんだよ(雪)

二句    紫綬褒章のシナリオライター(隆)

三句   横顔にパイプ煙草をくゆらせて(雪)

四句     柵ごしに見る子馬の疾走(隆)

五句   花の森出ずればまたも花の森(修)

挙句     吉野の山に霞たなびく(隆)

句上  

高城修三(宗匠・11) 細尾隆三(8) 武藤雪子(8) 竹本俊平(4) 祐森昌代(3) 廣瀬春雄(1) 松田弘子(1) 


平成十九年九月二十二日

半歌仙連歌「白萩」の巻

   於 白 樺

表発句   白萩のこぼれる下の月見かな(修三)

 脇       心づくしの松茸料理(弘子)

 第三   乙女らが稲刈る頃の丹波にて(隆三)

 四句     榧の実あつめし天引の里(修三)

 五句   笠ならべ四辻に立つ六地蔵(純子)

 六句     地獄極楽人間修羅(修三)

裏初句  安倍晋三次は福田か永田町(純子)

 二句     昔の恋を売りつける女(修三)

 三句  角張ったモンブランのラブレター(純子)

 四句     好きだ好きだとただそればかり(弘子)

 五句  後ろから君に抱かれて細雪(雪子)

 六句     今日が別れとそっとつぶやく(修三)

 七句  ニューヨーク有明の月摩天楼(隆三)

 八句     秋風に笑むテロリストたち(修三)

 九句  ザクロ裂くアーラーの神ここにあり(隆三)

 十句    深き蒼穹に白雲一つ(修三)

 十一句 次にまた逢うを願いて花の下(雪子)

 挙句    馬の鈴鳴る春日暮れゆく(純子)

 

 句上

 高城修三(7) 嶋岡純子(4) 細尾隆三(3) 武藤雪子(2) 松田弘子(2)



平成十九年八月二十五日

半歌仙連歌「松上や」の巻

   於 白樺


表発句  松上や火の海と化す北の闇(弘子)

 脇     天狗も踊る薄茅ヶ原(隆三)

 第三  鞍馬山剣術指南月浴びて(俊平)

 四句   走り根しるき頂の道(貴代美)

 五句  笠を脱ぎわらじの紐をしめなおす(俊平)

 六句   我を俳聖とだれが言うらむ(修三)

裏初句  西東下にもおかぬ旦那衆(俊平)

 二句   だらりの帯で行く石畳(貴代美)

 三句  嫌な座敷早く行きたや四畳半(弘子)

 四句   眉ひきなおしためいきをつく(俊平)

 五句  ラジオからブロークンハート聞こえきて(修三)

 六句   兵役すんで秋の風ふく(隆三)

 七句  返り見る空に色なき栗の月(雪子)

 八句   虫の音聞きつつ遠回りする(俊平)

 九句  愛犬と日課の散歩妻の留守(弘子)

 十句   寝転ぶ草のふかふかの春(雪子)

 十一句 うたたねの蒼穹に舞う花吹雪(純子)

 挙句   うたかたの蝶 混沌の精(博)


 句上

 竹本俊平(5) 松田弘子(3) 細尾隆三(2) 高城修三(2) 城貴代美(2) 武藤雪子(2) 嶋岡純子(1) 石田博(1)



平成十九年七月二十八日

半歌仙連歌「巻きえびせん」の巻

   於 白樺


表発句  巻きえびせん肴にするや夏盛り(純子)

 脇      あつしあつしのスナック白樺(修三)

 第三  紅乙女グラスに八つ注ぎ分けて(雪子)

 四句    昔の恋に思いをはせる(昌代)

 五句  筒井筒ふりわけ髪をはらいつつ(俊平)

 六句    あなたなしでは生きていけない(純子)

裏初句  猫だけが主人迎える誕生日(雪子)

 二句    ワインで乾杯秋風の吹く(純子)

 三句  振り向けば思うことあり京の月(修三)

 四句    祭囃子の笛の音高し(純子)

 五句  猿回し花子も太郎も後を追う(俊平)

 六句    気づいてみれば手に手を取って(修三)

 七句  夕暮れに長くのびたる影二つ(雪子)

 八句    浮世の足かせ振り切って行く(七重)

 九句  主さんの好みの女になりました(弘子)

 十句    五番町にて明けの鐘鳴る(隆三)

 十一句 馬鹿息子花まきちらす奥座敷(俊平)

 挙句    柳しぼりの目隠しをして(純子)


  句上

  嶋岡純子(5)  竹本俊平(3)  高城修三(3)  武藤雪子(3)  祐森昌代(1)  下石坂七重(1)  松田弘子(1)   細尾隆三(1)