弓月庵連歌会

戻る

平成20年11月16日
半歌仙連歌「秋深し」の巻
於 弓月庵

表 発句  秋深し好士そろうて弓月庵(隆三)
    脇   雨に色よき烏瓜三つ(弘子 )
   第三  遠くよりこだます声は鹿ならん(純子)
   四句   すめらみことは悲しみ耐えて(修三)
   五句  新調の烏帽子狩衣わきにおき(俊平)
   六句    儀式(こと)も終りていざやのめのめ(博)
裏 初句  無礼講社員旅行のおたのしみ(清實)
   二句   炬燵の中に足からませて(純子)
   三句  恋しくてなお恋しくて細雪(雪子)
   四句   浜のキャバレーその名は雪子(俊平)
   五句  やわはだのあなた命を消しました(純子)
   六句   すすきの向こうに故郷の山(弘子)
   七句  檻にいる獣を照らす青い月(雪子)
   八句    虫のコーラスピエロも踊る(俊平)
   九句  手に入れしスイス土産の古時計(隆三)
   十句    なるもならぬも春の夕暮れ(修三)
 十一句   さくら花ちりゆくひらに託しけり(博)
  挙句    かすみたなびく波の間に間に(清實)

句上  細尾隆三(2) 松田弘子(2) 嶋岡純子(3) 高城修三(宗匠・2) 竹本俊平(3) 石田博(2) 今枝清實(2) 武藤雪子(執筆・2)

弓月庵にてボタン鍋を囲んでの久々の連歌となりました。連衆は本島合宿の参加者で、最後の巻の巻戻しになりました。

  弓月庵座敷にて表六句を巻く

   囲炉裏端にて

  満尾して

 

 
平成十四年十二月八日


発句  猪鍋と背に隙間風竹の庵(松山)
脇    氷雨降りける巻向の山(修三)
第三  霜の道ぶつぶつぶつと喋るらん(喜代春)
四句   古女房は五十三歳(修三)
五句  今見るも昔見たのも同じ月(ゆかり)
六句   来た道想う秋の夕暮れ

初句  落葉しき地蔵の道の転がりて(喜代春)
二句   脇差持って尻をからげる(修三)
三句  十八番隣の人の手を握り(松山)
四句   財布の中身考えてみる(修三)
五句  あったはず思い違いの先斗町(松山)
六句   なつかしの店跡形もなし(里奈)
七句  手に受けてアンダルシアの星の数(喜代春)
八句   奇跡の泉探しあぐねて(修三)
九句  青き空乾いた大地一人旅(松山)
十句   春の気配をほのかに感ず(修三)
十一句 やわらかな陽ざしを浴びて花を追う(てい子)
挙句   ほがらほがらに今日も一日(修三)

高橋松山 久米ゆかり 山田喜代春 津島里奈 斎藤てい子 高城修三

 

平成十四年 月 日


発句  ほだの火や煽る女の笑い声(松山)
脇    初瀬の秋の山の夕暮れ(修三)
第三  今年また昔のままの庵にて(松山)
四句   物珍しげなニューフェース(ゆかり)
五句  木陰より月に狸の踊りだす(久子)
六句   ぽんぽこぽんのぽんぽこぽん(修三)

初句  いつまでも嫁に行けないこのつらさ(ゆかり)
二句   わが飼い猫は恋の雄叫び(里奈)
三句  逢うたびに疑心暗鬼な友の顔(松山)
四句   忘れてしまったの私の肉体(修三)
五句  やっぱりおまえも同じことを言う(松山)
六句   小泉首相ピョンヤンの秋(修三)
七句  わが娘帰りたくとも帰れない(てい子)
八句   悲しげに咲く彼岸花かな(ゆかり)
九句  この世相月見る人もさみしくて(松山)
十句   今宵の酒は心に沁みる(てい子)
十一句 ひたすらに花咲く春と思いつつ(松山)
挙句   かすみたなびく暁の夢(久子)

高橋松山 高城修三 斎藤てい子 津島里奈 久米ゆかり 前田久子 
    


平成十三年十二月三十一日


発句  それぞれが荷物背負いて年の暮れ(松山)
脇    ただもくもくとつつく猪鍋(修三)
第三  葛川思い出話底つきて(久子)
四句   思わず語る今の身の上(松山)
五句  愛しても尽くしてもなお報われぬ(修三)
六句   そんな男になぜ振り回される(ゆかり)

初句  決心のつかぬままにてデートかな(松山)
二句   真青な空満開の桜(修三)
三句  駆け抜けるセーラー服の襟ゆれて(てい子)
四句   後ろ姿に我が春想い(松山)
五句  どうしようか指折り数えて思案して(修三)
六句   ローン返済尽きることなし(久子)
七句  懐の宝くじをば握り締め(松山)
八句   町の灯りにスキップステップ(久子)
九句  兄さんと呼ばれふらふら路地の奥(ゆかり)
十句   店からのぞく白塗りの顔(松)
十一句 花散る里のにっくき女(修三)
挙句   悪夢がさめて張るのうたた寝(松山)

高橋松山 前田久子 斎藤てい子 久米ゆかり 高城修三
 



平成十二年十一月二十三日


発句  冷え冷えと竹の青きに烏瓜(松山)
脇    女連れにて俳諧の秋(修三)
第三  猪鍋がうましと発句忘れいる(貴代美)
四句   煙にむせて久しき涙(孝之)
五句  月よりも白きうなじの君といて(松山)
六句   恋の思いは秘して放たじ(修三)

初句  夏二人バイクで走るハイウエイ(孝之)
二句   廻す腕の温み感じつ(松山)
三句  これきりやダイヤモンドがもっとすき(孝之)
四句   さば鮨食べてワイン飲みつつ(俊正)
五句  ほろよいにむなしさよぎる風の音(松山)
六句   帰路を急げる長谷寺の僧(貴代美)
七句  立ち止まり振りかえればストーカー(俊正)
八句   白河の村の若後家さん(松山)
九句  夕暮れの御堂筋にて道迷う(修三)
十句   エレベーターは三十六階(貴代美)
十一句 窓際にひそやかに咲く花もあり(俊正)
挙句   せかずあせらず春の道ゆく(松山)

城貴代美 三宅俊正 山城孝之 久米ゆかり 高橋松山 高城修三

平成十二年四月八日


発句  捨て猫のつながれている桜かな(慎一)
脇     おぼろ女房と喧嘩三昧(修三)
第三  折り枝に薄色ゆれて影なくて(真理子)
四句   山のかなたに雨あがるとき(操)
五句  思わぬに楠の木の間に三日の月(則子)
六句   包丁を手に街を駆けぬく(慎一)

初句  影が影を追いかけて行く春嵐(美喜子)
二句   おたまじゃくしに兄と妹(慎一)
三句  めがね手に持ちて見ている蜃気楼(則子)
四句   高圧電線つづく山の辺(慎一)
五句  手もふれず言葉もえたつ仏の座(真理子)
六句   長谷観音の微笑に誘われ(美喜子)
七句  ひまわりを手おりてかざす男の背(操)
八句   玉なす汗にシャツ投げてやる(美喜子)
九句  どうしても言っておきたいことのあり(修三)
十句   源八橋に夕暮れの来て(慎一)
十一句 花冷えの烏はかあと飛び立ちぬ(正実)
挙句   巻向山に春の音して(修三)

藤本真理子 木下正実 高橋則子 富岡和秀 彦坂美喜子 森慎一 平賀胤壽 寺田操


平成十一年六月六日


発句  青竹に風吹き抜けて酒の味(松山)
脇    どうやらこうやら集めし若年魚(修三)
第三  初瀬川帯をゆるめて箸を出し(松山)
四句   あなはずかしや裾の乱るる(ブレイク)
五句  月青く心待ちなる蛍狩り(健郎)
六句   陶器投げ込む白河の橋(ブレイク)

初句  すれ違う女の香りなつかしく(松山)
二句   巽稲荷に願かけしとき(修三)
三句  赤い火や行き交う人の千鳥足(松山)
四句   寺のくぐり戸開けられしまま(貴代美)
五句  気がつけば月の光に縁白く(松山)
六句   明日は早立ち旅支度らし(健郎)
七句  殿様の無理難題を耐え忍び(修三)
八句   一力二力徳利倒して(ブレイク)
九句  熊野路を急ぐ足もと蛇苺(健郎)
十句   すずめのお宿はどちらにありや(久子)
十一句 紫陽花や尋ねし家は人気なく(松山)
挙句   登りし道をまた引き返す(修三)

高橋松山 音谷健郎 クロフォード・ブレイク 前田久子 城貴代美


平成 年 月 日


発句  炉のほだ火消えて襟足秋を知る(松山)
脇    そこはかとなく汲める夜の酒(貴代美)
第三  玄関にみずひき一輪さしていて(修三)
四句   来ぬ人に似た猫の憎さよ(久子)
五句  出ぬ月と知りつつ友と歌を詠む(松山)
六句   席をはずした人も気づかず(屋)

初句  たわむれに口づけをした男の妻(修三)
二句   失楽園を夢に夢見て(松山)
三句  ありし日の見初めし女の柳腰(屋)
四句   今日もまぼろし明日もまぼろし(修三)
五句  松茸の焼く間をまちて時流れ(貴代美)
六句   北朝鮮は飢餓であるらし(修三)
七句  負け戦ありし昔を思い出す(松山)
八句   テレビが映す援助交際(高橋)
九句  世も末となげく親父も遊び人(松山)
十句   いつの世もまたこりることなく(屋)
十一句 我思う故に我あり花の寺(修三)
挙句   仏の慈悲を救う人あり(松山)

平成九年九月十四日


発句  蝉の声備長炭に熱きかな(修三)
脇    珍味あじわう巻向の山(肇)
第三  竹林にガラスの風のあふれいて(貴代美)
四句   老マルキストの日記おもしろ(肇)
五句  月仰ぎぶつぶつぶつと独り言(修三)
六句   片手拝みに女すぎゆく(貴代美)

初句  口紅の残る茶碗でぐいと飲み(肇)
二句   どうでもよいと思うこのごろ(修三)
三句  亡き夫の法事もすみて身のかろし(貴代美)
四句   ぬくもり求めてホームパーティー(佳子)
五句  地獄耳主語聴きのがし推理する(喜代春)
六句   雪しんしんとなお積もるらし(肇)
七句  世の中の人の気持を逆立たせ(修三)
八句   今日弁護士の忙しきこと(肇)
九句  秋扇旅にいかむと懐に()
十句   波なき川に石投げ入れる(喜代春)
十一句 青竹の鋭き中に散る花ぞ(肇)
挙句   今日も今日とて明日も明日とて(修三)


平成七年五月二十八日


発句  巻向の囲炉裏に集う有志かな(圭司)
脇    静けくもあり竹林の里(邦彦)
第三  いにしへの蛙の声を耳にして(ワッセルマン)
四句   みやこを想ふ熱き思いを(正)
五句  こうこうと昇りつつある夏の月(ワッセルマン)
六句   だらだら坂の汗拭いつつ(貴代美)

初句  赤屋根の道を指さす夫婦連れ(圭司)
二句   首なし地蔵に停ち止まりつつ(貴代美)
三句  眺むれば大和三山間近にて(邦彦)
四句   好きな女は人の妻なり(修三)
五句  洗う髪つややかにして香りけく(邦彦)
六句   天の香久山今昔の夢(圭司)
七句  愛してもなほ愛されぬ心地して(修三)
八句   文に向かひてひとり呻吟す(正)
九句  夜の更けて寝屋を訪ねし彼氏かな(圭司)
十句   犬が仰向く夏草の上(貴代美)
十一句 あざみ花遥けくのぞむ銀河系(正)
挙句   逢瀬の道に夢託しつつ(圭司)

M・ワッセルマン 森口邦弘 藤本圭司 安田正 城貴代美


平成七年五月十四日
「大和かな」の巻


発句  半日の閑の緑雨の大和かな(稔典)
脇    長谷の囲炉裏で筍の鍋(修三)
第三  にじり寄る膝の頭が挨拶し(葉子)
四句   猫も目白も共に遊びぬ(健一)
五句  有明の月に早朝ハイキング(寿明)
六句   芒の里の地震しのんで(武)

初句  愛してもなほ愛しても結ばれぬ(修三)
二句   海にかもめのひらひらと飛ぶ(稔典)
三句  濁り酒きのふの蛇を夢に見て(貴代美)
四句   つたなき歌に甘き唇(葉子)
五句  西もよし東もよしか桜散る(健一)
六句   天上天下甘茶一椀(寿明)
七句  あずまやに上がる雲雀の声ひびく(武)
八句   ハルマゲドンと騒ぐ街中(修三)
九句  主寝て寝たまま起きず日は暮れて(健一)
十句   蔵は百年人も百年(稔典)
十一句 雨ひたひた話の花の開きゆき(葉子)
挙句   行方知れない人たちばかり(稔典)
 
三井葉子 坪内稔典 倉橋健一 城貴代美 村元武 橋本寿明 高城修三


平成七年四月二日
木田安彦 土井月子 城貴代美 田原由紀雄 堀本吟 高城修三

平成六年七月十七日
松井憲作 石田博 高城修三 高橋則子 法華重喜 

平成六年六月二十五日
鶴島緋沙子 野々宮萬 金矢光子 梶本千代子 南井輝子 鳴海藍 小島なお 五所恵子 朱雀秀実 高城修三


平成六年四月十七日
深堀明彦、高橋松山氏らと連歌を巻く