戻る

        月  待  連  歌  会          


平成二十二年十月三十一日
半歌仙連歌「秋しぐれ」の巻
  於 祇園RAKURAKU


発句   秋しぐれ触るる小路の瓦かな(ぽぽな)
脇      仕上げにかかる顔見世まねき(隆三)
第三   あごひげを山羊のごとくに整えて(修三)
四句     聖徳太子はいずこにおわす(万貴子)
五句   十人の声聞き分けて仕分けする(繁治)
六句     コップの水をぐいと飲み干す(笑吾)

初句   押入れに隠しておいたバイアグラ(ぽぽな)
二句     和服が似合う姉さん女房(貴代美)
三句   掘りごたつ二つ巴に夜が明ける(隆三)
四句     乱れしせなのタトゥーを覆う(陽子)
五句   網走の薄ヶ原に迷い出て(隆三)
六句     恋しきは母ふるさとの秋(清實)
七句   月満ちて一山一谷照らしおり(喜代春)
八句     うるさきばかり轡虫の音(修三)
九句   ダイエットすると言ってはまた食べて(笑吾)
十句     日なが寝そべる就職浪人(貴代美)
十一句  うすずくも花の下にて我死なん(明弘)
挙句     都をつつむ春の夕暮れ(郁子)

句上 
月野ぽぽな(客・2) 細尾隆三(3) 高城修三(宗匠・2) 岡本万貴子(世話人・1) 杉田繁治(1) 野村笑吾(2) 城貴代美(2) 土井陽子(1) 今枝清實(1) 山田喜代春(1) 武市明弘(1) 渡辺郁子(執筆・1) 上羽真理子 古川みどり 

ニューヨークから現代俳句協会新人賞「ハミング」賞受賞のために来日された月野ぽぽなさんを客に迎えて、秋しぐれの祇園花見小路RAKURAKUにて楽しい懇親の連歌会となりました。

平成二十二年四月二十九日
半歌仙連歌「若狭の海」の巻                                                                 於 常高寺


発句   若狭の海(み)春天人ものどかなり(正)

脇      浜辺を歩く靴のぬくもり(徳治)

第三   青蛙新芽の陰にくつろいで(君代)

四句     魔法の解けぬグリムの王子(万貴子)

五句   三日月をブランコにして乗ってみる(貴代美)

六句     十三歳の秋の夜の夢(修三)


初句   白無垢に紅葉がひらり嫁御寮(伸雄)

二句     幼馴染が嵯峨野で逢って(洋)

三句   影二つ寄り添い消えるネオン下(繁治)

四句     雪しんしんと終電車行く(万)

五句   今日もまた疲れた獏が乗っている(笑吾)

六句     一所不住に淡きあこがれ(由紀江)

七句   長男は悲しきものよ赤き月(清實)

八句     孤高の調べ虫がかなでる(貞人)

九句   秋風に銀杏の黄葉は急ぎ散り(康代)

十句     街を行く人肩をすくめて(郁子)

十一句 花たずね訪れし日も過ぎにける(明弘)

挙句     春の便りをメールにてうつ(徳治)

句上  松井正(客・1) 上原徳治(2) 後藤君代(1) 岡本万貴子(世話人・2) 城貴代美(1) 高城修三(宗匠・1) 後藤伸雄(1) 岡崎洋(1) 杉田繁治(1) 野村笑吾(1) 小堀由紀江(1) 今枝清實(1) 奥田貞人(1) 杉崎康代(1) 渡辺郁子(執筆・1) 竹市明弘(1) 上羽利枝 小西淳二 小西淳子 土阪玲子 中島辰男 中塚幸子 藤沢比奈 藤本真理子 宮崎登志子 宮川なを子 山田順子 吉井多美子

春の月待ち連歌会は、小浜在住の小西御夫妻のお世話により、月待ち連歌会にきらら・KOBEみなと・後藤芝山追善・宗祇の里連歌会などの面々も加わった高城修三連歌会と小浜の若狭文学会とのコラボレーション連歌会となりました。阿納の「いたや」で素晴らしい海の景を見ながら山川登美子の短歌の詠唱や会食を楽しんだあと、小浜藩主京極高次の妻常高院栄昌尼の発願によって建立された常高寺書院にて半歌仙連歌を巻きました。発句は若狭文学会代表の松井正氏にいただきました。常高寺は尾崎放哉が寺男として過ごしたところで、裏六句に、その俤が付けられています。

常高寺山門

                会席風景


平成二十一年十月三日
半歌仙連歌「爽やかに」の巻
  於 白沙村荘


発句   爽やかに藪の地蔵や皆笑い(山田喜代春)

脇      榧の実におう白沙村荘(朝菜)

脇    そぞろ寒望なる月を待ち侘びて(善帆)

四句    古城にひそむドラキュラ伯爵(啓二郎)

五句   かたずのみテレビに見入る幼き子(清實)

六句    夕日ヶ丘の電気屋の前(郁子)


初句   とぼとぼと名無しの犬の通り過ぎ(善帆)

二句    女も恋しい家も恋しい(道夫)

三句   足袋脱ぎしその足首のかぼそさよ(真理子)

四句    やらずの雨に閉じ込められて(善帆)

五句   鬼太郎は魑魅魍魎と大騒ぎ(清實)

六句    ねずみ男はおれの友達(修三)

七句   ふるさとの月をたずねて川のぼる(明宏)

八句    行く手にかかる霧も晴れゆき(善帆)

九句   丹波路に曼殊沙華咲く日曜日(修三)

十句    毘沙門天の幟はためく(静子)

十一句 巡礼の背に降りしきる花吹雪(万貴子)

挙句    瀬戸の島々霞たなびく(郁子)

句上
山田喜代春(客・1) 北脇朝菜(1) 小林善帆(4) 松本啓二郎(1) 今枝清實(2) 渡辺郁子(2) 北脇道夫(1) 藤本真理子(1) 高城修三(宗匠・2) 竹市明宏(1)  山本静子(1)  岡本万貴子(亭主・1)  大木昭子  大木正彦  土井陽子  二宮みさ子  松本直子  宮越裕代  

昼過ぎから晴れ渡り、月見には絶好の日、橋本関雪ゆかりの白沙村荘に版画家の山田喜代春氏をお迎えして連歌になりました。初めての方も多く参加して、はじめは少々もたつきましたが、四句目あたりから、変化のある面白い連歌となりました。

会席風景


平成二十年九月二十三日
半歌仙連歌「いずかたに」の巻
  於 宝鏡寺


発句   いずかたに初雁鳴くやたそがれ路(恵厚)
脇      誘われ来れば宝鏡寺の秋(万貴子)
第三   苔むせるつくばいの月さゆらぎて(善帆)
四句     かすかに聞ゆ鈴虫の声(貞子)
五句   いつの日も子らの寝顔の愛らしき(善帆)
六句     父は明日から単身赴任(清實)

初句   好物の烏賊の沖漬けそっと出し(直子)
二句     君の横顔心まどわす(和男)
三句   十九にて夢に見し女うつつなり(明宏)
四句     金で買いたる恋の悲しき(修三)
五句   雨だれは静かに窓を伝いたる(善帆)
六句     信州行きの特急列車(直子)
七句   今日こそは姥捨て山に月を見ん(修三)
八句     心はやるも霧立ちのぼる(貞子)
九句   喝采は舞台の上まで押し寄せて(修三)
十句     老舗劇場最後の芝居(啓二郎)
十一句 どこまでも果てることなき花吹雪(修三)
挙句     吉野の春はうつらうつらと(万貴子)

句上
田中恵厚(1) 岡本万貴子(世話人・2) 高城修三(宗匠・4) 小林善帆(3) 河合貞子(2) 今枝清實(執筆・1) 松本直子(2) 吉田和男(1) 竹市明宏(1) 松本啓二郎 田中正流 藤井秀雪 岡林洋 小西淳子 渡辺祐子 

人形の寺として名高い門跡寺院宝鏡寺の田中恵厚御門跡の御厚意により、同寺書院にて秋の月待ち連歌会を興行いたしました。宝鏡寺にゆかりのある皇女和宮さまの遺品や皇女が遊ばれたという鶴亀の庭を鑑賞したあと、多彩な方々のつどう楽しい連歌会となりました。 

   


平成二十年四月八日
半歌仙連歌「花船頭」の巻
  於 等観院



発句   花船頭踊る棹先龍の門(洋)
脇      振り向かないで十三参り(万貴子)
第三   三代の晴着姿もあでやかで(清實)
四句     たんすの奥の祖母のアルバム(啓次郎)
五句   小指曲げカフェたのしむ乙女かな(陽子)
六句     月は等しく街照らしけり(修三)

初句   売られ行く老い馬いななく秋の暮(清)
二句     時雨つめたし人の世かなし(修)
三句   幾人の美人眠るや墓の山(明宏)
四句     君のおもかげたずねたずねて(万)
五句   湯の町を爪先立ちてギターひき(侃)
六句     海青き日に島へ旅立つ(令子)
七句   老猫を抱きて仰ぐ冬の月(明)
八句     原稿用紙は真っ白なまま(郁子)
九句   ワープロに変えた書斎の水曜日(修)
十句     ぽかぽかぽかと春の陽射して(郁)
十一句 右左目白飛び交う山桜(陽)
挙句     かすみの里にて今宵かもねむ(明)

句上
岡村洋(客・1) 岡本万貴子(世話人・2) 今枝清實(2) 松本啓次郎(1) 土井陽子(2) 高城修三(宗匠・3) 竹市明宏(3) 渡辺郁子(執筆・2) 小川侃(1) 井上令子(1) 村形明子 永田萌 宮内憲夫 山田喜代春 米田律子 仲つとむ 村瀬敬子 松本直子 野村笑吾 渡辺祐子 

今回の月待ち連歌会は昨年と同じく天龍寺等観院にて興行しました。当日の嵯峨野は桜満開、等観院の枝垂桜も今は盛りと咲き誇っていました。その桜を眺めながらの連歌会となりました。連歌会の初めに、前回の興行のおりに出会った河村・松本両氏が結婚されたという嬉しい報告がありました。また当会顧問の小川侃氏が岡崎人間環境大学学長に就任されたとの報告もありました。 


平成十九年四月八日
半歌仙連歌「花吹雪」の巻
   於 天龍寺等観院


発句   花吹雪バイオリンを聴く昼下がり(淳二)
脇      うつらうつらと嵐山の春(万貴子)
第三   橋の上金銀黒の人群れて(明弘)
四句     ビッグベンの鐘高らかに(修三)
五句   霧深き路傍で詩集並べ売る(貴代美)
六句     月を待つかや穴空きの靴(万貴子)

初句   薄原コオロギの声細々と(比奈)
二句     御高祖頭巾で佇む女(貴代美)
三句   大奥もお寺参りは許されて(万貴子)
四句     恋の終りは高遠桜(修三)
五句   伊那谷の霞の中に汽笛鳴る(侃)
六句     青麦畑で手を振る少女(比奈)
七句   朧月東の空にほほえみて(万貴子)
八句     家事ちと置いてコーヒーを飲む(比奈)
九句   井戸端に洗ったままの葱一把(貴代美)
十句     鴨は権兵衛がつかまえに行き(郁子)
十一句 裾からげ首に巻きたる豆しぼり(貴代美)
挙句     今宵一夜を踊り明かさん(明弘)

句上
小西淳二(客・1) 岡本万貴子(亭主・4) 城貴代美(4) 藤沢比奈(3) 竹市明弘(2) 高城修三(宗匠・2) 小川侃(1) 渡辺郁子(執筆・1) 小西淳子 土井陽子 松本啓次郎 吉井多美子 河村直子 

春爛漫の嵯峨野天龍寺等観院にて、枝垂桜の下で小西淳子氏のバイオリン演奏を堪能したのち、恒例の月待ち連歌会を興行しました。
等観院の枝垂桜

                記念写真

平成十九年正月七日
半歌仙連歌「初春や」の巻
   於 はり清


発句   初春や憂さを忘れて舞姿(秀雪)
脇      五条はり清に七草の声(万貴子)
第三   霞む坂ふらりふらりとさまよいて(修三)
四句     アルカジアの野に女神を訪ぬ(明弘)
五句   紺碧の海のかなたを行く白帆(侃)
六句     孫の帰国はいつの日ならん(清實)

初句   日向ぼこもたれし壁のひっかき傷(喜代春)
二句     猫が棲みつく崩れし土蔵(貴代美)
三句   屋根の上人待ち顔の昼の月(萌)
四句     来ぬ人を待つ心知らずや(明弘)
五句   キスマーク残りし胸をそっと撫で(貴代美)
六句     晶子のごとく恋に生きなむ(萌)
七句   赤々の万珠沙華道我ひとり(万貴子)
八句     秋風受けて眼を閉じている(青隴)
九句   つながれしポニーたてがみ怒らせて(貴代美)
十句     水鉄砲で狙う腕白(喜代春)
十一句 逃げるふり花嫁姿のお姉さま(修三)
挙句     うれしはずかしフラッシュライト(直子)

句上
藤井秀雪(客・1) 岡本万貴子(亭主・2) 高城修三(宗匠・2) 竹市明弘(2)
小川侃(1) 今枝清實(1) 山田喜代春(2) 城貴代美(3) 永田萌(2)
廣青隴(披講・1) 河村直子(1) 時代駅舎 上羽真里子 古川みどり
小西淳子 福田文子 渡辺郁子(執筆) 


五条「はり清」にて、祇園舞妓久万里さんをお呼びして新春の舞を舞っていただき、
今年最初の月待ち連歌会を興行しました。京都造形芸術大学教授の藤井秀雪氏
を客にお招きし、また、昨年の北野天満宮奉納連歌会につづいて、廣青隴氏に披
講を御願いしました。「はり清」での連歌始も今年で四度目、すっかり定着した観が
あります。




平成十八年十月九日
半歌仙連歌「洛北の」の巻
   於 関西セミナーハウス


発句   洛北の茶室の中にも月明かり(和男)
脇       そそと活けたる秋の七草(清實)
第三   亡き祖父の形見の花瓶いびつにて(直子)
四句     轆轤を回す手つきなつかし(侃)
五句   猛り立つ炎の中に仁王像(陽子)
六句     連日連夜パパ朝帰り(万貴子)

初句   鍵一つ掛けないでおき仮寝する(明宏)
二句     麝香たなびく暗き奥の間(万貴子)
三句   八十年忘れられない人がいる(修三)
四句     竜宮城は夢のまた夢(万貴子)
五句    何言うぞ神武天皇は彦火火出見(修三)
六句     神話の里に赤まんま吹く(清實)
七句   夕風に月よ月よと赤子泣き(陽子)
八句     出稼ぎの父便り途絶えて(清實)
九句   朝霧に若葉踏みしめ汽笛聞く(淳子)
十句     島に嫁ぎて三歳過ぎ行く(清實)
十一句 瀬戸の海埋めんがごとき花吹雪(修三)
挙句     黄色の蝶が帽子に止まる(淳子)

句上
今枝清實(4) 高城修三(宗匠・3) 岡本万貴子(世話人・3) 土井陽子(2)
小西淳子(2) 吉田和男(1) 小川侃(1) 川村直子(1) 武市明宏(1) 
小西淳二  鈴木千津子 新谷太一  大山由香子 夏宮橙子  渡辺郁子(執筆)

関西セミナーハウスの茶室「清心庵」でお茶をいただいたあと、能舞台にて京都造形芸術
大学の和太鼓「悳(しん)」の皆様による迫力に満ちた和太鼓演奏(曲目は「風華」「響和」)
を鑑賞し、その後、書院にて恒例の月待ち連歌会の興行となりました。会たけなわのころ、
背後の東山から昇る素晴らしい立待月をながめることができました。




平成十八年四月二十三日
半歌仙連歌「満天星」の巻
   於 萬川


発句   満天星の風にそよぎて憂いかな(陽子)
脇       北山通りの春の夕暮(修三)
第三   京野菜歌の肴に集いして(和男)
四句     才気煥発不煥発もあり(清實)
五句   人は人我はデラシネ月仰ぐ(貴代美)
六句     冴えゆく空にかりがねの行く(明弘)

初句   夕食のおかずに一尾秋刀魚焼き(郁子)
二句     松子松子と叫ぶ声あり(修三)
三句   逢引きの地獄極楽別れ道(喜代春)
四句     アダルト歌人今も変わらず(直子)
五句   夏の夜い寝にし朝の宿を去る(明弘)
六句     沈黙破るパトカーの音(直子)
七句   月明り黒猫通りを照らしおり(万貴子)
八句     ボジョレヌーボー一本空けて(貴代美)
九句   啖呵切りセクハラ上司に抗議する(清實)
十句     私は私春の道ゆく(みどり)
十一句  おさげ髪ほどきて旅に花吹雪(直子)
挙句     せせらぎの音若芽映して(陽子)

句上
土井陽子(客・2) 河村直子(3) 高城修三(宗匠・2) 今枝清實(2) 城貴代美(2)
竹市明弘(2) 吉田和男(1) 渡辺郁子(執筆・1)  山田喜代春(1) 古川みどり(1)
岡本万貴子(世話人・1) 片山雅美  上羽真里子  居戸綾子  岡本祐治




平成十八年一月二十九日
半歌仙連歌「白拍子」の巻
   於 はり清


発句  白拍子遥かな春を謡いけり(萌)
腋     心も酔いしはり清の梅(和男)
第三  名残雪遠き方より友の来て(郁子)
四句    楽しからずや故郷なまり(明弘)
五句  月冴えて静けき湖に比叡映す(松山)
六句    彼岸の読経かすかに聞え(清實)

初句  肩並べ君となりたや後の雛(万貴子)
二句    浅き夢見つそっと手を置く(青隴)
三句  あのころの妻は今とは別の人(松山)
四句    そういうあなたもアートネイチャー(和男)
五句  心身を若返らせる水泳ぎ(明弘)
六句    冷たき風に秋立つを知る(令子)
七句  蛾眉の月仰ぎ一詩を吟じ行く(青隴)
八句    金木犀の匂いくる夜(修三)
九句  思い出は香りと共によみがえり(萌)
十句    廃校せまる村の学校(万貴子)
十一句 庭にある古木の花に蝶々舞う(和男)
挙句    風おだやかに春の夕暮(侃)

句上
永田萌(客・2) 吉田和男(3) 高橋松山(2) 竹市明弘(2) 広青隴(2) 
岡本万貴子(世話人・2) 今枝清實(1)  渡辺郁子(執筆・1) 井上令子(1) 
高城修三(宗匠・1) 小川侃(1) 小西淳二  小西淳子  梶川強  居戸綾子
新谷太一  桜井真樹子  上羽真里子  古川みどり  河村直子

三回目の「はりC」での新年月待ち連歌会は、現代の白拍子・桜井真樹子さんを鎌倉より
お迎えし、きりりとして艶なる水干姿で「水猿曲」「祝曲」を舞い謡っていただきました。客に
は画家の永田萌さんをお迎えし、発句「白拍子はるかな春を謡いけり」をいただきました。学
問・芸術・文化の各方面で活躍されるみなさんだけに、丁々発止と素晴らしいリズムで半歌
仙を満尾いたしました。




平成十七年九月十八日
半歌仙連歌表六句「水面月」の巻
於 遊空間ROJI



発句 曲に乗り流れ行くかや水面月(青隴)
脇     待ちくたびれて鴨川の秋(二郎)
第三 指先を露に濡らしつ萩折りて(明弘)
四句   歩めば聞こゆちちろ鳴く声(青隴)
五句 ほろ酔いに友と別れの村はずれ(和男)
六句   地蔵の顔はほほえみにけり(侃)

句上
廣青隴(客・2) 平井二郎(1) 竹市明弘(1) 吉田和男(1) 小川侃(1) 
高城修三(宗匠)  澤田茂樹 澤田幸子池田孝平 小西淳二 小西淳子 
大西秀明  土井陽子 山田喜代春  上島眞司  上島朱實  関野泰一 
関野絵里  居戸綾子  北脇朝菜  古川みどり  河村直子  渡辺郁子(執筆) 
岡本万貴子(世話人)

御池通りを少し上がった高瀬川と鴨川の間で営まれていたお茶屋を現代風に改造した「遊空間ROJI」の床で、仲秋の名月を愛でながら、小西淳子氏・大西秀明氏のバイオリン演奏を堪能したのち、京都芸術文化協会理事長廣青隴氏の発句をいただいて表六句を巻きました。



平成十七年四月三日
半歌仙連歌「永遠の影」の巻
於 白沙村荘



発句 春眠のひと時とても永遠の影(明弘)
脇 白砂に映える細き雛の目(万貴子)
第三 歌の座は関雪翁のおかげにて(友利)
四句 中国からも文人来る(清子)
五句 流れ星祇園の空を筋交いに(明弘)
六句 熱き願掛け君に会いたし(清實)

初句 待ちかねつ下駄を鳴らして橋渡る(遊花)
二句 休憩二千円泊り一万(喜代春)
三句 駅前のペットホテルは賑わいて(孝平)
四句 松坂牛が今日も山積み(松田弘子)
五句 子供らの入学試験近づきぬ(和男)
六句 オールナイト日本継続決定(孝平)
七句 見上ぐれば晧晧たる望の月(修三)
八句 バイク走らす薄野三笠(清實)
九句 鹿は逃げ猿はわめきて人も消ゆ(友利)
十句 我一人居る春の夕暮れ(修三)
十一句 故郷の父母からの花便り(雪子)
挙句 桜散りても桃の咲くらむ(明弘)


句上
竹市明弘(客3) 岡市友利(2) 今枝清實(2) 池田孝平(2)
高城修三(宗匠2) 岡本万貴子(世話人1) 柴田清子(1)
遊花(1) 山田喜代春(1) 松田弘子(1) 吉田和男(1)
武藤雪子(1) 小川侃 池田弘子 横矢猛 土井陽子
梶川務 宮内憲夫 福田知子 小林孝子 栗田冨貴子
劉燕子 陳東東 渡辺郁子(執筆)

今春の月待ち連歌会は橋本関雪記念館「白沙村荘」(国指定名勝)の二階座敷をお借りして興行しましました。この三月をもって岡崎人間環境大学学長を退任されたばかりの竹市先生を客としてお迎えし、また、さぬき連歌会顧問の岡市先生(前香川大学学長)・さぬき連歌会世話人の池田孝平氏、中日両語文芸誌「藍」編集長劉燕子氏や中国の詩人陳東東氏など多彩な方々に連衆としてご参加いただきました。昨年の「大河内山荘」は満開の桜でしたが、今年は開花が遅れ、関雪翁が植えられた疎水の桜もちらほら白い花が申しわけなさそうに咲いているばかりでした。それでも、日本画家関雪翁が三十年の精根をこめて集めた石塔多数を配した見事な日本庭園でお茶をいただきながらの語らいのあと、季節の料理を食し、半歌仙「永遠の影」の巻を無事満尾いたしました。




平成十七年一月十五日
半歌仙連歌「気を配り」の巻
於 五条坂「はり清」


発句 初詣福沢殿に気を配り(松山)
脇 鳥居をくぐる善男善女(喜代春)
第三 寒牡丹丸き稲屋で春待ちて(憲夫)
四句 雨の日もあり風の日もあり(直子)
五句 校門に立ちて生徒を指導する(清實)
六句 駅で直したルーズソックス(良子)

初句 横で見て過ぎし昔を思い出す(松山)
二句 仏御前をめずる清盛(清實)
三句 御簾の奥時子一人が歯噛みして(修三)
四句 今日は二人の馴れ初めしとき(洋二郎)
五句 色町にゆれし道あり石畳(喜代春)
六句 一眼レフのシャッターを切る(清子)
七句 シチリアの蒼き夕空月の鎌(侃)
八句 サッカーボールを高く蹴り上げ(直子)
九句 朝練のグラウンドに煙る白い息(洋二郎)
十句 センター試験直前にして(清實)
十一句 粛々と御祝い花の夢枕(佳子)
挙句 春うららかに雲雀さえずる(侃)

句上
今枝清實(3) 山田喜代春(2) 河村直子(2) 高橋松山(2・客)
大成洋二郎(2) 小川侃(2) 宮内憲夫(1) 若狭良子(1)
高城修三(1・宗匠)柴田清子(1) 石田桂子(1) 渡辺郁子(執筆)
竹本俊平 古川みどり 栗本冨貴子 嶋岡純子
米原新三 上羽真里子 岡本万貴子(世話人)

五条坂「はり清」における「新春連歌会」は、川村旭芳氏の筑前琵琶「五条の橋」を鑑賞した後、華やいだ雰囲気の中、無事満尾いたしました。



平成16年9月26日
半歌仙連歌「還翠園」の巻
於 廣誠院


発句  高瀬川還翠園に秋の月(二郎)
脇     琴尺八に鈴虫も酔う(万貴子)
第三  人の声闇の奥より聞こえ来て(侃)
四句    丑三つ時に高く釘打つ(新二)
五句  酔客に誠の心打ち明けて(安彦)
六句    なんなとされよどうなとされよ(修三)

初句  足袋ぬぎて帯もほどきて蚊帳の中(万貴子)
二句    君を想いて一人寝をする(直子)
三句  家出したみい子のねぐら部屋の隅(孝平)
四句    座敷わらしのオカッパ頭(郁子)
五句  薄化粧母の着物ですまし顔(直子)
六句    姿かたちも昔のままで(和男)
七句   西行がながめし月か吉野山(郁子)
八句    蚊遣りの煙犬の遠吠え(朱實)
九句  張り込みの二人の刑事薮の中(孝平)
十句    静かに落ちし椿二つ三つ(朝菜)
十一句 花は花おのれはおのれの道を行く(清實)
挙句    晴着に春の風のたわむる(朝菜)

句上
岡本万貴子(亭主・2) 河村直子(2) 池田孝平(2) 渡辺郁子(執筆・2)
北脇朝菜(2) 平井二郎(客・1) 小川侃(1) 粟新二(1) 尾崎安彦(1)
高城修三(宗匠・1) 吉田和男(1) 上島朱實(1) 今枝清實(1) 
劉燕子 土井陽子 上島眞司 八木丹邱 北脇道夫 城貴代美 古川みどり
上羽真里子 陣内有理




平成16年4月3日
半歌仙連歌 「ハルウララ」の巻
於 嵯峨野「大河内山荘」


発句 ハルウララ走り走りて今日もまた(糠)
脇 囃子たのしや一調一管(万)
第三 はるばると桜の下をくぐりぬけ(侃)
四句 疾風のごとく天狗あらわる(清)
五句 義経を思い慕いて舞い謡う(新)
六句 恋の苦労をいといもせずに(孝)

初句 朝露に光るうなじのたすきがけ(万)
二句 胸にしのばす君からの文(直)
三句 北斎の春画なぞらう逢瀬かな(喜)
四句 大堰の渡しに霧の流れる(幸)
五句 枯れすすきゆらりと揺れて月の出る(侃)
六句 栗をつまみてトリス呑みほす(糠)
七句 ノウ天気行方わびしや濡れ落葉(弘)
八句 ネクタイしめてデパ地下めぐり(新)
九句 そろそろと私おんなに戻りたい(貴)
十句 育児疲れの妻はつぶやく(直)
十一句 人はみな花ありてこそたのしけれ(秋)
挙句 大河内山荘春の夕暮れ(弓)

句上

木田安彦(糠六・2) 岡本万貴子(2) 小川侃(2) 河村直子(2)
粟新二(2) 池田孝平(1) 八木幸雄(1) 池田弘子(1)
城貴代美(1) 樹田秋義(1) 山田喜代春(1) 今枝清實(1)
高城修三(弓月・1) 田中克 中井美里 村上美智子 中島浩
宮内憲夫 内藤哲 斎藤直光 斎藤万寿子 渡辺郁子

昭和の名優大河内傳次郎が三十年の歳月を費やして完成した嵯峨野の大河内山荘にて、
桜満開の四月三日、能楽幸流小鼓方林光寿氏、森田流笛方森田保美氏による一調一管
の演奏のあと、版画家の木田安彦氏を客に迎えて春の月待ち連歌会が興行されました。



平成16年1月11日
半歌仙連歌「祇園町」の巻
於 五条坂「はり清」


発句 祇園町のこりゑびすの人の波(侃)
脇 笹のかげより津軽三味線(万)
第三 門付のぼさま一人が今日も来て(哲)
四句 簪買うてほろ酔い加減(新)
五句 青い目も黒い目もみな赤い目に(万)
六句 闇夜の猿は静かに眠る(真)

初句 幕末に公知討たれし御所の辻(新)
二句 君を送りて行きつ戻りつ(清)
三句 降る雪がいつの間にやら肩にある(真)
四句 南天の実に罪あかあかと(憲)
五句 櫃の中江島生島息ひそめ(万)
六句 高遠桜はらりはらりと(弓)
七句 ゆるり酒飲んでうれしや春の月(憲)
八句 壷中にとらむ旅人李白(清)
九句 何もかもまとめて一つ幕が下り(憲)
十句 最たる嘘やスポットライト(喜)
十一句 乙女たち清く正しく花の舞(哲)
挙句 グランドデビューまたあでやかに(郁)


句上
宮内憲夫(3) 岡本万貴子(3) 内藤哲(2) 粟新二(2)
藤田真紀子(2) 今枝清実(2) 小川侃(1) 高城修三(弓月1)
山田喜代春(1) 渡辺郁子(1)  久保比呂誌  中井美里
土井陽子  福田文子  上羽万里子  古川みどり
鈴木千津子 河村直子 中村和恵

久保比呂誌氏の津軽三味線演奏のあと新春月待ち連歌会(はり清)



平成15年9月12日
半歌仙連歌「立待や」の巻
於 退耕庵


立待や尺八の音の波寄する(喜代春)
樹間をめぐる寺の涼風(貴代美)
いかづちを呼びし黒雲去りゆきて(さち子)
胸なでおろす虎のあつまり(松山)
飛び込みし釈迦の姿を仰ぎ見る(万貴子)
西行法師が恋にまどいて(修三)

あぜみちの少女見る目のうつろなる(喜代春)
歳は十八丹波の生まれ(修三)
霧晴れて三三九度の宴かな(幸雄)
トラック連ね威風堂々(修三)
競走馬次のレースは誰か知る(松山)
サラリーマンの昨日今日明日(清實)
父の顔ゆがんで険し月の夜(緋紗子)
不審船見ゆ秋の浜にて(修三)
冷害の田のあぜゆくおろおろと(幸雄)
はしぼそがらすの我を見下ろす(貴代美)
投げ銭に花も混じりてハープ弾き(喜代春)
やや冷たくて春の夕暮れ(修三)


句上
高城修三(5) 山田喜代春(3) 八木幸雄(2) 高橋松山(2)
城貴代美(2) 高橋さち子(1) 岡本万貴子(1)今枝清實(1)
鶴島緋紗子(1) 高瀬照美  内藤哲  松田和典  福井正清
大塚和子  河村直子  皿井舞  片山典一  中村和江
北島桂子  津島里奈  黒瀬貴多子  渡辺郁子



東福寺退耕庵の五十部御住職の尺八演奏のあと十六夜の月をまちながら月待連歌会


戻る