通天閣連歌                                        戻る



令和五年一二月三日
半歌仙連歌「ビリケンや」の巻
 於 のこされ島


発句  ビリケンや足の裏から年忘れ(満里子)
脇     しもやけせんと紅いソックス(幸一)
第三  空襲は夜なべ仕事を断ち切りて(こん)
四句   土間に転がる里芋二つ(啓二朗)
五句  諍いの嘘も真も月てらし(こん)
六句   伊藤野枝出ず大杉のもと(清實)

初句  百年を呼吸するごと生きたし我(こん)
二句   大樹の陰であくびする猫(久美子)
三句  連れそうて噛み合わぬままダイヤ婚(純子)
四句   君をさらうと言ったのは誰(こん)
五句  今更に恨み辛みは夏の暮れ(繁治)
六句   一草庵で飲む祭り酒(満里子)
七句  友来たり月もほほえむ笑い声(正子)
八句   議論途絶えて虫すだく闇(こん)
九句  富士ふもと体験入隊秋しぐれ(建夫)
十句    あちらこちらに叫ぶ声あり(光)
十一句 今生の別れとばかり花盛る(修三)
挙句   春風頬をなでゆく朝(奈緒美)

句上 奥山満里子(客・2) 森幸一(1) 今野和代(世話人・5) 松本啓二朗(1) 今枝清實(1) 野中久美子(1) 嶋岡純子(1) 杉田繁治(1) 前田正子(1) 村上建夫(1) 井下光(1) 高城修三(宗匠・1) 井下奈緒美(執筆・1) 浅田有代 友永和子 府川浩 松田真魚 


令和四年十二月十日
半歌仙連歌「百八や」の巻
 於 のこされ島


発句   百八や鐘か背丈か塔の暮れ(建夫)
脇      通天閣を見上ぐる師走(貴代美)
第三   風狂の人と飲む酒月さえて(こん)
四句    黒猫ひそと命絶えたり(修三)
五句   路地裏にナナカマドの実揺れる朝(こん)
六句    秋の踊りの稽古せわしく(貴代美)

初句   丸髷に菊のかんざし上七軒(純子)
二句    天神様に文を納めて(繁治)
三句   せめて東風吹くまでにはと銀一朱(建夫)
四句    マリア灯篭梅に隠して(有代)
五句   今日一日細川ガラシャをしのぶ春(鬼猿)
六句    ここは丹波の味土野なりけり(修三)
七句   中天に月皓々と風わたる(和子)
八句    値上げの秋は懲りてそうろう(浩)
九句   鰯雲あれが食えたらうれしかろ(鬼猿)
十句    親子二人の買い物帰り(幸一)
十一句  息つめて眺むる中の花吹雪(久仁子)
挙句    にぎわいも出る春の大原(久美子)

句上 村上建夫(客・2) 城貴代美(執筆・2) 今野和代(世話人・2) 高城修三(宗匠・2) 嶋岡純子(1) 杉田繁治(1) 浅田有代(1) 山上鬼猿(2) 友永和子(1) 府川浩(1) 森幸一(1) 原野久仁子(1) 野中久美子(1) 松田真魚 


令和三年十二月十二日
半歌仙連歌「冬ぬくし」の巻
 於 のこされ島


発句   通天閣無口に立つや冬ぬくし(純子)
脇      誓文の街ちんどん太鼓(こん)
第三   山高帽ロイド眼鏡に髭ありて(純子)
四句    君は知らずやモダンタイムズ(こん)
五句   鴨川で月見たあとの六曜社(修三)
六句    角を曲がれば秋のニッカバー(繁治)

初句   肌寒に酔わせたき人誘いたり(純子)
二句    ピアスが光る老いらくの恋(貴代美)
三句   七十五怨み言など忘れはて(修三)
四句    孫を相手にビールのうまし(幸一)
五句   アフガンに倒れし男の夢の夢(こん)
六句    目覚まし時計は鳴り続けたり(有代)
七句   おごそかに月は昇りぬ三笠山(清實)
八句    新酒いただき皆顔赤し(有代)
九句   車座に取る人もなき杯一つ(建夫)
十句    寝屋川あたり春のたそがれ(和子)
十一句 どこ行くや花の吹雪にいざなわれ(修三)
挙句    紋白蝶は空に消えたり(浩)

句上  嶋岡純子(客・3) 今野和代(世話人・3) 高城修三(宗匠・3) 杉田繁治(1)  城貴代美(1) 森幸一(1) 浅田有代(2) 今枝清實(1) 村上建夫(1) 友永和子(1) 府川浩(1)

今回は二年ぶりの通天閣連歌となりました。オミクロン株でパンデミックの終了になることを願いながらの連歌でした。



令和元年一二月一日
半歌仙連歌「通天閣」の巻
 於 のこされ島


発句   通天閣どこ吹く風と年の暮れ(久美子)
脇      速報流る香港の冬(こん)
第三   いにしえの闘士は口をつぐみいて(修三)
四句    有機栽培いそしめる秋(貴代美)
五句   御世替り豊穣祈る月明かり(浩)
六句    虫の音すだく丘に登りて(清實)

初句   ささやきはとぎれとぎれのプロポーズ(建夫)
二句    六十過ぎての三度目の恋(純子)
三句   舞台では飽くほど惚れて惚れられて(久美子)
四句    ビールの苦さかみ締める宵(貴代美)
五句   我反日種族主義を読み終える(修三)
六句    猫のムルソー膝に丸まり(こん)
七句   月待ちて仏文学の話好き(由紀江)
八句    きんもくせいの香の漂いぬ(清實)
九句   東山石塀小路に抜ける道(繁治)
十句    のどかに聞こゆ謡の稽古(久美子)
十一句  昼下がり二つ三つと花の散る(幸一)
挙句     人の心もなべてうららか(順子)

句上  野中久美子(客・2) 今野和代(世話人・2) 高城修三(宗匠・2) 城貴代美(2) 府川浩(1) 今枝清實(2) 村上建夫(2) 嶋岡純子(1) 小堀由紀江(1) 杉田繁治(1) 森幸一(1) 山田順子(執筆・1)


平成三十年一二月二日
半歌仙連歌「年の瀬や」の巻
 於 のこされ島


発句   年の瀬や十年を祝う通天閣(清實)
脇      笑い止らぬ誓文の街(修三)
第三   なまはげが世界遺産で繰り出して(浩)
四句    泣く子黙る子初春の風(こん)
五句   堂島の大発会に宵の月(建夫)
六句    昨日は昨日明日は明日(修三)

初句   はちきんといなせな奴が結ばれて(由紀江)
二句    死ぬまでついぞ恨むことなし(修三)
三句   二基の墓微妙な距離の切なさよ(久美子)
四句    夕立さっと過ぎし竹林(貴代美)
五句   落柿舎の硯の海に筆ひたし(満里子)
六句    発句を誉めし宗匠の声(幸一)
七句   月は今あまねくものを照らしたり(貴代美)
八句    時限爆弾こおろぎの羽(こん)
九句   平調の楽をさかなに酒くみて(久美子)
十句    おぼろにかすむ三十六峰(貴代美)
十一句 盛りなる花の下ゆく賀茂堤(繁治)
挙句    ありがたきかなのどかなる午後(順子)

句上 今枝清實(客・1) 高城修三(宗匠・3) 府川浩(1) 今野和代(世話人・2) 村上建夫(1) 小堀由紀江(1) 野中久美子(2) 城貴代美(3) 奥山満里子(執筆・1) 森幸一(1) 杉田繁治(1) 山田順子(1) 嶋岡純子  清真人


平成二十九年十二月三日
半歌仙連歌「冬晴れに」の巻
 於 のこされ島


発句   冬晴れに通天閣の高きかな(吟)
脇      九歳へし師走の連歌(貴代美)
第三   ともがらは挨拶もなく旅立ちて(建夫)
四句    弁天橋に独りたたずむ(こん)
五句   名月をめでて矢立てのひもを解く(清實)
六句    菊を片手に讃岐廃帝(建夫)

初句   松山は讃岐にもあり備中にも(修三)
二句    だんだんの語の何とやさしき(由紀江)
三句   年上のバツ二の君の膝枕(こん)
四句    恋は恋なり愛は愛なり(修三)
五句   真黄色な麦藁帽子の忘れ物(由紀江)
六句    終着駅の木製ベンチ(純子)
七句   さてどこへ行こうかと問う今日の月(貴代美)
八句    どんぐり一つ拾う寅さん(幸一)
九句   昭和なり京都御苑の秋深し(修三)
十句    謡の稽古のどかに聞こゆ(久美子)
十一句 花に競う和服姿の女たち(七重)
挙句    八重九重にかすむ夕暮れ(満里子)

句上  掘本吟(客・1) 城貴代美(2) 村上建夫(2) 今野和代(世話人・2) 今枝清實(1) 高城修三(宗匠・3) 小堀由紀江(2) 嶋岡純子(1) 森幸一(1) 野中久美子(1) 下石坂七重(1) 奥山満里子(執筆・1)  杉田繁治 友永和子 泉荘太


平成二十八年十二月四日
半歌仙連歌「ビリケンの」の巻
 於 のこされ島


発句   ビリケンの余禄もらいし師走かな(貴代美)
脇      異邦人にも優しき冬日(修三)
第三   新月の旗と銃撃逃れ来て(建夫)
四句     オリーブの実をひとつ口にす(清實)
五句   秋の宵カクテルグラスに円き影(繁治)
六句     カストロも逝く我も老いゆく(こん)

初句   三ツ星の西部講堂前にして(修三)
二句     うつむき歩く同棲時代(浩)
三句   下駄ばきの君は無口で夏盛り(貴代美)
四句     瘡の柴犬ついて離れず(修三)
五句   天秤で魚振り売る江戸の町(繁治)
六句     長夜をかこつ浅野浪人(修三)
七句   絵図を手にあとは月の出待つばかり(建夫)
八句     伊賀越えの秋お示しそろう(修三)
九句   しぐれ来て肩に蓑ほし獣道(純子)
十句     昔のことは夢のまた夢(修三)
十一句 難波津は万朶の花の咲きにけり(和子)
挙句     かすみを渡る春の旅鳥(満里子)

句上  城貴代美(2) 高城修三(宗匠・6) 村上建夫(2) 今枝清實(1) 杉田繁治(2) 今野和代(世話人・1) 府川浩(1) 嶋岡純子(1) 友永和子(1) 奥山満里子(執筆・1) 泉荘太 中村りょう子


平成二十七年十二月六日
半歌仙「ビリケンや」の巻
 於 のこされ島


発句   ビリケンや爆買い続く年の暮れ(朝子)
脇      スニーカー行く街の木枯らし(修三)
第三   茶房よりモーツアルトの流れきて(貴代美)
四句     小窓の向こう誰何の眼(建夫)
五句   息ひそめイスタンブールの利鎌月(修三)
六句     冷ゆるチャドルに生身と火薬(建夫)

初句   恋人も裏切り者も諸共に(修三)
二句     失恋酒場の酔いどれマリア(こん)
三句   明日の夜は千一人目を見つけるぞ(順子)
四句     ゆらりひまわり署名活動(こん)
五句   炎天下横田夫妻の声枯れて(順子)
六句     君が代うたう娘いとしき(修三)
七句   くっきりとサッカー場に出ずる月(繁治)
八句     ゴールの後の秋の夜しずか(和子)
九句   見つめ合いボジョレヌーボで乾杯す(貴代美)
十句     恋の初めはカキンの音す(修三)
十一句  花盛りサクリファイスの命なり(こん)
挙句     浪速の春はいきつもどりつ(莞爾)

句上 後藤朝子(客・1) 高城修三(宗匠・5) 城貴代美(2) 村上建夫(2) 今野和代(世話人・3) 山田順子(2) 杉田繁治(1) 友永和子(1) 黒住莞爾(1)


平成二十六年十二月十四日
半歌仙「今日この日」の巻
  於 のこされ島


発句   今日この日思いをとげし赤穂義士(修三)
脇      雪しんしんと積む泉岳寺(満里子)
第三   異国よりバックパックでやってきて(貴代美)
四句     母の故郷で杜氏の修行(由紀江)
五句   雲海のうえに浮かべる城に月(修三)
六句     キャンバス立てて日展の秋(純子)

初句   冷やかに寝そべる裸身と黒い猫(貴代美)
二句     おかっぱ頭も恋するパリっ子(建夫)
三句   すっぴんの君が手酌の夏の宿(こん)
四句     潮騒のおと遠くに聞こえ(清實)
五句   同姓の表札並ぶ島の道(由紀江)
六句     堂々とあり水玉かぼちゃ(純子)
七句   オブジェには勝ち目なけれど月は月(順子)
八句     秋風流るうつぼ公園(和子)
九句   デモ隊は三々五々で声もなし(修三)
十句     非番警官春宵に立つ(春雄)
十一句  いかり肩花びら受けて京の街(利枝)
挙句     おぼろおぼろに三十六峰(繁治)

句上  高城修三(宗匠・3) 奥山満里子(1) 城貴代美(2) 小堀由紀江(2) 嶋岡純子(2) 村上建夫(1) 今野和代(こん・世話人・1) 今枝清實(1) 山田順子(執筆・1) 友永和子(1) 廣瀬春雄(1) 上羽利枝(1) 杉田繁治(1)


平成二十五年十二月一日
半歌仙「畏まり」の巻
  於 のこされ島


発句   小春日や通天閣の畏まり(貴代美)
脇      昼酒すすむおでん串カツ(由紀江)
第三   ジェット機が昔話を遮りて(純子)
四句    やんばるの森ひかり濃みどり(コン)
五句   長老の乾いた笑い夏の月(貴代美)
六句    頬に二つの泣き黒子あり(純子)
裏   
初句   縁ありて嫁ぎて今は五十年(利枝)
二句    京都育ちの姉さん女房(貴代美)
三句   弁当に生姜のハートちらしずし(純子)
四句    大工仕事の午のたのしみ(清實)
五句   一服の煙草はピースと決めており(純子)
六句    宗匠稼業は疲れるものだ(修三)
七句   魂の調律できぬ望の月(コン)
八句    ドラキュラ候は秋野さまよう(清實)
九句   そぞろ寒黒いマントも破れ果て(和子)
十句    紅萌ゆる碑の丘に立つ(貴代美)
十一句  大の字が花の吹雪でかすみおり(春雄)
挙句    貧しき庭にも鶯の声(順子)

句上  城貴代美(4) 小堀由紀江(1) 嶋岡純子(4) 今野和代(世話人・2) 上羽利枝(1) 今枝清實(2) 高城修三(宗匠・1) 友永和子(1) 廣瀬春雄(1) 山田順子(執筆・1) 石井順子 黒住莞爾 杉田繁治 村津清子 

今回の通天閣連歌会には東京から齋藤慎爾氏が客として出席されると言うので、貞享元年八月に「野ざらしを心に風のしむ身哉」の句を門出の句として旅立った芭蕉が、その冬、名古屋の俳人集団と対座して「狂句木枯の身は竹斎に似たる哉」の発句を投げかけ激しくせめぎあって蕉風に画期を打ち立てた故事を想い、大いに期待していたのだが、同行の月村敏行氏とともに発句を出すことなく退座されたのは残念至極であった。


平成二十四年十二月二日
半歌仙「年の瀬や」の巻
  於 ギャラリー再会

初表
発句    年の瀬やビリケンさんのおひざ元(幸)
脇       暖炉囲んで連歌興行(建夫)
第三    大杉も三島もすでにみまかりて(コン)
四句     だらだら坂につたの赤らむ(貴代美)
五句    お月さま黄金色にてかがやけり(一郎)
六句     ピーターパンの現われる秋(清實)
初裏
初句   千人の中から抜擢十五歳(純子)
二句    甲子園わく大ホームラン(幸)
三句   初恋は虚空の奥へ吸い込まれ(貴代美)
四句    夫との日々は穏やかに過ぐ(千鶴子)
五句   手びねりの茶碗で服す午後三時(石井順子)
六句    伊賀の山越え道中すごろく(俊平)
七句   ひげづらの山賊いでし後の月(純子)
八句    菊人形の竹の骨組み(満里子)
九句   秋寒に使い慣れたる肥後守(隆三)
十句    かなしみともに埋めた砂浜(修三)
十一句 ひとり来て花吹雪の中たたずめり(千代)
挙句    再会約し旅立ちの春(山田順子)

句上 三谷幸(客・2) 村上建夫(1) 今野和代(1) 城貴代美(2) 浅香一郎(1) 今枝清實(世話人・1) 嶋岡純子(2) 大城千鶴子(1) 石井順子(1) 竹本俊平(1) 奥山満里子(1) 細尾隆三(1) 高城修三(宗匠・1) 岡部千代(1) 山田順子(執筆・1) 田前二郎 石井智子 朝山秀資 味岡洋子 飯田美智代 上羽利枝 小杉洋子 小堀由紀江 志村久美子 杉田繁治 高志眞理子 田中哲哉 田中由美子 田前芙美子 友永和子 藤本真理子 府川浩 山口美加代 

今回の通天閣連歌会は通天閣の膝元にある登録有形文化財「ギャラリー再会」にてオーナーの田前二郎氏の御好意により開催されました。連歌会には設計者の石井修氏の御長女石井智子氏も列席され、初めに田前二郎氏より再会にまつわるお話を伺ったあと、佐保会の三谷幸氏より発句をいただき、賑やかな連歌会となった。




平成二十三年十二月四日
半歌仙「小春日や」の巻
 於 のこされ島

初表
発句    小春日やふり返りてもかげはなし(建夫)
脇       ジングルベルのひびく四つ角(由紀江)
第三    たこ焼きのにおいかすかに流れきて(莞爾)
四句     京都洛北遠州の庭(建夫)
五句    まなうらの母はいずこと望の月(純子)
六句     どこまでつづく虫すだく道(隆三)
初裏
初句    ゆらゆらと狐のお面腰に下げ(修三)
二句     うれしかなしきどじょうすくい(繁治)
三句    三味線に乱るる裾や長襦袢(隆三)
四句     恋の行方を誰か知るらん(修三)
五句    一瞬が永遠となる今日の朝(順子)
六句     芦の湖畔に映る富士山(純子)
七句    ランボーよ今宵の月をいかにせん(修三)
八句     ロケット砲に秋のアフガン(和人)
九句    黄落のアーリントンに黒き列(由紀江)
十句     足を伸ばしてかわのほとりへ(建夫)
十一句  花筏ながれながれて日本海(利枝)
挙句     連絡船に春は来にけり(こん)

句上  村上建夫(客・3) 小堀由紀江(2) 黒住莞爾(1) 嶋岡純子(2) 細尾隆三(2) 高城修三(宗匠・3) 杉田繁治(1) 山田順子     (執筆・1) 林和人(1) 上羽利枝(1) 今野和代(世話人・1) 府川浩 友永和子 

『君たちには分からない―「楯の會」で見た三島由紀夫―』の作者村上建夫氏を客に迎えて沖縄の風情がただよう「のこされ島」で第三回の通天閣連歌となりました。



平成二十二年十二月十二日
半歌仙「今は昔」の巻
  於 のこされ島

初表
発句    今は昔飛田新地や年の暮(隆三)
脇       落ち葉焚きする世之介のはて(晋)
第三    酔いどれて袋叩きに朝の風(浩)
四句     にらみを利かせ通る黒猫(純子)
五句    金銀の鈴のふるよな月夜なり(こん)
六句     脚本もなく秋は佳境へ(由紀江)
初裏
初句    旅に出るポケットに菊さしながら(穂波)
二句     マドンナが追う荒川の土堤(繁治)
三句    その脛が久米の仙人惑わせる(修三)
四句     とかく隣の芝はうるわし(由紀江)
五句    マイホーム三尺ほどの木下闇(晋)
六句     二千万円ねぎりねぎりて(純子)
七句    恥知れと月皓皓と照らしけり(修三)
八句     萩はうなだれこおろぎは鳴く(貴代美)
九句    野仏を探しあぐねて秋の雲(穂波)
十句     田舎の道はちょっとが一里(隆三)
十一句  みちのくに今日はうれしき花衣(弘子)
挙句     桃源郷に霞たなびく(清實)

句上  細尾隆三(2) 柳川晋(2) 府川浩(1) 嶋岡純子(2) 今野和代(世話人・1) 小堀由紀江(2) 
     松川穂波(2) 杉田繁治(1) 高城修三(宗匠・2) 城貴代美(執筆・1) 松田弘子(1) 今枝清實(1)
     黒住莞爾 上羽利枝 友永和子 

談林発祥の地大阪、しかも新世界となると、自由奔放にして面白い連歌とならぬはずがありません。ことに脇から第三の移りで、昨今話題の海老蔵を面影にした付けが秀逸でした。その後も、睨みを利かせる黒猫から詩的世界が展開され、恋句に移るさまも見事でした。今年の大きな成果となる連歌興行となりました。大阪新世界は誌的想像力を喚起する場です。
     

平成二十一年十一月八日

半歌仙「ビリケンさん」の巻

   於 のこされ島

初表
発句    小春日やビリケンさんの足の裏(修三)

脇       蜜柑を供える年老いた母(雪子)

第三    路地奥の屋根の向こうに月見えて(清實)

四句      猫が一匹しずしずと行く(繁治)

五句    若冲は思わず筆を取りにけり(修三)

六句      米斗翁とは誰のことやら(弘子)

初裏
初句    酒飲みて目利き物知り長談義(清實)

二句      ごろりごろりとまっこりの瓶(繁治)

三句    君追いつ丘に登れば風知草(こん)

四句      黒髪乱れ心も乱れ(穂波)

五句    きざはしを踏みしめ聴くや三井の鐘(弘子)

六句      森蘭丸の憂いは晴れず(修三)

七句    菊の香の漂い来たる後の月(弘子)

八句      冷たき布団鈴虫の声(めぐみ)

九句    二年目の単身赴任の秋の宵(清實)

十句      レヴィストロースの訃報耳にす(こん)

十一句  共に見し落花しきりの東山(雪子)

挙句      酔いどれ歩く春のうらうら(穂波)

句上
高城修三(宗匠・3) 武藤雪子(2) 今枝清實(3) 杉田繁治(2) 松田弘子(3) 今野和代(世話人・2) 松井穂波(2) にしもとめぐみ(1) 奥山満里子(執筆) 栗田冨喜子 田辺敏雄 計見芳夫  石田博

通天閣直下の酒房「のこされ島」にて初めての通天閣連歌となりました。いまや新世界のじゃんじゃん横丁は観光客や外人さんの人気スポット、その街の熱気さながらの楽しい連歌会となりました。