與喜天満神社法楽連歌                               戻る

平成二十三年十月一日

與喜天満神社法楽連歌

  於 與喜天満神社                   

 

與喜山に霧澄みのぼる朝かな(千尋)

 紅葉談らう八重折の坂(清作)

連れ立ちの女房月を待ちわびて(修三)

 庭の狸も裳裾引くなり(真理子)

香を売る老舗ののれん錆し色(貴代美)

 噂に聞いたる誓文払い(隆三)

大声で客を呼び込む男いて(利枝)

 ここを先途と口説しきりに(哲哉)

黒髪に降る雨ぬぐう手のやさし(由美子)

 忘れじという永久の約束(由紀江)

水草に光る蛍の風に揺れ(順子)

 離れの茶会たけなわとなる(美加代)

十五夜はいつと秀吉指を折り(弘子)

 名護屋の城にくつわ虫鳴く(純子)

秋祭りちょうちんの灯もにぎにぎし(繁治)

 神武聖蹟たずね行く旅(隆彦)

いずこでも花の盛りに迎えられ(博)

 やや肌寒きみちのくの春(和子)

遠足の母の匂いは卵焼き(満里子)

 糊のきいたる手染めのナプキン(隆三)

恥じらいて胸におさめる紅の跡(貴代美)

 後朝の文君より届く(由美子)

切れた緒を結びし紅絹の血潮かな(真理子)

 夕立さりし墨田のほとり(貴代美)

北斎の構図も人もあでやかに(純子)

 たこもひらめもせり落とされて(真理子

一箱で値段は同じ八千円(修三)

 世界デビューのわさび添えられ(弘子)

タワービル最上階の月の宴(真理子)

 萩いけられて琴の音流る(貴代美)

板につく女形の仕草も村芝居(栄治)

 馬の足にて黒幕を引く(繁治)

パオの前杯に満たせる山羊の乳(貴代美)

 春風吹きて草原は海(真理子)

大和では花の吹雪になりぬらん(修三)

 初瀬の谷にうぐいすの鳴く(順子)


句上 長岡千尋(客・1) 金子清作(亭主・1) 高城修三(宗匠・3) 藤本真理子(5) 城貴代美(5) 細尾隆三(2) 上羽利枝(1) 田中哲多(1) 田中由美子(2) 小堀由紀江(世話人・1) 山田順子(2) 山口美加代(1) 松田弘子(2) 嶋岡純子(2) 杉田繁治(2) 吉田隆彦(1) 石田博(1) 友永和子(1) 奥山満里子(1) 福泉栄治(1) 

二条良基の「避連抄」や與喜天満神社祭礼図に江戸前期の連歌図を伝え、かつて大和の連歌の拠点であった與喜天満神社(奈良県桜井市初瀬)にて、金子宮司のご配慮により法楽連歌を興行できました。しかも神社内殿にての興行という破格の連歌会となりました。関係者のみなさまには厚く御礼申し上げます。