大阪天満宮法楽連歌   戻る



平成二十八年六月三日

第二回・大阪天満宮法楽連歌

  於 参集殿

 

初表

発句  廣前の梅色づくや翁偲ぶ(晴子)

脇    向栄庵に鳴く不如帰(清實)

第三  いざ江戸へ芭蕉扇を腰に差し(修三)

四句   錦の御旗風あらたなり(政俊)

五句  紅白の獅子のはざまに朧月(建夫)

六句   春を寿ぐ檜の舞台(貴代美)

初裏

初句  中村屋大向うから声かかる(和子)

二句   誰にも知られず手に手を重ね(平)

三句  老いらくの伝えきれないこの想い(るみ子)

四句   越山会の一途なる恋(幸一)

五句  牝鶏の晨に迷う天下人(文男)

六句   寝たふり破る娘の一喝(真理子)

七句  見上ぐれば花札のごと山の月(水澄子)

八句   うなる剛腕懺悔する秋(浩)

九句  肌寒に思い出すのは母のこと(満里子)

十句   疲れた時にほっこりと言う(繁治)

十一句 物憂げに桜吹雪にたたずみて(哲哉)

十二句  霞に浮かぶ阿蘇の連山(千代)

名表

初句  襖絵に蝶の一匹とまりおり(利枝)

二句   孫が袖振り目を輝かせ(純代)

三句  我先にじいじの土産つかみあい(美佐子)

四句   瀬戸内海の猫多き島(由紀江)

五句  スクラップ巨大な魚に変身し(和子)

六句   ダブルベッドで夢から覚めて(貴代美)

七句  右腕に残る重みの君はなき(美佐子)

八句   左に寄せる新しき妻(建夫)

九句  古畳たたき鐘聴く百八つ(真理子)

十句   銭は無けれど楽しき浮世(貴代美)

十一句 杯にうく酒の肴の望の月(俊平)

十二句  しじまを破りむくどりの啼く(順子)

名裏

初句  冷え冷えと西行橋の西のつめ(修三)

二句   嵯峨野歩きを友とそぞろに(純代)

三句  浴衣着る外国人が闊歩して(美佐子)

四句   石仏たちは肩をすくめる(修三)

五句  峠道花吹き散らすつむじ風(俊平)

挙句   蛍の光歌う分校(水澄子)


句上              

近江晴子(客・1)   渡邊美佐子(3)    小堀由紀江(1)

今枝清實(世話人・1) 藤本真理子(2)   竹本俊平(2)

高城修三(宗匠・3)  岩佐水澄子(2)   山田順子(執筆・1)

村上政俊(1)     府川 浩(1)    柳野等

村上建夫(2)     奥山満里子(花香・1)大城千鶴子

城貴代美(3)     杉田繁治(1)    勝井景介

友永和子(2)     田中哲哉(1)    黒住莞爾

石 平 (1)     岡部千代(1)    長尾眞知子

中川るみ子(1)    上羽利枝(1)    廣瀬春雄

森 幸一(1)     高見純代(2)    八ツ尾美佐子

                               



平成二十七年六月一日

第一回・大阪天満宮法楽連歌

 於 大阪天満宮参集殿

 

初表

発句  御神幸(おわたり)や神霊移御も粛粛と(種伯)

脇    ここは談林青葉の袂(清實)

第三  さればこそ天下の風も吹き寄せて(修三)

四句   扇かざせし武士の秋(貴代美)

五句  すみわたる月下の橋を吟じ行く(青隴)

六句   さくら紅葉の祇園新橋(久子)

初裏

初句  早朝の辰巳稲荷に手をあわす(晴之)

二句   きぬぎぬなるも影身添わせよ(真理子)

三句  あなたには一夜なれども我一世(順子)

四句   柳行李に凍てるさやまき(由紀江)

五句  軽トラで明日はどこへと旅芝居(俊平)

六句   出石の宿で皿蕎麦五枚(建夫)

七句  見上ぐれば天の日矛の青き月(満里子)

八句   知るや知らぬや稲穂は稔る(和子)

九句  秋津島よくぞ男に生まれけり(文男)

十句   我は我なり人は人なれ(豊次)

十一句 花吹雪高野聖の道急ぐ(繁治)

十二句  かこち顔なる春の吐息よ(こん) 

名残表

初句  のどかなる日中に聞こゆ三味の音(利枝)

二句   四畳半には香をたきしめ(貴代美)

三句  床の間の妻恋い慕うかきつばた(満里子)

四句   幽世までも思い届けよ(等)

五句  遙かなる安達太良山の大き空(七重)

六句   仰いだ顔に涙ひとすじ(渡邊美佐子)

七句  幼子を残した家は振り向かず(真理子)

八句   着の身着のまま引揚船に(俊平)

九句  海鳥がいっせいに翔つ夕埠頭(貴代美)

十句   踊り子マリの赤きドレスよ(こん)

十一句 地の果てのカスバの月に照らされて(繁治)

十二句  ガラスの杯に濁酒注ぎぬ(貴代美)

名残裏

初句  永き夜に三島由紀夫の高笑い(修三)

二句   鹿鳴館は晴れやかに幕(保)

三句  セピア色写真に残る明治かな(清實)

四句   産業遺産の記録おぼろに(修三)

五句  咲き誇る今年も花の通り抜け(渡邊美佐子)

挙句   菅丞相も春を寿ぐ(千代)

 

句上 

寺井種伯(客・1)   家村豊次(1)

今枝清實(世話人・2) 杉田繁治(2)

高城修三(宗匠・3)  今野和代(2)

城貴代美(4)     上羽利枝(1)

廣 青隴(朗詠・1)  柳野 等(1)

飛田久子(1)     下石坂七重(1)

中條晴之(1)     渡邊美佐子(2)

藤本真理子(2)    河内 保(1)

山田順子(執筆・1)  岡部千代(1)

小堀由紀江(1)    黒住莞爾

竹本俊平(2)     田中哲哉

村上建夫(1)     廣久仁子

奥山満里子(花香・2) 前田正子

友永和子(1)     八ツ尾美佐子

奥村文男(1)     


西山宗因が談林の風を天下に起こした根源地、大阪天満宮連歌所の跡に建立された参集殿にて、百十数年ぶりに法楽連歌を興行いたしました。天満宮の寺井種伯宮司さまや柳野等禰宜さま、近江晴子さまはじめ多くの方々のご尽力に心から感謝いたしたいと存じます。近江さまより大阪天満宮の歴史と連歌資料のご説明をいただいた後、天神名号(後水尾天皇御宸筆)と天神画像(関白近衛信尹公自画賛)を懸け、三つ具足(花瓶・杜若一輪挿し、香炉・伽羅香、匂の花に沈香)を整えた会場にて宮司さまより発句の発声をいただき、歌仙三十六句を無事満尾し内曇懐紙にしたためたうえ、廣青隴氏の朗詠奉納を執り行いました。そののち、扇町近くの「茂楽樹」にて連衆一同の楽しい竟宴となりました。