大覚寺義俊門跡奉賛連歌会(もどる)



令和五年八月三十一日
歌仙連歌「月待ちて」の巻
  於 大覚寺嵯峨寮

初表
発句   月待ちてそぞろ歩きや嵯峨の御所(修三)
脇      色なき風の竜頭鷁首(貴代美)
第三   紅葉持ち貴公子袖をかざすらん(建夫)
四句    まなじり涼し十八のころ(春雄)
五句   高取の牽牛子塚の夏の午後(久仁子)
六句    ほんのり白く夕顔の咲く(純子)
初裏
初句   うれいつつ横倉山を歩きいて(浩)
二句    夫ある身ゆえさらに恋しき(和子)
三句   束の間の逢瀬重ねる昼下がり(清實)
四句    窓を打つ雨衣擦れの音(幸一)
五句   逝きし人偲ぶ思いや誰か知る(文男)
六句    遠き昭和の夜学の教師(鬼猿)
七句   あの頃の情熱いずこ月に問う(奈緒美)
八句    秋風の吹く日比谷に立って(光)
九句   鳥渡るゴドーはついに現れず(こん)
十句    伝言板に白チョークなし(正子)
十一句  今年また老い木の花は盛りなり(俊平)
十二句   大宇陀めぐる春のウォーク(順子)
名残表
初句   あげ雲雀そこから伊勢は見えるかや(利枝)
二句    修復すみし金のしゃちほこ(啓二朗)
三句   なんとまあ一グラムにて一万円(全光)
四句    伽羅の香りのただよう茶室(奈緒美)
五句   困ったとひそひそ話の納屋の衆(鬼猿)
六句    信長様は天魔に候(建夫)
七句   ホトトギスいつの間にやらいなくなり(貴代美)
八句    四畳半にて恋のためいき(修三)
九句   のけぞって足も恥らう箱枕(貴代美)
十句    悪所通いは今宵がかぎり(俊平)
十一句  金も尽き縁も尽きたり望の月(文男)
十二句   長寿大国肌身に寒し(修三)
名残裏 
初句   懐の猫を相手に新酒くみ(利枝)
二句    我が宗匠に悪態をつく(こん)   
三句   早変わり上手下手を聞き違え(俊平)
四句    四国遍路の農村歌舞伎(鬼猿)
五句   子も我も太鼓鬼神も花のうず(こん)
挙句    光かがやく春は来にけり(順子)

句上  高城修三(宗匠・3) 城貴代美(世話人・3) 村上建夫(世話人・2) 廣瀬春雄(1) 原野久仁子(1) 嶋岡純子(1) 府川浩(1) 友永和子(1) 今枝清實(1) 森幸一(1) 奥村文男(2) 山上鬼猿(3) 井下奈緒美(2) 井下光(1) 今野和代(3) 前田正子(1) 竹本俊平(3) 山田順子(執筆・2) 上羽利枝(2) 松本啓二朗’(1) 佐野全光(1) 

大覚寺義俊門跡は戦国時代の連歌師で、父は関白近衛尚通。享禄二年(1529)に大覚寺門跡に就任し、天文二十四年(1555)に石山寺千句、翌年には大覚寺選句を興行した。この義俊門跡を奉賛する連歌会として大覚寺嵯峨寮にて興行されました。