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連歌の基礎用語

   

発句(ほっく)/連歌の初めに詠まれる句で、挨拶の句とされ、特別な客がいる場合は客が詠む。季語、切れ字を要する。季語は当季でなければならない。挨拶の句とされる発句は連歌の時空のビッグバンで、ここから変転果てしない連歌の世界が始まる。

(わき)/発句に添えて詠み、座を用意する亭主の句である。当季、体言止めとする。

第三(だいさん)/脇から句境を一転せしめる句で、「て留め」とする。発句から第三までは形式どおりにすすめ、あとは変化を旨として挙句まで読み継いでいけばよい。

平句(ひらく)/第三から挙句までの間の句すべてをいう。

挙句(あげく)/連歌一巻を締めくくる最後の句。ここで奇矯な句は慎むべきであろう。

句上(くあげ)/挙句のあとの余白に、それぞれが詠んだ句数を列記したもの。

興行(こうぎょう)/連歌をすること。張行(ちょうぎょう)ともいう。

脇起り(わきおこり)/発句に芭蕉など古人の発句を借用して、脇から連歌を巻くこと。

付合(つけあい)/付け方、付け味などをいう。異質なものを出会わせ、思いがけないイメージや発想を引き出す装置としての連歌の面白さは、この付合の妙にある。

会釈(あしらい)/打越のむずかしいところに、その人の衣装・飲食、その場の道具などで付ける付け方。

遣句(やりく)/つけにくいところに天気・時節・景色などを付けてほどよく先にすすめる付け方。会釈に近い手法。

向付(むかいづけ)/前句と対向する視点で付ける付け方。

色立(いろだて)/色彩のない句が続いたような場合、印象的な色彩のある句を付ける付け方。

前句(まえく)/付句をする句をいう。

打越(うちこし)/前句の前の句をいう。

式目(しきもく)/連歌一巻を巻くにあたって、変化を保証し乱脈を避けるためのルール。その中心は句数と去嫌。

句数(くかず)/春・秋・恋の句が出たら二句以上続け、五句を越えない。その他は一句で捨ててもよい。ただし、伝統的な連歌・俳諧では春・秋は三句から五句までとなっている。

去嫌(さりきらい)/同じイメージや発想の繰り返しを避け、連歌一巻に変化を確保するためのルール。このことさえ覚えておけば細かいルールにこだわる必要はない。

輪廻(りんね)/同じ発想、イメージ、言葉が繰り返されること。

観音開き(かんのんびらき)/打越と付句は前句を挟んで同じイメージや発想が繰り返されがちなので、注意を要する。これも輪廻の一つ。

孕み句(はらみく)/前もって詠んでおく句。場における即興の付けが連歌の醍醐味なのだから、慎むべきである。

求食(あさる)/自分の句に続けて付けること。出勝のときに起きるので注意を要する。

定座(じょうざ)/月と花の定座があり、月は面に一つ、花は折に一つとされている。これは障害物のようなもので、あらかじめ定座の位置を決めておけばよい。ただし、名残の折では月と花を同時に詠み込むと窮屈になるので、月は省き、歌仙なら二花三月となる。ふつう、挙句の前の句を花の定座 とする。

出勝ち(だしがち)/一座で早く出句した人の句を採用する方法。連衆が五六人以上になると、出勝ちが普通である。

膝送り(ひざおくり)/一座した人たちが順番に詠んでいく方法。少人数の場合に行なわれる。

懐紙(かいし)/連歌を書き記す紙。二つ折りにした懐紙を、百韻連歌では四枚(初折・二折・三折・名残折)、歌仙連歌では二枚(初・名残折)使う。その一枚を折(おり)といい、縦に二つ折りにすると表と裏の面ができる。採用された句は二行書きにし、最後に出句者の名を記す。

端作り(はしづくり)/懐紙の冒頭(初の折の表の右端)に余白をつくって、右に「年月日」、中央に「○○連歌△△の巻」などの形式と巻名、やや下げて左に「於○○」と連歌興行の場所を記す。巻名は発句の初五かキーワードを記しておけばよい。

文音(ぶんいん)/手紙やファックスで句をやりとりして連歌を巻くこと。インターネット連歌はこの進化したものと考えてもよい。

連衆(れんじゅう)/連歌の座に参加する人をいう。

宗匠(そうしょう)/捌きともいい、連歌一巻の完成に責任をもつ人で、一座のコーディネイター。問題句の取捨選択は宗匠の差配による。

(きゃく)/一座の客として招かれた人をいい、発句を詠む。

亭主(ていしゅ)/連歌の興行を企画・実行する人で、いわば連歌会のプロデューサー、現代連歌では世話人と呼んでいる。連歌興行の陰の主役で、客発句に対して脇句を詠むものとされている。

執筆(しゅひつ)/詠まれた句を懐紙に記録する書記役であり、採用句が式目に適っているか否かを判定し、採用句の発声をするなど、一座の進行役もつとめる。

百韻連歌(ひゃくいんれんが)/中世の連歌の基本的な形式で、百句を詠み継ぐ形式。百句を百韻というのは連歌の成立に影響を与えた中国の聯句(合作漢詩)からきている。百韻連歌は懐紙四枚を使うが、そのうち初折(22句)と二折(28句)のみを使ったものを五十韻連歌といい、初折(22句)と最期の名残折(22句)を使ったものを世吉(よよし)連歌という。その初折のみを使えば半世吉連歌となる。こうした形式は現代連歌では余り使われない。

歌仙連歌(かせんれんが)/江戸中期以降の俳諧で一般的になった形式。三十六歌仙にちなんで三十六句を詠み継ぐもので、現代連歌の基本型式になっている。懐紙二枚を使い、初折には表六句、裏十二句、名残折には表十二句、裏六句を記す。最後の余白に句上をする。

半歌仙連歌(はんかせんれんが)/歌仙の半分の十八句を詠むもので、時間的余裕のない現代においてしばしば巻かれる。懐紙は一枚で、初折のみを使う。

花信風連歌(かしんふうれんが)/二十四番花信風にちなんで二十四句を詠み継ぐ。これは歌仙連歌の初折の表六句と裏十二句、名残折の裏六句を、それぞれ序破急として扱う。半歌仙では物足りないときに巻くとよい。

独吟(どくぎん)/多人数で興行する連歌を一人で巻くこと。二人で巻くのを両吟、三人で巻くのを三吟という。

連歌の会席(京都御苑内の拾翠亭にて)

懐紙(打曇/うちぐもり)

                                   連歌・俳諧要言


源俊頼(10551129
01/連歌と言へるものあり。例の歌の半らを言ふなり。本末心に任すべし。その半が内に、いふべき心をいひ果つるなり。心残りて、 付くる人にいひ果てさするは悪し。(俊頼髄脳)

二条良基132088
02 /詞こまやかにして、当座の感を催す事、尤も最上也(僻連抄)
03 /人の心、上古末代に移り変はるごとく、此の道もすべて時により折にしたがひて風体の変はる也(連理秘抄)

04 /代々勅撰の言葉を出づべからずといへども、新しく仕出だしたらんも、又俗なる詞も、連歌には苦しみあるべからず(同上)
05 /ただ堪能に練習して、座功をつむより外の稽古あるべからず(同上)
06 /初心の人、ことに優しくおだやかに、具足すくなくするするとしたる句を思ふところなく口軽く付くべし。この他ゆめゆめ稽古に故実も口伝もあるべからず(同上)
07 /何事もいたりてよきといふは、すべて繕はでおのれなりなるを最上といふべし(同上)
08 /発句はまづ切るべき也。切れぬは用ゐるべからず(同上)
09 /発句に時節の景物そむきたるは返々口惜しき事也(同上)
10 /諸人面白がらねば、いかなる正道も曲なし。たとへば田楽・猿楽のごとし。連歌も一座の興たるあひだ、只当座の面 白きを上手とは申すべし(十問最秘抄)
11 /常の事の新しくなるを秘事と云ふべし(同上)
12 /一文不通の者なりとも、連歌堪能ならば、我と宝を得たるがごとく成るべし(同上)
13 /歌ニモ連歌ニモ、イマダナカラン風情コソ、大切ニ侍レ(九州問答)
14 /新キ寄合ヲ見出シテ、句ガラ面白カランハ、第一ニテアルベシ(同上)
15 /タトヒ新キ寄合ナリトモ、スガタワロクテハ無詮(同上)
16 /凡上手ノ連歌ハ、ノキタル様ナレドモ、心がオモシロク寄合ナリ(同上)
17 /連歌は前念後念をつがず、又盛衰憂喜、境をならべて移りもて行くさま、浮世の有様にことならず。(筑波問答)

心敬140675
18 /艶にさしのびのどやかにして、面影・余情に心をかけよ(さゝめごと)
19 此道(連歌)は、前句の取り寄りにて、如何なる定句も玄妙の物になり、いかばかりの秀逸も無下のことになるとい へる。前句と我句との間に、句の寄特、作者の粉骨はあらはれ侍るべしと也(老のくり言)
20 大方、疎句とて、上下あらぬ様に継たる歌に、秀逸は多く侍ると也。親句とて、上下親しくいひはてたるには、秀歌稀なる由、定家卿注給へり。連歌も、古人の作者の句共は、悉か様に、心より寄て、感情深く侍るが、此等の志かうばしき事にや。大方の好士は、がいりきを前として、たゞ舌の上に句をやすく申侍るを、高名と思侍ると也。更に、他人の幽玄秀逸も、あやまちをも、分別修行に及ばず。ひとへに、当座のもてあそびまでと見え侍や。(同上)
21 歌道の廃れしよりは、世人みな連歌に心を移し、一天に満てり(同上)


宗祇
14281502

22 /愚意に思ひ侍る連歌の正風は、前にとる心誹諧になく、一句の様常の事をも、詞の上下をよくくさりて、いかにもやすらかに云ひながし、物にうてぬ所を心にもかけまほしく侍る也(老のすさみ)

松永貞徳15711653
23 抑はじめは、俳諧と連歌のわいだめなし。其の中よりやさしき詞のみつづけて連歌といひ、俗言を嫌はず作する句を俳諧といふなり(御傘序文)

松尾芭蕉164494
24 /上に宗因なくむば、我々がはいかい今以て貞徳の涎をねぶるべし。宗因は此道の中興開山也(去来抄・去来)
25 ほ句は物を合はすれば出来せり。其能く取合はするを上手といひ、悪敷を下手といふ(同上)
26 /発句は門人の中予にをとらぬ人多し。俳諧におゐては老翁が骨髄(宇陀法師・許六)
27 /俳諧は三尺の童にさせよ。初心の句こそたのもしけれ(三冊子・土芳)
28 /多年、俳諧好きたる人より、他の芸に達したる人早く俳諧に入る(同上)
29 /付けの事は千変万化すといへども、せんずる所、唯、俤と思ひなし、景気、比三つに究まり侍る(同上)
30 /付くといふ筋は、匂・響・俤・移り・推量など形なきより起る所なり(同上)
31 たとへば歌仙は三十六歩也、一歩も跡に帰る心なし。行くにしたがひ、心の改るは、ただ先へゆく心なれば也(同上)
32 /責めて流行せざれば新しみなし。新しみはつねに責むるがゆへに一歩自然にすゝむ地より顕はるゝ也(同上)
33 /文台引き下ろせば即ち反古也(同上)

正岡子規18671902
34 /発句は文学なり、連俳は文学に非ず……連俳固より文学の分子を有せざるに非ずといへども文学以外の分子をも併有するなり。而して其の文学の分子のみを論ぜんには発句を以て足れりとなす(芭蕉雑談)
35 /連俳に貴ぶ所は変化なり、変化は則ち文学以外の分子なり(同上)
36 /概言すれば俳句は已に尽きたりと思ふなり。よし未だ尽きずとするも明治年間に尽きんこと期して待つべきなり(獺祭書屋俳話)

高浜虚子18741959
37 /所謂俳諧の発句といふべきを略して俳句といふが如く、俳諧の連句といふべきを略して連句といふ方が俳句に対して裁然と区画が立つやうに覚えられる(連句論)

寺田寅彦18781935
38 /映画の光学的映像より成る一つ一つのショットに代はるものが、連句では実感的心像で構成される長句或は短句である。さうして此等の構成要素は其のモンタージュのリズムによつて或は急に或は緩やかなる波動を描いて行く、即ち 音楽的進行を生ずるのである(映画芸術)
39 /連句は云はゞ潜在意識的象徴によって語られた詩の連鎖であって、ポオや仏国象徴派詩人の考えを一層徹底させたものともみられないことはない(俳諧の本質的概論)

能勢朝次18941955
40 /付句は前句の中に潜在する新しい詩境を、付句をつけることによって顕現させて、前句に新しい生命をあてることに よってのみ、自句の生命をも実現し得るものである(蕉風連句の精神)
41 /連句芸術の統一者は、句々を貫く概念的思想のごときものではなくて、連句作者の個々の中に存する「全体の美的秩序への参加」の意志である(連句芸術の性格)